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教育実習1週目
どうしたんだろうな
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大阪旅行から1ヶ月。
俺と圭太は教育実習先の藤栄高校(通称、藤高)に向かっていた。
藤高は、この辺じゃ有名な進学校。そして男子校。
母校で実習の受け入れを断られた俺たちは、実習協力校の、この学校に行くことになった。
「伊織何観てんの?」
駅から学校に向かうバスの中で圭太に尋ねられる。
「この前の、大阪旅行のVlog」
「あれね!今年の出来は結構いいよね」
圭太が体を寄せて俺のスマホを覗き込むから、観やすいようにスマホの角度を変えてやる。
今朝、海未から「実習頑張ってください」というメッセージと共にグループラインに送られてきたものだ。
「まだ1ヶ月しか経ってないのに、すごく昔に感じる~。あ、ここウケるよね!あはは」
「テロップのタイミングがいいな」
画面に映るは、いつものサークルメンバー。
そして、蓮。
しばらく楽しく動画にコメントしてた俺たちも、次第に言葉が減る。
「…あいつ、どうしたんだろうな」
「…」
俺の呟きを聞いて、圭太の綺麗な横顔が一瞬俺を見る。
動画を見ていた時の笑顔は消えていて、長いまつ毛が圭太の気持ちを代弁するように静かに上下した。
小さく息を吸って、圭太が話し出す。
「経済学部の1年生に、早川蓮なんていなかった。」
「らしいな」
「連絡先はLINEしか聞いてないけど、あの日以来連絡がつかない。彩葉が他のSNSアカウントを探してみてくれたらしいけど、見つからなかった」
「…。」
圭太はそこまで言うと、真面目な顔で俺の顔を覗き込んだ。
「それで、俺思ったんだけどさ」
圭太の真剣な様子に、俺もスマホを握る手に力が入る。
「…幽霊、なんじゃない?」
「……は?」
「もしくは神隠し」
「…」
圭太の形の良い眉が寄せられる。
大真面目な顔して何言ってんだコイツ。
学校に入ると、事前打ち合わせをした実習担当の先生が俺たちを迎えてくれた。
職員室に入って校長先生含め、偉い人たちにも挨拶をして、その後、圭太と別れて実習の間お世話になる担当教員と対面する。
どんな先生に当たるかで、俺の二週間の実習の運命が決まると言っても過言ではない。
緊張する俺の前に現れたのは、細身で小柄なおじいちゃん先生。
「初めまして。2年3組担任の、根室 五郎です。よろしくお願いしますね。分からないことはなんでも聞いてくださいね」
「は、初めまして。至らないところばかりだと思いますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
「ほ、ほ、ほ。いいね、若いね。よろしくね」
優しく目尻の皺を深くする根室先生。
俺は心の中でガッツポーズをする。
これは、多分、大当たりだ。
「早速だけどね、これが今日の授業で使う資料ね、こっちはプリントね。あとこの書類もね、目を通しておいてね。それからこれがうちのクラスの名簿ね。」
次々手渡される書類に目を通す。
「ホームルームで挨拶してもらうからね。睦月先生は、私よりみんなと歳が近いから、ぜひ、みんなと仲良くなってあげてくださいね」
「はい。がんばりま………え?」
目を疑った。
「どうかしたの?」
「あ、いや…この……、」
見間違いかと思って目を擦る。
いや、間違いじゃない。
クラス名簿の真ん中下。
グループラインでずっと沈黙しているあの名前と同じ名が、そこにあった。
───「早川蓮」。
俺と圭太は教育実習先の藤栄高校(通称、藤高)に向かっていた。
藤高は、この辺じゃ有名な進学校。そして男子校。
母校で実習の受け入れを断られた俺たちは、実習協力校の、この学校に行くことになった。
「伊織何観てんの?」
駅から学校に向かうバスの中で圭太に尋ねられる。
「この前の、大阪旅行のVlog」
「あれね!今年の出来は結構いいよね」
圭太が体を寄せて俺のスマホを覗き込むから、観やすいようにスマホの角度を変えてやる。
今朝、海未から「実習頑張ってください」というメッセージと共にグループラインに送られてきたものだ。
「まだ1ヶ月しか経ってないのに、すごく昔に感じる~。あ、ここウケるよね!あはは」
「テロップのタイミングがいいな」
画面に映るは、いつものサークルメンバー。
そして、蓮。
しばらく楽しく動画にコメントしてた俺たちも、次第に言葉が減る。
「…あいつ、どうしたんだろうな」
「…」
俺の呟きを聞いて、圭太の綺麗な横顔が一瞬俺を見る。
動画を見ていた時の笑顔は消えていて、長いまつ毛が圭太の気持ちを代弁するように静かに上下した。
小さく息を吸って、圭太が話し出す。
「経済学部の1年生に、早川蓮なんていなかった。」
「らしいな」
「連絡先はLINEしか聞いてないけど、あの日以来連絡がつかない。彩葉が他のSNSアカウントを探してみてくれたらしいけど、見つからなかった」
「…。」
圭太はそこまで言うと、真面目な顔で俺の顔を覗き込んだ。
「それで、俺思ったんだけどさ」
圭太の真剣な様子に、俺もスマホを握る手に力が入る。
「…幽霊、なんじゃない?」
「……は?」
「もしくは神隠し」
「…」
圭太の形の良い眉が寄せられる。
大真面目な顔して何言ってんだコイツ。
学校に入ると、事前打ち合わせをした実習担当の先生が俺たちを迎えてくれた。
職員室に入って校長先生含め、偉い人たちにも挨拶をして、その後、圭太と別れて実習の間お世話になる担当教員と対面する。
どんな先生に当たるかで、俺の二週間の実習の運命が決まると言っても過言ではない。
緊張する俺の前に現れたのは、細身で小柄なおじいちゃん先生。
「初めまして。2年3組担任の、根室 五郎です。よろしくお願いしますね。分からないことはなんでも聞いてくださいね」
「は、初めまして。至らないところばかりだと思いますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」
「ほ、ほ、ほ。いいね、若いね。よろしくね」
優しく目尻の皺を深くする根室先生。
俺は心の中でガッツポーズをする。
これは、多分、大当たりだ。
「早速だけどね、これが今日の授業で使う資料ね、こっちはプリントね。あとこの書類もね、目を通しておいてね。それからこれがうちのクラスの名簿ね。」
次々手渡される書類に目を通す。
「ホームルームで挨拶してもらうからね。睦月先生は、私よりみんなと歳が近いから、ぜひ、みんなと仲良くなってあげてくださいね」
「はい。がんばりま………え?」
目を疑った。
「どうかしたの?」
「あ、いや…この……、」
見間違いかと思って目を擦る。
いや、間違いじゃない。
クラス名簿の真ん中下。
グループラインでずっと沈黙しているあの名前と同じ名が、そこにあった。
───「早川蓮」。
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