侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。

彩柚月

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 そんなことをするから、強い者には従って弱いものには強く出るような、歪んだ性格になってしまうのではないのかしら。

 「甘いと、お思いでしょう。これは、本当にわかっていただきたいのですが、父上としても、甘やかすことを良しとしているわけではありません。ですが、それほどまでに、オスカーは弱いのです。今でも少しキツいことを言えば涙を流しますからね。」

 「えぇ—……」
 思わず声が出てしまった。

 「いや、気持ちはわかります。我々もお手上げですから。さらにキツく叱ると、閉じこもってハンストを始めます。それも感情を昂らせて喚いたりはしません。静かに、絶望した風に、涙を流しながら、毛布を被って動かないのです。」

 「それは、弱いというか……もはや脅迫ではないでしょうか。」
この際だと、私は意見を述べる。

 「仰る通りです。しかし、それでも可愛い弟ではありますからね。リリア嬢と結ばれることでオスカーが平穏でいられるなら、それも良いと思っていました。彼がリリア嬢をなじるのを見掛るまでは。」

 「小言を言われることは聞いていたが、オスカー君ががなじる、というのが想像つかん。」
 「お父様は、どんな風に思っていたんですか?」
 「そうだな。せいぜい、( 嘘ついたら嫌だからやめてね。 )と言われているくらいだと。」
 「何ですか、その可愛らしい感じは。」
 
 「リリア嬢。お父上は、本当にそう思っていたのだと思います。私達の印象もそうですから。ベビーフェイスで、可愛らしく、気弱な青年。これが大衆の弟への印象です。」

 「うーん……?」

 そういえば、初めて会った時は、綺麗な顔をしていると思ったし、爽やかな笑顔で優しげだと思った……ような……?

 「何故リリア嬢にだけ威圧的なのかは、わかりません。わからないからと放置できることではありません。ですが、家長の父上が決めた方針を無視して、私が見掛けたことをオスカー本人に言うことはできません。ですから、当然、私は父上に、見たことを報告しました。」

 「それで?」
 と、お父様。

 「信じませんでした。」

 「えぇー……。」

 「それどころか、マリナル家から婚約の見合わせを提案されていることを私が聞きつけて、スライド婚約を狙っているのかと責められました。」
 
 「えぇー……」

 「まあ、当然なのです。私も、実際見なければ、別人の話をしているか、大袈裟に言っていると思ったと思います。オスカーがリリア嬢を威圧し、暴力を使ったなど、誰も信じません。」

 「ふむ……。」

 「リリア嬢は、オスカーと縁を結びたくないと思っていますよね?」
 「絶対、嫌です。」

 「実は、エリザベス様とロザリア様から、我が家に、リリア嬢が望まないのに、オスカーの縁を結ばないようと、お達しがありました。」

ありましたが—…と、続けて

「気弱なオスカーをリリア嬢が虐めている。マリナル家と話し合うと。言っています。」

「はあ……?」


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