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1.運命(さだめ)のもとに(11)
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ボクが行くよ。
あの夜、灯皿の明かりに片頬を浮かび上がらせたユーノは言い切った。たじろがぬ黒の瞳、不敵なまでの笑みを押し上げた顔が淡く紅潮していた。
『ボクなら「金羽根」とも野戦部隊(シーガリオン)とも「繋ぎ」がつく』
確かに事実だった。
いくらイルファが名のある戦士だと主張したところで、野戦部隊(シーガリオン)はラズーンにその隊ありと知られた精鋭、おいそれと自分達の指揮官に他所者を認めるわけもない。少女ながら額帯(ネクト)を受け、『星の剣士』(ニスフェル)の名を花冠とするユーノだからこそ、シートス以外の者に率いられることに野戦部隊(シーガリオン)が納得した。
それに、とアシャはユーノに聞こえないところでイルファに囁いた。
『ユーノはレアナに自分の修羅場を見せたくないんだろう』
今ではイルファも、ユーノがひたすらレアナに自分の戦いを隠して来たことを知っている。理由ははっきりわからなかったが、ただ一つ、肉親に己が血糊に塗れて人を屠るところを見られたくないのだろうとは思った。イルファだって、できることなら幼いレスファートに人の生の脆さなど見せたくはない。
「ク、クェア!」
「ん……わかったよ、報告に行けってんだろ」
サマルカンドの焦れたような叫びに、イルファは重い足取りで向きを変えた。
それを見届けたように、サマルカンドが翼を羽ばたかせ、再び空へと舞い上がる。通信筒はまだ数個、脚についていた。これから四大公の残りの分領地を巡り、アシャの指示を伝えようと言うのだろう。
「畜生、こんなことなら、さっさとおっぱじまってくれた方が…」
苦々しくぼやいたイルファは、ふと聞こえて来た声に立ち止まった。高く澄んだ調べ、細い声が煌めくような響きを伴って空を流れて行く。声の出所らしい部屋を覗き込んで、思わず立ち止まった。
「…愛しい人よ
あなたのために私は祈る
雨が優しいことを
陽射しが柔らかなことを
風の一吹きでその命が消えないようにと…」
「レス…」
レアナの私室だった。その中央、窓から入る陽を受けて、プラチナブロンドを輝かせながら、レスファートが歌っている。その横にレアナ、目を閉じ指を組み、じっと何かへの想いを凝らして。
「……愛しい人よ
あなたのために私は祈る
天があなたを見守るように
大地があなたを支えるように
そして私のこの声が、一時甘い安らぎとなることを…」
陽は惜しみなく降り注いで、レスファートの髪を光らせた。きらきら、きらきら、風に嬲られた髪が光の反射を部屋の床に壁に投げかける。そしてもう一つ、レスファートの滑らかな頬を伝っている涙の反射も。
「…命は終わる
それは避けられない
だから私は祈る
その時、私があなたの憩いともなるようにと
運命は紡がれる
それは避けられない
だから私は願う
その時、私はあなたに巡り逢えるように、と……
愛しい人よ
あなたの吐息、笑い声、優しく私を撫でた指先
何一つ、私の心から去りはしない
だから私は一人で祈る
その時私を連れてゆけ
その時、私を……連れてゆけ……と……」
あの夜、灯皿の明かりに片頬を浮かび上がらせたユーノは言い切った。たじろがぬ黒の瞳、不敵なまでの笑みを押し上げた顔が淡く紅潮していた。
『ボクなら「金羽根」とも野戦部隊(シーガリオン)とも「繋ぎ」がつく』
確かに事実だった。
いくらイルファが名のある戦士だと主張したところで、野戦部隊(シーガリオン)はラズーンにその隊ありと知られた精鋭、おいそれと自分達の指揮官に他所者を認めるわけもない。少女ながら額帯(ネクト)を受け、『星の剣士』(ニスフェル)の名を花冠とするユーノだからこそ、シートス以外の者に率いられることに野戦部隊(シーガリオン)が納得した。
それに、とアシャはユーノに聞こえないところでイルファに囁いた。
『ユーノはレアナに自分の修羅場を見せたくないんだろう』
今ではイルファも、ユーノがひたすらレアナに自分の戦いを隠して来たことを知っている。理由ははっきりわからなかったが、ただ一つ、肉親に己が血糊に塗れて人を屠るところを見られたくないのだろうとは思った。イルファだって、できることなら幼いレスファートに人の生の脆さなど見せたくはない。
「ク、クェア!」
「ん……わかったよ、報告に行けってんだろ」
サマルカンドの焦れたような叫びに、イルファは重い足取りで向きを変えた。
それを見届けたように、サマルカンドが翼を羽ばたかせ、再び空へと舞い上がる。通信筒はまだ数個、脚についていた。これから四大公の残りの分領地を巡り、アシャの指示を伝えようと言うのだろう。
「畜生、こんなことなら、さっさとおっぱじまってくれた方が…」
苦々しくぼやいたイルファは、ふと聞こえて来た声に立ち止まった。高く澄んだ調べ、細い声が煌めくような響きを伴って空を流れて行く。声の出所らしい部屋を覗き込んで、思わず立ち止まった。
「…愛しい人よ
あなたのために私は祈る
雨が優しいことを
陽射しが柔らかなことを
風の一吹きでその命が消えないようにと…」
「レス…」
レアナの私室だった。その中央、窓から入る陽を受けて、プラチナブロンドを輝かせながら、レスファートが歌っている。その横にレアナ、目を閉じ指を組み、じっと何かへの想いを凝らして。
「……愛しい人よ
あなたのために私は祈る
天があなたを見守るように
大地があなたを支えるように
そして私のこの声が、一時甘い安らぎとなることを…」
陽は惜しみなく降り注いで、レスファートの髪を光らせた。きらきら、きらきら、風に嬲られた髪が光の反射を部屋の床に壁に投げかける。そしてもう一つ、レスファートの滑らかな頬を伝っている涙の反射も。
「…命は終わる
それは避けられない
だから私は祈る
その時、私があなたの憩いともなるようにと
運命は紡がれる
それは避けられない
だから私は願う
その時、私はあなたに巡り逢えるように、と……
愛しい人よ
あなたの吐息、笑い声、優しく私を撫でた指先
何一つ、私の心から去りはしない
だから私は一人で祈る
その時私を連れてゆけ
その時、私を……連れてゆけ……と……」
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