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2章 あの男は誰なのか?
第6話 カナイチの推理
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「すみません、一ついいですか?」
周囲が暗い気持ちに沈んでいる中、カナイチは真剣な顔になり、ゆっくりと話し出した。
「失礼を承知の上で聞きます。
ギルドはこの事件のことで上の立場の人に“これ以上捜査するな”、“時間の無駄だ”とか言われて早く終わらせるように圧力を掛けられていませんか?」
カナイチの発言に周囲がザワザワとする。
誰もが一度は考えても口にしなかったことをカナイチは平然と言ったからだ。
「確かに、今なら事故として処理できそうだもんな」
「それはありません。
この件はこの町の住民がグラットンベアに襲われて亡くなったことになっています。
町を管理し、守る立場である我々には同じことが起きないように原因を究明する責任があります。
それに、もしそのような圧力があったら成果がないとはいえここまで捜査はできません」
「……そうよね。
結局ギルドはこの件を事故じゃなくて事件の可能性が高いと言ってたし、圧力があるのなら言う必要はないわ」
「……質問に答えていただきありがとうございます。
そして、失礼なことを聞きました。
すみません」
「いえ。
そう思われても仕方がないことでもあります。
むしろ、聞いてくださって感謝しています」
だが、圧力はないということで周囲はますますわからないという表情を隠し切れない。
カナイチ以外はーー。
「……今までの報告を聞いて」
「?」
「色んなことがわかりました」
「……“わかった”?」
「わからない……
じゃなくて?」
「ええ。
まず、確定していることは二つ。
一つは、このエルニアの町にあの男の知り合い、家族、友達、仲間がいないと断言できます」
「断言……!?
断言していいの!?」
「もう一つは、この事件に犯人がいるのならそいつはこの事件が殺人事件になることを恐れていない。
一応、ある程度は事故として処理して欲しいとは思っていても、それはああなったらいいなと言う程度で本気で目指していません」
「……何故、そう言い切れるのですか?」
「まず一つ目。
この町では、グラットンベアに喰い殺された男がいる。
しかも、身元は一切不明。
そう言う情報が町全体に広がっているのに、誰も行方不明の届けが出されていない。
もし、彼に妻や恋人がいたら……
“彼がいなくなってしまったんです。
もしかしたら喰われたのは彼じゃないのですか!?”
と聞きに来ます。
彼が父親、おじさんだった場合は妻に加えて子どもが不安になり……
“お父さん(おじさん)がいなくなっちゃったの。
どこにいるのか探してくれない?”
と不安になり、心配で聞きに来ます。
彼に両親や祖父母がいれば……
“息子がいなくなってしまったんです。
息子はどこにいるのでしょうか?
喰われたのはあの子じゃない……
ですよね!?”
彼に友達や仲間がいてそんな噂が流れていたら……
“おい、あいつ……
俺の友達がいなくなっちまったんだが、知らねえか!?
もしかして、喰われたのはあいつか!?”」
「あっ!」
「……確かにダチがいなくなって、そう言う噂が流れたら確かめに来るよな、普通!」
「そういう立場なら絶対に聞きに行くもんな!」
「そう。
町全体に広がったのに、それが一切ないと言うことは逆に彼には家族も愛する女性も、友達も仲間もいない証明になるんです」
「……死んだことを気にされない孤独な人物……
ということか……
そんな人物が町にいるのか?」
「それでは二つ目は?」
「そうよ。
カナイチ、職員さんが事故じゃなくて事件って言ったら“やっぱり”って呟いていたし、最初からわかっていたってことでしょ?」
「そうなのか?」
「ええ。
最初にグラットンベアの件を報告した時、違和感を覚えていたのですよ。
何で酒瓶やスキットルがないのか」
「うん。
私も、他の人も変だって言ってたわね」
「なかったからこそ、あれが仕組まれていたと意見を出す人もいた。
もし、この事件に犯人がいるのだったら、酒瓶やスキットルを置かないよりも置いた方がいい筈です。
その方がより事故として見せられるし、置かない理由はどこにもない」
「うん」
「でも、こう考えれば納得できます。
