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9.キューバの人の楽の調べ
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「サンティアゴへ行こう…」
開いた本の詩は繰り返す。水の馬車に乗って、椰子の天井が歌う、バナナがくらげになる、ロミオとジュリエットのバラを持ち、と続けながら。
「結局、スペイン旅行の間中、ガルシア・ロルカを読んでたわね」
コーヒーを運んできたお由宇が、俺の手の本を覗き込んだ。
「なんとなく、あいつの守り札みたいな気がしてな」
コーヒーの香りを味わいながら目を閉じ、ソファにもたれかかる。本を閉じて横に置いた。
「ま、それも、もう終わりだ」
「そうね。無事に日本に帰ってこられたし。周一郎はどうしてるの?」
「高野に見張られて、大人しくしてるよ」
帰国して1週間、ようやく日本にいるらしいと言う実感が湧いてきた頃、俺はお由宇の家でコーヒーを飲んでいた。一つには、帰国前後のドタバタで話せなかった、最後の『青の光景』と礼拝堂の関係の話を聞きたいとお由宇が言ったためであり、もう1つには、上尾や『ランティエ』、マイクロフィルムがどうなったのかをお由宇に訊きたかったためでもあった。
「上尾君とは?」
「あれから会っていない」
「そう……また、スペインへ行ったと言う話だけど。呼び寄せる何かがあるのね」
「ああ……。『ランティエ』は?」
「嬉々として贋作づくりに勤しんでるわよ。アンリに売る気みたい」
「過激な奴だな」
俺は溜息をついてコーヒーを含んだ。ああ言う『天才』のやるこた、一般人の俺にはわからん。
「マイクロフィルムはどうなった?」
「ああ、ICPOに渡したわ。この間イルン空港でひと揉めあったでしょ、あれがその成果ってわけ」
…つくづく、世の中には過激な人間が多い。
「でも、その礼拝堂のシーン、見たかったな。さぞかし凄かったんでしょ?」
「ああ。人間てのは、あんなことがやれるんだよな」
深く深く溜息を重ねる。
今でも目の奥に浮かぶ、青白い光の中の光の群れと影の群れ。交錯する青と黒、滲む光、揺れる影、混じり合う不思議な空間………そして、周一郎の涙。
「『青の光景』……光と影の永遠の恋歌(マドリガル)というわけね……互いを捜して、求めあ合って……」
「考えてみるとさ」
ぼんやりと呟いた。
「あいつ、朝倉大悟が死んだ時、心から泣けなかったんだろうな」
「え?」
「どっかで引っ掛かってさ、………で、やっと大悟が死んだのを悲しめたんだよ、あいつ」
「志郎…」
俺はコーヒーを飲もうとして、呆気に取られたようなお由宇の顔に気づいた。
「どうした?」
「あなたって人は…」
「何だ? 俺がどうかしたのか? 俺は正気だぞ」
何だ何だ、あまりにも不似合いな台詞だったか。
「…そう……そうよね」
くすりと唇を綻ばせる。
「気づいてなかったのよね」
「何が」
「今言ったことの重大さ」
「重大なのか?」
「まあ、光と影についても、周一郎の価値観をひっくり返しときながら、気づかないような人だものね」
「周一郎の価値観? ひっくり返す?」
えーい、くそ。お由宇と話すと、いつもこれだ。
「光が強いほど、出来る影は濃い」
「うん?」
「なのに、あなたったら、光がなけりゃ影は出来ない、って言い切るんだもの」
「うん?」
「影がある……それはすなわち光があること。これ以上の反論がどこにあるかしら」
「あ、あのな」
俺はついにいつもの台詞を吐く。
「もうちょっと、わかりやすく言ってくれる気はないのか?」
「んー…あのね、志郎」
机に肘をつき、顎を乗せ、小首を傾げる。さらりと流れたセミロングの髪をそのままに、きれいな弧を唇に描かせて、俺を見つめる。
「スペインではね、巡礼者が通った道を『サンティアゴの道』と言うの。サンティアゴ、つまりキリスト十二使徒の一人、ヤコブはスペインの守護人で、巡礼者の目指す先がそこ、と言う訳。……きっとあなたは、周一郎にとってのサンティアゴなのね」
「おい!」
俺は悲鳴を上げた。
「それがわかりやすい言い方かよ!」
「仕方ないわね」
お由宇が溜息をつく。
「つまりね、あなたって、結局、周一郎のことに首を突っ込むわけでしょ。それで何かいいことがある訳?」
「いいこと…と言うより、どっちかっつーと災難の方が多い気も…」
