『ラズーン』第六部

segakiyui

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3.パディスの戦い(1)

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 それは対『運命(リマイン)』支配下(ロダ)最初の戦闘、後に『長丈草(ディグリス)さえ刃を失う』と形容された凄絶な戦いの幕開けだった。
 暗雲垂れ込める空の下、長丈草(ディグリス)の緑の輝きを侵して、じわじわと紺と金、朱と紫に彩られたネハルール、レトラデスの連合軍がユーノ達に迫る。総勢850名、自分達が勝つのだと言う自信に満ち溢れ、傍目にはゆっくりと、だが確実にラズーンへの歩を進める。
 対するユーノ達の隊は生え抜きの勇士揃いとは言え、たかだか200余名、正面からぶつかるには余りにも頼りない数、見識ある者が陣を見れば、捨てる駒にしては少々数が多すぎる、かと言って、この人数では勝ち抜けまい、さても中途半端な兵の使い方をするものよ、と眉をひそめただろう。
 そしてそれは、ネハルール、レトラデスの2人にしても同様だった。
「レトラデス…」
「ええ」
 兵の後ろから一団に守られ、黒駒の背に揺られながら、ネハルールが問いかける。
「どう言うつもりだと思う?」
「そうね」
 赤銅の鎧と同色の被り物の下から、レトラデスはじっと前方を見据えたまま答えた。
「アシャともあろう軍師が無駄な兵の使い方をするわね」
「捨て駒か」
 ネハルールはのっぺりした、そのくせどこか油断のならない狡さをたたえた顔に、薄笑いを浮かべた。
「初戦から? 冗談はよして」
 馬の背で調子を取りながら、レトラデスが朱い唇を歪める。
「モディスン、シダルナンにも一隊が出たと言う。双方当てて、ギヌア様の本体を狙う気なのではないか」
「じゃあ、私達こそいい迷惑だわ」
「ああ…だが」
 ネハルールは底知れない笑みをなおも広げた。
「考えようによっては楽な戦さ。本気で当たれとギヌア様はおっしゃったが、本気で当たるまでもない、こちらの勝ちは目に見えている」
「…それも…そうね」
 レトラデスがようやく微笑んだ。
「戦いの初めに当たっておけば、後々早々駆り出されないでしょうし。何よりここで手柄を立てておけば、この先の戦も気丈夫、ギヌア様の覚えもめでたいと言うもの」
「そうとも。うまくいけば、この戦の手柄で後の戦場は高みの見物、片手に酒杯片手に女、格好の芝居を前に一休み、と行けぬこともあるまい」
「上等だわ。どうする? 私から行く? それともあなたから?」
「屠るなら」
 ネハルールは嬉しそうに目を細めた。
「楽しんでこそ礼儀というもの」
「同感ね。じゃあ、一緒に」
 くすくすと堪えきれぬようなレトラデスの忍び笑いに、ネハルールが片手を上げる。
「まずは、あいつを狙う」
 ユーノに目を据えて呟く。
「じゃあ、私はその横の綺麗な子を頂くわ」
「よかろう」
 レトラデスが満足そうに応じて、ネハルールが合図の片手を振り下ろした。
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