犯人は置かなかったんじゃない。
置きたくなかったんだ」
「置きたくなかった?」
「もし、酒瓶やスキットルがあれば必ず指紋を採取される。
せっかく指をメチャクチャにしたのに、それらから指紋を採取されて身元が特定されたら、そっちの方が犯人にとっては都合が悪い。
犯人にとって、この殺人を事故として見せ掛けるよりも被害者の身元を特定させないことに優先していた。
だから、現場に不自然があって、そこから殺人だと見られても犯人はそれを恐れていない。
被害者が特定されなきゃ、自分には辿り着けないと踏んで」
「……なるほど」
「でも、それじゃ被害者が誰なのかわからないと解決できないことになるんじゃないの?」
「……そうでもないさ」
「え?」
「報告とマリナさん達の発言を聞いていくつもの推測は立ててある。
全部が全部合っている訳じゃないけどね」
「どんな推測?」
「四つある」
「四つも!?」
「……聞かせてくれませんか?」
「まず一つ目の推測。
彼が実は貴族の隠し子で存在すること自体マズイ。
だから、人知れずに処理」
「……そう言う話はあるよな」
「でも、そうなると圧力がないことが不自然ですよ。
先ほども言いましたが、そのような圧力は受けていません。
もし、カナイチさんの言う通りでしたら必ず捜査の邪魔が入った筈です。
捜査前ならまだ事故として処理できたでしょうに」
「金も微妙だったよな。
確かに生活には困らないほどあったが、貴族の子どもが持つには少ない気がする」
「それでは二つ目。
実は借金持ちで借金取りに見せしめとして殺された」
「……確かにそう言う奴は手段を選ばないし残酷なことは平気でするよな」
「いや、待て……
それだったら金を持って行かない理由はなんだ?
確かに貴族が持つにしては少ないが、借金を持っている貧乏人が持つにしては多過ぎるだろ」
「財布の指紋を拭いて消す余裕があったら持って行ける筈だ。
そもそも、そんな面倒なことしていないで財布ごと持っていけばいい筈だろ?」
「それでは三つ目。
実は犯罪者で相棒、あるいは相棒に騙され、あそこで始末された」
「……でも、そんな隙を見せているのならグラットンベアに食わせると言う回りくどい方法をせずに直接殺すんじゃない?
そっちの方が確実だし」
「四つ目……
犯人は彼を殺したいほど憎んでいた。
けど、ただそいつを殺して正体を知られたら芋蔓式に直ぐに自分が犯人だとバレてしまう。
だから、被害者の特定を妨害したかった」
「!?」
「……だから、我々に被害者の身元がわからないようにしたのか」
「ええ……
指や顔に酒やりんごの匂いを漂わせてグラットンベアが出没すると言うあの森に置き去りにしたんです。
顔が潰されたら誰が被害者なのか顔で判別はできませんし、指を破壊すればそこから指紋も取れなくなります」
「財布や靴の指紋を拭いたのはそこを起点に被害者が誰なのか特定させないためだったのか。
瓶やスキットルを置かなかったのも……」
「仮にこの件が事故として処理されたとしても、被害者が誰なのか知られたら町の人にこう思われる。
“もしかして、あの人が事故に見せ掛けて殺したのではないのか?”
と……
かと言って指紋を拭いてから置いたとしても何でわざわざ拭いたりしたのだと疑問を持たれることになる。
犯人にとっては置いても置かなくても同じ結果になる。
だから省いたのでしょう」
「しかし、グラットンベアに人肉の味を覚えさせたら危険だと犯人はわかっていたのか?」
「わかっていたと思いますよ。
そして、この季節、毎年朝に冒険者が森を巡回することも知っていた。
放って置いても凶器になったグラットンベアは討伐されると踏んでいたのでしょう。
人肉を食った魔獣をギルドが放置する訳がありませんからね」
「つまり、犯人はこの町の住人!?」
「しかも、グラットンベアに殺させるという方法を取っていることから考えて犯人は冒険者やギルド職員のような戦うことができない人物。
もし、犯人が冒険者のような人物なら刃物、毒、魔法で殺していた筈ですから」
「一般市民の中に犯人がーー」
「でも、犯人がこの町の誰かなんてわかっていたとしても被害者が誰なのかわからないと……」
「逆転の発想だよ、アドラン」
「え?」
「被害者に家族も友達も仲間も愛する人もいない……
“この人がどこにもいない”
そう伝える人がいないのなら、逆に伝えない人に絞った方がいい」
「伝えない人?」
「ほら、よくいるだろ?
