『ラズーン』第六部

segakiyui

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2.灰色塔(ガルン・デイトス)(2)

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「アシャ殿、どうお考えですか?」
 アギャン公が恐る恐る問いかけた。目元にかかる髪の後ろから、アシャは静かにアギャン公を捉える。
「囮、かも知れない」
「え?」
「我々はジーフォ公の空きに上手くレトラデス達を引き込んだつもりだった。が、ギヌアはそれを見越していてレトラデス達を捨て駒にし、もう一方のシダルナン、モディスンで陽動作戦を謀って、その隙に主力部隊で一気に『氷の双宮』を叩こうというつもりなのかも知れない」
「手痛い…」
 テッツェが独り言のように呟く。
「いずれにせよ、こちらには手駒が少なすぎる」
「そして或いは」
 アシャはことばを継いだ。
「囮でないかも知れない」
「…と言いますと?」
 ミダス公が尋ねる。ちらっと、セシ公が髪を耳に掛け直しながら、ミダス公を見た。
「ギヌアは本当に、ジーフォ公の空きに釣られたのかも知れない。レトラデス達は捨て駒ではなく、有力な一隊なのかも知れない。この勝敗こそが戦局を決定するのかも知れない」
「…当たってみなければわからぬ、ということか?」
 ジーフォ公が眉根を寄せた。
「しかし、それでは『星の剣士』(ニスフェル)達は、まずくすると無駄死にすることになる」
「仕方ないでしょう」
 セシ公がさらりと受けた。
「どんな戦でも捨てる隊があって活路が開ける。リヒャルティもただの阿呆ではない。かなり手応えのある『捨て駒』となるでしょうね」
「失礼ですが、アシャ・ラズーン」
 腹に据えかねたらしいシャイラが口を出した。
「『星の剣士』(ニスフェル)、いや、ユーノ様は、それをご存知でしょうか」
「いや、知らないはずだ」
 セシ公が答えた。薄い笑みを漂わせ、
「捨てる駒に運命を教えておくわけにもいくまいよ?」
「……あなたを…見損ないましたよ、アシャ・ラズーン!」
 憤然とシャイラが席を立った。
「そんなに簡単に将を見捨てて、何が稀代の軍師だ! ユーノ様がお可哀想です!」
「シャイラ!」
「失礼いたします。御用があれば、お呼び下さい」
 ミダス公の制止を振り切り、シャイラは足音高く部屋を出て行く。
「……若いのに似合わず大したものだ」
 シートスが呟く。訝しげにミダス公が振り返るのに苦笑して、
「いや、若いのにあそこまで意見を通せると言うのは、大したものだと言っているのです。若いから、と言うべきかな」
「ミダス公」
「アシャ殿!」
 呼ばれて、ミダス公は深く頭を下げた。
「配下の失礼を深くお詫び申し上げます」
「構わない。私も昔はそうだった、からな」
 苦笑混じりにアシャは続けた。
「それより、シャイラには『銀羽根』『銅羽根』を率いて、シダルナン、モディスンに当たってもらわなくてはならない。落ち着いたら知らせてくれ」
「かしこまりました」
 ミダス公は大きく頷いた。
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