『ドラゴン・イン・ナ・シティ』

segakiyui

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幕間 1『キス・キス・キス』

キス・キス・キス(2)

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 引っ越した夜に舜は激しく抱かれた。
 疲れもあったのだろうと思う。緊張からの解放も。
 禄は部屋のシャワーを使うのも初めてで、家庭用の風呂も初めてで。入り方から教えている間に、怪しくなった体に気づかれて暴かれた。
 ああ、ああ、ああ。
 甘い声しかあげられなくて、震えながら吐き出してもまだ許されなくて。男だから、駆け上がる瞬間も十分に知られていて、なのに微妙に繰り返し外されて。視界が眩んだのは浴槽に溜められた湯のせいばかりじゃない。吐き出したものが足元を濡らすほど滴り落ちていたからだけでもない。感覚が禄の指のしなやかさと入り込んでくるものの硬さに絞られて、立っていることができなくなると、座り込まされてなお深く抉られて、多分初めて、意志を失った。
 こうしたいとかああしたいとか、こうされたいとかああされたいとか。
 考えられない。
 押されると鳴く人形のように、握られると吹き出す水鉄砲のように、禄の動きにただ応じる。
 壁についた手を押さえつけられて、腰を強く掴まれて、いつベッドに移ったのか、繋がっている間に運ばれたのか、それさえもわからなくて。
 両手を背後に捻り上げられ、両足を広く開かされ、枕に額を押し付けられ、深く強く揺さぶられて。
 泣き叫ぶ。
 うわ、ああ、そこ、ひい、なに、やあ、いく、いく、いく。
 気持ちが良かった。
 声の限り、出るままに、押し出されるままに、叫び続けて空っぽになる。
 自分なんてどこにも無くなって、体も無くなって、感覚だけの存在になって。
 くは、はう、うあ、はあ、あお、おあ、ああ。
 吐き出せなくなってからが凄かった。駆け上がるのに終わりがなくて、耳鳴りがして、何も見えなくて、引き抜かれても体が勝手に前後に揺れてて、体をひっくり返されて、口を開かされて、まだ熱いままのものを深くゆっくり押し込まれて、涙が溢れて涎が顎に伝った。頭を掴まれて動かされる、口の中を禄のものが満たして犯す。動かない体に反して舌が巻きついて、吸い付いてしゃぶって、小さく禄が呻くのを感じて、体が痙攣して仰け反った。
 噛み切るつもりだったのかも知れない。それでも禄はなおも押し込んで来て。
 ん、お……っっ…。
 さすがに色々限界だったのだろう、そこで記憶が一旦途切れている。
「……」
 明け方近く、隣で眠る禄の横顔を眺めながら、舜は顔が熱くなる。
 恥ずかしい。
 痴態っていうんだよね、ああいうの、きっと。
 ぼんやりしている意識の遠くで、禄がそっと舜を抱き上げて風呂場に連れて行ってくれ、顔も体も、口も股間も後ろの方も、丁寧に丁寧に洗ってくれていたのを覚えている。その優しい指先を、まだ深くに強請ったような気もする。
 これ以上したら、壊れちゃうよ、舜。
 優しい低い声。
 壊して。
 呟いた気がする。
 壊して。全部壊してくれていいから。どんな形でも、禄は俺が好きだよね。だから壊して。何してもいいから。
 違うよ。
 静かな声。
 ぼくは舜が好きなんだよ。別のものになっちゃうなら、ぼくは困る。
 ひどいよ、そんなの。もう俺は壊れてるかも知れない、こんなに抱かれたら、元に戻れない。
 そう言いながら、ほっとしていたけれど。
 …ごめん。
 もう一度入って来たものは、熱くて強くて容赦無く奥に届いた。
 どろり。
 溶けたのは、体だろうか、心だろうか。それとも舜そのものか。
 一旦溶けると、前より早く溶けるんだね。
 魔性を帯びた舜の囁き。
 こんなにぐずぐずになってるよ。
 包まれて扱かれて握られて揉み込まれて。
 ああああ。
 視界のそれは熟れた果物のように禄の指の間で弄ばれている。
 こんなに柔らかかったっけ、こんなに形がなかったっけ、こんなに赤く火照っていたっけ、それともこれは、もう俺のものではなかったんだっけ。
 禄?
 なに?
 俺の体、おかしいよ。
 涙を流しながら不思議がる。
 どうして?
 禄の指しかわからない。
 じゃあ、これは。
 打ち込まれる熱の塊。
 体が分解されて、熱に切り分けられたバターみたいで、溶けて、崩れて。
 禄、怖いよ、俺、消える。
 大丈夫、ぼくがいるよ。
 伸ばした指を掴まれて、抱き込まれて、その肉の籠に安堵して、目を閉じて、また眠った。
「……」
 どうしよう。
 舜はなおも赤くなる。
「俺って色情狂だったのかな」
「…違うよ」
「っっ」
 ふいに答えが返って驚いた。薄明かりの中、録が静かに目を開く。薄く微笑んで、
「ぼくが舜を壊しただけ」
「違う」
 舜も笑み返した。
「禄は俺を愛しただけ」
 きっと愛は。
「人を壊してしまうんだ」
 そうして全く別のものに作り変える。
「前よりずっと、いいものに」
 舜は囁いて、禄の少し開いた唇を啄ばみ、甘さに酔った。
「変わるのが嫌なら、愛さなければいい」
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