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14.明かされた気持ち
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早すぎるだろ、おっさん。
ひょっとしてムカデみたいに百本ぐらい足があるんじゃないか。あんたは爬虫類じゃなくて、昆虫の方だったのか。ひょっとして、それは史上最強、氷河期にも平気で耐え抜いたという伝説の、全国5632万の主婦の敵ってやつじゃないのか。
胸の中で罵倒の限りを尽くしながらのろのろと振り返ると、背後に立っていた綾野が、薄い笑みを浮かべて繰り返した。
「君は違うよ、里岡直樹君」
ご両親が心配して、連絡を下さったよ。
「お、とうさん、たち、が」
「いろいろあって、叱り過ぎてしまったとおっしゃっていた」
「叱り、すぎた…」
俺にしがみついたまま、『直樹』がぼんやりと繰り返す。
「そこに居る滝君は妄想癖が酷くてね」
だから、私がいろいろ面倒を見ていたのだけれど。
「君にまでそんなことを吹き込むようなら、もうちょっと管理を考えなくてはいけないな」
俺は猛獣か。
お由宇か宮田がいたら、俺が猛獣とは猛獣も地に落ちたとか何とか突っ込んでくれるんだろうが、そんな和やかな雰囲気になりそうにないと気づいたのは、綾野の遥か後方の建物の陰に一瞬光ったもの、のせいで。
あれはやっぱり銃口、なんだろうな?
でもって、あれほどこれみよがしに俺の位置からしか見えないように立っているのは、遠回しな威圧ってやつだよな?
「こちらへ来たまえ」
滝君、君もお客様を手荒に扱ってはいけない。
「……ふん」
すっかり危険人物にされてしまった。
「で、も」
ぎゅ、と『直樹』が俺の服を掴み直し、綾野は眉を寄せた。
「僕は、いえ、僕が周一郎さんだとしたら」
おーい。
今銃口がこっちに動いたぞ。ひょっとした『直樹』ごと始末しちゃう気か?
考えた瞬間にはっとする。
里岡夫婦が来た、と言った。それは『直樹』は諦めろ、そう説得されたということじゃないのか。
「……」
ごく、と唾を呑み込んで、そろそろと向きを変えた。『直樹』が俺の体の後になるように、ゆっくり移動する。
「大丈夫、ですよ」
ぽつりと『直樹』が囁いた。
「あの位置からなら跳弾しない限り、当たりません」
「『直樹』…?」
何だって?
『直樹』が知っているとは思えないことばを聞かされぎょっとする。
「ちょうだん、って何のことか、よくわかんないけど」
泣き笑いのような表情で、『直樹』が俺を見上げる。
「そうだって、わかる」
「……」
『直樹』の内側が細かな破片になって崩れ落ちていくのが見えた気がした。
「直樹君?」
不審そうな綾野の声を遮って、
「……僕にはわからないけれど」
震える声で『直樹』が応じた。
「でも、僕にはわかる」
「何のことだ?」
綾野が訝しげに顔を歪めた。
「滝さんが守ってるのが、周一郎、で。今僕は滝さんに守られてる」
ぼろぼろと涙が零れ落ちた。
「僕にはわからないのに、僕はわかる、今滝さんに守られてる」
振り仰ぐ瞳がきらきら光る。
「僕は、そう信じてる、滝さんは、滝さんだけは、僕を見捨てたりしない」
「何を言ってる」
繰り返す綾野に応じずに、『直樹』はまっすぐ俺を見上げる。
「そう…だよね…?」
「……ああ」
そんなことばを、きっとあいつは絶対言わない。
未来永劫、そのことばを、そんな祈るようにすがるように、訴えることはない。
それでも。
距離を置いて座っていても離れない。
側に居るために慣れない日射しの中に出てくる。
俺と食事をするのを待って、俺が安眠するのを確認する。
俺に自分の正義を弁解しない。
俺が出て行くのを引き止めない。
けれど俺の毎日を,寄り添うように知っている。
「そうだ」
「……ん」
「周一郎の何を知っている」
嬉しそうに笑った『直樹』を殴りつけるように、綾野が冷たい声で言った。
「私はあの子が朝倉家に引き取られた時から知っている。七、八歳だったか。子供のくせに大人びた顔で、自分は朝倉大悟のBUSINESSを手伝うために居るのだと言い放った」
