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幕間 1『キス・キス・キス』
キス・キス・キス(1)
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「禄!」
呼ばれて振り返る。
「コーヒー入ったよ」
「…ありがとう」
ベランダで伸びをしていたのを止めて、ゆっくりと部屋に戻る。
「今日1日かかっちゃいそうだね」
引っ越したマンションの部屋、周囲に積み上げた段ボール箱に、舜が目を細めて笑った。とりあえず運び込んで、一番に梱包を解いたテーブルの上に、カップを2つ置いてくれる。
「1日で済むかな」
見回しながら眼鏡を外し、禄は溜息混じりにテーブルに置いた。
これほどの家具や道具など、今まで持ったことがない。陽光が差し込む窓に揺らめくカーテンも明るい緑色、その向こうのベランダに『ひもちさん』を隅に置いたが、まだまだ十分スペースがある。さっき覗いた禄用の私室も広々として、ベッドが入っていなければ閑散としていたはずだ。大半は舜のものだろうと思っていたら、自宅にあった不用品だからと小さな書棚を譲られた。ベッドと反対側に置いたが、書棚の前の開き戸は前に倒れて机になる構造で、古いものだが気に入った。『竜は街に居る』の脚本や資料を並べて見て、新しいことが始まったんだと否応無しに実感した。
「ゆっくり片付けよう」
買って来たからね、と舜がテーブルにコロッケパンとカツサンドを置く。
「ついでにこれも」
野菜サラダとポテトサラダ。
「食べて一息ついたら、段ボールの箱を開けて……あ、先に部屋に荷物を分けて行ったらいいかな」
嬉しそうに予定を話すから、思わずそっと覗き込む。
「舜?」
「…うん」
なに、と聞かずに舜は唇を合わせてくれた。
「今夜から一緒だね」
「藍那ちゃんが微妙な顔をしてたけど」
「ああ…お兄ちゃんが嫁に行くとは思わなかったわーってやつね」
「もらっちゃうと寂しいだろうから、と…んっ」
時々家に帰ったら、といいかけた唇を舜が口で塞いだ。
「寂しいのは禄だろ」
「……」
「ってか、寂しいのは俺」
「……舜」
に、と可愛く笑うから、思わず頭を引き寄せて貪ると、ん、ん、ん、と小さく鼻を鳴らした。
「何?」
「パン食べよ? お腹減った」
「了解」
笑いながら体を起こす。名残惜しいが、確かに午後からすることが一杯だ。
「『あいおい』はいつまでお休み?」
「2日もらった。『三日月書店』は?」
「今休み取るなら2度と来るなって言われた」
「え?」
「…嘘」
ぺろ、と舌を出す舜に素早く口を寄せて吸い出す。
「…ん、ふっ」
とんとん、と舜が肩を叩いて来るから目を開ける。日差しに煌めく淡い色の瞳が綺麗で見惚れる。
「…キリがないよ、禄」
「いつまでお休みなの」
「3日間。その後たぶん10日ほど休みない。公にはしないけどね」
嬉しそうに笑う舜は、最近『三日月書店』の1コーナーのディスプレイを任されたらしい。今まで人の顔が覚えられなくて、間に合わせの仕事しかさせてもらえなかったが、『人の特徴』で見分けられるようになって、いくつか新しい仕事もできるようになった。その結果の1つだと言う。
「1番好きで得意なのは役者だけど、本屋も嫌いじゃないな、俺」
「良かったね」
「うん」
にかっ、とまた無邪気に笑う舜が可愛くて大事で、禄は微笑みながら体を離す。
「お昼食べようか」
「はいはいはーい、俺コロッケパンがいい、いただきまーす!」
「カツサンド決定か」
かぶりついた舜がもごもご言っているがよくわからない。わからないまま、禄も笑い出しながらパンを大きく噛み千切った。
呼ばれて振り返る。
「コーヒー入ったよ」
「…ありがとう」
ベランダで伸びをしていたのを止めて、ゆっくりと部屋に戻る。
「今日1日かかっちゃいそうだね」
引っ越したマンションの部屋、周囲に積み上げた段ボール箱に、舜が目を細めて笑った。とりあえず運び込んで、一番に梱包を解いたテーブルの上に、カップを2つ置いてくれる。
「1日で済むかな」
見回しながら眼鏡を外し、禄は溜息混じりにテーブルに置いた。
これほどの家具や道具など、今まで持ったことがない。陽光が差し込む窓に揺らめくカーテンも明るい緑色、その向こうのベランダに『ひもちさん』を隅に置いたが、まだまだ十分スペースがある。さっき覗いた禄用の私室も広々として、ベッドが入っていなければ閑散としていたはずだ。大半は舜のものだろうと思っていたら、自宅にあった不用品だからと小さな書棚を譲られた。ベッドと反対側に置いたが、書棚の前の開き戸は前に倒れて机になる構造で、古いものだが気に入った。『竜は街に居る』の脚本や資料を並べて見て、新しいことが始まったんだと否応無しに実感した。
「ゆっくり片付けよう」
買って来たからね、と舜がテーブルにコロッケパンとカツサンドを置く。
「ついでにこれも」
野菜サラダとポテトサラダ。
「食べて一息ついたら、段ボールの箱を開けて……あ、先に部屋に荷物を分けて行ったらいいかな」
嬉しそうに予定を話すから、思わずそっと覗き込む。
「舜?」
「…うん」
なに、と聞かずに舜は唇を合わせてくれた。
「今夜から一緒だね」
「藍那ちゃんが微妙な顔をしてたけど」
「ああ…お兄ちゃんが嫁に行くとは思わなかったわーってやつね」
「もらっちゃうと寂しいだろうから、と…んっ」
時々家に帰ったら、といいかけた唇を舜が口で塞いだ。
「寂しいのは禄だろ」
「……」
「ってか、寂しいのは俺」
「……舜」
に、と可愛く笑うから、思わず頭を引き寄せて貪ると、ん、ん、ん、と小さく鼻を鳴らした。
「何?」
「パン食べよ? お腹減った」
「了解」
笑いながら体を起こす。名残惜しいが、確かに午後からすることが一杯だ。
「『あいおい』はいつまでお休み?」
「2日もらった。『三日月書店』は?」
「今休み取るなら2度と来るなって言われた」
「え?」
「…嘘」
ぺろ、と舌を出す舜に素早く口を寄せて吸い出す。
「…ん、ふっ」
とんとん、と舜が肩を叩いて来るから目を開ける。日差しに煌めく淡い色の瞳が綺麗で見惚れる。
「…キリがないよ、禄」
「いつまでお休みなの」
「3日間。その後たぶん10日ほど休みない。公にはしないけどね」
嬉しそうに笑う舜は、最近『三日月書店』の1コーナーのディスプレイを任されたらしい。今まで人の顔が覚えられなくて、間に合わせの仕事しかさせてもらえなかったが、『人の特徴』で見分けられるようになって、いくつか新しい仕事もできるようになった。その結果の1つだと言う。
「1番好きで得意なのは役者だけど、本屋も嫌いじゃないな、俺」
「良かったね」
「うん」
にかっ、とまた無邪気に笑う舜が可愛くて大事で、禄は微笑みながら体を離す。
「お昼食べようか」
「はいはいはーい、俺コロッケパンがいい、いただきまーす!」
「カツサンド決定か」
かぶりついた舜がもごもご言っているがよくわからない。わからないまま、禄も笑い出しながらパンを大きく噛み千切った。
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