『魔法講座』

segakiyui

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16.四日目、三時限

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 さて………。
 いえ、今は叩かなくて結構です、癖になっても困りますから。
 みなさんは、ノートに辛かったことをまとめてきているはずですね。
 え? 
 『生意気』くんは宿題を忘れたと言ってました?
 なるほど………で、それがあなたにどういう関係があるのですか、『純白』くん?
 ………ふむ。
 私の彼に対する正しい認識を助けようとしてくれた、のですか。
 なるほど。
 ありがとうございました。
 は?
 ………………そうですね、彼はそれを発表したくなくて、逃げたのかもしれないですね。
 でも、さきほども言いましたが、それは別に構わないのです。
 それが自分に必要ではない、脅威であると感じたら、逃げるのが自然な対応ではありませんか?
 あなたが心配しなくても、それを学ぶことが必要ならば、彼はまたどこかで学ぶ機会があります。彼に一番ふさわしい状況とより適切な教師のもとで。
 世界の全てが教師なのですよ?
 私が何もかも教える必要はないのです。
 むしろ、今の状況では、私はあなたにこう尋ねなくてはならないですね。
 なぜ、あなたはそれが気になるのですか、『純白』くん。
 あなたは私でもなければ、教師でもないし、この講座の責任者でもありませんね?
 ……………なるほど。
 善意。
 私が傷ついているかもしれない、と思ったというのですか?
 ………………繰り返しますが、私はあなたではないのですよ。
 もしあえて言うならば、さっきの『生意気』くんの行為で傷ついたのは、あなたではありませんか、『純白』くん?
 あなたもここから出ていきたかった、のですか?
 ………………いいんですよ。
 今ならまだ出られます。次のステップに入る前ですから。
 大丈夫です。
 私はあなたが出ていっても傷ついたりはしません。
 かといって、あなたがどうなってもいい、というのではないのです。
 私には私の、あなたにはあなたの学びの機会と要素と時期がある。それだけのことです。
 ………ここにいます?
 ……………………わかりました。
 では、気分が悪くなったりする前に手を上げて「限界です!」とでも叫んで下さい。
 …………はい、みなさんはノートを開いて。
 はい、誰ですか、今「限界ですっ!」ってやった人?
 ああ………はい、『嘘つき』くん。
 お休みするって言ってませんでしたか?
 ……なるほど、『嘘つき』ですからね。
 で、今のは?
 ………………はい、限界じゃないんですね。
 ややこしい人ですね、つくづく。
 ただルールを決め直しましょう。
 次にやったら退室して下さい。
 教室はあなたの舞台じゃありませんので、なんなら校庭でどうでしょう。今なら他の講座が武道訓練をやってますから、「限界ですっ!」と叫ぶとぴったりくると思いますが?
 やめておきます?
 ………意外と照れ屋ですね。
 そんなことでは一流のエンターティナーにはなれませんよ?
 は? そういうつもりはない?
 てっきりそっちへ進むのかと思いました。
 この講座はそちらに対しても有益ですからね。
 では…………はい、ノートを広げて…………ちゃんと書いてあるんですね。
 ふぅ……む。
 ………え? いえ、別に嘘でも作り話でもいいですよ。
 あなたがこれが辛かったのなら、それでいいんです。
 ことば、の力を甘く見ないように。
 全てはそこから透けて見えてきますから。
 では、みなさんはその辛いことを読み直して、どう感じますか?
 身体のどこに何を感じるか、確認して下さい。
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