妹はずっと気味悪がっていた。
「何を考えているかわからない。何を与えても喜ばないし、どんな優しいことばをかけてもにこりともしない」
奇妙な猫を連れていて、その猫も周一郎の側を片時も離れない。
「魔女の使い魔のようだと嫌がっていた」
使い魔。
当たらずとはいえ、遠からずだなと思った。
才能を買われて引き取られたのは知っていたが、その時からルトが居たとは知らなかった。
けれど、ルトが居たなら、きっと周囲の気持ちや陰口なんかは筒抜けだっただろうし、今はそれなりに慣れて諦めてもいるが、そんな幼い時では、周囲が気味悪がっているということを押し付けられる一方で苦しかったに違いない。そんな相手が何をくれても喜べないだろうし、優しいことばの裏でののしられていては笑うことなどできないだろう。
「大悟はそれでも『相棒』だと無邪気に喜んでいた。大悟の側では多少周一郎も子供に見えたが、それでも自分を引き取ってくれた義理の父親が死んでも、泣くどころか悲しみもしなかったよ」
「そんな……人だったんですか…」
綾野の冷ややかな糾弾に『直樹』が顔を強張らせる。
「違うよ」
思わず反論した。
「周一郎はそんなやつじゃない」
才能だけしか認めてもらえなくても。
それでも朝倉大悟が周一郎にとってただ一つの居場所だったのは、その後の行動でよくわかる。そんな居場所を失って、泣けもしなかったのは、もう自分がこの世界と関わる気持ちがなかったからだ。大悟を陥れた連中を罠にかけて葬って、その後自分はどうなってもいいと思っていたからだ。
「あいつはいつも」
ぽん、ぽん、とふざけるように大悟の十字架を叩いていた仕草、虚ろで遠い眼差し、溢れるほどの才能と財力を手にしていても、周一郎はいつも生きあぐねていた、俺にはそうとしか思えない。
「誰よりもいろんなことを知っていて」
誰よりもいろんなものを見ていて。
「だから、黙ってることしかできなくて」
『直樹』が困惑した顔になる。
「……滝さんは周一郎さんのことをよく知ってるんです、よね…?」
じゃあ滝さんの方が正しいんですよね?
『直樹』の中の秤がもう一度周一郎に傾きかけた矢先、
「それに、滝君だって、周一郎に酷い目にあわされているんだよ?」
「え?」
「はい?」
ふいに綾野が肩を竦めて言い出して、ぽかんとした。
「確かに滝君は善意の人だ。だが、君が見たようにこれほど周一郎のことを心配し大切にしようとしている彼を、周一郎は自分が朝倉家を手に入れるための駒として使ったんだ」
「…ほんと…?」
「いや、それは」
不安そうに『直樹』が見上げて、俺はうろたえた。
確かに駒として扱われた、けれどなぜそれを綾野が知っているんだろう。
「表面上では朝倉家の相続問題は周一郎が巻き込まれた哀れな被害者だ。けれど私は違うと思ってる。あのしたたかな小僧が? まさか。そう考えると、あれは全部あいつの仕組んだお芝居だった、そう考えた方が自然というものだ」
単なる推測か、とほっとして我に返る。
「や、だって」
「そのせいで、滝さんは危うく殺されそうになったんだしね」
「う」
「……ほんと…なんだね…?」
「本当だとも」
平凡な家庭教師として雇われたと思わせておいて、その実事件に巻き込んで、ゲームの駒のように弄んだ。滝君が犯人だと疑われるかもしれなかった、そればかりじゃない、滝君も殺される可能性さえあったのに。
「周一郎は人間として何かが根本的に欠けていた。自分以外の人間を操ることしか興味がなかった歪んだ性格だったんだよ」
綾野はあっさり切り捨てた。
「その才能は周囲から恐れられ疎まれた。誰も周一郎を愛そうとはしなかったし、誰も側に居てほしいとは望んでいなかった。大悟だって仕事のことがなければ、周一郎を引き取ったかどうか。彼が居た施設でも気味悪がられて、優しくしようとした保母でさえ怖がって、途中で仕事を辞めてしまったほどだ」
綾野は事実だけを伝えると言った沈痛な表情を作った。
「なぜなら、周一郎はその保母の触れられたくない傷みを遠慮なく暴いて引っ掻き回し、嘲笑ったからだ。誰だって触れられたくないことはある、知られたくないこともある。なのに、誰も知るはずのないそのことを周一郎は知っていたばかりか、周囲に触れ回った。保母は混乱し、かわいそうに恐怖のあまり周一郎に怪我をさせて馘になったそうだよ」