町に住んでいたら、悪いことはしなくてもコソコソと変な行動をする人や怒鳴り散らかして怖がられる人……
そういう不審人物」
「……っ!」
「仮にそういう人が町からいなくなっても誰も心配はしない。
むしろ、いなくなって安堵する人もいるかも知れないだろ」
「……確かにそういう奴がいなくなったら心配はしないな。
自分に迷惑掛けられずに済むからホッとするだろうし、急にいなくなっても他の所に行ったんだろと思われる」
「そういう奴が誰かに強く憎まれていても不思議じゃないし、家族からも見捨てられているかも知れないわね」
ティーナも青い顔をしながら頷いた。
「ティーナ大丈夫か?」
「え、ええ」
「……それでギルドの人にお願いがあるのですが」
「何だね?」
「門番の人にここ数日、町から出て行ってしまった怪しい人物がいるかどうかを確認してくれませんか?
もし、町の人や我々が考えるように他の所に行ってしまった者がいるのならその人物は被害者ではありません。
しかし、町を去った記録も証言もないのに、急に町からいなくなってしまった人物がいるのなら」
「……そいつが被害者の可能性が高くなると言うことか」
「そうなります」
「……分かりました。
近いうちに門番の人に問い合わせます」
「よろしくお願いします」
すると、カナイチに聞こえないように他の冒険者達はコソコソと話していた。
「ねえ、アドラン。
カナイチっていつもああなのか?」
「ああって?」
「いや、あいつがモノ探しが得意なのは知っていたが、あそこまで考えるとは思ってもいなくて」
「ああ、確かにそうですね。
カナイチは大抵はああやって色々考えてから動くんです。
聞き取り調査したり依頼人から会話して色々探ったり」
「いや、凄いな。
俺達はただ運が良い奴と思っていた程度だけど、確かにあれならモノ探しは得意なのも頷けるな」
「ちょっとカッコいいかも。
普段は可愛らしい子だと思っていたけどね」
「それ、本人に言うと調子に乗るので言わないでくださいよ」
「でも、褒められるぐらいの実力はあるぜ。
カナイチがいなかったら、多分、ああでもないこうでもないって言い合って終わるだろうからな」
「それでは、カナイチくんの推理を元に調査をするが他に意見があるものは遠慮なく言って欲しい」
しかし、カナイチほどの考えと意見を出せる者はここにはいなかった。
「それなら、今日の会議はここまでとする。
各自、それぞれの依頼をするように」
そうして、捜査会議は終わりを告げた。
周囲が暗い気持ちに沈んでいる中、カナイチは真剣な顔になり、ゆっくりと話し出した。
「失礼を承知の上で聞きます。
ギルドはこの事件のことで上の立場の人に“これ以上捜査するな”、“時間の無駄だ”とか言われて早く終わらせるように圧力を掛けられていませんか?」
カナイチの発言に周囲がザワザワとする。
誰もが一度は考えても口にしなかったことをカナイチは平然と言ったからだ。
「確かに、今なら事故として処理できそうだもんな」
「それはありません。
この件はこの町の住民がグラットンベアに襲われて亡くなったことになっています。
町を管理し、守る立場である我々には同じことが起きないように原因を究明する責任があります。
それに、もしそのような圧力があったら成果がないとはいえここまで捜査はできません」
「……そうよね。
結局ギルドはこの件を事故じゃなくて事件の可能性が高いと言ってたし、圧力があるのなら言う必要はないわ」
「……質問に答えていただきありがとうございます。
そして、失礼なことを聞きました。
すみません」
「いえ。
そう思われても仕方がないことでもあります。
むしろ、聞いてくださって感謝しています」
だが、圧力はないということで周囲はますますわからないという表情を隠し切れない。
カナイチ以外はーー。
「……今までの報告を聞いて」
「?」
「色んなことがわかりました」
「……“わかった”?」
「わからない……
じゃなくて?」
「ええ。
まず、確定していることは二つ。
一つは、このエルニアの町にあの男の知り合い、家族、友達、仲間がいないと断言できます」
「断言……!?
断言していいの!?」
「もう一つは、この事件に犯人がいるのならそいつはこの事件が殺人事件になることを恐れていない。
一応、ある程度は事故として処理して欲しいとは思っていても、それはああなったらいいなと言う程度で本気で目指していません」
「……何故、そう言い切れるのですか?」
「まず一つ目。
この町では、グラットンベアに喰い殺された男がいる。
しかも、身元は一切不明。
そう言う情報が町全体に広がっているのに、誰も行方不明の届けが出されていない。
もし、彼に妻や恋人がいたら……
“彼がいなくなってしまったんです。
もしかしたら喰われたのは彼じゃないのですか!?”
