嫌われ者の僕

みるきぃ

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男前風紀委員長

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「と、泊まっても…いいの?」


迷惑じゃないかな…。




「当たり前だろ!やったー!あおいと夜一緒~」



花園くんは、ぴょんぴょんとジャンプして笑顔を浮かべた。よ、喜んでくれるなんて本当に嬉しい。花園くんっていい人だ。






「あ、そうだ。さっきから気になっていたけど首輪は?」



花園くんは冷静になって僕の首を撫でながらそう聞いてきた。




「あ、そうだった…花園くん。く、首輪は校則違反みたいで…しばらくの間取り上げられちゃったんだ…ごめんなさい」




「何だそれーーー!!!!」



花園くんはそう大声を出してさっきまでとは違う表情になった。





「ぼ、僕もその校則違反だって知らなくて…でもしばらくの間預かるって言ってたしすぐに返してもらえると思うから…」




これ以上僕は何も言えなかった。きっと、許してもらえないかも。せっかくプレゼントしてくれたのに…すぐ取り上げられちゃうなんて申し訳ない。





「すぐ返してもらえるなら安心だ!」




「へ?」



「取り上げられたなら仕方ないけど返してもらったらちゃんとつけろよな!」




お、怒ってない…?想定外のことに少しの間頭が働かなかった。






「俺、今気分いいから許してやるぞ!何だってあおいが俺の部屋で過ごすんだからな!なんかこれって新婚さんみたいだぜ…ああもう俺ってば何言って!あはっ」




花園くんは怒ってる様子はなくなぜか照れていた。よく分からないけど良かった…また僕のせいで機嫌を損ねてしてしまったら、花園くんに合わせる顔がなかったから…。



すると、肩にぽんっと手を置かれた。





「じゃあ、さっそくだけどお風呂入ろうぜ!!一緒に!!」





「えっ、お、風呂…?」


急な展開に少しびっくりする。





「あ、あれだよ!裸の付き合いってやつ!もうあおいはそんなこともわからないのかー」




「え、えっと…」



た、確か本音を言い合えるような関係を築くとかなんとかって一度聞いたことある。




「言っとくけど、親友同士で裸の付き合いは常識だぞ!ほら、今よりもっと仲を深めていこうな!」




じょ、常識なんだ…。やっぱり親友って言われると温かい気持ちになる。そう考えてる途中で花園くんは僕の背中を押してバスルームに誘導した。い、今さらだけど、男同士でお風呂なんて普通だから恥ずかしがる必要はないけどやっぱり緊張してしまう。あ、そうだ。僕は重要なことに気がついた。




「ま、待って…花園くんっ」



「ん?どうしたんだ?」




「…ぼ、僕…服とか持ってないよ?」




だって寮室に戻らず花園くんのところに一直線に来たから制服のままである。お風呂に入るんだったら着替えるものがないから取りにいかないといけない。





それに

と、友達の部屋でお泊まりだなんてなんだか慣れない。


 


「あーもうそんなことか!大丈夫だ気にしなくてもいいぞ!!俺のを貸すから!!」



「は、花園くんの…を?」



「おう!てことで、俺はあおいの着替えを用意するから先に入ってていいぞ!」


俺はあとから入るから、と言って僕は脱衣所で一人になった。











花園くんが出ていったあと、僕は一人、困惑する。ど、どうしよう…。ただお風呂入るだけなのに緊張する。でもせっかく花園くんが言ってくれてるわけだし…断れない。…よ、よし、僕も男だ。こうなったらもう答えは一つしかない。さ、先に入ってもいいんだよね…?僕は眼鏡を外し制服を脱いで、お風呂に入ることを決めた。ジャーっとシャワーの温かいお湯が体にかかる。


「気持ちいいな…」

温かい湯加減に気持ちが良かった。ポカポカする。は、花園くん遅いな…。さっき一緒に入るって言ってたよね…?も、もしかして冗談だったのかな。い、今さらだけど、浴室使ってもいいのか心配になってきた。





ガラッー


「あおい!!待たせたぞ!!」



勢いよくドアを開けて花園くんが入ってきた。





「だ、大丈夫だよ」



少し突然でびっくりしたけど同じ年の友達と入るなんて初めてだ。ゆうとは小学校のころに何回も一緒に入っていたけどゆう以外の人と入るは初めて。



…あ、れ?


