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7.村(3)
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それほど大きな丘でなかったにせよ、俺がそこへ辿り着くまでには、数回ルトに指を齧られていた。
「ぎゃわ!」
指先に激痛が走って、思わず跳ね上がり立ち止まる。はあはあと息を荒げながら、コートの隙間から俺の行き先を監視しているルトにお伺いを立てる。
「ど…どっちだ、ルト」
「にぃ」
小さく鳴いたルトが、ある方向へ体を押し付ける。俺はそっちへ向かって再び走り出す。
丘の裾にしがみついている白壁の建物は、アンダルシア特有の眩さで照り輝いていた。その街並みの中を、ルトの指示に従って右へ左へと走り続ける。近くに寄れば、丘は荒れ果てた地肌に黒々とした木立をへばりつかせ、なだらかに、けれども素直には人を近づけ得ぬ複雑な路を連ねて、人を十字架に導いた。
「はっ…はっ…はっ…」
透明で高く澄んだ空の下、十字架は骨のように白白とした石のキリストを支えていた。素朴な風雨に晒された十字架、両手を広げ、少し首を傾げているキリストの顔も、初めの頃にはあっただろう目鼻立ちが薄れ、夢見るように遠い視線を遥か先の村に投げている。それは、救いへの祈りと言うよりは、救いを求めるのに疲れ果てた人々が自ら闇に走り込んで行くのを嘆きもしないが責めもしない、ただ無限の哀しみを湛えて見つめる聖母マリアの慈悲にも似て、沈痛で優しい不思議な表情だった。
「ルト……これからどこ……」
ドギュンッ!
「どあっ!」
唐突に響いた音に、俺は思わず首を竦めた。聞こえてきた方向をそろそろと振り返る。
(今の……ひょっとして……銃声、だよな?)
少し離れた場所に、古ぼけた教会が建っていた。鋭角に支え合った屋根の頂上に、朽ちかけた十字架があるのでようやくそれとわかるような廃屋、左右にあるステンドグラスの窓もひび割れ砕け落ち、色とりどりの光を差し込ませた窓の桟だけが残っているような有様、こちらに半ば正面を向けている扉も、片方は傾いて今にも外れそうだ。
ドギュンッ! ドギュンッ!
「っ!」
ぼんやりと考えている間に、再び銃声は、干からびて優しい十字架のキリストと、丘の上の乾いた風を揺り動かした。何かが心に弾け飛ぶ。天啓に似た鮮やかさで、想いは胸の裡で砕け散り、無意識に走り出していた。
周一郎が居る。
「周一…!」
ドギュゥンッ!
木の扉に達して叫ぶのとほとんど同時に、三度銃声は空を裂き、思わず本能的に立ち止まった。視界に飛び込んできた光景に、全ての感覚が意識の外へ押しやられる。
正面、朽ちて埃だらけになった祭壇、古ぼけた十字架に苦悶と安らぎを交錯させてキリストが身を預けている。左右、空間を支える緩やかな弧を描く薄汚れた白い壁の所々には、手を胸に交差させた天使達の像が浮き彫りにされている。そしてそれらの下、十字架のキリストの視線を浴びて、1人の少年が立っていた。
「…」
きつく唇を噛んで背けた顔に乱れた髪、頭と数十cmも離れていない場所に黒い小さな物がめり込み、パララ…と思い出したように、壁土が穴から右肩に零れ落ちる。カッターシャツ1枚の肩は、異様などす黒い紅に汚れていて、落ちた壁土が白く目立った。似たような紅は左足、大腿部のあたりもべっとりと濡らし、立つのさえやっとで壁でようよう体を支えている。それどころか、今にも崩れ落ちそうな身体を、凄まじい意志力で保っているのがわかった。
やがて、壁にすがったまま、周一郎は閉じていた目を薄く開いた。乱れた髪の間を透かし、顔を背けたまま一瞬こちらを見つめ、すぐに目を伏せる。ほうっ、と深い溜息を漏らした。
「…どうして、すぐに殺さない?」
弱々しい、けれどもはっきりと嘲りを響かせた声で尋ねた。つうっ、と額の辺りから滲んだらしい紅が、筋を作って頬をかすめて這い降りる。言われてみれば、周一郎の首近く、脚近く、腹近くのあたりの壁にも弾丸のめり込んだ跡があった。きっと威嚇射撃だったのだろう、さっきからの銃声は。
「…10年、待ってたのよ」
アクセントの少し違う、けれども滑らかな日本語が聞こえた。俺からは、波打つ黒髪としなやかに伸びた手足しかわからない、女性の後ろ姿から発せられたものらしい。
