『魔法講座』

24.七日目、教務室 昼

　はいどうぞ。
　今日は千客万来ですね。
　………こんにちは、『嘘つき』くん。
　ええそうです。
　さっき出て行ったのは『純白』改め『漆黒』くんです。
　ええ、名前の変更を伝えに来たようです。
　次期講座も履修予定のようですね。
　いえ？　別に医師を必要とするようには見えませんでしたが。
　そうですね、夢の話をしていましたね。
　どんな夢？
　確認しますが、これは個人授業の申し込みでは………ありませんね。
　『漆黒』くんの夢の話は個人的なものです。
　ある意味、『漆黒』くん以外には意味がないものです。
　……ええそうですね。
　夢分析とか夢判断とか、そのような類の本は一杯あります。
　……いえ、別に無意味だとは思いません。
　少なくとも書き手にとっては意味があったし、その本に出逢う読者にも意味があるでしょう。
　………そうですか。
　はぐらかしてはいませんが。
　ところで、今日はどんな用件でここへ？
　顔を見に来た。
　なるほど。
　休暇中、別の講座は取らなかったんですか。
　…………ふむ。
　そういう人も居るかも知れませんね。
　次期講座も履修予定ですか。
　……繰り返しますが、あなたの知っていることばかりだと思いますよ。
　……ええ、そうです、夢についてお話します。
　いえ、聞かせたくないというのではありません。
　……………そうですか。
　…………それを話したいと？
　いえ。
　止める権利はありませんし、話したいというのなら時期であり、必要なのでしょう。
　………そうですね。
　………あなたはここの教師の空きがあるのを知っていますか？
　ええ、そうです。
　教師にならないかと誘っています。
　……そうではありません。
　教師になることで学べるものがあると言っているのです。
　………ええそうですよ、とてもめんどくさい仕事です。
　…………ええ、ええ、生徒もめんどくさい仕事ですね。
　………いえ、ふと。
　そういう時期なのかと理解しました。
　このようにやってくるものなのですね。
　初めての経験かもしれません。
　………え？
　もちろん、初めての経験などまだまだあります。
　しかし……感慨深いですね。
　………ええ、どうぞ。
　少し今思いついたことについて考えたいと思います。
　………やっぱり？
　そうですか、私がそういうことを考えると思っていたと？
　……面白いですね。
　支配しようとすると制御できず、そのままにさせると流れが運ぶ。
　………私の前の教師が最後に教えてくれたことばです。
　……………ええそうです。
　私も昔は生徒だったんですよ。