8 / 24
8
しおりを挟む
玄関のベルが鳴って、俺は立ち上がった。
「お帰り、時間がかかったね、秋野さん…」
秋野さんだと思い込んで勢いよくドアを開け、のっそり立っていた男にぶつかりそうになった。
「ったく、なあんだよ、なんで、てめえが出迎えるんだ?」
「…のお父さん」
俺は慌ててことばを継いだ。
「お父さんは早えって言ってんだろ、ああ?」
相手はむっつりとした顔でうなるように応じて、ズボンのポケットに手を突っ込んだままじろじろと俺を見ていた。
「で、入っていいのか、だめなのか?」
「あ、どうぞ」
慌てて戸口をのくと、のしのしとことさら体を振るように入ってきて、秋野さんのお父さんは折り畳み机の向こうにどさっと腰を落とした。ポケットからタバコを取り出して点けようとしたが、訝しそうに周囲を見回して尋ねた。
「灰皿、ねえのか?」
「吸わないんで…すいません」
「あいつが言ったのか?」
「は?」
「あいつだよ、あいつ。ひかりが吸うなって言ったのか?」
「いえ、その」
俺は思いっきり叱られている子どものような気がして、体を縮めて秋野さんのお父さんの前に正座した。
「苦手なんです」
「ふうん、まあ、いいことだよな」
秋野さんのお父さんはタバコを諦めたらしい。未練ありげにそろそろとポケットに片付ける。そのまま、部屋はしんと静まり返ってしまった。
日ざしが一杯に差し込んでいる。
ここへ運び込まれて数日が立っていて、体もかなり回復していたし、キスの感覚も十時間は持つようになって来た。だから、こうして、秋野さんがでかけている間をぼんやりと待っていることもできるようになったのだが、まさか、秋野さんのお父さんがやってくるとは思っていなかった。
「で、なんだ、その」
「、はい」
唐突に相手が話し出して、俺は戸惑った。
「うちのといつまで付き合うつもりなんだ?」
「え?」
「だからよ、結婚とかそういうのまで決めてんのかって聞いてるんだ、わかるだろ、それぐれえ」
切り返されて、俺は気がついた。
(そうか、もう、どうしてもここにいなくちゃいけないってわけじゃないんだ)
キスとキスの間の時間はこれからどんどん長くなるだろう。最終的には、一回キスしてもらえれば数日保つようになるかも知れない。
けれど、それは秋野さんが一緒にいるからだ、ともわかっていた。事実、秋野さんが側にいないときはエネルギーの消耗が早いのか、すぐに手足が冷たくなって震え出すはめになる。
けれど、それは、秋野さんにとっても、俺が大事ということじゃない。
「結婚っていうのは、その…」
思わず暗い声になってしまった。
「なんだあ? てめえ、遊びでひかりと一緒に暮らしてんのか、ええ?」
いきなり吠え出した番犬みたいに凄まれて、俺は怯んだ。
「あ、遊びだなんて」
遊びならずっと楽だった。身を切られるように思う。ただの遊びとかお楽しみなら、秋野さんが俺じゃなくて『近江潤』に惚れているとわかった時点で、それはそれでと割り切ることもできた。
けれど、俺はしっかり秋野さんに『密約』されていて、そのつながりはこの数日で格段に強くなっている。
俺が生きていくためには、秋野さんじゃなくちゃだめだ。
けれど、秋野さんは俺じゃなくていい。
そんな二人じゃ、結婚どころか恋愛以前の話になってしまう。
それでなくても、つながりが確実になるほど、不安は胸の奥でとげとげした芽を吹いている。
ひょっとしたら、ある日ふいと、秋野さんはここからいなくなっちゃうんじゃないか。俺を残し、本当に好きな奴、『近江潤』という幻なんかじゃなくて、秋野さんが必要とする奴のところへ行ってしまうんじゃないか。
(結婚できるなら、したいのは俺だ)
少なくとも、結婚すれば、秋野さんを突然失う恐怖に脅えなくてもすむだろう。形式だけにせよ、社会的には拘束できる。
