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◆隣の悪魔
しおりを挟む鈍感隠れモテ男受け
佐山 春(サヤマ ハル)
意地悪幼なじみ攻め
黒崎 龍(クロサキ リュウ)
◇◇◇
「ブース。 おいチビ。…お前、シカトとは、いい度胸だな」
がっしりと、頭を押さえつけられる。
口を開けば毒のある言葉を投げつけられてくる。
「~~もう!!何なんだよ!さっきから」
休み時間、机に顔を俯せて寝ていたのに嫌いな声が聞こえてきたせいで目が完全に覚めてしまった。
「…いちいちうるせぇ野郎だな」
耳を押さえながらそう言っているのは、幼なじみで意地悪な黒崎龍。
「うるさいのはお前だろ」
せっかく人が気持ちよく寝てたっていうのに無理やり起こしやがって…。
そんな苛々の絶えない可哀想な俺は佐山春。
幼なじみのこの男が一番苦手。
「あーあ、そんなこと言っていいんだー。ふーん。お前の黒歴史皆にバラしてやろう」
「はい。ごめんなさい俺が悪かった。一体、何…?」
俺は、心を落ち着かせ、冷静に言う。
…黒歴史。俺の恥ずかしい過去。
それは決して教えられない。
こいつは、俺と家が隣同士で生まれたときからずっと一緒。
兄弟みたいに育った。
そう、俗に言う腐れ縁ってやつ。
ほんと、何の用だ。
「ただ、暇だからさ、お前をいじめに来ただけだよ」
何その理由…。
俺をいじめにここまで来たわけ?
どんだけ暇人なのこいつ。
まあ、俺は寝るっていうものがあるから決して暇じゃない。
「馬鹿だろ」
正論だと思う。
真面目に言ったら、
「イてぇッ!」
デコピンされた。
「もう!!何すんだよ!?」
こいつのデコピンは、半端なく痛い。
暴力まじ反対。
それに手加減っていうのを全然知らないみたいだ。賭けてもいい。絶対、赤くなってる。
「お前いじめるのやっぱ楽しい」
そう言った龍は、口の端を上げてニヤリと笑った。
こいつ…絶対、Sだ!
悪魔悪魔。
そうに違いない。
「お前が楽しくても俺は、全然楽しくねぇ!」
俺はガタンと椅子から立ち上がり、奴に向かって指を差した。
すると、奴は『はぁ…』と深いため息を吐いた。
「お前、そんなに注目浴びたいわけ?」
龍はやれやれとした顔して、俺は周りを見渡す。
「…っ!」
み、み、皆見てる!!
俺は、羞恥に負け顔を俯けた。
「バーカ」
「うるせぇ」
あー!
俺のクールキャラがっ!!!!
「じゃ、また来るわ」
「二度と来るな!」
笑顔で自分のクラスへと帰って行った龍。
いつからあんな意地悪なやつになったんだ?
幼少期のころを思い出す。
『おーい。はる!この泥団子お前にやる』
『将来は俺の家来になってずっと一緒にいろよ!』
『もうお前は俺がいないと何もできねぇよな!』
…忘れてた。
あー、昔からあいつはそんなやつだった。
口の悪い隣の悪魔って日頃から思ってたや、そういえば。
「なぁなぁ佐山!」
「ん?なに」
こいつの名前なんだっけ。
うーん、あっ
浜松だ。
同じクラスだけど俺、あんまクラスのやつと話さないし。
「お前って本当愛されてるよな~」
「はっ?」
愛されてる?何の話だ?
「え?もしかして気づいてないの?」
「なにが」
「え!まじで!?」
「だから何が?」
俺は何に愛されてんの。
気になるけど浜松のやつ、いっこうに教えようとしないし。
「あいつにだよ、黒崎に」
「龍?龍がどうした」
「まじかー。にぶーい!やっぱ佐山って可愛いよな」
こいつも俺をバカにしようとしているのか。
「もう、浜松あっちいけ」
「ご、ごめん!俺から見たらさ佐山って黒崎に超愛されてんじゃん」
「は?どこが」
愛されてる?