と聞きに来ます。
彼が父親、おじさんだった場合は妻に加えて子どもが不安になり……
“お父さん(おじさん)がいなくなっちゃったの。
どこにいるのか探してくれない?”
と不安になり、心配で聞きに来ます。
彼に両親や祖父母がいれば……
“息子がいなくなってしまったんです。
息子はどこにいるのでしょうか?
喰われたのはあの子じゃない……
ですよね!?”
彼に友達や仲間がいてそんな噂が流れていたら……
“おい、あいつ……
俺の友達がいなくなっちまったんだが、知らねえか!?
もしかして、喰われたのはあいつか!?”」
「あっ!」
「……確かにダチがいなくなって、そう言う噂が流れたら確かめに来るよな、普通!」
「そういう立場なら絶対に聞きに行くもんな!」
「そう。
町全体に広がったのに、それが一切ないと言うことは逆に彼には家族も愛する女性も、友達も仲間もいない証明になるんです」
「……死んだことを気にされない孤独な人物……
ということか……
そんな人物が町にいるのか?」
「それでは二つ目は?」
「そうよ。
カナイチ、職員さんが事故じゃなくて事件って言ったら“やっぱり”って呟いていたし、最初からわかっていたってことでしょ?」
「そうなのか?」
「ええ。
最初にグラットンベアの件を報告した時、違和感を覚えていたのですよ。
何で酒瓶やスキットルがないのか」
「うん。
私も、他の人も変だって言ってたわね」
「なかったからこそ、あれが仕組まれていたと意見を出す人もいた。
もし、この事件に犯人がいるのだったら、酒瓶やスキットルを置かないよりも置いた方がいい筈です。
その方がより事故として見せられるし、置かない理由はどこにもない」
「うん」
「でも、こう考えれば納得できます。
犯人は置かなかったんじゃない。
置きたくなかったんだ」
「置きたくなかった?」
「もし、酒瓶やスキットルがあれば必ず指紋を採取される。
せっかく指をメチャクチャにしたのに、それらから指紋を採取されて身元が特定されたら、そっちの方が犯人にとっては都合が悪い。
犯人にとって、この殺人を事故として見せ掛けるよりも被害者の身元を特定させないことに優先していた。
だから、現場に不自然があって、そこから殺人だと見られても犯人はそれを恐れていない。
被害者が特定されなきゃ、自分には辿り着けないと踏んで」
「……なるほど」
「でも、それじゃ被害者が誰なのかわからないと解決できないことになるんじゃないの?」
「……そうでもないさ」
「え?」
「報告とマリナさん達の発言を聞いていくつもの推測は立ててある。
全部が全部合っている訳じゃないけどね」
「どんな推測?」
「四つある」
「四つも!?」
「……聞かせてくれませんか?」
「まず一つ目の推測。
彼が実は貴族の隠し子で存在すること自体マズイ。
だから、人知れずに処理」
「……そう言う話はあるよな」
「でも、そうなると圧力がないことが不自然ですよ。
先ほども言いましたが、そのような圧力は受けていません。
もし、カナイチさんの言う通りでしたら必ず捜査の邪魔が入った筈です。
捜査前ならまだ事故として処理できたでしょうに」
「金も微妙だったよな。
確かに生活には困らないほどあったが、貴族の子どもが持つには少ない気がする」
「それでは二つ目。
実は借金持ちで借金取りに見せしめとして殺された」
「……確かにそう言う奴は手段を選ばないし残酷なことは平気でするよな」
「いや、待て……
それだったら金を持って行かない理由はなんだ?
確かに貴族が持つにしては少ないが、借金を持っている貧乏人が持つにしては多過ぎるだろ」
「財布の指紋を拭いて消す余裕があったら持って行ける筈だ。
そもそも、そんな面倒なことしていないで財布ごと持っていけばいい筈だろ?」
「それでは三つ目。
実は犯罪者で相棒、あるいは相棒に騙され、あそこで始末された」
「……でも、そんな隙を見せているのならグラットンベアに食わせると言う回りくどい方法をせずに直接殺すんじゃない?
そっちの方が確実だし」
「四つ目……
犯人は彼を殺したいほど憎んでいた。
けど、ただそいつを殺して正体を知られたら芋蔓式に直ぐに自分が犯人だとバレてしまう。
だから、被害者の特定を妨害したかった」
「!?」
「……だから、我々に被害者の身元がわからないようにしたのか」
「ええ……
指や顔に酒やりんごの匂いを漂わせてグラットンベアが出没すると言うあの森に置き去りにしたんです。
顔が潰されたら誰が被害者なのか顔で判別はできませんし、指を破壊すればそこから指紋も取れなくなります」
「財布や靴の指紋を拭いたのはそこを起点に被害者が誰なのか特定させないためだったのか。
瓶やスキットルを置かなかったのも……」
「仮にこの件が事故として処理されたとしても、被害者が誰なのか知られたら町の人にこう思われる。
“もしかして、あの人が事故に見せ掛けて殺したのではないのか?”
と……
かと言って指紋を拭いてから置いたとしても何でわざわざ拭いたりしたのだと疑問を持たれることになる。
犯人にとっては置いても置かなくても同じ結果になる。
だから省いたのでしょう」
「しかし、グラットンベアに人肉の味を覚えさせたら危険だと犯人はわかっていたのか?」
「わかっていたと思いますよ。
そして、この季節、毎年朝に冒険者が森を巡回することも知っていた。
放って置いても凶器になったグラットンベアは討伐されると踏んでいたのでしょう。
人肉を食った魔獣をギルドが放置する訳がありませんからね」
「つまり、犯人はこの町の住人!?」
「しかも、グラットンベアに殺させるという方法を取っていることから考えて犯人は冒険者やギルド職員のような戦うことができない人物。
もし、犯人が冒険者のような人物なら刃物、毒、魔法で殺していた筈ですから」
「一般市民の中に犯人がーー」
「でも、犯人がこの町の誰かなんてわかっていたとしても被害者が誰なのかわからないと……」
「逆転の発想だよ、アドラン」
「え?」
「被害者に家族も友達も仲間も愛する人もいない……
“この人がどこにもいない”
そう伝える人がいないのなら、逆に伝えない人に絞った方がいい」
「伝えない人?」
「ほら、よくいるだろ?
町に住んでいたら、悪いことはしなくてもコソコソと変な行動をする人や怒鳴り散らかして怖がられる人……
そういう不審人物」
「……っ!」
「仮にそういう人が町からいなくなっても誰も心配はしない。
むしろ、いなくなって安堵する人もいるかも知れないだろ」
「……確かにそういう奴がいなくなったら心配はしないな。
自分に迷惑掛けられずに済むからホッとするだろうし、急にいなくなっても他の所に行ったんだろと思われる」
「そういう奴が誰かに強く憎まれていても不思議じゃないし、家族からも見捨てられているかも知れないわね」
ティーナも青い顔をしながら頷いた。
「ティーナ大丈夫か?」
「え、ええ」
「……それでギルドの人にお願いがあるのですが」
「何だね?」
「門番の人にここ数日、町から出て行ってしまった怪しい人物がいるかどうかを確認してくれませんか?
もし、町の人や我々が考えるように他の所に行ってしまった者がいるのならその人物は被害者ではありません。
しかし、町を去った記録も証言もないのに、急に町からいなくなってしまった人物がいるのなら」
「……そいつが被害者の可能性が高くなると言うことか」
「そうなります」
「……分かりました。
近いうちに門番の人に問い合わせます」
「よろしくお願いします」
すると、カナイチに聞こえないように他の冒険者達はコソコソと話していた。
「ねえ、アドラン。
カナイチっていつもああなのか?」
「ああって?」
「いや、あいつがモノ探しが得意なのは知っていたが、あそこまで考えるとは思ってもいなくて」
「ああ、確かにそうですね。
カナイチは大抵はああやって色々考えてから動くんです。
聞き取り調査したり依頼人から会話して色々探ったり」
「いや、凄いな。
俺達はただ運が良い奴と思っていた程度だけど、確かにあれならモノ探しは得意なのも頷けるな」
「ちょっとカッコいいかも。
普段は可愛らしい子だと思っていたけどね」
「それ、本人に言うと調子に乗るので言わないでくださいよ」
「でも、褒められるぐらいの実力はあるぜ。
カナイチがいなかったら、多分、ああでもないこうでもないって言い合って終わるだろうからな」
「それでは、カナイチくんの推理を元に調査をするが他に意見があるものは遠慮なく言って欲しい」
しかし、カナイチほどの考えと意見を出せる者はここにはいなかった。
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