反逆の魔女

あいおお

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第一章 神の住まう島

第1話

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「な、なあああああああああああああああああああ!?!?!?」
絶叫すると、思わずめまいがしてふらつく。

とん、と肩をオッサンに支えられる。
「大丈夫か?嬢ちゃん」

「大丈夫ではないが、とりあえずその布を貸すのじゃ」
いつまでも貧相な体を晒すのは、何故か恥ずかしかった。
ああ、とうなずき布をくれる。
どうやら誰かが着ていたマントらしい。
巻いてみるとちょうど体が隠せた。
そして、すこし臭い。

「しかし一体全体どうなっておるのじゃ?
ここはどこじゃ?」

「どうなってるのかってのはこっちの台詞だぜ、嬢ちゃん。
そこの池の上にでっかい宝石が浮かんでて、お宝かと思って触れると宝石が消えて嬢ちゃんになっちまったんだからよ」

「宝石?・・・ふーむ、おそらく身を守る為の結晶結界じゃな、
無我夢中だったので使ったことは覚えてないが・・・・」
と呟くように言う。

「何か覚えているか?」

「うーむ、いまいち思い出せんな・・・」
と適当に流し、
「何はともあれ、助けてくれて礼を言うぞ」

「どういたしまして。
俺はライード、冒険者だ。
嬢ちゃん名前は?」

「名前か・・・よく聞いた、特別に名乗ってしんぜよう。
ワレこそは血炎の魔女にして千年の魔女サウザンドとうたわれし、ヴィラミニエ・アレスフォートであるぞ!」
と、無い胸を張ってふんぞり返る。

「・・・・・」
一同静まりかえる。

「どうじゃ、驚いたであろう?
それとも恐れ多くて声も出ぬか?」

しかし、みんながますます可哀想な目になっているのに気がついた。
なにか変じゃな?

「血炎・・・?ヴィラなんとか?誰だそれ?」
と、ライード。

「何?我が名を知らんと?
まぁ積極的に名乗っておったわけではないからのう・・・
じゃぁ千年の魔女サウザンドの名は?
流石に知っておるであろう?」

千年の魔女サウザンド・・・
うーーん、どっかで聞いたことがるようなないような・・・」
ライードが唸る。

「お頭、アレですぜ、小さいとき聞かされたお伽噺にそんな名前が出てきたような・・・」

「おお!それだ!たしか聖教会に楯突いて、あっさり返り討ちにされたとかいう魔女のお伽噺。
マイナー過ぎて忘れてたぜ」

「ん、んんん?なんじゃそれは?
お伽噺?
あっさり返り討ち???
どうなっておるのか・・・?」

「お嬢ちゃん、閉じ込められてて記憶が変になっちまってるんじゃないのか?
そもそも魔女というわりに、使えないんだろ?魔法。」

「な、なんじゃと!?」
と、いいつつも実は気になっていた。
体の内側から魔力を全く感じないのだ。
(試してみるか・・・)

「パレス!」
「リオル!」

・・・簡単な魔法を唱えてみるが、プスっとも出ない。

「ほら見ろ」

「いやまて、まだこれからじゃ、
誰かナイフを貸してくれぃ」

「ナイフ?ほらよ」
ライードが懐からナイフを取り出す。

「見ておれ・・・これなら・・・」
ナイフで右手の親指に小傷をつける。

「な、なにを!?」

「離れておらぬと危ないぞ!
ブラッディ・フレイム!!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

しーーん

「・・・何が危ないんだ?」

「う、うぐ、これもダメか・・・」
やはりと思いつつもがっくし来る。
(・・・魔核破壊コア・ブレイク、アレのせいじゃろうなぁ)
と、勇者の最後の一撃を思い出す。
(魔核コアとはなんなのか?想像はつくがやはり本人に確かめんと治し方も分からんじゃろうなぁ・・・)

「で、魔法が使えない嬢ちゃんはホントの所、何者なんだ?」

「うーーんと、マ、マレリア、魔法学者のマレリアじゃ。
ちょっとトラップに掛かって封印されておったので記憶が混乱していたようじゃ。」
とっさに適当な名前を名乗る。

「マレリアちゃんか。その年で魔法学者というのは眉唾だけどな」

「ちゃんはむず痒いからヤメイ。こう見えても結構長生きしておるんじゃぞ!」

「はいはい、分かったよ、嬢ちゃん。
まぁいつまでもここにいても仕方ない、戻りながら話そう。
歩けるか?」

「うーむ、歩けると言いたい所だが、靴が無い・・・
この洞窟の中ではちと厳しいの・・・」

「それもそうだな、仕方ない、おぶされ」

「ぐ、た、頼む・・・」
なんだか屈辱的であるが、背に腹は代えられん。

一同は洞窟の中を歩き出す。

「ところで、今はいつでここは何処なんじゃ?」

「学者というわりに、何も知らないんだな。
まぁあんな宝石に閉じ込められてたら無理もないか。
今は聖歴499年、ここはいわゆる船の墓場ってやつの洞窟だよ。」

「聖歴!?499年!?魔国歴はどうしたのじゃ?」

「ん?なんだ?魔国歴?聖歴も分からんのか?」

「どうやら随分と長い間眠っていたようじゃのう・・・」

「聖歴ってのは、聖真国フィリムスが、邪悪な魔王を倒したときから数えた年号だ。
来年で500年目になるらしい。」

「魔王・・・知らんな、一体どれだけ眠っていたのやら・・・」

「本当にそんなことも知らないのか。
じゃぁ本当におばあさんなんだな。」
と笑う。

「違いはせんが無性に腹が立つのう、見てくれはピチピチじゃぞ。」

「ピチピチときたか。まぁピチピチというよりはちんちくりんだがな。」

否定できないのが辛いところである。

「まぁそれは置いておいて、船の墓場についてだ。
この島は潮の流れが集まっていて、壊れた船が流れ着くようになっているみたいなんだ。
俺たちも嵐に巻き込まれてここに流れ着いたってわけさ。
で、嵐が止むまでの間、島を探検しようってことになって、お前さんを発見したところだ。」

「なるほどのぉ。」

「お、そろそろ出口が見えてきたぞ。
嵐はどうなってることやら。」

確かに出口が見えてきた、しかしどうやら外はまだ嵐のようだ。

「ちっ、結構な時間潜ってたと思ったんだが、まだ嵐かよ・・・」
ライードが毒づく。

洞窟の入り口に辿りつくと、マレリアは嵐をひと睨みして、
「これは止まんぞ?」

「どういうことだ?」

「これは自然の嵐では無い、魔法で作られた嵐じゃ」

「なんだって?」

「いわゆる結界魔法の一種じゃな。」

「こんな大規模な嵐をずっと発生させるなんてそんな大魔法誰が一体!?」

「わからん。
が、相当な魔術師であることは間違いないのう」

「ちっ、ついてないな・・・どうしたもんか・・・」

「心配するな。脱出する方法はある!」
と自信満々に宣言した。
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