けれど、『近江潤』に惚れているとわかった秋野さんに、そんなことを言い出せるわけもなかった。
「俺は、秋野さん、大事です」
口ごもりながらつぶやくと、秋野さんのお父さんはぷいと横を向いた。
「父親に向かってたいした度胸だな」
「そんな」
「てめえよりずっと、ずっと、ひかりは大事な奴なんだよ」
吐き捨てるようにいわれて竦んだ。
「そう、です」
俺だって、こんな星に落ちたくて落ちたわけじゃない。俺だって、本当は、秋野さんなんか。
胸の中で反論したとたん、公園で水を抱き締めようとしていた秋野さんがまばゆく甦ってきて、体が震えた。
(秋野さん、なんか)
「そうです、じゃねえだろ」
はあ、と相手は疲れたように息を吐いた。
「付き合ってる女の親だからって、好き放題いわれて腹立たねえのかよ、てめえは、え、なんていったけ」
「近江…潤、です」
「じゃあ、まあ、その、くそ、落ち込んでるなら、いいもんやるよ、近江潤」
「は?」
秋野さんのお父さんは不機嫌二百パーセントで白い封筒を取り出した。
「そのかわり、あいつには黙ってろよ、ひどい目にあうからな。万が一しゃべったら、以後ひかりと付き会わさねえからな。じゃ、まあ、よろしくいってくれ」
俺の返事を待つまでもなく、すたすたと部屋から出て行ってしまう。
なぜか急に軽くなったようなその足取りに、秋野さんのお父さんが、実はこれを渡しに来たのだと気がついた。立つことも思いつかずに見送って、閉まったドアに再び、封筒の表書きに目を落とす。
『近江潤様』
そう書いてある。
裏返すと、小さく緊張した字で『秋野ひかり』と書かれていた。
(ラブレターだ)
秋野さんが近江潤に出したはずのラブレター。
どうしてそれが、こんなところにあるんだろう。
(俺宛じゃない)
思ったけれど、誘惑には耐えられなかった。そっと封を切り、中身を取り出す。薄いピンクの便箋が二枚、細い紺色の文字がきちんと真横に並んでいる。
『近江潤様。
突然お手紙を差し上げてすみません。けれど、どうしても、何だか気になってしかたなかったのです。前ほど笑顔がないのが、何だかさみしいです。いろいろとつらいことがあって、それで、とても笑えないのかもしれませんが、それでも、人間がんばらなくちゃ、きっとだめです。私も、おかあさんが死んでから、家の中のどこを見ても、おかあさんがいるみたいで、けれどどこにもいなくて、ずいぶんつらかったけど、それでも、私は生きてるんだから、生きていくのが大事なんだって、おとうさんがいいました。それって、ほんとうのことだと思います。きっと、いつか、がんばってよかったなって思う日が来ます。あの時がんばった自分はえらいって思える日が。
ずいぶん、きついことをいってすみません。私は、一年のとき、近江君が近所の猫を拾ったのを見て、いい人なんだなあと思いました。それから、ずっと気になってました。最近は、しんどそうに見えて、よけいに気になります。早く元気になってください。
秋野ひかり
追伸。私でよければ、話し相手になるよ』
「秋野さん、らしいや。これのどこがラブレターだって…?」
笑いながらつぶやいたとたんに涙がこぼれ、俺はびっくりした。急に大声を上げて泣き出しそうになって、慌てて口を掌で覆う。
その手紙は、まるで、俺に宛てたものみたいだった。
事故の後、ポッドに閉じ込められて『地球』に落とされ、『近江潤』の姿を借りて死に物狂いで生き抜いていたあのころの俺に。毎日毎日緊張で疲れ切って眠る、それでも見る夢がいつも事故の夢で、何度もここで生きることを諦めかけた俺に。
あのとき、この手紙を受け取っていたら、俺はずいぶん楽だっただろう。
(でも)
俺は猫を拾っていない。
これは俺宛の手紙じゃない。
秋野さんが気遣って、心配して、守ろうとしていた相手は俺じゃない。
それがはっきりわかった。