「は、花園くん…?」



花園くんは浴室に入らず、そのままドアを開けた状態で固まってしまった。




ど、どうしたのかな…?




「そ、想像以上に刺激が強かった…どうしよう…お風呂どころじゃねぇ」



花園くんは口元を手で覆って小さく何か呟いて屈んでしまった。



「あ、あの…っ」

気分でも悪いのかな…?





「あぁぁぁ、あおい!ごめん!!俺出直してくる!!」



 数秒経ってから立ち上がってドアを閉めて走って行った。


 


は、花園…?  やっぱり、何か様子が変だ。心配になったのでさっさとお風呂を済ませて浴室から出た。


あ、れ?脱衣所で着替えようとしているとなぜかシャツしかなかった。ズボンやパンツとかかごの中を探してみるけどやっぱりなかった。




持ってくるの

わ、忘れちゃったのかな…?



と思ったけどそれまで借りようとする僕は本当に図々しい。









ちなみに僕が着ていたものは、洗濯機でもうすでに洗われていた。と、とりあえず、タオルで体を拭き花園くんが準備してくれたそのシャツを着た。結構サイズが大きくてワンピースみたいになった。足がスースーしていて変な感じ。それに恥ずかしい。そんな格好でゆっくりと脱衣所を出る。すると、廊下の隅で花園くんが腰にタオルを巻いたまま体育座りをして座っていた。やっぱり具合悪いじゃ…?




「花園くん…大丈夫?」



「あおい…?っ!」




花園くんは顔をあげ、目を大きく見開きまた固まってしまった。



「あおい…ちょっとここ来て」



花園くんは片手で口を覆って空いてるもう一方の手で隣をぽんぽんとする。



僕は言われた通り何だろうと思いながら近づくと



「わぁっ」



その途端に花園くんに手を引き寄せられて、視界が回転した。気づくとフローリングの硬い床板の上に押し倒されていた。




「は、花園くん…?」



花園くんは熱っぽい視線で僕の太ももを撫でた。固まること数秒で花園くんの口がやっと開いた。




「あー、シャツ一枚ってなんだよ…もう。しかも俺のを着てあーやべぇ。自分でしたことだけどやばい。…こ、これが彼シャツってやつか気分いいな」


喋っている途中から、ぽたぽたと赤い液体が流れていた。




「は、花園くん!鼻血…!」




「おお!本当だ!!あおいごめん!!俺としたことが理性を失っちまってた!」



花園くんはハッとなり腕ですぐさま拭った。





「ぼ、僕…ティッシュ持ってくるね!」



僕は体を起こし、ティッシュを取りに行こうと思ったけど




「あ、あおいっ!こんなの放っておけば止まるからどこにも行くな!」



俺から離れるなと花園くんは言って寂しそうな顔をする。





「で、でも…だめだよ。か、体を大事にしなきゃ」


隣にいて何もできないのは嫌だ。ただ見ていることだけしかできないのは辛い。





「あおい…そんなに俺のこと思って…」



すると、更に鼻血が溢れてきた。


大変だ。


「す、すぐに取ってくるから待ってて!」




僕は走ってティッシュを取りに行った。ティッシュを取り、すぐに戻って慌てて花園くんに渡した。




「あおい、ありがとな!俺、あおいが隣にいるだけで本当に幸せだ。じゃあ俺、お風呂入ってくる!」


花園くんはそう言って立ち上がった。




「え、う、うん!だ、大丈夫?」


「おう!大丈夫だぞ!!少し頭冷やしてくる!」




そして、鼻を押さえながら僕の頭を撫でて花園くんはお風呂を入りに行った。そのあと、僕はいくら大きいサイズだからといってシャツ一枚は下がスースーして慣れなかったので洗濯が終わって乾燥機にかけた 僕のを再び着ることにした。自分のは制服なので花園くんのシャツはそのまま借りた。パンツは自分のだけどズボンは花園くんが短パンを貸すと言ってくれたので本当にありがたく着せてもらった。