言葉大丈夫かこいつ。
さっき、龍にデコピンとか文句言われてたんだけど。それを愛されてるって俺をMにさせるな。キモッ。
「えー、だって黒崎のやつ、毎回こっちのクラスに来るじゃん」
「俺をいじめにな」
それのどこが愛されてるって言うんだ。
「佐山は鈍感だもんなー。うん。そうだ今日俺と帰ろ?」
「なんでそうなるの」
意味がわからん。
「佐山ってクラスに馴染めてないみたいだからいいじゃん」
「余計なお世話だ」
文句を言われながらもいつもは龍と帰ってる。
だって、『帰るぞー』って来るし。
「今日一日ぐらいいいじゃん。ね?黒崎にいじめられてるんでしょ」
そうだけど、まあ
「今日一日ならべつに…」
「よし!決まり!やったね!」
「浜松うるさい」
俺の平穏の日々を崩すなと言いたくなる。
初めて龍以外の人と帰る。
ホームルームが終わり、浜松に早く帰るぞと促された。
なんでそんな急ぐ必要あるんだと思ったけどどうでもいいやと考えるのをやめた。
「えっ、浜松も電車一緒?」
「実は一緒なんだよねー。俺毎回佐山のこと電車で見てるよ」
「うわ、まじで?気づかなかった」
「それもそのはずだよなー。だって黒崎のやつがお前を包囲してるじゃん」
「あー。そうだな」
朝の電車は混んでいて、俺は壁に背中を預けその前に龍が俺を囲んでいるな。
そう言われて初めて気づいた。
「もう、周りから見たらめっちゃ独り占めしてるんだもん黒崎」
「独り占め?黒崎悪いやつだな」
浜松も龍になにか意地悪されたのかな。
物を取られたとか。
うわ、幼馴染みとしてちょっとそれはフォローできない。
「佐山もそう思うでしょ?だから少しぐらいわけてもらってもいいよね」
「ん?なにが」
すると、浜松の顔が徐々に近づいてくる。
「浜松?どうした?近いぞ」
「いいからじっとしていて」
「なんか、本当に近いんだけど、」
後退りすると、また一歩、また一歩と近づく。
なんか、浜松キモい!
クラスでは陽気な笑顔を振り撒いて皆から人気がある感じなのに今はなんかニヤリと怪しく気持ち悪い。
ドンッ!
「うっ」
浜松が何者かによって投げ飛ばしれた。
「りゅ、龍…?」
「おい。春、お前バカか!こいつ変態だぞ」
「へ、変態?」
「いつもお前を舐めまわすかのように見ている変態野郎」
「うわ、まじで」
舐めまわすかのように見ているってなにそれキモ。
「それなのに何で俺とじゃなくてこいつと帰ってんだよ」
「今日一日だけ帰ろうって…」
「全く!おい起きろこのくそ」
「ひっ!黒崎!」
「いいか、よく聞け。こいつはな中学の時、厨二病全開の落書きを書いて我は殺し屋とか邪気眼とか訳のわからないことをしていたやつなんだ」
「おい!龍ッ、お前!!」
俺の黒歴史をペラペラと!
「そんな、厨二病の相手できるのは俺くらいなんだよ。てめぇは引っ込んでろ!」
「す、すみませんでしたあああ!!!」
浜松は真っ青な顔をしたまま勢いよく立ち去って行った。
「おい!龍、お前どういうことだよ!ひでぇ!」
「なんだよ、ほんとのことだろ」
「人の黒歴史なんで話してしまうんだよ!…っ、バカ野郎…」
死ぬほど恥ずかしかった。
あー、くそなんで泣くんだ。
確かに俺は恥ずかしいくらいの厨二病だった。腕に包帯を巻いて『封印されし左手』とか言ってたくらいだ。
誰にも知られたくなかった。
もう、やだ死にたい。
「春、ごめんな泣くなよ」
「もう龍なんか知らねーあっちいけ」
「はぁ、機嫌直せよ」
「直せるか!だいたい何で言ったんだよ…ってうわ!!」
ちゅっ
「え?」
龍の唇が俺のに触れた。
「お前が好きだからだよ、もちろん恋愛感情的な意味で」
「えっ!?」
龍が俺を?
「好きだから嫌でもお前の周りにいるやつを消したかった」
「だ、だからって黒歴史を…」
「それは本当悪かった」
ちゅ、ちゅっ
「ちょ、ちょっと待って何でキスする必要があるんだよ!」
「だって、春が可愛いからだよ」
「っ!なんだよ、それ」
しかも、周り見てるし!!
「それに人に見せつけるのが一番だからね」
「さ、最悪だー!!!」
やっぱり、悪魔は悪魔だ。
この先俺はこいつに振り回されるだろう。
『はる、今日からお前は俺のお嫁さんだぞ!』
小さい頃、龍がそんなことを言っていたのを思い出した。
「好きだよ、春」
【完】
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