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7 身バレ
しおりを挟むそれから、私は今日もラナを口説いている。
「私はかなりお買い得なんですよ。婿にしてみませんか?」
「いいえ。結構です。」
ラナお嬢様が走り回るのについてまわる。
「ほら。病人も減ったでしょう。私のおかげなんですよ。」
「お薬には感謝していますわ。」
「薬じゃないんですよ。」
「光の魔法ですか?」
「見られていましたか。他人には話さないでくださいね。あなたになら全てお話しします。」
本気で言っている。私を受け入れてくれたなら、直ちに秘密を話すつもりだ。
「もう旅立たれてはいかがです?」
「私がいなくなったら、この土地はまた汚れますよ。良いんですか。」
「今度は脅すんですか?そういう人は嫌いです。ここで生きている人達は、あなたに生かされているわけではありません。その時になれば皆、自ら判断します。」
「言い方が悪かったです。ごめんなさい。」
どうしたら良い。この高潔な女性に私の有用さをわかってもらわなくては。
こうしている間にも、どんどん土地は浄化され、作物は実り、人は元気になり、町は活気を取り戻していく。
「いつまで居られるんです?薬師様は旅人なのでしょう。」
「あなたが受け入れてくれたら此処に定住します。」
「無理ですからどうぞお立ちください。」
なんて冷たい。だが、そこが良い。
私の子孫を残すなら、どうしてもこの人との子供が良い。
「ラナって良い名前ですねえ。」
「美人って意味なんですよ。」
「ああ、そういえばそういう意味もありましたね。」
「他にも意味があるんですか?」
「穏やかな水っていう意味もあるんですよ。」
「穏やか……。」
「私の名前はね。セイン=アシュリーって言うんです。」
「性があるんですか?ってことは……。」
「ええ。だから国際的にはいろいろ手続きは必要ですが、身分的には大丈夫かと。」
「旅人だからてっきり……。」
「あ、身分を気にしてたんですか?そういうこと?」
「それは、もちろん、平民だから嫌とかではなく、貴族の義務でもありますから。」
「それはそうですよねえ。うん。私がもっと早くに自己紹介するべきでした。ごめんなさい。アシュリーっていうのはね。トネリコの木のある地って意味なんですよ。」
「トネリコの木?」
「聖なる木です。」
「えっと、ユグドラシル?」
「そうです。私は聖人なのです。」
目をパチクリとさせて、ラナは私を見た。ラナが私をまっすぐ見ている。なんて幸せなのだろう。
「え、なら、近頃、病人が減ったのは、」
「だから、私のおかげだって言ってるでしょう。」
「それならどうしてもっと早く助けてくださらなかったのですか!勿体ぶって!」
「それは……。無闇に自然に反する浄化はできません。あなたなら、理解してくれると信じています。」
「全て、話してください。あなたを受け入れる条件です。」
「もちろんですとも。」
聖人の秘密を打ち明け、共に住むことになった屋敷の敷地の隅に、トネリコの木を植えた。これで、この屋敷の周辺は常に清浄に保たれる。
風は浄化され、国中に良い空気を広めるだろう。願わくは、妻の愛したこの地を、いつまでも子孫が守ってくれるように。
私は妻が好きすぎて、トネリコの枝を妻に刺してしまった。これでもう、私たち2人は生きている限り2人で1人。ああ幸せだ。彼女を見つけられたことは、私にとって至上の喜びである。
子孫に聖人が生まれるかどうかもわからない。生まれたとしても、ここに居続けることを強制はしない。私のように自分の居場所をみつける旅に出ても良い。いや、むしろ、見つけるために旅に出るべきだ。例えそれで、この地が再び荒廃しても、それを気にすることはない。
我々は自分の意思で助ける人と場所を選ぶ。
聖人のいる場所が、聖地になるのだから。
—————
日記帳を閉じて、メラニアは考える。
「アシュリーの初代は旅人だったのね。そして愛する人を見つけて定住した。なら、私も、旅に出ても良いのかしら。両親と暮らした屋敷は惜しいけど……。大切なものは心の中にあるわ。」
セインの子孫、メラニアは、自分の存在価値に悩み引きこもり中だが、これはまた別のお話。
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