剣閃

小林 広平

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第捌幕

25-4

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「私だけおめおめと生きながらえて、もうわけ御座ございません、御嬢様おじょうさま

 としの若い丁稚小僧でっちこぞうたたみひたいこすり付けてる。

「父は店の者達は家族同然どうぜんとしてあつかって来ました。ですから、良いのですよ。だ子供の貴方あなたは、私達にとっても姉弟きょうだい同然どうぜんよろこばしい事でしかりません」

 丁稚小僧でっちこぞうわかかりし日の月嶋つきしま本人でった。

 辿たどって来た境遇きょうぐうひどい物でったが、奉公先ほうこうさきにはめぐまれ、店の主人にはとても良くしてもらってた。しかし、る日突然とつぜん、店がしのくずれと思わしきぞくおそわれた。生き残ったのは月嶋つきしまただ一人。あての無くった月嶋つきしまは現在、武家ぶけとついだ主人の娘の元に厄介やっかいってるとった次第しだいる。

おそります」

 こしをぴたりと折りたたんだままいまだに顔を上げようとはしないおさなき日の月嶋つきしま

十文字じゅうもんじ貴方あなた処遇しょぐうきましては、私に一任いちにんされてります。貴方あなたこれから如何どう生きたいのですか?」

 十文字じゅうもんじとは月嶋つきしま幼名ようめいる。奉公先ほうこうさきの主人が付けてくれた名だ。身一みひとつでほうり出された月嶋つきしまにとっては、奉公先ほうこうさきの主人は父親も同然どうぜんる。とは言え、所詮しょせん奉公人ほうこうにん間柄あいだがら無論むろんあまえる事等ゆるされはしないのではるが。
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