「バスク人の私がアンダルシアで暮らし続けて、あの日から10年……毎日毎日、あなたのことだけを考えていたわ、周一郎」
「……」
「いいえ、出会った時から、きっとこの瞬間を待ち続けていたんだわ」
不思議に甘い声だった。瀕死の相手、10年も恨みを抱き続けた相手を前にしていると言うよりは、前世より焦がれ続けた永遠の約束の相手に向かって話しているような、蠱惑と喜びに満ちた声だった。
「あなたは、私のことなんて忘れたでしょうけど……」
「…忘れてなんか…いない…」
低く掠れた声で周一郎は応じた。
「覚えていたよ……いつか……必ず来ると思っていた…」
「そう…嬉しいわ」
女性の声ははにかんだ。
「私達の繋がりが『青の光景』だけじゃなくて」
沈黙しか戻らない、けれど女性は微かな殺気を込めて続けた。
「それも、もう終わりだけど。これが最後よ、周一郎。『青の光景』を返しなさい」
「…嫌だ…と言ったら…」
微かな笑みが周一郎の唇に滲んだ。
「……ねえ、周一郎」
女性があやすように優しく話しかける。
「私も、この10年、何も知らない小娘のままではいなかったのよ。いろんな情報の手に入れ方も覚えたわ」
ぎくり、と周一郎が小さく体を強張らせる。
「今、どんな情報が新しいのか教えてあげるわ。『朝倉周一郎誘拐事件に、身代金として、滝と言う男が「青の光景」を持ってスペインに来た』……何なら、その男性に聞いてもいいのよ」
「滝さんは関係ない!」
はっとしたように、周一郎は叫んだ。急な体の動きに、傷が痛んだのだろう、小さく呻いて壁に体を押し付ける。噛み締めた唇の色は既に白くなって来ている。が、周一郎はそっと口を動かして、囁くように呟いた。
「滝さんじゃない……『青の光景』は僕しか知らないんだ……」
「じゃあどうして、あんな情報が流れたわけ? 出所も確かだし、滝と言う男がきているのも事実よ。そればかりか、その男があなたの『秘書』と一緒にあなたを追いかけているわ。赤の他人がそんなことをするとは言わせないわ」
「滝さ…んは…」
ふっと一瞬、周一郎の体がよろめいた。壁に沿って崩れ落ちようとするその時、思わず飛び出しかけた俺を突き飛ばし、俺の足を思いっきり踏みつけて、教会の中に飛び込んだ奴が居た。
「ぎゃわ!」
指先に激痛が走って、思わず跳ね上がり立ち止まる。はあはあと息を荒げながら、コートの隙間から俺の行き先を監視しているルトにお伺いを立てる。
「ど…どっちだ、ルト」
「にぃ」
小さく鳴いたルトが、ある方向へ体を押し付ける。俺はそっちへ向かって再び走り出す。
丘の裾にしがみついている白壁の建物は、アンダルシア特有の眩さで照り輝いていた。その街並みの中を、ルトの指示に従って右へ左へと走り続ける。近くに寄れば、丘は荒れ果てた地肌に黒々とした木立をへばりつかせ、なだらかに、けれども素直には人を近づけ得ぬ複雑な路を連ねて、人を十字架に導いた。
「はっ…はっ…はっ…」
透明で高く澄んだ空の下、十字架は骨のように白白とした石のキリストを支えていた。素朴な風雨に晒された十字架、両手を広げ、少し首を傾げているキリストの顔も、初めの頃にはあっただろう目鼻立ちが薄れ、夢見るように遠い視線を遥か先の村に投げている。それは、救いへの祈りと言うよりは、救いを求めるのに疲れ果てた人々が自ら闇に走り込んで行くのを嘆きもしないが責めもしない、ただ無限の哀しみを湛えて見つめる聖母マリアの慈悲にも似て、沈痛で優しい不思議な表情だった。
「ルト……これからどこ……」
ドギュンッ!
「どあっ!」
唐突に響いた音に、俺は思わず首を竦めた。聞こえてきた方向をそろそろと振り返る。
(今の……ひょっとして……銃声、だよな?)
少し離れた場所に、古ぼけた教会が建っていた。鋭角に支え合った屋根の頂上に、朽ちかけた十字架があるのでようやくそれとわかるような廃屋、左右にあるステンドグラスの窓もひび割れ砕け落ち、色とりどりの光を差し込ませた窓の桟だけが残っているような有様、こちらに半ば正面を向けている扉も、片方は傾いて今にも外れそうだ。
ドギュンッ! ドギュンッ!
「っ!」
ぼんやりと考えている間に、再び銃声は、干からびて優しい十字架のキリストと、丘の上の乾いた風を揺り動かした。何かが心に弾け飛ぶ。天啓に似た鮮やかさで、想いは胸の裡で砕け散り、無意識に走り出していた。
周一郎が居る。
「周一…!」
ドギュゥンッ!