「それじゃあ、もう周一郎に関わらない?」
お由宇のことばに、数日前のことがふいに思い浮かんだ。
「あれ?」
本屋から帰って机の上にポートレートと読みかけの本がないのに気づく。
「あいつが持ってったのかな」
とりあえず、周一郎の部屋を訪ねる。ノックに応じて返答があり、書斎に入った俺は、元のところに自分の能天気な笑い顔が飾られているのにうんざりして、寝室との境のドアを開けた。射し込む陽の中、周一郎はしっかり読みかけの本の続きを読んでやがった。
「あのなあ」
「何ですか?」
「黙って持ってくなよ」
「僕がもともと借りていた本です」
「にゃあ」
そーだそーだ、と主人の横になっているベッドの足元に丸くなっていたルトが鳴く。
「そりゃあそうだが……あのポートレートぐらい、外したっていいだろ?」
「どうして?」
「どうしてって、ああ言う顔はもう一つ気に入らん」
「じゃあ」
パタリと本を閉じ、周一郎はこちらを見つめる。
「撮り直しますか?」
「あ、あのな……そーゆー問題じゃない……んだが……」
俺はしばらく黙り込んで、周一郎がポートレートを外そうとは露ほども考えていないらしいのを理解した。
「…まあ……いいか」
「滝さん?」
「わかった。いいよ別に」
「そうですか」
ほっとしたように笑った周一郎は、次の瞬間、そういう自分が心底嫌になったと言いたげに、不愉快そうに口をつぐみ、冷たく言い放った。
「では、さっさと出て行ってもらえますか。読書を続けたいので」
それでも、俺が部屋を出て行く寸前、なぜかひどく優しい目で見送っていた気がした……。
「だめ、だろうなあ」
「え?」
コーヒーのカップを両手で包む。
「結局、俺は手を出しちまうよなあ…アホだとは思うけど」
どんな得があるわけでもないのにな。
「あなたのそういうところって」
「ん」
コーヒーを含む。
「とっても好きよ」
「ごふっ!!」
喉に入ったコーヒーが急に針路修正して気管に飛び込み、目一杯むせた
「こっ…ごほっ! ごほんっ…らっ、お由っ……ごほごほん! 一体…ごほっほっ…何を……ごほっ!!」
「それでね」
咳き込んでいる俺を放って立ち上がり、くるりと背中を向けながら、
「貸してるお金を返してくれたら、もっと好きなんだけど」
「お由宇ーっ!!」
俺は咳の合間に一声、必死に喚いた。
終わり
開いた本の詩は繰り返す。水の馬車に乗って、椰子の天井が歌う、バナナがくらげになる、ロミオとジュリエットのバラを持ち、と続けながら。
「結局、スペイン旅行の間中、ガルシア・ロルカを読んでたわね」
コーヒーを運んできたお由宇が、俺の手の本を覗き込んだ。
「なんとなく、あいつの守り札みたいな気がしてな」
コーヒーの香りを味わいながら目を閉じ、ソファにもたれかかる。本を閉じて横に置いた。
「ま、それも、もう終わりだ」
「そうね。無事に日本に帰ってこられたし。周一郎はどうしてるの?」
「高野に見張られて、大人しくしてるよ」
帰国して1週間、ようやく日本にいるらしいと言う実感が湧いてきた頃、俺はお由宇の家でコーヒーを飲んでいた。一つには、帰国前後のドタバタで話せなかった、最後の『青の光景』と礼拝堂の関係の話を聞きたいとお由宇が言ったためであり、もう1つには、上尾や『ランティエ』、マイクロフィルムがどうなったのかをお由宇に訊きたかったためでもあった。
「上尾君とは?」
「あれから会っていない」
「そう……また、スペインへ行ったと言う話だけど。呼び寄せる何かがあるのね」
「ああ……。『ランティエ』は?」
「嬉々として贋作づくりに勤しんでるわよ。アンリに売る気みたい」
「過激な奴だな」
俺は溜息をついてコーヒーを含んだ。ああ言う『天才』のやるこた、一般人の俺にはわからん。
「マイクロフィルムはどうなった?」
「ああ、ICPOに渡したわ。この間イルン空港でひと揉めあったでしょ、あれがその成果ってわけ」
…つくづく、世の中には過激な人間が多い。
「でも、その礼拝堂のシーン、見たかったな。さぞかし凄かったんでしょ?」
「ああ。人間てのは、あんなことがやれるんだよな」
深く深く溜息を重ねる。
今でも目の奥に浮かぶ、青白い光の中の光の群れと影の群れ。交錯する青と黒、滲む光、揺れる影、混じり合う不思議な空間………そして、周一郎の涙。
「『青の光景』……光と影の永遠の恋歌(マドリガル)というわけね……互いを捜して、求めあ合って……」
「考えてみるとさ」
ぼんやりと呟いた。