「お帰り、時間がかかったね、秋野さん…」
秋野さんだと思い込んで勢いよくドアを開け、のっそり立っていた男にぶつかりそうになった。
「ったく、なあんだよ、なんで、てめえが出迎えるんだ?」
「…のお父さん」
俺は慌ててことばを継いだ。
「お父さんは早えって言ってんだろ、ああ?」
相手はむっつりとした顔でうなるように応じて、ズボンのポケットに手を突っ込んだままじろじろと俺を見ていた。
「で、入っていいのか、だめなのか?」
「あ、どうぞ」
慌てて戸口をのくと、のしのしとことさら体を振るように入ってきて、秋野さんのお父さんは折り畳み机の向こうにどさっと腰を落とした。ポケットからタバコを取り出して点けようとしたが、訝しそうに周囲を見回して尋ねた。
「灰皿、ねえのか?」
「吸わないんで…すいません」
「あいつが言ったのか?」
「は?」
「あいつだよ、あいつ。ひかりが吸うなって言ったのか?」
「いえ、その」
俺は思いっきり叱られている子どものような気がして、体を縮めて秋野さんのお父さんの前に正座した。
「苦手なんです」
「ふうん、まあ、いいことだよな」
秋野さんのお父さんはタバコを諦めたらしい。未練ありげにそろそろとポケットに片付ける。そのまま、部屋はしんと静まり返ってしまった。
日ざしが一杯に差し込んでいる。
ここへ運び込まれて数日が立っていて、体もかなり回復していたし、キスの感覚も十時間は持つようになって来た。だから、こうして、秋野さんがでかけている間をぼんやりと待っていることもできるようになったのだが、まさか、秋野さんのお父さんがやってくるとは思っていなかった。
「で、なんだ、その」
「、はい」
唐突に相手が話し出して、俺は戸惑った。
「うちのといつまで付き合うつもりなんだ?」
「え?」
「だからよ、結婚とかそういうのまで決めてんのかって聞いてるんだ、わかるだろ、それぐれえ」
切り返されて、俺は気がついた。
(そうか、もう、どうしてもここにいなくちゃいけないってわけじゃないんだ)
キスとキスの間の時間はこれからどんどん長くなるだろう。最終的には、一回キスしてもらえれば数日保つようになるかも知れない。
けれど、それは秋野さんが一緒にいるからだ、ともわかっていた。事実、秋野さんが側にいないときはエネルギーの消耗が早いのか、すぐに手足が冷たくなって震え出すはめになる。
けれど、それは、秋野さんにとっても、俺が大事ということじゃない。
「結婚っていうのは、その…」
思わず暗い声になってしまった。
「なんだあ? てめえ、遊びでひかりと一緒に暮らしてんのか、ええ?」
いきなり吠え出した番犬みたいに凄まれて、俺は怯んだ。
「あ、遊びだなんて」
遊びならずっと楽だった。身を切られるように思う。ただの遊びとかお楽しみなら、秋野さんが俺じゃなくて『近江潤』に惚れているとわかった時点で、それはそれでと割り切ることもできた。
けれど、俺はしっかり秋野さんに『密約』されていて、そのつながりはこの数日で格段に強くなっている。
俺が生きていくためには、秋野さんじゃなくちゃだめだ。
けれど、秋野さんは俺じゃなくていい。
そんな二人じゃ、結婚どころか恋愛以前の話になってしまう。
それでなくても、つながりが確実になるほど、不安は胸の奥でとげとげした芽を吹いている。
ひょっとしたら、ある日ふいと、秋野さんはここからいなくなっちゃうんじゃないか。俺を残し、本当に好きな奴、『近江潤』という幻なんかじゃなくて、秋野さんが必要とする奴のところへ行ってしまうんじゃないか。
(結婚できるなら、したいのは俺だ)
少なくとも、結婚すれば、秋野さんを突然失う恐怖に脅えなくてもすむだろう。形式だけにせよ、社会的には拘束できる。
けれど、『近江潤』に惚れているとわかった秋野さんに、そんなことを言い出せるわけもなかった。
