嫌われ者の僕

みるきぃ

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自己中な不良くん

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あれから花園くんの姿はない。学校にも顔を出さなくなった。噂では実家に帰っているらしい…。

き、きっと僕のせいだよね。はぁ、どうしよう…。僕なんか消えてなくれ。クシャと前髪を掴み、ため息を溢す。もう花園くんにどうやって顔を合わせたらいいかわからない…。花園くんは僕の眼鏡ごともって行って立ち去ってしまった。今は、ゆうから渡された予備の眼鏡をかけている。もちろん、前と同じもの。僕のお母さんから渡されて預かっているみたい。とても助かる。



「あおい?…どうしたの?」


「え、あっ、ううん!ちょっとぼーっとしてただけだよ」


部屋から出て靴を履いて考えごとをしていたらゆうに心配させてしまった。





「…そっか。なら良かった」


「ありがとう…じゃあ学校行こっか」



僕は靴をきちんと履き、ゆうと一緒に登校する。



朝ごはんは部屋で食べてきたから食堂に行かなくてもいい。


最近は食堂は怖くていけないっていうのもあるけどゆうが僕のためを思ってか毎日朝ごはんを作ってくれる。…本当僕の周りはいい人だらけ。なのに僕は…役立たずで、嫌われ者で、周りを傷つけてしまう嫌なやつ。



 


「あ、そうだ」


突然、ゆうの足が止まる。



「ど、どうしたの?ゆう」




「ちょっと触っていい?」


「え?」


ゆうは僕の方を見てすぅと僕の唇を指で触った。




「良かった。もうひいてきたみたいだね」


安心したように微笑むゆう。



「えっ、えっと」



花園くんとのあの一件から唇が少し腫れてしまったのをゆうは毎日大丈夫かどうか心配してくれる。




「止めてごめんね。ほら、行こっか」


「う、うん!」


触れられた箇所が熱を帯びる。…僕なんかを心配しなくてもいいのにと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。ゆうは何も僕から聞かず、こんなにも優しくしてくれる。僕は本当に出来損ないで最低な人間だ…。じゃあまた後で、とゆうとわかれ、僕は自分のクラスのZクラスへと足を運ぶ。…向かう足が重い。そして、あの頃の学校生活に戻る。…花園くんが来る前の。自分のクラスに着き、ゴクンと息を呑んだ。扉の方から話し声や笑い声が聞こえてくる。




「よ、よし…」


震える手を押さえつつも決心して、ドアを開ける。



ガラー


そして一歩、教室に踏み入れた。






「佐藤、今日は遅かったねん」


「もうあの転校生には見捨てられちゃったのかな?あは!」


「相変わらず、キモ」



僕に気づいた不良さんたちが僕を見るなりそう言った。



怖くてなかなか一歩が踏み出せない。



「なに、つったってんだよ、目障りなんだけどー」



「…っ」


唇をぎゅっと噛んだ。 顔をうつむけて自分の席へと重い足を進める。僕の席は後ろの席。なるべく早く座ろうとするがその足は止まった。


なぜなら、



「…おはよう、俺のパシりちゃん」




僕の席にはクラス一権力の高い笹山くんが座っていたから。




「さ、笹山くん…」


笹山くんは両耳に1つずつピアスをしていて制服は着崩している。



「俺らずーっとイライラしてんだよねー」


笹山くんはそう言って両足を組み僕の机に乗せた。



「嫌われ者の分際で調子のってんじゃねぇよ」



「べ、別に僕は調子になんて」



「あ?うるせぇーよ。転校生と毎日毎日イチャイチャして、自分の身分を弁えろよ」



「そ、そんなつもりじゃ…」



「まぁいいや。もうこのクラスでお前の味方なんていねぇし」



「っ」


僕に味方なんていない…。



自分がどれだけ花園くんに助けられていたのかよくわかる。




ガタッ

笹山くんは僕の席から立ち、クイッと僕の顎をあげる。




「お前は俺のパシリ。わかる?勝手にお前と転校生が楽しそうにしてるのムカつく」



「っ」


僕は怖くて黙ることしかできない。




『笹山こわー』

『さすが笹山!』

『俺もちょっとあの転校生気にくわなかったっすわー』



周りの不良さんたちが騒ぎ出す。




「お前に自由なんてねぇよ、あははは!」


笹山くんは口の端をあげて笑う。


周りも『言い過ぎだってー』と言いながらも楽しそうに声をあげていた。





っ。





ぼ、僕は…何でなにも言えないんだろ…っ。唇を噛み、自分の弱さにまた打ち勝てない。




 
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