「あおい!!早くこっちこっち!!」



花園くんははしゃぎ、僕をベッドに誘導する。



「あ、うん!」



花園くんがベッドに横になってその隣にこいと言った。





「…し、失礼します」



僕は眼鏡を机に置き、ゆっくりとベッドに腰をおろし花園くんの隣に横になった。




「あー、あおいが俺のベッドにいる。しかも俺の部屋に泊まってる、夢みたい」




「ぼ、僕も同い年の友達の部屋に泊まるなんて考えたことなかった。ありがとう花園くん」



「ああもう俺が初めてってか?可愛いやつ。はぁ~超幸せを感じる」



花園くんはとても嬉しそうに笑った。この笑顔を僕が作っていると思うと心がぽかぽかしてくる。




「なぁ…あおい」


「どうしたの?」





「せっかくだし、……そ、そのエロいことする?」



僕の髪を耳にかけ、耳元でそう囁いた。



「?」


「な、なんつって!まだ早かったよな!!俺ってばもうテンションあがちゃって何考えてんだか」




花園くんは顔を覆い、足をバタバタさせた。





「とりあえず、おやすみのキスしようぜ!ほら、早く目閉じろ」


「え?」


「はやく!!」


「う、うん」


僕は言われた通りに目を閉じた。いつもみたいに深いキスではなく軽いキスだった。




「やばい。これ以上やるといくら俺でも歯止めはきかないから今日はこれでおしまい!」




「え、えっと、おやすみなさい…?」



「おやすみ、あおい」



花園くんはぎゅっと僕を抱き締めて眠った。久々に誰かの体温感じる。僕はあの件があって、ゆうがいなくなってあまり眠れなかったけど隣に人の温度を感じると安心して眠れる。








昨日は久々によく眠れた。誰かが一緒に寝てくれるってだけでとても心強い。昨日は何も考えず眠ることができた。これも花園くんのおかげだ。そんな花園くんはというと、気持ち良さそうに寝ているので起こすに起こせなかった。そのまま何も言わずに部屋を出るのは失礼だよね…。そう思い、僕はひとことメモを残しお礼を添えた。そのあと、準備をして一旦自分の部屋に戻って学校に行った。相変わらずクラスでは一人。視線は少し痛いけど考えすぎかもしれない。それに暴力や暴言、パシりにされるなどはなく前よりはビクビクしなくて今は心が落ち着いている。笹山くんは今日も来ていなく怪我が今も酷いと思い知る。僕が関わると皆傷ついていく。どうしたら、皆傷つかず、普通に話せるんだろ…。そのすべがわからず自分にそのすべさえないと考えてしまう。そうしていくうちに授業が終わって放課後になった。

今日は売店に寄ることにした。一週間のうち、今日は特に全部活が忙しくあまり売店に人が来ない日だから。

僕なんかがいると迷惑や不快な思いさせちゃうから極力、人と会わないようにしている。


そう考えながら売店に着き、昨日のお礼に花園くんに何か買っていこうと思った。


だけど、花園くんって何が好きなんだろうと悩んだ。お菓子とか好きかな…?前、生徒会室でクッキーを美味しそうに食べているのを見たことがある。





「…クッキーにしよう」


あの時、本当に幸せそうに食べていたから。僕はそう思ってクッキーを手に取りレジに持って行こうとした。が、その時にあるものが目にとまった。



は、花の人形…?



そこにはひまわりのような可愛いキャラの人形があった。顔のところはひまわりの花で、手は葉っぱ、靴はひまわりの種みたいだった。



全体的に元気が出そうな感じで明るくまるで花園くんみたいだった。花園くんはひまわりのような人だからこれプレゼントしたい。花園くんは花って苗字にもついてるし合ってるかも。よ、喜んでくれるかな…。僕はその人形も手にとってレジへと会計を済ませた。ひまわりの人形とクッキーを買ったところで、売店を出た。





すると、前方からあの日から一度も会ってない会長さんとばったり会ってしまった。





『お前といるとイライラするつってんだよ』


『お前さ、まじうぜぇ。ちょっと優しくしたからって調子のるなよ?俺様がただでお前に優しくしてると思っているのか?全部演技だよいい加減気づけよ』


『────わかったらうせろよ。俺様の前に顔を出すな』





あの時言われたことを思い出した。会長さんに顔を出すなって言われたのに…こうやって会ってしまうなんて。それに会長さんが売店になんて珍しい。すると、目が合ってしまった。ど、どうしよう。僕は慌てて目をふせた。そして、顔をうつむけて小走りで横をすり抜けようとしたら、