「俺は、秋野さん、大事です」
口ごもりながらつぶやくと、秋野さんのお父さんはぷいと横を向いた。
「父親に向かってたいした度胸だな」
「そんな」
「てめえよりずっと、ずっと、ひかりは大事な奴なんだよ」
吐き捨てるようにいわれて竦んだ。
「そう、です」
俺だって、こんな星に落ちたくて落ちたわけじゃない。俺だって、本当は、秋野さんなんか。
胸の中で反論したとたん、公園で水を抱き締めようとしていた秋野さんがまばゆく甦ってきて、体が震えた。
(秋野さん、なんか)
「そうです、じゃねえだろ」
はあ、と相手は疲れたように息を吐いた。
「付き合ってる女の親だからって、好き放題いわれて腹立たねえのかよ、てめえは、え、なんていったけ」
「近江…潤、です」
「じゃあ、まあ、その、くそ、落ち込んでるなら、いいもんやるよ、近江潤」
「は?」
秋野さんのお父さんは不機嫌二百パーセントで白い封筒を取り出した。
「そのかわり、あいつには黙ってろよ、ひどい目にあうからな。万が一しゃべったら、以後ひかりと付き会わさねえからな。じゃ、まあ、よろしくいってくれ」
俺の返事を待つまでもなく、すたすたと部屋から出て行ってしまう。
なぜか急に軽くなったようなその足取りに、秋野さんのお父さんが、実はこれを渡しに来たのだと気がついた。立つことも思いつかずに見送って、閉まったドアに再び、封筒の表書きに目を落とす。
『近江潤様』
そう書いてある。
裏返すと、小さく緊張した字で『秋野ひかり』と書かれていた。
(ラブレターだ)
秋野さんが近江潤に出したはずのラブレター。
どうしてそれが、こんなところにあるんだろう。
(俺宛じゃない)
思ったけれど、誘惑には耐えられなかった。そっと封を切り、中身を取り出す。薄いピンクの便箋が二枚、細い紺色の文字がきちんと真横に並んでいる。
『近江潤様。
突然お手紙を差し上げてすみません。けれど、どうしても、何だか気になってしかたなかったのです。前ほど笑顔がないのが、何だかさみしいです。いろいろとつらいことがあって、それで、とても笑えないのかもしれませんが、それでも、人間がんばらなくちゃ、きっとだめです。私も、おかあさんが死んでから、家の中のどこを見ても、おかあさんがいるみたいで、けれどどこにもいなくて、ずいぶんつらかったけど、それでも、私は生きてるんだから、生きていくのが大事なんだって、おとうさんがいいました。それって、ほんとうのことだと思います。きっと、いつか、がんばってよかったなって思う日が来ます。あの時がんばった自分はえらいって思える日が。
ずいぶん、きついことをいってすみません。私は、一年のとき、近江君が近所の猫を拾ったのを見て、いい人なんだなあと思いました。それから、ずっと気になってました。最近は、しんどそうに見えて、よけいに気になります。早く元気になってください。
秋野ひかり
追伸。私でよければ、話し相手になるよ』
「秋野さん、らしいや。これのどこがラブレターだって…?」
笑いながらつぶやいたとたんに涙がこぼれ、俺はびっくりした。急に大声を上げて泣き出しそうになって、慌てて口を掌で覆う。
その手紙は、まるで、俺に宛てたものみたいだった。
事故の後、ポッドに閉じ込められて『地球』に落とされ、『近江潤』の姿を借りて死に物狂いで生き抜いていたあのころの俺に。毎日毎日緊張で疲れ切って眠る、それでも見る夢がいつも事故の夢で、何度もここで生きることを諦めかけた俺に。
あのとき、この手紙を受け取っていたら、俺はずいぶん楽だっただろう。
(でも)
俺は猫を拾っていない。
これは俺宛の手紙じゃない。
秋野さんが気遣って、心配して、守ろうとしていた相手は俺じゃない。
それがはっきりわかった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる