剣閃

小林 広平

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第陸幕

18‐5

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うよ、馬鹿ばかなのよ。そして最後に、十兵衛じゅうべえとの決闘けっとうもうし込んだのよ。勝っても負けても切腹せっぷくすると条件じょうけんで」

 普通でれば「小娘風情こむすめふぜい武士ぶし体面たいめんを傷付けた」としてられそうな物だが、月嶋つきしま小娘風情こむすめふぜい同調どうちょうせざるをなかった。

「まあ、結果としては負けたわけだが、斯様かような事をする人間、組頭くみがしら以外はりますまい」

 前組頭ぜんくみがしらが負けて、月嶋つきしま同心どうしんは顔にどろられたでろう。しかも、昨今さっこん街中まちなか柳生やぎゅう名乗なの門下生共もんかせいどもあばれ回る始末しまつ。にもかかわらず、月嶋つきしま終始しゅうし楽しそうでった。

「何で、笑ってられるんだ!」

 一方、慎太郎しんたろう不謹慎ふきんしん月嶋つきしま態度たいどいかりをかくせない。

さくこうじたのは、おそらく父の宗矩むねのりか、弟の宗冬むねふゆよ。三厳みつよし十兵衛じゅうべえにとっては寝耳ねみみに水だったでろうよ。実に愉快ゆかい宗矩殿むねのりどのき今、大名柳生だいみょうやぎゅう手玉てだまに取ったのは、唯一ゆいいつ組頭已くみがしらのみと言えよう嗚呼ああ、前を付けねばいかんかったか…」

 頭から湯気ゆげを立てる慎太郎しんたろう揶揄からかう様に、さら面白おもしろがる月嶋つきしま。夫を殺された未亡人みぼうじんの前で、態度たいど如何いかがな物か。

武士ぶしうのは、色々面倒いろいろめんどうな社会でな。奥方おくがた前組頭ぜんくみがしら墓参はかまいりにでも連れて行ってってはくれませぬか?」

 とは言え、月嶋つきしまうれしいのでる。渦中かちゅうの人物で慎太郎しんたろうに出会えたのだから、心がおどるのも無理はない。
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