木の扉に達して叫ぶのとほとんど同時に、三度銃声は空を裂き、思わず本能的に立ち止まった。視界に飛び込んできた光景に、全ての感覚が意識の外へ押しやられる。
正面、朽ちて埃だらけになった祭壇、古ぼけた十字架に苦悶と安らぎを交錯させてキリストが身を預けている。左右、空間を支える緩やかな弧を描く薄汚れた白い壁の所々には、手を胸に交差させた天使達の像が浮き彫りにされている。そしてそれらの下、十字架のキリストの視線を浴びて、1人の少年が立っていた。
「…」
きつく唇を噛んで背けた顔に乱れた髪、頭と数十cmも離れていない場所に黒い小さな物がめり込み、パララ…と思い出したように、壁土が穴から右肩に零れ落ちる。カッターシャツ1枚の肩は、異様などす黒い紅に汚れていて、落ちた壁土が白く目立った。似たような紅は左足、大腿部のあたりもべっとりと濡らし、立つのさえやっとで壁でようよう体を支えている。それどころか、今にも崩れ落ちそうな身体を、凄まじい意志力で保っているのがわかった。
やがて、壁にすがったまま、周一郎は閉じていた目を薄く開いた。乱れた髪の間を透かし、顔を背けたまま一瞬こちらを見つめ、すぐに目を伏せる。ほうっ、と深い溜息を漏らした。
「…どうして、すぐに殺さない?」
弱々しい、けれどもはっきりと嘲りを響かせた声で尋ねた。つうっ、と額の辺りから滲んだらしい紅が、筋を作って頬をかすめて這い降りる。言われてみれば、周一郎の首近く、脚近く、腹近くのあたりの壁にも弾丸のめり込んだ跡があった。きっと威嚇射撃だったのだろう、さっきからの銃声は。
「…10年、待ってたのよ」
アクセントの少し違う、けれども滑らかな日本語が聞こえた。俺からは、波打つ黒髪としなやかに伸びた手足しかわからない、女性の後ろ姿から発せられたものらしい。
「バスク人の私がアンダルシアで暮らし続けて、あの日から10年……毎日毎日、あなたのことだけを考えていたわ、周一郎」
「……」
「いいえ、出会った時から、きっとこの瞬間を待ち続けていたんだわ」
不思議に甘い声だった。瀕死の相手、10年も恨みを抱き続けた相手を前にしていると言うよりは、前世より焦がれ続けた永遠の約束の相手に向かって話しているような、蠱惑と喜びに満ちた声だった。
「あなたは、私のことなんて忘れたでしょうけど……」
「…忘れてなんか…いない…」
低く掠れた声で周一郎は応じた。
「覚えていたよ……いつか……必ず来ると思っていた…」
「そう…嬉しいわ」
女性の声ははにかんだ。
「私達の繋がりが『青の光景』だけじゃなくて」
沈黙しか戻らない、けれど女性は微かな殺気を込めて続けた。
「それも、もう終わりだけど。これが最後よ、周一郎。『青の光景』を返しなさい」
「…嫌だ…と言ったら…」
微かな笑みが周一郎の唇に滲んだ。
「……ねえ、周一郎」
女性があやすように優しく話しかける。
「私も、この10年、何も知らない小娘のままではいなかったのよ。いろんな情報の手に入れ方も覚えたわ」
ぎくり、と周一郎が小さく体を強張らせる。
「今、どんな情報が新しいのか教えてあげるわ。『朝倉周一郎誘拐事件に、身代金として、滝と言う男が「青の光景」を持ってスペインに来た』……何なら、その男性に聞いてもいいのよ」
「滝さんは関係ない!」
はっとしたように、周一郎は叫んだ。急な体の動きに、傷が痛んだのだろう、小さく呻いて壁に体を押し付ける。噛み締めた唇の色は既に白くなって来ている。が、周一郎はそっと口を動かして、囁くように呟いた。
「滝さんじゃない……『青の光景』は僕しか知らないんだ……」
「じゃあどうして、あんな情報が流れたわけ? 出所も確かだし、滝と言う男がきているのも事実よ。そればかりか、その男があなたの『秘書』と一緒にあなたを追いかけているわ。赤の他人がそんなことをするとは言わせないわ」
「滝さ…んは…」
ふっと一瞬、周一郎の体がよろめいた。壁に沿って崩れ落ちようとするその時、思わず飛び出しかけた俺を突き飛ばし、俺の足を思いっきり踏みつけて、教会の中に飛び込んだ奴が居た。
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