「っ」
びくっと『直樹』が無意識のような仕草で額の隅に指を当てた。真っ白になった頬、さっきまで流れていた涙こそ止まったものの、小刻みに体を震わせ、いつの間にか俺の服から手を離して立ち竦んでいる。
「ちゃんとした立派な女性だったらしい。周一郎に出会わなければ、そんなことにならなかったかもしれないね」
「……」
「そして、私の祖母も」
周一郎の乳母だったのだが。
「そんな冷たくて残酷な少年に誠意を尽くした結果、大切な友人を奪われ殺され、今は失意のどん底にいるよ。彼女が何をした、ただ周一郎の面倒を見ただけだ」
綾野は深く溜め息をついた。
いかにも問題のある少年を見守ってきた理解ある大人のように。
いかにも社会から逸脱した人格に思いやりを向けて接してきたように。
けれど。
違うだろ。
腹の底にぞわりと不快な波が動いた。
確かに清はそれこそ善意の人だったかもしれない。でも、事実をきちんと見ていたわけでもなかった。自分に見えたものだけを組み合わせて一方的に決めつけて、周一郎の弁解一つ説明一言も聞こうとせずにののしった。
それほど一筋に周一郎を育ててきたのなら、周一郎がどんな人間だったのか、ほんとは誰よりわかっていたはず、わかっていなくちゃならなかったはずだ。確かにああ、人殺しなんてあんまりなことがあった、それでも、もうほんの少しでも周一郎を信じてやってもよかったんじゃないのか。
「周一郎は人の心がなかったんだ。優しい気持ちがわからなかった。仕事のことしか考えていなかった、それで誰がどうなろうと」
綾野は眼を細めて苦しそうな顔を作った。
「……君は聞いたことがないか、『SENS』という麻薬がある。あれを扇子に仕込むことを考えついたのは周一郎だよ」
ぴく、と『直樹』が体を震わせて眼を見開いた。その頭の中で、自分の初作品と奪われた扇、激怒した父が一気に『SENS』ということばに結びついていくのがわかる。
「まさ、か」
不安そうに紡がれたことばは、その『SENS』に自分の父親が、歴史のある老舗が手を染めているという事実への衝撃だったはずだが、綾野は別な意味に取った。なおも煽るように冷たい笑みを浮かべながら、
「本当だよ。あんなに美しい伝統工芸品を人を狂わせる悪魔の道具にしようと考えたんだ」
「そんな…ひどい」
ちょっと待った。偉そうに自慢そうに『SENS』に関する裏情報を曝け出してるが、それってひょっとしてまずいんじゃないか? だってそういうことは一般に流通している知識じゃないだろうって、俺でもわかるぞ? 一体何のために。
呆気にとられた俺の目の前で、綾野は周一郎をなお貶める。
「そうだ、そんなひどいことをする、それも自分の利益のためだけに」
君はなりたいのか?
「誰からも愛されない、誰からも必要とされない、周一郎という少年に」
綾野の口調にはっとする。
「こんな善意の滝君まで操り利用し、傷めつけて楽しむような人間に」
そういうことか。
ふいに気づいた。
綾野が口を極めて周一郎を悪の化身のように扱っているのは、牽制のためだけではなく、開きかけている『直樹』の記憶の蓋を閉じようとしているのだ。
誰だって、ましてや今孤独に陥っている『直樹』が、これ以上救いのない立場に追い詰められてはたまらない、そう思わせることで、周一郎に揺れかけた気持ちを封じようとしているのだ。
「でもそれはう、」
「嘘だ!」
「はい?」
いきなり台詞を横から奪われ、俺は固まった。
「『直樹』?」
「それは嘘だ、嘘ですよ!」
今の今まで震えて怯えていた『直樹』が、ぐい、と俺の前に進み出た。髪の毛をかきあげながら綾野を見据える綺麗な動き、その鮮やかさにはっとする。
これは、この人の眼を奪う印象は。
「周一郎さんが滝さんを傷つけるのを楽しむわけがないんだ。どうしてそんなことをしなくちゃならない? たった一人、自分のことをわかってくれそうな人にようやく巡り会ったのに? たった一人、自分の本当の姿を見せても側に居てくれる相手を見つけたのに?」
あれ?
