悪役令嬢の双子の兄

みるきぃ

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「アレン、遅いわよ」 


荷物をまとめ、外で待ちくたびれていたマリーに怒られる。 



「アレンを待っている間、あいつにキスされたじゃない」 



え?キス…? 



「だ、誰に?」 


「ハリーによ。アレン以外に男の人にキス(手の甲に)されるなんて最悪。不快よね」 



「そうだったのか…」



俺だけじゃなかった。なんだ、あれはハリーなりの別れの挨拶だったのか…?もうびっくりした。

これ乙女ゲームなのに、あんなバグないよな。 



唇にキスなんて、ハリーは将来大物になりそうだな。



「もうアレン、行くよ!」


痺れを切らしたのか俺の腕を掴み、馬車へと乗り込んだ。




すると、窓の外に遠くからハリーが見え、手を振っていた。


小さい頃から当たり前のように会っていたけど、これからはそうはいかない。



寂しい気持ちもあるが俺は手を振り返し、出発した。







「はぁ…」


「マリーどうした?」


馬車で移動中、ため息をつきとても不安そうな表情を浮かべていたマリー。



「アレン、私お屋敷から出たことなくて怖いの」


「そっか。でも大丈夫だよ、俺がマリーのそばについているから」


「約束よ」



「もちろんだよ」



「それなら安心。…ねぇ、アレン」



「なに?」



「アレンが私以外の女の子と話すの嫌なの」



なんて、可愛いことを言うんだ。我が妹は。




頭を撫で安心させるように笑うと、マリーもつられて笑顔になる。


そんな心配しなくてもいいのに、可愛いな。



「俺はマリー以外興味ないよ」



「っ。…ふふ、嬉しいわ。私もよ」



和む空気が馬車の中に流れる。




これからの学園生活は、マリーが主人公だ。


マリーには、どうか幸せになってほしい。そのためには、学園でマリーに似合う人と出会ってほしい。



マリーの良さをみんなに知ってほしい。俺はそのために行動していくことを決めた。





そうして、何時間か馬車に揺られて学園に到着した。




「ここが学園…」



うんうん。ゲームの中と同じだ。でも現実はやばいな。



「私たちの家の何倍もあるわ」


マリーも驚いている。

そりゃあ、この歳まで箱入り娘だったんだ。仕方ない。



マリーは俺の手を握る。




「行こうか」


と、言って俺も握り返した。




門のところで説明を受け、学園の中に入った。


今日は、寮へ荷物を整理して明日は入学式となっている。



男女別々の場所に寮があるため、また後から会うことを約束した。


部屋が離れることにマリーは不機嫌だったけど、『すぐに部屋の整理をしてくるわ』と言って、寮へと言ってしまった。




俺もはやくマリーに会いたいため、荷物をまとめることにした。



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