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SSS67『待っていよう』
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「参ったのう、これは」
ジオじいさんはハンドルを握ったまま、溜息をついた。マフィーも同じ。
久しぶりのいい天気だったので遠出のドライブに出かけた。道路を一匹の黒い子犬が渡ろうとしていたので、車を止めて待っていた。ところが、その子犬の後に茶色の犬が、その後ろには白と黒のぶちがと、次々と犬が現れて、気が付いた時には、道路は渡り続ける犬達で通行止めになってしまったのだ。
「一体みんなどこへ行くんだろ」
「あんたら、知らないのかい?」
少し前に犬達の行進の向こう側に来た、自転車の男が言った。
「今日は犬ヶ岳の『うおおん祭り』だ。50年に一度、犬達はあっちの山へびっしり集まる。時が来れば、こっちの海の向こうにある島へ向けて一斉に吠えるのさ。その声が消えてしばらくすると島の方から同じような声が戻って来る。よく聞こえれば、この先50年、犬の世界は安泰なんだ。ほら、始まった」
うおおおおおおん。
大地を揺らす声が山から上がった。道路を横切っていた犬達も吠え始める。
「ほんとはさ! この前に通るつもりだったんだけど、遅れちまったよ、夕方まで動けねえ!」
「夕方まで! そんなに待てんぞ!」
ジオは悲鳴を上げた。
「ねえ、犬は何年生きるの?! 20年? だったら、この犬達お祭りを知らないんだ! なのに集まるなんて、不思議だね!」
マフィーが怒鳴ると、ジオは頷いた。
「知らずに死んで行く犬もおるじゃろうな!」
「待っていようよ!」
マフィーは続けた。
「この先50年、犬達が幸せか確かめよう。僕らにそれぐらいの時間はあるでしょ?!」
ジオと自転車の男は顔を見合わせ、大きく頷き笑い合った。
終わり
ジオじいさんはハンドルを握ったまま、溜息をついた。マフィーも同じ。
久しぶりのいい天気だったので遠出のドライブに出かけた。道路を一匹の黒い子犬が渡ろうとしていたので、車を止めて待っていた。ところが、その子犬の後に茶色の犬が、その後ろには白と黒のぶちがと、次々と犬が現れて、気が付いた時には、道路は渡り続ける犬達で通行止めになってしまったのだ。
「一体みんなどこへ行くんだろ」
「あんたら、知らないのかい?」
少し前に犬達の行進の向こう側に来た、自転車の男が言った。
「今日は犬ヶ岳の『うおおん祭り』だ。50年に一度、犬達はあっちの山へびっしり集まる。時が来れば、こっちの海の向こうにある島へ向けて一斉に吠えるのさ。その声が消えてしばらくすると島の方から同じような声が戻って来る。よく聞こえれば、この先50年、犬の世界は安泰なんだ。ほら、始まった」
うおおおおおおん。
大地を揺らす声が山から上がった。道路を横切っていた犬達も吠え始める。
「ほんとはさ! この前に通るつもりだったんだけど、遅れちまったよ、夕方まで動けねえ!」
「夕方まで! そんなに待てんぞ!」
ジオは悲鳴を上げた。
「ねえ、犬は何年生きるの?! 20年? だったら、この犬達お祭りを知らないんだ! なのに集まるなんて、不思議だね!」
マフィーが怒鳴ると、ジオは頷いた。
「知らずに死んで行く犬もおるじゃろうな!」
「待っていようよ!」
マフィーは続けた。
「この先50年、犬達が幸せか確かめよう。僕らにそれぐらいの時間はあるでしょ?!」
ジオと自転車の男は顔を見合わせ、大きく頷き笑い合った。
終わり
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