「…おい。待て」




ビクッ

「っ!」



そう低い声で呼び止められ、腕を掴まれて驚いた。







「顔あげろ。逃げようとするな」



「は、はい…っ」



「そんなにヒビるなむかつく」




「ご、ごめんなさい…!」


本当に申し訳なく謝ったら舌打ちをされた。







「まあ、いい。さっき、お前が売店の方向かって行ったのが見えたから来た」



「…?」



見えたから…?どうして?僕は首を傾けた。





「あの時からお前が頭の中から離れなくていつもイライラしてる」




え…?


や、やっぱり僕が気に障ることしたからだ。掃除手伝わせたりとか…いろいろ。




「ごめんなさい…ぼ、僕本当に失礼なことしましたよね」



「チッ。…そういう意味じゃねぇよ」



「え、」




会長さんは頭をかき、イライラしているようだ。僕は相手の機嫌を悪くさせるのが得意。そんな自分が本当に嫌いだ。相手に嫌な思いさせたくないのに。僕は謝る以外に許してもらえる方法はわからない。



「あぁ、つまりあれだよ。あの時は俺が…わ、悪かった。それが言いたかっただけ」




い、今…僕に謝ったの…?どうして僕なんかに会長さんが謝るのかわからなかった。また、どう返したらいいのかわからない。



「チッ。やっぱり何で謝ってるかわからねぇって顔してやがる」



勘の鋭い会長さんにすぐに読み取られてしまった。




「え、あ、あの」


「別にいい。ただ俺が勝手に謝ってるって思っとけばいい」



「は、はい」



よくわからないけど僕を見かけてここまで来てくれたなんてびっくりした。



「で、お前。なに買ったんだ」



急に話をふられて動揺が隠せなかったけどゆっくりと自分を落ち着かせた。



「ク、クッキーと…は、花の人形を買いました」




そう言って、袋の中のものを見せた。




「ふっ、なんだこれは。なんで人形を買ったんだ」



会長さんは少し笑みを溢し、不思議がった。




「そ、その…プ、プレゼントしようと思って…へ、変ですかね?」




「は?誰にあげるつもりだ」



プレゼントにこれをあげるのはやっぱり変かなのかどうか知りたかったけど会長さんは誰にあげるつもりなのか聞いてきた。

これを花園くんにプレゼントするって言ったら怒られるかな…。



花園くんは人気があって僕なんかが勝手に割り込んでプレゼントするなんて図々しいのかもしれない。





「おい、聞いてるのか?」



「…えっと、その」




「誰だ」




もうこれ以上、会長さんの圧に敵わなかった。







「は、花園くんです…」



本当にプレゼントするなんて申し訳ない。





「瑞希?…なんでアイツにって……!?もしかして帰ってきてるのか?いつからだ」




会長さんは花園くんが学園に戻ってきていることを知らなかったみたいだった。



「ふ、二日前からです」




「…そうか、まあいい。でもなぜ、それを瑞希にあげる必要があるんだ」





やっぱり…僕なんかがプレゼントするって変かな…。





「は、花園くんからプレゼントをもらって…それでお返しにと」



これお返しってだけじゃ物足りないけど僕あんまりお金持ってないし…これが一目で気に入ったから選んだ。

すると、また会長さんの舌打ちが聞こえた。





「プレゼントを交換するほど仲良くなってんだなお前ら」



「な、仲良くだなんて、そそそんな恐れ多いです…」



ひ、人から仲良いなんて言われるなんて初めてで動揺した。






「やっぱ、むかつくお前!」



また僕は知らずに怒らせてしまった。




「ご、ごめんなさい…!」


ただ謝ることしかできない僕。少し喋りすぎて調子乗ってしまった…。







「お前いい加減、瑞希から離れろ」



「え、」




「お前なんて誰のそばにもいなくていい」



「……っ!」



ぎゅっと唇を噛む。…わかってる。わかってるからそれだけは言わないで…。ぼ、僕は…周りを不幸にさせちゃう。笑顔にさせたいのに。自分が思っているのと全然違う。裏目に出る。会長さんは、花園くんまで不幸になってしまわないか心配なんだ。震える手。力を込め、クッキーや人形が袋を握りしめた。僕はそのあと何も言い返せなかった。