『直樹』のことばが妙なニュアンスで響いてきょとんとした。
おい、待て、なんでそんなことがわかる?
「自分が死んでも誰一人悲しんでくれない、むしろ喜ぶ人間ばかりだ、そう思い知らされ続けてきて、人の心の裏側ばかり見させられて、そんな自分が汚くて嫌で辛くて、どれだけ逃げたくて死にたくて……」
呆然とする。
それは『直樹』というより、むしろ周一郎の、いや、周一郎しかわからないこと、じゃ。
「どれだけ自分が普通じゃなかったことが悲しくて、それでもそうやって生きるしかできなくて苦しくて、なのに、そうしてる場所にたった一人、笑って踏み込んできてくれた滝さんを、『ぼくが』どれほど失いたくなかったか、わかりますか?」
綾野が目を見開いた。
「わかるわけないだろう、あなたなんかに。わかるわけないだろう、『ぼくの』気持ちなんか。大悟だって能力がなくなれば、『ぼくを』見捨てるかもしれない、けれど滝さんは違う、『ぼくを』絶対見捨てない、だって、ルトのことを知っても戻ってきてくれて、『ぼくが』突き放しても笑っててくれて、どれだけ大事だったかわかるわけない、どれほど怖かったかわかるわけない!」
お、い。こんなことってあるのか。
『直樹』が今、『周一郎』の気持ちを話してる、『周一郎』では絶対口にするはずのない気持ちを。
「離れなければ巻き込んでしまう、滝さんを危険に晒してしまう、そう何度も思ったのに、何度も決めたのに、どうしてもどうしても側に居てほしくて、だから『ぼくは』怖くて、側によれないほど、怖くて…!」
「……」
そんなことを、考えてたのか。
あの一メートルの距離は、周一郎が、必死に釣り合いを保とうとした距離、俺の安全と自分の孤独を何とか釣り合わせようとした、ぎりぎりの距離。
「だから、今度だって『ぼくは』、『ぼくが』居ることで滝さんが危なくなるぐらいなら、『ぼく』なんて 要らないんだって思って……」
じゃああれは。
松尾橋から身を投げた、本当の理由は。
「なのに、なのに、それでも『ぼくは』滝さんと再会して嬉しくて嬉しくて、でも滝さんが探してるのは僕じゃなくて、でも『ぼくで』……あ…れ?」
ひょっとして、記憶を失った、本当の理由は。
「『ぼくは』……? 『ぼく』……??」
周一郎、だから一緒に居られない。
けれど、違う人間であれば一緒に居られる。
まさか、そんな馬鹿なことを、考えたり?
「おーい…」
ひょっとして、こいつは世界で一番馬鹿じゃないのか?
