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1.運命(さだめ)のもとに(9)
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シィグトの部屋の扉を開け放つ。中に居た数人の親衛隊が、驚いたように振り返る。
「何を…しているのです」
「は…いや、シィグトの見舞いを」
「医術師は居ないのですか?」
「は、はい、ここに」
「そう」
セアラは静かに親衛隊の顔を見回した。にっこりと満面で、けれど皮肉を込めて微笑んで見せる。
「聞きたいのですが」
「何でしょう、セアラ様」
「今何者かが皇宮に攻め入った時、お父様達を守ってくれるのは誰なのですか?」
「え…?」
「…あ…」
ぽかんとしていた隊士達の間に動揺が走る。互いに顔を見合わせ、うろたえたように1人2人と部屋を出る。
「待ちなさい」
「は」
「ゼラン無き後、誰が隊長を務めていますか」
「え、いや、その」
「決めてもいない、と言うわけですね」
「は、はい」
これは酷すぎる。子どもの親衛隊ごっこの方がまだましなのではないか。
こぼれそうになった溜息を噛み殺して続ける。
「ならば、私が隊長を務めます」
「は?」
怠慢さを指摘され、消え入りそうな声で答えていた隊士が呆気にとられた表情になる。
「あ、あの」
「何か?」
「セアラ様が、ですか?」
「不服ですか」
「不服というより……セアラ様は姫君であらせますし…」
女子供に務まる役職ではないと苦笑いしかけた相手に、冷ややかに言い捨てる。
「女子供でも、負傷した人間を見舞うしか才のない男よりはましでしょう」
「っ」「セアラ様っ!」
さすがに聞き捨てならないと血気に逸った若い男が抗議しようとする。その自分より10歳以上歳上の人間を、セアラは不敵とも言える傲慢さで押さえつけた。
「お黙りなさい!」
息を呑む相手に厳しく続ける。
「私が不服なら辺境の守りについて答えなさい。守りの配置は? 役目の分担は? 北西のカザドの動きは? レクスファとの国境協定は?」
「……」
ただの1つも答えられない相手をもう振り向きもせず、セアラはベッドの上のシィグトに向き直った。不満そうな気配を残し退室していく親衛隊を気持ちから追い出す。医術師よりようやく小康状態になったと説明を聞き、その医術師も人払いする。
ぱたりと閉まった扉に、そっと優しくシィグトを覗き込んだ。
左眼は刀傷を受け眼球は崩れており、恐らくは失明するだろうとのこと、当てられている包帯が所々朱に染まっているのが痛々しい。
気配に気づいたのか、ふ、とシィグトが右眼を開いた。
「セアラ様…」
「馬鹿ね、どうして1人で行ったの」
「…つい……油断していたんです……が」
「が?」
「えらく……彼らに厳しく……当たりましたね……まるで……魔姫(パイルーヤ)だ…」
掠れた声で呟く相手に、ほっとしつつも詰る。
「だから、あんたは子どもだって言うのよ、シィグト」
声を低めて囁く。
「女の子の気持ちなんか、全くわかっていないんだから。誰だって『愛する人』を傷つけられたら魔にも化け物にも……なるわ…」
「セア……」
驚きに大きく開いた眼が痛んだのだろう、軽く顔を歪めたシィグトは、降りてきたセアラの唇にゆっくりと目を閉じ受け止めた。
「何を…しているのです」
「は…いや、シィグトの見舞いを」
「医術師は居ないのですか?」
「は、はい、ここに」
「そう」
セアラは静かに親衛隊の顔を見回した。にっこりと満面で、けれど皮肉を込めて微笑んで見せる。
「聞きたいのですが」
「何でしょう、セアラ様」
「今何者かが皇宮に攻め入った時、お父様達を守ってくれるのは誰なのですか?」
「え…?」
「…あ…」
ぽかんとしていた隊士達の間に動揺が走る。互いに顔を見合わせ、うろたえたように1人2人と部屋を出る。
「待ちなさい」
「は」
「ゼラン無き後、誰が隊長を務めていますか」
「え、いや、その」
「決めてもいない、と言うわけですね」
「は、はい」
これは酷すぎる。子どもの親衛隊ごっこの方がまだましなのではないか。
こぼれそうになった溜息を噛み殺して続ける。
「ならば、私が隊長を務めます」
「は?」
怠慢さを指摘され、消え入りそうな声で答えていた隊士が呆気にとられた表情になる。
「あ、あの」
「何か?」
「セアラ様が、ですか?」
「不服ですか」
「不服というより……セアラ様は姫君であらせますし…」
女子供に務まる役職ではないと苦笑いしかけた相手に、冷ややかに言い捨てる。
「女子供でも、負傷した人間を見舞うしか才のない男よりはましでしょう」
「っ」「セアラ様っ!」
さすがに聞き捨てならないと血気に逸った若い男が抗議しようとする。その自分より10歳以上歳上の人間を、セアラは不敵とも言える傲慢さで押さえつけた。
「お黙りなさい!」
息を呑む相手に厳しく続ける。
「私が不服なら辺境の守りについて答えなさい。守りの配置は? 役目の分担は? 北西のカザドの動きは? レクスファとの国境協定は?」
「……」
ただの1つも答えられない相手をもう振り向きもせず、セアラはベッドの上のシィグトに向き直った。不満そうな気配を残し退室していく親衛隊を気持ちから追い出す。医術師よりようやく小康状態になったと説明を聞き、その医術師も人払いする。
ぱたりと閉まった扉に、そっと優しくシィグトを覗き込んだ。
左眼は刀傷を受け眼球は崩れており、恐らくは失明するだろうとのこと、当てられている包帯が所々朱に染まっているのが痛々しい。
気配に気づいたのか、ふ、とシィグトが右眼を開いた。
「セアラ様…」
「馬鹿ね、どうして1人で行ったの」
「…つい……油断していたんです……が」
「が?」
「えらく……彼らに厳しく……当たりましたね……まるで……魔姫(パイルーヤ)だ…」
掠れた声で呟く相手に、ほっとしつつも詰る。
「だから、あんたは子どもだって言うのよ、シィグト」
声を低めて囁く。
「女の子の気持ちなんか、全くわかっていないんだから。誰だって『愛する人』を傷つけられたら魔にも化け物にも……なるわ…」
「セア……」
驚きに大きく開いた眼が痛んだのだろう、軽く顔を歪めたシィグトは、降りてきたセアラの唇にゆっくりと目を閉じ受け止めた。
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