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2.灰色塔(ガルン・デイトス)(3)
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「ふ…ぅ」
「お疲れ様でした」
一通りの手配をし終わり、シートス、アギャン、ミダスの各公が各々の持ち場に引き上げた後、地下広間には3人の男が残っていた。
「ついに見損なわれてしまいましたな、シャイラに」
「そうだな」
シートスの声に椅子に凭れていたアシャはにやりと笑って応じる。
「燻り出せるかな」
「おそらくは」
セシ公が微笑みながら答える。
「アギャン公はテッツェが追います。ジーフォ公は幼馴染の私が、ミダス公は今日の会議で白黒がつけられるはず」
「恐い御方だ」
シートスが瞳を光らせてセシ公を見る。
「私のような無骨者にはとてもできない腹芸だな」
「お褒めに預かり、恐縮ですよ、シートス・ツェイトス」
皮肉混じりのことばに臆した様子もなく、セシ公は笑った。怯まずシートスが問いを重ねる。
「だが、万が一、あなたが裏切っていた場合はどうなるのかな?」
「そうですね」
セシ公は生真面目な表情で考え込んでいたが、
「私がラズーンを制した暁には、その先見の明を讃えて、あなただけは命を助けましょう」
「俺は生かしておくと後々困る存在になるかも知れない」
「では、その時に殺しましょう」
性質の悪いからかいにも、セシ公は端麗な顔に微笑を浮かべたまま言い放つ。
「なにせ殺すのは簡単だが、生き返らせるのはさすがの私でもちょっと難しくてね。生きていれば、何かと役には立つ」
「捨て駒とか?」
「よくおわかりだ」
シートスとセシ公のやり取りを聞いていたアシャは吐息を漏らす。
「捨て駒、な」
「気になりますか」
「それは…一隊丸々消耗するとなれば」
くすりとセシ公が笑う。
「何だ?」
「素直に認められてはどうです、あの娘が心配だ、と」
図星を指されて、アシャは微かに顔が赤らむのを自覚する。
「まあ、あなたのことだ、ことば通りには取っていませんが」
「…事実、当たらなくてはわからないと言うのは本当だ」
レトラデス達が囮なのかそうでないのか。それは、ユーノ達と当たって初めてはっきりする。すぐに引けば良し、死力を尽くすのなら、レトラデス達はジーフォ公の空きを当て込んで送られたと言うことになる。だが、その場合、激戦になるのは火を見るよりも明らか、まんまと策中に引っ張り込んだと言う点でラズーン側には有利になるが、ユーノの生還率は極端に減ってしまう。
そうしてアシャは、より酷い現実をも見てしまう。
「…だが…ひょっとして」
「え?」
「何もかも水の泡、と言う場合もある」
「……」
シートス、セシ公の促すような視線に、アシャはじっと地図を見据えた。
「ギヌアがレトラデス達を囮に使っていて、なおかつ、レトラデス達にはそれを伝えていない場合、彼らは死力を尽くしてユーノ達と当たり、しかもその戦いには何の意味もないと言うことになる」
「…やりそうなことですね」
セシ公が同意した。
「当たってみなければ、わからない、か」
シートスが呟く。
「いずれにせよ、兵を分散させられるのが辛い」
「その上に四大公の裏切りが加われば、ラズーン滅亡は必至」
セシ公がことばを重ねる。髪の毛を一房、指に絡めながら、
「時間との追いかけっこというわけですね」
「…そうだな」
その与えられる『時間』が、どうかユーノが生きている間であってくれ。
動かさぬ表情の下で、アシャは密かに強く願った。
「お疲れ様でした」
一通りの手配をし終わり、シートス、アギャン、ミダスの各公が各々の持ち場に引き上げた後、地下広間には3人の男が残っていた。
「ついに見損なわれてしまいましたな、シャイラに」
「そうだな」
シートスの声に椅子に凭れていたアシャはにやりと笑って応じる。
「燻り出せるかな」
「おそらくは」
セシ公が微笑みながら答える。
「アギャン公はテッツェが追います。ジーフォ公は幼馴染の私が、ミダス公は今日の会議で白黒がつけられるはず」
「恐い御方だ」
シートスが瞳を光らせてセシ公を見る。
「私のような無骨者にはとてもできない腹芸だな」
「お褒めに預かり、恐縮ですよ、シートス・ツェイトス」
皮肉混じりのことばに臆した様子もなく、セシ公は笑った。怯まずシートスが問いを重ねる。
「だが、万が一、あなたが裏切っていた場合はどうなるのかな?」
「そうですね」
セシ公は生真面目な表情で考え込んでいたが、
「私がラズーンを制した暁には、その先見の明を讃えて、あなただけは命を助けましょう」
「俺は生かしておくと後々困る存在になるかも知れない」
「では、その時に殺しましょう」
性質の悪いからかいにも、セシ公は端麗な顔に微笑を浮かべたまま言い放つ。
「なにせ殺すのは簡単だが、生き返らせるのはさすがの私でもちょっと難しくてね。生きていれば、何かと役には立つ」
「捨て駒とか?」
「よくおわかりだ」
シートスとセシ公のやり取りを聞いていたアシャは吐息を漏らす。
「捨て駒、な」
「気になりますか」
「それは…一隊丸々消耗するとなれば」
くすりとセシ公が笑う。
「何だ?」
「素直に認められてはどうです、あの娘が心配だ、と」
図星を指されて、アシャは微かに顔が赤らむのを自覚する。
「まあ、あなたのことだ、ことば通りには取っていませんが」
「…事実、当たらなくてはわからないと言うのは本当だ」
レトラデス達が囮なのかそうでないのか。それは、ユーノ達と当たって初めてはっきりする。すぐに引けば良し、死力を尽くすのなら、レトラデス達はジーフォ公の空きを当て込んで送られたと言うことになる。だが、その場合、激戦になるのは火を見るよりも明らか、まんまと策中に引っ張り込んだと言う点でラズーン側には有利になるが、ユーノの生還率は極端に減ってしまう。
そうしてアシャは、より酷い現実をも見てしまう。
「…だが…ひょっとして」
「え?」
「何もかも水の泡、と言う場合もある」
「……」
シートス、セシ公の促すような視線に、アシャはじっと地図を見据えた。
「ギヌアがレトラデス達を囮に使っていて、なおかつ、レトラデス達にはそれを伝えていない場合、彼らは死力を尽くしてユーノ達と当たり、しかもその戦いには何の意味もないと言うことになる」
「…やりそうなことですね」
セシ公が同意した。
「当たってみなければ、わからない、か」
シートスが呟く。
「いずれにせよ、兵を分散させられるのが辛い」
「その上に四大公の裏切りが加われば、ラズーン滅亡は必至」
セシ公がことばを重ねる。髪の毛を一房、指に絡めながら、
「時間との追いかけっこというわけですね」
「…そうだな」
その与えられる『時間』が、どうかユーノが生きている間であってくれ。
動かさぬ表情の下で、アシャは密かに強く願った。
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