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第1話 出戻り姫と腹黒王
1.出戻り姫(2)
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穏やかな日差しが降り注いでいる。咲き始めた花々も虫を呼びたいのだろう、香りが甘くなってきたようだ。
カースウェルの城の中では、2人の男が押し問答を続けている。
「レダン王」
「うん」
「本気ですか」
「うん」
「本気で本気ですか」
「本気で本気だよ」
「………考え直しませんか」
レダンは普段の無表情をかなぐり捨てて眉を寄せ、嫁いでくるハイオルト王国シャルン王女の肖像画を眺めているガストに苦笑した。
「何もこんなのを選ばなくても」
「おいおい、ひどいよ、それは」
ガストの手から肖像画を受け取る。日差しが眩しくて、少し体を傾けた。
長椅子に寝そべるのは行儀が悪いと怒られるが、元々野育ちだ、品格などないのはわかっているから気にしていない。
「なぜ金髪に金細工を合わせるんですかね」
「ふむ」
「リボンを編み込めば、それなりに癖っ毛も落ち着くでしょうに」
「なるほどな」
「ゴテゴテ飾りが溢れたドレスの趣味もひどい」
「ふむ」
「笑ってるつもりですかね、大口開けて目を見開いて。よくこんなのを描かせましたね」
「それだよ、不思議だろ」
不審そうなガストにレダンは微笑む。
「描いてる間中、こんなに口も目も開けたままだったのかな。だとしたら、大した忍耐力だ」
「……そういうところを褒めますか」
唸りかけたガストが眉を寄せる。
「……これは意図的なものだと?」
レダンは薄笑いを返す。
「こういう顔を求婚者に送りつけるあたりが胡散臭いだろ?」
この肖像画を見て、是非にと求婚しようという男など、さて何人居ることやら。
「…ここに1人居るか」
「…実物はもっと美人ですかね」
「いや、そうでもないらしい。ほぼ、この通りらしいぞ」
「あなたはまた」
おかしなものばかりに興味を抱く。
うんざりした声音にレダンはくすくす笑った。
「いくらミディルン鉱石の名産地とは言え、あなたなら姫はよりどりみどりだ。カースウェルは豊かな土地だし、輿入れしたい姫もいっぱい居るのに」
ガストは改めてしげしげとレダンを眺める。
見事な黒髪、深い藍色の瞳、剣技は豪快、人柄は誠実。
何も4回も破談されて出戻ってくる姫なんかを選ばなくとも。
「破談のたびに寝込んで体調を崩し、求婚した国にそれとなく見舞金をせびってくるような国の王女ですし」
「子どもはいないそうだよ?」
「そんなことを言ってるんじゃありません」
ガストが眉を吊り上げた。
「いくらカースウェルがミディルン鉱石が必要だからと言って、そのためにこんな姫と結婚する必要はないと言いたいんです」
これまでやってきた通り、あなたの才覚と私の働きで、新たな資材なり方法なりを考えればいいじゃないですか。
「お前の心配はわかった。けど、いずれカースウェルはミディルン鉱石が必要になる。ダフラムの仕掛ける小競り合いを凌ぐためにも武器は居るし、武器を作るにはミディルン鉱石が要る。素早い発火力と熱を持続させる力は他のもので代用できない。ダフラムは俺たちがミディルン鉱石の代用品を見つけるまで待ってくれないと思うぞ?」
「……」
「まあ見てみようじゃないか、破談を繰り返される姫というのがどんなものか。話のタネぐらいにはなるだろう?」
「……ダフラムも申し入れたそうですよ」
「ふうん? この姫を欲しいと、か」
なら、ますます、先に味見したいよなあ。
にやりと笑うレダンにガストは大きく深く溜息をつく。
「あなたのその腹黒いところを、一度は周囲に見せたらどうです」
「武器は隠しておくものだ、そうだろ?」
ガストは溜め息を重ねて返答しなかった。
カースウェルの城の中では、2人の男が押し問答を続けている。
「レダン王」
「うん」
「本気ですか」
「うん」
「本気で本気ですか」
「本気で本気だよ」
「………考え直しませんか」
レダンは普段の無表情をかなぐり捨てて眉を寄せ、嫁いでくるハイオルト王国シャルン王女の肖像画を眺めているガストに苦笑した。
「何もこんなのを選ばなくても」
「おいおい、ひどいよ、それは」
ガストの手から肖像画を受け取る。日差しが眩しくて、少し体を傾けた。
長椅子に寝そべるのは行儀が悪いと怒られるが、元々野育ちだ、品格などないのはわかっているから気にしていない。
「なぜ金髪に金細工を合わせるんですかね」
「ふむ」
「リボンを編み込めば、それなりに癖っ毛も落ち着くでしょうに」
「なるほどな」
「ゴテゴテ飾りが溢れたドレスの趣味もひどい」
「ふむ」
「笑ってるつもりですかね、大口開けて目を見開いて。よくこんなのを描かせましたね」
「それだよ、不思議だろ」
不審そうなガストにレダンは微笑む。
「描いてる間中、こんなに口も目も開けたままだったのかな。だとしたら、大した忍耐力だ」
「……そういうところを褒めますか」
唸りかけたガストが眉を寄せる。
「……これは意図的なものだと?」
レダンは薄笑いを返す。
「こういう顔を求婚者に送りつけるあたりが胡散臭いだろ?」
この肖像画を見て、是非にと求婚しようという男など、さて何人居ることやら。
「…ここに1人居るか」
「…実物はもっと美人ですかね」
「いや、そうでもないらしい。ほぼ、この通りらしいぞ」
「あなたはまた」
おかしなものばかりに興味を抱く。
うんざりした声音にレダンはくすくす笑った。
「いくらミディルン鉱石の名産地とは言え、あなたなら姫はよりどりみどりだ。カースウェルは豊かな土地だし、輿入れしたい姫もいっぱい居るのに」
ガストは改めてしげしげとレダンを眺める。
見事な黒髪、深い藍色の瞳、剣技は豪快、人柄は誠実。
何も4回も破談されて出戻ってくる姫なんかを選ばなくとも。
「破談のたびに寝込んで体調を崩し、求婚した国にそれとなく見舞金をせびってくるような国の王女ですし」
「子どもはいないそうだよ?」
「そんなことを言ってるんじゃありません」
ガストが眉を吊り上げた。
「いくらカースウェルがミディルン鉱石が必要だからと言って、そのためにこんな姫と結婚する必要はないと言いたいんです」
これまでやってきた通り、あなたの才覚と私の働きで、新たな資材なり方法なりを考えればいいじゃないですか。
「お前の心配はわかった。けど、いずれカースウェルはミディルン鉱石が必要になる。ダフラムの仕掛ける小競り合いを凌ぐためにも武器は居るし、武器を作るにはミディルン鉱石が要る。素早い発火力と熱を持続させる力は他のもので代用できない。ダフラムは俺たちがミディルン鉱石の代用品を見つけるまで待ってくれないと思うぞ?」
「……」
「まあ見てみようじゃないか、破談を繰り返される姫というのがどんなものか。話のタネぐらいにはなるだろう?」
「……ダフラムも申し入れたそうですよ」
「ふうん? この姫を欲しいと、か」
なら、ますます、先に味見したいよなあ。
にやりと笑うレダンにガストは大きく深く溜息をつく。
「あなたのその腹黒いところを、一度は周囲に見せたらどうです」
「武器は隠しておくものだ、そうだろ?」
ガストは溜め息を重ねて返答しなかった。
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*荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください
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