「あれ……?」
「ん?」
「……滝、さん?」
「うん……って、え?」
瞬きした『直樹』が訝しそうに俺と綾野を見比べる。
「ここ…は…?」
額に当てた指先、自分の内面を覗くような瞳があっという間に表情を失う。
「この、状況…は」
涙を残した眼にアンバランスな冷静さが漂うと同時に、紅潮していた頬がすうっと白くなった。
「き、さま…っ」
綾野が俺を睨みつける。
「、違うだろっ」
「貴様が余計なことを!」
「違うって!」
いや、何か大きく勘違いしてないか? 挑発したのはそっちだろ。
「滝さん?」
「はい」
「…僕は」
「お前は」
名前を口にしようとした矢先、綾野の背後から全力疾走してくる男に振り向く。
「大変です!」
「何だっ!」
ヒステリックに怒鳴りつけられて、男は一瞬凍りついたが、すぐにうわずった声で叫んだ。
「警察が来てます!」
「そんなことはないはずだ」
「捜査令状があります!」
「なにっ」
さすがに綾野の視線が動いた、その瞬間、俺の中でスイッチが入る。
「逃げるぞ!」
一気に走り出した俺を、数瞬遅れただけで、それまでとは打って変わった冷静さで『直樹』が追ってきた。
ひょっとしてムカデみたいに百本ぐらい足があるんじゃないか。あんたは爬虫類じゃなくて、昆虫の方だったのか。ひょっとして、それは史上最強、氷河期にも平気で耐え抜いたという伝説の、全国5632万の主婦の敵ってやつじゃないのか。
胸の中で罵倒の限りを尽くしながらのろのろと振り返ると、背後に立っていた綾野が、薄い笑みを浮かべて繰り返した。
「君は違うよ、里岡直樹君」
ご両親が心配して、連絡を下さったよ。
「お、とうさん、たち、が」
「いろいろあって、叱り過ぎてしまったとおっしゃっていた」
「叱り、すぎた…」
俺にしがみついたまま、『直樹』がぼんやりと繰り返す。
「そこに居る滝君は妄想癖が酷くてね」
だから、私がいろいろ面倒を見ていたのだけれど。
「君にまでそんなことを吹き込むようなら、もうちょっと管理を考えなくてはいけないな」
俺は猛獣か。
お由宇か宮田がいたら、俺が猛獣とは猛獣も地に落ちたとか何とか突っ込んでくれるんだろうが、そんな和やかな雰囲気になりそうにないと気づいたのは、綾野の遥か後方の建物の陰に一瞬光ったもの、のせいで。
あれはやっぱり銃口、なんだろうな?
でもって、あれほどこれみよがしに俺の位置からしか見えないように立っているのは、遠回しな威圧ってやつだよな?
「こちらへ来たまえ」
滝君、君もお客様を手荒に扱ってはいけない。
「……ふん」
すっかり危険人物にされてしまった。
「で、も」
ぎゅ、と『直樹』が俺の服を掴み直し、綾野は眉を寄せた。
「僕は、いえ、僕が周一郎さんだとしたら」
おーい。
今銃口がこっちに動いたぞ。ひょっとした『直樹』ごと始末しちゃう気か?
考えた瞬間にはっとする。
里岡夫婦が来た、と言った。それは『直樹』は諦めろ、そう説得されたということじゃないのか。
「……」
ごく、と唾を呑み込んで、そろそろと向きを変えた。『直樹』が俺の体の後になるように、ゆっくり移動する。
「大丈夫、ですよ」
ぽつりと『直樹』が囁いた。
「あの位置からなら跳弾しない限り、当たりません」
「『直樹』…?」
何だって?
『直樹』が知っているとは思えないことばを聞かされぎょっとする。
「ちょうだん、って何のことか、よくわかんないけど」
泣き笑いのような表情で、『直樹』が俺を見上げる。
「そうだって、わかる」
「……」
『直樹』の内側が細かな破片になって崩れ落ちていくのが見えた気がした。
「直樹君?」
不審そうな綾野の声を遮って、
「……僕にはわからないけれど」
震える声で『直樹』が応じた。
「でも、僕にはわかる」
「何のことだ?」
綾野が訝しげに顔を歪めた。
「滝さんが守ってるのが、周一郎、で。今僕は滝さんに守られてる」
ぼろぼろと涙が零れ落ちた。
「僕にはわからないのに、僕はわかる、今滝さんに守られてる」
振り仰ぐ瞳がきらきら光る。
「僕は、そう信じてる、滝さんは、滝さんだけは、僕を見捨てたりしない」
「何を言ってる」
繰り返す綾野に応じずに、『直樹』はまっすぐ俺を見上げる。
「そう…だよね…?」
「……ああ」
そんなことばを、きっとあいつは絶対言わない。
未来永劫、そのことばを、そんな祈るようにすがるように、訴えることはない。
それでも。
距離を置いて座っていても離れない。
