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1.運命(さだめ)のもとに(4)
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「え…」
ユーノは固まった。
「『聖なる輪』(リーソン)が…?」
そんなことは聞いていなかった。ひょっとして、夢の中で上げた悲鳴がアシャに届いてしまったのだろうか。それで、こんなに唐突に、アシャはここへ姿を現したのだろうか。
アシャは一瞬ためらったが、
「『氷の双宮』と繋がっているんだ」
「ああ、そう、なんだ」
なるほど、これが『正当後継者』に与えられるものならば、そう言うこともあるだろう。とすると、アシャが来たのは偶然で、ユーノの声が届いてしまったわけではないのだろう。
「いいな?」
「…」
「わかったな?」
「……うん」
ユーノは執拗に確認するアシャに、こっくりと頷いて見せた。
朝日がアシャの金褐色の髪を輝かせている。紫の瞳が黄金を帯び、妖しいほどに煌めいている。その全てを見つめて、一つ一つ心の中に刻みつけた。
「…じゃ、行くね」
「ああ」
アシャを部屋に残して、ユーノは歩き出した。背中に見送ってくる視線を感じる。心が泡立って蕩けそうになる。廊下を通り抜け、階段を降りて行きながら、耳の奥にアシャの声がこだましている。「俺を、呼べよ」「何かあったら、俺を呼べ」俺を……俺を………俺を。
『聖なる輪』(リーソン)に指を当てる。いつもの、指先から何かが流れ出して吸い込まれ、別の何かが輪から指先に戻ってくるような、見えないものが循環して行くような感覚があった。
とん、と最後の一段を下りきり、廊下を歩き、戸口に立つ。
開け放たれた扉、登りきった朝日は真正面からユーノを照らす。
(呼ばない)
胸で断言した。
「ユーノ!」
リヒャルティが駆け寄ってきた。その背後に『金羽根』の面々、平原竜(タロ)に身を持たせかけた数人の野戦部隊(シーガリオン)が体を起こす。
(あなたの名前は呼ばない)
一人一人を見ながら、もう一度繰り返す。
(ううん、他の誰も……呼ばない)
「おはよう、リヒャルティ」
「遅いぜ! 待ちくたびれちまった」
「悪かった」
くるりと全体を見回す。男達の目には猛々しい喜びが光を灯している。
(それが私の運命だというなら、ただ、生き抜くまでのこと)
ヒストが苛立たしげに首を振る。合図を待ち構えている顔顔に、にやりと笑って見せる。
「揃っているようだね」
「おおおおーっ!!」
どよめき、馬具、剣の鳴る音。
戦いに赴く人間達の闇を、朝風が吹き抜けていく。
ユーノは固まった。
「『聖なる輪』(リーソン)が…?」
そんなことは聞いていなかった。ひょっとして、夢の中で上げた悲鳴がアシャに届いてしまったのだろうか。それで、こんなに唐突に、アシャはここへ姿を現したのだろうか。
アシャは一瞬ためらったが、
「『氷の双宮』と繋がっているんだ」
「ああ、そう、なんだ」
なるほど、これが『正当後継者』に与えられるものならば、そう言うこともあるだろう。とすると、アシャが来たのは偶然で、ユーノの声が届いてしまったわけではないのだろう。
「いいな?」
「…」
「わかったな?」
「……うん」
ユーノは執拗に確認するアシャに、こっくりと頷いて見せた。
朝日がアシャの金褐色の髪を輝かせている。紫の瞳が黄金を帯び、妖しいほどに煌めいている。その全てを見つめて、一つ一つ心の中に刻みつけた。
「…じゃ、行くね」
「ああ」
アシャを部屋に残して、ユーノは歩き出した。背中に見送ってくる視線を感じる。心が泡立って蕩けそうになる。廊下を通り抜け、階段を降りて行きながら、耳の奥にアシャの声がこだましている。「俺を、呼べよ」「何かあったら、俺を呼べ」俺を……俺を………俺を。
『聖なる輪』(リーソン)に指を当てる。いつもの、指先から何かが流れ出して吸い込まれ、別の何かが輪から指先に戻ってくるような、見えないものが循環して行くような感覚があった。
とん、と最後の一段を下りきり、廊下を歩き、戸口に立つ。
開け放たれた扉、登りきった朝日は真正面からユーノを照らす。
(呼ばない)
胸で断言した。
「ユーノ!」
リヒャルティが駆け寄ってきた。その背後に『金羽根』の面々、平原竜(タロ)に身を持たせかけた数人の野戦部隊(シーガリオン)が体を起こす。
(あなたの名前は呼ばない)
一人一人を見ながら、もう一度繰り返す。
(ううん、他の誰も……呼ばない)
「おはよう、リヒャルティ」
「遅いぜ! 待ちくたびれちまった」
「悪かった」
くるりと全体を見回す。男達の目には猛々しい喜びが光を灯している。
(それが私の運命だというなら、ただ、生き抜くまでのこと)
ヒストが苛立たしげに首を振る。合図を待ち構えている顔顔に、にやりと笑って見せる。
「揃っているようだね」
「おおおおーっ!!」
どよめき、馬具、剣の鳴る音。
戦いに赴く人間達の闇を、朝風が吹き抜けていく。
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