『ラズーン』第六部

segakiyui

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1.運命(さだめ)のもとに(13)

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「レス、よく聞けよ」
「…」
 されるがままに、イルファの筋肉の盛り上がった肩に顔を伏せたレスファートは答えない。
「ユーノは必ず帰ってくる」
「…」
「そうとも。お前と約束したはずだろ、放っていかないって」
「…っく」
 しゃくり上げる声が応じる。
「ユーノは帰ってくる。お前との約束を果たすために。お前をもう一度抱きしめるために」
「…ほん…と……?」
「ああ」
 問いかけるレスファートに深く大きく頷いた。
「もちろんだ。『星の剣士』(ニスフェル)と呼ばれた奴だぞ? そこらの下っ端に殺られるタマかよ。それとも『お前のユーノ』はそんなに弱いのか?」
「ううん!」
 がばっと顔を上げたレスファートがきっぱりと首を振る。
「そうとも。他の誰があいつを見くびったとしても、俺達はそれをよくよおく、知ってるはずだろ?」
「…うん!」
 少し元気が出たのか、レスファートは何とか弱々しい笑みを返してきた。笑い返しながら、イルファの心は重くなる。旅立つ前の夜の、ユーノのことばを思い出したからだ。
『もし、万が一』
 淡々とした声音だった。
『もし、万が一、私が帰れなかったら、レスのこと、頼むね、イルファ。無事にレクスファまで連れ戻ってね』
 それから、おどけたように片目を瞑って見せながら、
『レスにはひどく恨まれるだろうけど……私への貸しにしておいて』
 ユーノは知っていた、この戦いがどれほど先の読めないものなのか。どれほど生き残る確率の少ないものなのか。
 けれどもそう言ったユーノの瞳に、不思議なことに翳りはなかった。自分の運命を、他ならぬ自分が選んだものとして全うしようとする、したたかなほど不敵な逞しさだけを輝かせて、イルファを見つめ返してきた。
『つくづくお前は男に生まれたほうがよかったな』
『そうだね』
 からかいにくすりと笑って伸びやかな背をただ向けた。
(そうとも)
 イルファはレスファートの温もりに思う。
(ユーノ、お前はこんな所で死んじまうようなヤワな奴じゃないよな?)
 細い背中は答えない。
(生きて戻れよ、俺はレスに恨まれるのは真っ平だ)
 それでも、イルファは胸の中で強く祈った。
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