側に居るために慣れない日射しの中に出てくる。
俺と食事をするのを待って、俺が安眠するのを確認する。
俺に自分の正義を弁解しない。
俺が出て行くのを引き止めない。
けれど俺の毎日を,寄り添うように知っている。
「そうだ」
「……ん」
「周一郎の何を知っている」
嬉しそうに笑った『直樹』を殴りつけるように、綾野が冷たい声で言った。
「私はあの子が朝倉家に引き取られた時から知っている。七、八歳だったか。子供のくせに大人びた顔で、自分は朝倉大悟のBUSINESSを手伝うために居るのだと言い放った」
妹はずっと気味悪がっていた。
「何を考えているかわからない。何を与えても喜ばないし、どんな優しいことばをかけてもにこりともしない」
奇妙な猫を連れていて、その猫も周一郎の側を片時も離れない。
「魔女の使い魔のようだと嫌がっていた」
使い魔。
当たらずとはいえ、遠からずだなと思った。
才能を買われて引き取られたのは知っていたが、その時からルトが居たとは知らなかった。
けれど、ルトが居たなら、きっと周囲の気持ちや陰口なんかは筒抜けだっただろうし、今はそれなりに慣れて諦めてもいるが、そんな幼い時では、周囲が気味悪がっているということを押し付けられる一方で苦しかったに違いない。そんな相手が何をくれても喜べないだろうし、優しいことばの裏でののしられていては笑うことなどできないだろう。
「大悟はそれでも『相棒』だと無邪気に喜んでいた。大悟の側では多少周一郎も子供に見えたが、それでも自分を引き取ってくれた義理の父親が死んでも、泣くどころか悲しみもしなかったよ」
「そんな……人だったんですか…」
綾野の冷ややかな糾弾に『直樹』が顔を強張らせる。
「違うよ」
思わず反論した。
「周一郎はそんなやつじゃない」
才能だけしか認めてもらえなくても。
それでも朝倉大悟が周一郎にとってただ一つの居場所だったのは、その後の行動でよくわかる。そんな居場所を失って、泣けもしなかったのは、もう自分がこの世界と関わる気持ちがなかったからだ。大悟を陥れた連中を罠にかけて葬って、その後自分はどうなってもいいと思っていたからだ。
「あいつはいつも」
ぽん、ぽん、とふざけるように大悟の十字架を叩いていた仕草、虚ろで遠い眼差し、溢れるほどの才能と財力を手にしていても、周一郎はいつも生きあぐねていた、俺にはそうとしか思えない。
「誰よりもいろんなことを知っていて」
誰よりもいろんなものを見ていて。
「だから、黙ってることしかできなくて」
『直樹』が困惑した顔になる。
「……滝さんは周一郎さんのことをよく知ってるんです、よね…?」
じゃあ滝さんの方が正しいんですよね?
『直樹』の中の秤がもう一度周一郎に傾きかけた矢先、
「それに、滝君だって、周一郎に酷い目にあわされているんだよ?」
「え?」
「はい?」
ふいに綾野が肩を竦めて言い出して、ぽかんとした。
「確かに滝君は善意の人だ。だが、君が見たようにこれほど周一郎のことを心配し大切にしようとしている彼を、周一郎は自分が朝倉家を手に入れるための駒として使ったんだ」
「…ほんと…?」
「いや、それは」
不安そうに『直樹』が見上げて、俺はうろたえた。
確かに駒として扱われた、けれどなぜそれを綾野が知っているんだろう。
「表面上では朝倉家の相続問題は周一郎が巻き込まれた哀れな被害者だ。けれど私は違うと思ってる。あのしたたかな小僧が? まさか。そう考えると、あれは全部あいつの仕組んだお芝居だった、そう考えた方が自然というものだ」
単なる推測か、とほっとして我に返る。
「や、だって」
「そのせいで、滝さんは危うく殺されそうになったんだしね」
「う」
「……ほんと…なんだね…?」
「本当だとも」
平凡な家庭教師として雇われたと思わせておいて、その実事件に巻き込んで、ゲームの駒のように弄んだ。滝君が犯人だと疑われるかもしれなかった、そればかりじゃない、滝君も殺される可能性さえあったのに。
「周一郎は人間として何かが根本的に欠けていた。自分以外の人間を操ることしか興味がなかった歪んだ性格だったんだよ」
綾野はあっさり切り捨てた。
「その才能は周囲から恐れられ疎まれた。誰も周一郎を愛そうとはしなかったし、誰も側に居てほしいとは望んでいなかった。大悟だって仕事のことがなければ、周一郎を引き取ったかどうか。彼が居た施設でも気味悪がられて、優しくしようとした保母でさえ怖がって、途中で仕事を辞めてしまったほどだ」