「…なにあれ」


その光景を遠くで誰か目を据えて僕たちを見ていたとは知らなかった。


それから会長さんは『わかったか』と言って僕の横を通りすぎて行った。今、忠告を受けたのにも関わらず僕は鞄を自分の部屋に置いてさっき買ったクッキーと人形の入った袋を持って花園くんの部屋に向かってる。 自分も十分、厚かましいってわかってる。で、でもプレゼントは渡したい。ちゃんとお礼は言いたいからこれくらいは許してほしい。人気者の花園くんと違って僕は嫌われ者。友達になれるってくらい奇跡に近くて不思議なもの。不釣り合いって誰が見てもそう思うだろう。

でも、花園くんは同い年で初めて僕なんかに友達になろうって言ってくれた人なんだ。そんな人を怒らせて喧嘩をさせてしまった僕はやっぱりダメなやつ。花園くんはそのせいで一週間停学。会長さんが花園くんに近づくなって意味はよくわかる。僕さえいなくなれば誰も傷つかなくて済むのかな…。プレゼントをあげようというときにこんな暗くなっちゃだめだと頬をパンパンと叩き心を切り替えた。





そして、花園くんの寮室に着いてドアをノックする。だけど数分待ったが出てくる様子はなかった。もしかして、いないのかな…?


それか寝ているとか…、それなら起こすわけにはいかないよね…。今日は一旦ひきあげまた明日にでも渡そうと思った。


今日渡したかったなと思いながら帰ろうと後ろを振り替えると






「わっ!び、びっくりした…」



すぐそこに花園くんが立っていた。僕は柄にもなく大きな声が出た。





「は、花園くん…急に大きな声出してごめんね」


全然気配を感じなくて、驚き本当に失礼なことをしてしまったと思った。



あ、れ…?僕は何かおかしいと思った。花園くんは目を動かさず、僕をじっと見ているだけで反応を示さない。何か様子が変だった。




「は、花園くん…?あ、あのえっと僕、花園くんに用があって来て…その」




プレゼントを渡しにきたと、言える雰囲気ではなかった。


それに恥ずかしくて簡単に言えるはずもなかった。








「…あおい」

すると、花園くんが口を開きそれは思った以上に低い声だった。




すぐに不機嫌であることを察知した。







ドンッ!


「いっ」



そう思った途端にドアの壁に背中があたり、痛みが走った。



「は、花園くん…?ど、どうしたの」


こうなった花園くんは花園くんじゃないみたいに怖い。







「あおいのバカバカバカバカ!!バカ野郎ッ!!!!」



寮の廊下に花園くんの怒鳴り声が響く。




「、っ」


また、僕は花園くんの怒らすことをしたんだ。




「本当にバカ!バカバカ!あおいは目を離すとすぐ他の誰かと…っ!」




「は、花園くん…ま、待って落ち着いて」




「そんなの無理だ!!…どうしてあおいは俺を苦しめるんだ!どうして俺の思い通りにならないんだよ!!」




「く、苦しめる…花園くんを…僕が」



僕はまた知らずに花園くんを苦しめている。本人からその言葉を聞いてすごく胸が痛くなった。







「俺を嫉妬させて構ってほしいのはわかるけど、限度っていうのがあるんだぞ!許せないことだってある!」



そう言った花園くんは僕の前髪を掴み、眼鏡を外す。




し、嫉妬…?な、なにそれ…どういう意味かもわからない。






「あおいは俺の運命の相手なんだ。なのに、俺がいないところでこそこそと…クソッ!」



花園くんの唇が僕の口にあたる。




「ンんっ」



息が苦しくて声がもれる。











「───で、それでさ」

「──はっ、まじかよそれウケる」




遠くの方で誰かの声がした。…嘘。もしかして誰かここに向かって歩いて来てる?それを教えようと花園くんの胸を軽くとんとんと叩くけどやめるどころか更に深くなっていく。足音や誰かの話し声も聞こえてくるのに花園くんは気づいていない様子であり、キスに集中して周りが見えていなかった。


 

 
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