「あいつ、朝倉大悟が死んだ時、心から泣けなかったんだろうな」
「え?」
「どっかで引っ掛かってさ、………で、やっと大悟が死んだのを悲しめたんだよ、あいつ」
「志郎…」
俺はコーヒーを飲もうとして、呆気に取られたようなお由宇の顔に気づいた。
「どうした?」
「あなたって人は…」
「何だ? 俺がどうかしたのか? 俺は正気だぞ」
何だ何だ、あまりにも不似合いな台詞だったか。
「…そう……そうよね」
くすりと唇を綻ばせる。
「気づいてなかったのよね」
「何が」
「今言ったことの重大さ」
「重大なのか?」
「まあ、光と影についても、周一郎の価値観をひっくり返しときながら、気づかないような人だものね」
「周一郎の価値観? ひっくり返す?」
えーい、くそ。お由宇と話すと、いつもこれだ。
「光が強いほど、出来る影は濃い」
「うん?」
「なのに、あなたったら、光がなけりゃ影は出来ない、って言い切るんだもの」
「うん?」
「影がある……それはすなわち光があること。これ以上の反論がどこにあるかしら」
「あ、あのな」
俺はついにいつもの台詞を吐く。
「もうちょっと、わかりやすく言ってくれる気はないのか?」
「んー…あのね、志郎」
机に肘をつき、顎を乗せ、小首を傾げる。さらりと流れたセミロングの髪をそのままに、きれいな弧を唇に描かせて、俺を見つめる。
「スペインではね、巡礼者が通った道を『サンティアゴの道』と言うの。サンティアゴ、つまりキリスト十二使徒の一人、ヤコブはスペインの守護人で、巡礼者の目指す先がそこ、と言う訳。……きっとあなたは、周一郎にとってのサンティアゴなのね」
「おい!」
俺は悲鳴を上げた。
「それがわかりやすい言い方かよ!」
「仕方ないわね」
お由宇が溜息をつく。
「つまりね、あなたって、結局、周一郎のことに首を突っ込むわけでしょ。それで何かいいことがある訳?」
「いいこと…と言うより、どっちかっつーと災難の方が多い気も…」
「それじゃあ、もう周一郎に関わらない?」
お由宇のことばに、数日前のことがふいに思い浮かんだ。
「あれ?」
本屋から帰って机の上にポートレートと読みかけの本がないのに気づく。
「あいつが持ってったのかな」
とりあえず、周一郎の部屋を訪ねる。ノックに応じて返答があり、書斎に入った俺は、元のところに自分の能天気な笑い顔が飾られているのにうんざりして、寝室との境のドアを開けた。射し込む陽の中、周一郎はしっかり読みかけの本の続きを読んでやがった。
「あのなあ」
「何ですか?」
「黙って持ってくなよ」
「僕がもともと借りていた本です」
「にゃあ」
そーだそーだ、と主人の横になっているベッドの足元に丸くなっていたルトが鳴く。
「そりゃあそうだが……あのポートレートぐらい、外したっていいだろ?」
「どうして?」
「どうしてって、ああ言う顔はもう一つ気に入らん」
「じゃあ」
パタリと本を閉じ、周一郎はこちらを見つめる。
「撮り直しますか?」
「あ、あのな……そーゆー問題じゃない……んだが……」
俺はしばらく黙り込んで、周一郎がポートレートを外そうとは露ほども考えていないらしいのを理解した。
「…まあ……いいか」
「滝さん?」
「わかった。いいよ別に」
「そうですか」
ほっとしたように笑った周一郎は、次の瞬間、そういう自分が心底嫌になったと言いたげに、不愉快そうに口をつぐみ、冷たく言い放った。
「では、さっさと出て行ってもらえますか。読書を続けたいので」
それでも、俺が部屋を出て行く寸前、なぜかひどく優しい目で見送っていた気がした……。
「だめ、だろうなあ」
「え?」
コーヒーのカップを両手で包む。
「結局、俺は手を出しちまうよなあ…アホだとは思うけど」
どんな得があるわけでもないのにな。
「あなたのそういうところって」
「ん」
コーヒーを含む。
「とっても好きよ」
「ごふっ!!」
喉に入ったコーヒーが急に針路修正して気管に飛び込み、目一杯むせた
「こっ…ごほっ! ごほんっ…らっ、お由っ……ごほごほん! 一体…ごほっほっ…何を……ごほっ!!」
「それでね」
咳き込んでいる俺を放って立ち上がり、くるりと背中を向けながら、
「貸してるお金を返してくれたら、もっと好きなんだけど」
「お由宇ーっ!!」
俺は咳の合間に一声、必死に喚いた。
終わり
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