綾野は事実だけを伝えると言った沈痛な表情を作った。
「なぜなら、周一郎はその保母の触れられたくない傷みを遠慮なく暴いて引っ掻き回し、嘲笑ったからだ。誰だって触れられたくないことはある、知られたくないこともある。なのに、誰も知るはずのないそのことを周一郎は知っていたばかりか、周囲に触れ回った。保母は混乱し、かわいそうに恐怖のあまり周一郎に怪我をさせて馘になったそうだよ」
「っ」
びくっと『直樹』が無意識のような仕草で額の隅に指を当てた。真っ白になった頬、さっきまで流れていた涙こそ止まったものの、小刻みに体を震わせ、いつの間にか俺の服から手を離して立ち竦んでいる。
「ちゃんとした立派な女性だったらしい。周一郎に出会わなければ、そんなことにならなかったかもしれないね」
「……」
「そして、私の祖母も」
周一郎の乳母だったのだが。
「そんな冷たくて残酷な少年に誠意を尽くした結果、大切な友人を奪われ殺され、今は失意のどん底にいるよ。彼女が何をした、ただ周一郎の面倒を見ただけだ」
綾野は深く溜め息をついた。
いかにも問題のある少年を見守ってきた理解ある大人のように。
いかにも社会から逸脱した人格に思いやりを向けて接してきたように。
けれど。
違うだろ。
腹の底にぞわりと不快な波が動いた。
確かに清はそれこそ善意の人だったかもしれない。でも、事実をきちんと見ていたわけでもなかった。自分に見えたものだけを組み合わせて一方的に決めつけて、周一郎の弁解一つ説明一言も聞こうとせずにののしった。
それほど一筋に周一郎を育ててきたのなら、周一郎がどんな人間だったのか、ほんとは誰よりわかっていたはず、わかっていなくちゃならなかったはずだ。確かにああ、人殺しなんてあんまりなことがあった、それでも、もうほんの少しでも周一郎を信じてやってもよかったんじゃないのか。
「周一郎は人の心がなかったんだ。優しい気持ちがわからなかった。仕事のことしか考えていなかった、それで誰がどうなろうと」
綾野は眼を細めて苦しそうな顔を作った。
「……君は聞いたことがないか、『SENS』という麻薬がある。あれを扇子に仕込むことを考えついたのは周一郎だよ」
ぴく、と『直樹』が体を震わせて眼を見開いた。その頭の中で、自分の初作品と奪われた扇、激怒した父が一気に『SENS』ということばに結びついていくのがわかる。
「まさ、か」
不安そうに紡がれたことばは、その『SENS』に自分の父親が、歴史のある老舗が手を染めているという事実への衝撃だったはずだが、綾野は別な意味に取った。なおも煽るように冷たい笑みを浮かべながら、
「本当だよ。あんなに美しい伝統工芸品を人を狂わせる悪魔の道具にしようと考えたんだ」
「そんな…ひどい」
ちょっと待った。偉そうに自慢そうに『SENS』に関する裏情報を曝け出してるが、それってひょっとしてまずいんじゃないか? だってそういうことは一般に流通している知識じゃないだろうって、俺でもわかるぞ? 一体何のために。
呆気にとられた俺の目の前で、綾野は周一郎をなお貶める。
「そうだ、そんなひどいことをする、それも自分の利益のためだけに」
君はなりたいのか?
「誰からも愛されない、誰からも必要とされない、周一郎という少年に」
綾野の口調にはっとする。
「こんな善意の滝君まで操り利用し、傷めつけて楽しむような人間に」
そういうことか。
ふいに気づいた。
綾野が口を極めて周一郎を悪の化身のように扱っているのは、牽制のためだけではなく、開きかけている『直樹』の記憶の蓋を閉じようとしているのだ。
誰だって、ましてや今孤独に陥っている『直樹』が、これ以上救いのない立場に追い詰められてはたまらない、そう思わせることで、周一郎に揺れかけた気持ちを封じようとしているのだ。
「でもそれはう、」
「嘘だ!」
「はい?」
いきなり台詞を横から奪われ、俺は固まった。
「『直樹』?」
「それは嘘だ、嘘ですよ!」
今の今まで震えて怯えていた『直樹』が、ぐい、と俺の前に進み出た。髪の毛をかきあげながら綾野を見据える綺麗な動き、その鮮やかさにはっとする。
これは、この人の眼を奪う印象は。
「周一郎さんが滝さんを傷つけるのを楽しむわけがないんだ。どうしてそんなことをしなくちゃならない? たった一人、自分のことをわかってくれそうな人にようやく巡り会ったのに? たった一人、自分の本当の姿を見せても側に居てくれる相手を見つけたのに?」
あれ?
『直樹』のことばが妙なニュアンスで響いてきょとんとした。
おい、待て、なんでそんなことがわかる?
「自分が死んでも誰一人悲しんでくれない、むしろ喜ぶ人間ばかりだ、そう思い知らされ続けてきて、人の心の裏側ばかり見させられて、そんな自分が汚くて嫌で辛くて、どれだけ逃げたくて死にたくて……」
呆然とする。
それは『直樹』というより、むしろ周一郎の、いや、周一郎しかわからないこと、じゃ。
「どれだけ自分が普通じゃなかったことが悲しくて、それでもそうやって生きるしかできなくて苦しくて、なのに、そうしてる場所にたった一人、笑って踏み込んできてくれた滝さんを、『ぼくが』どれほど失いたくなかったか、わかりますか?」
綾野が目を見開いた。
「わかるわけないだろう、あなたなんかに。わかるわけないだろう、『ぼくの』気持ちなんか。大悟だって能力がなくなれば、『ぼくを』見捨てるかもしれない、けれど滝さんは違う、『ぼくを』絶対見捨てない、だって、ルトのことを知っても戻ってきてくれて、『ぼくが』突き放しても笑っててくれて、どれだけ大事だったかわかるわけない、どれほど怖かったかわかるわけない!」
お、い。こんなことってあるのか。
『直樹』が今、『周一郎』の気持ちを話してる、『周一郎』では絶対口にするはずのない気持ちを。
「離れなければ巻き込んでしまう、滝さんを危険に晒してしまう、そう何度も思ったのに、何度も決めたのに、どうしてもどうしても側に居てほしくて、だから『ぼくは』怖くて、側によれないほど、怖くて…!」
「……」
そんなことを、考えてたのか。
あの一メートルの距離は、周一郎が、必死に釣り合いを保とうとした距離、俺の安全と自分の孤独を何とか釣り合わせようとした、ぎりぎりの距離。
「だから、今度だって『ぼくは』、『ぼくが』居ることで滝さんが危なくなるぐらいなら、『ぼく』なんて 要らないんだって思って……」
じゃああれは。
松尾橋から身を投げた、本当の理由は。
「なのに、なのに、それでも『ぼくは』滝さんと再会して嬉しくて嬉しくて、でも滝さんが探してるのは僕じゃなくて、でも『ぼくで』……あ…れ?」
ひょっとして、記憶を失った、本当の理由は。
「『ぼくは』……? 『ぼく』……??」
周一郎、だから一緒に居られない。
けれど、違う人間であれば一緒に居られる。
まさか、そんな馬鹿なことを、考えたり?
「おーい…」
ひょっとして、こいつは世界で一番馬鹿じゃないのか?
「あれ……?」
「ん?」
「……滝、さん?」
「うん……って、え?」
瞬きした『直樹』が訝しそうに俺と綾野を見比べる。
「ここ…は…?」
額に当てた指先、自分の内面を覗くような瞳があっという間に表情を失う。
「この、状況…は」
涙を残した眼にアンバランスな冷静さが漂うと同時に、紅潮していた頬がすうっと白くなった。
「き、さま…っ」
綾野が俺を睨みつける。
「、違うだろっ」
「貴様が余計なことを!」
「違うって!」
いや、何か大きく勘違いしてないか? 挑発したのはそっちだろ。
「滝さん?」
「はい」
「…僕は」
「お前は」
名前を口にしようとした矢先、綾野の背後から全力疾走してくる男に振り向く。
「大変です!」
「何だっ!」
ヒステリックに怒鳴りつけられて、男は一瞬凍りついたが、すぐにうわずった声で叫んだ。
「警察が来てます!」
「そんなことはないはずだ」
「捜査令状があります!」
「なにっ」
さすがに綾野の視線が動いた、その瞬間、俺の中でスイッチが入る。
「逃げるぞ!」
一気に走り出した俺を、数瞬遅れただけで、それまでとは打って変わった冷静さで『直樹』が追ってきた。
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