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序章~最終決戦~
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その地は魔女に支配されていた。
強大な力で大陸のほとんどを統べたその魔女は「千年の魔女」と呼ばれていた。
だが・・・
夕暮れ、赤き日が一面を照らす。
そこは人と魔物の軍勢、そして死体の山が溢れかえっていた。
鬨の声が上がる。
「みんな!もう一息、もう一息耐え抜くのだ!
そうすれば、勇者様があの憎き魔女を倒して下さる!
それまでこの魔物達を押さえつければ良い!」
オオオオオーーー
人の軍勢の士気は高く、魔物の軍勢を押している。
その勢いは、そのまま魔物達を殲滅せんとするところにすらみえた。
しかし、その戦いを尻目に魔女の城での決戦は全く逆の様相であった。
ガキーンッ!
甲高い金属音を立て、折れた聖剣の切っ先が宙を舞った。
「な”!?」
「聖剣が・・・折れた・・・」
青髪の剣士が、そして金髪の聖者が呆然と声を上げた。
「ホホホ、聖剣の勇者一行とやらもこの程度か。
これではワレはちっとも楽しめぬではないか。」
目の覚めるような紫の髪をした、妖艶な女が囁く。
「クソ、千年の魔女め・・・」
獣人の少女が怨嗟の声を上げる。
「千年の魔女か・・・
その名はワレは好まん。
血炎の魔女という二つ名の方が好みでのう・・・」
魔女はそう言いながらゆっくりと足を進める。
「折角なのでみせてやろう、血炎とはいかなるものか。」
そういうと魔女は左手のナイフで右手の親指を切り裂いた。
溢れ出た血を宙に撒く。
「いかん、聖者殿結界を!!」
自らも杖を掲げた老齢の魔術師と聖者がとっさに防護の術を張る。
「ブラッディ・フレイム」
瞬間、宙を舞った数滴の血が膨大な炎となり荒れ狂った!
「ぐぅううう」
「この・・・」
魔術師と聖者がもてる力を振り絞り防護魔法に力を込める。
が、
パリンッ
と音を立て結界が割れると共に爆風が襲いかかった。
「きゃぁああ!」
「ガアッ!」
吹き飛ばされる面々。
ただ一人、青髪の勇者だけが、折れた剣を地に突き立てその場で耐えていた。
「なんという力・・・」
力を使い果たし、壁に打ち付けられた聖者が声を漏らす。
「ほう・・・我が血炎を凌いだか・・・」
魔女は少し感心した声を上げたが、
「しかし、ワレはまだ数滴しか血を使っておらぬぞ?
その様子で、一体どうワレを楽しませてくれるというじゃ?」
心底落胆した声で呟いた。
「さて、どうしてくれよう。」
ゆっくりと優雅に足を進める。
ただ、一人ギリギリで立っている勇者の前にくると、その顔を掴んだ。
「此度の趣向、なかなか楽しかったがこれで仕舞いじゃ。
そなたらを殺した後で、外の軍勢もまとめて始末するとしよう。
また退屈な日々が始まると思うとうんざりじゃがな・・・」
そしてその細腕からは信じられない力で勇者を持ち上げる。
勇者は震える手で折れた聖剣を魔女の胸に当てた。
「まだ、そんな力が残っておったのかえ?
しかしそんなガラクタで何をするつもりなのか・・・」
呆れ声を上げる魔女。
しかし、勇者はニタリと邪悪な笑みを浮かべ、
「魔核破壊」
瞬間、何かが魔女の胸を貫いた!
「なっ!ぐああああッ!」
魔女の胸から莫大な魔力の嵐が吹き出る。
その嵐は掴んでいた勇者を吹き飛ばし、広間を一気に抉る。
「一体なにをした!?
魔力が制御できぬ!!」
しかし、答えを知る勇者は既に意識を失い吹き飛んでいる。
荒れ狂う魔力の奔流が城を破壊していく。
「何を、ナニをおおおおーーー!」
自ら吹き出た嵐に巻き込まれ為す術も無く吹き飛ばされる。
「があああ、覚えておれ・・・!」
その叫びと共に遥か下の海へと落ちていった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・ちゃん、」
遠くから声が聞こえる。
頬を叩く感触。
次第に声がハッキリしてくる。
「・・・ちゃん、嬢ちゃん」
「んっ」
うっすらと目を開ける。
ぼんやりとした視界にやたらと大柄な男が映る。
「嬢ちゃん、生きてるかい?」
ハッとなって飛び起きる。
やっとこさはっきりした視界にはやたらとガタイのいいオッサンと、
これまたやたらと大柄な男達が映った。
「ここは!?お主らは一体何者じゃ!?」
「その様子だと大丈夫そうだな。」
ガタイのいいオッサンが安堵の声を上げる。
「とりあえずこの布で体を隠せ。」
とオッサンが布をよこそうとしたことで、自分が裸であることに気がついた。
そこで冷静さを少し取り戻す。
「なんじゃ、そんなことか。
心配せずともワレは隠さなければならないような貧相な体は持ち合わせておらん。
折角の機会じゃ、ワレの美体を目に焼き付ける栄誉を与えようではないか。
この血炎の裸を見られる人間なんぞめったにおらんぞ?
光栄に思うがよい」
とニンマリとするが、なにか自分の声がいつもより甲高いことに違和感を覚えた。
「ん?」
固まっている男達を見て、
「さては余りにも美しいワレの裸体に声も出ぬようじゃな」
と、堂々と胸を張る。
瞬間、何故か男達の目がとても残念そうになった。
疑問に思い自分の体を見下ろす。
まな板があった。
いや無かった。
「なっ!??!?!!??」
瞬間、頭が大混乱する。
「ワレの胸は、豊満なナイスバディはどこへいったのじゃ!?」
かつて無いほどに慌てふためき声を上げる。
そしてそばに池があることに気付き、のぞき込んだ。
・・・そこには、ちんちくりんな少女がいた。
「な、なあああああああああああああああああああ!?!?!?」
絶叫がこだました。
強大な力で大陸のほとんどを統べたその魔女は「千年の魔女」と呼ばれていた。
だが・・・
夕暮れ、赤き日が一面を照らす。
そこは人と魔物の軍勢、そして死体の山が溢れかえっていた。
鬨の声が上がる。
「みんな!もう一息、もう一息耐え抜くのだ!
そうすれば、勇者様があの憎き魔女を倒して下さる!
それまでこの魔物達を押さえつければ良い!」
オオオオオーーー
人の軍勢の士気は高く、魔物の軍勢を押している。
その勢いは、そのまま魔物達を殲滅せんとするところにすらみえた。
しかし、その戦いを尻目に魔女の城での決戦は全く逆の様相であった。
ガキーンッ!
甲高い金属音を立て、折れた聖剣の切っ先が宙を舞った。
「な”!?」
「聖剣が・・・折れた・・・」
青髪の剣士が、そして金髪の聖者が呆然と声を上げた。
「ホホホ、聖剣の勇者一行とやらもこの程度か。
これではワレはちっとも楽しめぬではないか。」
目の覚めるような紫の髪をした、妖艶な女が囁く。
「クソ、千年の魔女め・・・」
獣人の少女が怨嗟の声を上げる。
「千年の魔女か・・・
その名はワレは好まん。
血炎の魔女という二つ名の方が好みでのう・・・」
魔女はそう言いながらゆっくりと足を進める。
「折角なのでみせてやろう、血炎とはいかなるものか。」
そういうと魔女は左手のナイフで右手の親指を切り裂いた。
溢れ出た血を宙に撒く。
「いかん、聖者殿結界を!!」
自らも杖を掲げた老齢の魔術師と聖者がとっさに防護の術を張る。
「ブラッディ・フレイム」
瞬間、宙を舞った数滴の血が膨大な炎となり荒れ狂った!
「ぐぅううう」
「この・・・」
魔術師と聖者がもてる力を振り絞り防護魔法に力を込める。
が、
パリンッ
と音を立て結界が割れると共に爆風が襲いかかった。
「きゃぁああ!」
「ガアッ!」
吹き飛ばされる面々。
ただ一人、青髪の勇者だけが、折れた剣を地に突き立てその場で耐えていた。
「なんという力・・・」
力を使い果たし、壁に打ち付けられた聖者が声を漏らす。
「ほう・・・我が血炎を凌いだか・・・」
魔女は少し感心した声を上げたが、
「しかし、ワレはまだ数滴しか血を使っておらぬぞ?
その様子で、一体どうワレを楽しませてくれるというじゃ?」
心底落胆した声で呟いた。
「さて、どうしてくれよう。」
ゆっくりと優雅に足を進める。
ただ、一人ギリギリで立っている勇者の前にくると、その顔を掴んだ。
「此度の趣向、なかなか楽しかったがこれで仕舞いじゃ。
そなたらを殺した後で、外の軍勢もまとめて始末するとしよう。
また退屈な日々が始まると思うとうんざりじゃがな・・・」
そしてその細腕からは信じられない力で勇者を持ち上げる。
勇者は震える手で折れた聖剣を魔女の胸に当てた。
「まだ、そんな力が残っておったのかえ?
しかしそんなガラクタで何をするつもりなのか・・・」
呆れ声を上げる魔女。
しかし、勇者はニタリと邪悪な笑みを浮かべ、
「魔核破壊」
瞬間、何かが魔女の胸を貫いた!
「なっ!ぐああああッ!」
魔女の胸から莫大な魔力の嵐が吹き出る。
その嵐は掴んでいた勇者を吹き飛ばし、広間を一気に抉る。
「一体なにをした!?
魔力が制御できぬ!!」
しかし、答えを知る勇者は既に意識を失い吹き飛んでいる。
荒れ狂う魔力の奔流が城を破壊していく。
「何を、ナニをおおおおーーー!」
自ら吹き出た嵐に巻き込まれ為す術も無く吹き飛ばされる。
「があああ、覚えておれ・・・!」
その叫びと共に遥か下の海へと落ちていった。
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「・・・ちゃん、」
遠くから声が聞こえる。
頬を叩く感触。
次第に声がハッキリしてくる。
「・・・ちゃん、嬢ちゃん」
「んっ」
うっすらと目を開ける。
ぼんやりとした視界にやたらと大柄な男が映る。
「嬢ちゃん、生きてるかい?」
ハッとなって飛び起きる。
やっとこさはっきりした視界にはやたらとガタイのいいオッサンと、
これまたやたらと大柄な男達が映った。
「ここは!?お主らは一体何者じゃ!?」
「その様子だと大丈夫そうだな。」
ガタイのいいオッサンが安堵の声を上げる。
「とりあえずこの布で体を隠せ。」
とオッサンが布をよこそうとしたことで、自分が裸であることに気がついた。
そこで冷静さを少し取り戻す。
「なんじゃ、そんなことか。
心配せずともワレは隠さなければならないような貧相な体は持ち合わせておらん。
折角の機会じゃ、ワレの美体を目に焼き付ける栄誉を与えようではないか。
この血炎の裸を見られる人間なんぞめったにおらんぞ?
光栄に思うがよい」
とニンマリとするが、なにか自分の声がいつもより甲高いことに違和感を覚えた。
「ん?」
固まっている男達を見て、
「さては余りにも美しいワレの裸体に声も出ぬようじゃな」
と、堂々と胸を張る。
瞬間、何故か男達の目がとても残念そうになった。
疑問に思い自分の体を見下ろす。
まな板があった。
いや無かった。
「なっ!??!?!!??」
瞬間、頭が大混乱する。
「ワレの胸は、豊満なナイスバディはどこへいったのじゃ!?」
かつて無いほどに慌てふためき声を上げる。
そしてそばに池があることに気付き、のぞき込んだ。
・・・そこには、ちんちくりんな少女がいた。
「な、なあああああああああああああああああああ!?!?!?」
絶叫がこだました。
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