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39.『飢餓』(2)
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「あああ…っ」
声を上げたのはレグルの方だった。びくびく震えた相手が唇を震わせてカークを睨みつける。
「だめ……まだですよ」
カークはとっさに入り込んだそれの根元を握り締めた。唸ったレグルがますます白い顔になり、すがりつくように伸ばしてきた右手を手で払いのけ、より深くまで銜え込む。
「ひい…っ」
がくがくっと激しい震えに身体を揺らせたレグルが目を剥きながらベッドを掴む。暴れるように跳ねた足がカークを上下させて、入ったものがようよう快感の場所を抉っていく。
「は…ぁっ」
仰け反りながら食い締める、がまだまだ足りない、うんと足りない。
カークは、のたうちながら声を上げて今にも萎えそうなレグルを貪る。どんどん力をなくしていくそれに、自分のものを扱き上げ、胸を摘んで快感を得て必死に追い掛け引き止めようとするが、ようやく効き出した薬の眩むような感覚よりもうんと薄くて、頼りなさに身悶えした。
「いや……いや……っ……もっと………も……っと…っ」
無意識に零れた哀願、けれど身体はどんどん温度を下げ、汗は流れる間もなく乾いていき、カークは飢え切ったままに置き去られていく。
「ぐ、ぐぁっ」
レグルがふいに激しく痙攣し、カークを強く突き上げた。
「あ、ぁっっ」
震えながら悦びの声を上げて、けれどすぐにがくりと沈み込む相手に苛立たしく見下ろして、カークは気付く、虚ろに光を失ったレグルの目と、開いた口元から零れる泡まじりの唾液、それに鼻からゆっくり伝い落ちていく生々しい紅に。
「レグルさん?」
自分のものを握ったまま、カークはぼんやりと声をかけた。頭の中心が失ってしまった快感をまだ追い掛けていて戻ってこれない。
ただ、自分の内側に銜え込んでいたものがぐうっと一瞬強く怒脹した後、空気が抜けるように萎んでいって抜け出しながら、どろどろとした液体に滑っていくのを妙にはっきり感じ取った。
「………終わりだ、カーク」
「…………」
背後から呼び掛けられて振り返る。
霞んだ視界に、闇の中から姿を表したマジェスが薄笑いを浮かべているのが見えた。
「救急車が必要なようだ。それとも葬儀屋の方がいいか」
言われて跨がった体に手を当てる。
いつの間にかひんやりとした固さが肉の底に溜まってきているそれをしばらく見下ろしていたが、やがてカークはのろのろとベッドから降りた。
「彼としては本望だろうな、男の本懐というやつかもしれない」
ポケットに手を突っ込んで笑う相手の前へゆらゆら近付き跪いた。笑みを消した相手に懇願するように手を差し出して、スラックスのチャックに手をかける。
拒まれないのを是と取って、引き下げて開き、わずかに膨らんだそれを取り出し、口に含む。その温かさにほっとした。
「………何が…望みだ、カーク」
「んっ……ん…」
口の中で見る見る固く容量を増してくるものに安堵し、なおも舌を絡めてむしゃぶりつく。半勃ちになっていた自分のものをマジェスが靴の先で押し上げてくれて、夢中になって感覚を追った。
「カーク……もう男なしではいられないか」
嘲笑う声を聞き流して駆け上がっていく。
「……っ、もう……っ」
「む…っ」
口を開いてマジェスのものを解放すると、跳ねたそれが顔に飛沫を叩きつける。一歩相手が離れたのを確認してから自分もマジェスの前で吹き上げて、崩れるように腰を落とした。
「ふ……ぅ…」
濡れた自分のものはマジェスに晒したまま、顔に散ったものを掌で拭って口におさめる。それをじっと見ている相手に、ゆっくり目を細めて笑ってみせた。
「あなたは私など要らないんでしょう?」
「………誘惑するな」
マジェスは苦笑しながら衣服を整えた。手を拭ったハンカチを床に落として踏みつける。
「では、代わりに私に『塔京』を下さい」
カークは汚れたハンカチから目を上げた。
「…………父は生きているんでしょう……?」
一か八かの賭けは当たった。マジェスが苦い顔でそっぽを向く。
「……いいじゃありませんか。私が『塔京』を引き受けます。そうすれば、ハイトさんは父も『塔京』も手に入れられる」
「………お前に何が手に入る」
カークは目を伏せた。汚れた指先で胸の蝶をそっと撫でる。
「どうぞ、御心配なく……ハイトさんに反旗は翻しませんよ。あなたの読み通りにレグルもシュガットも堕ちたでしょう?」
暗に二人を競わせ煽ってカークを追い詰めたことを示唆すると、マジェスは凍った顔で睨みつけ、そのままくるりと背中を向けて部屋を出て行った。
ばたん、と激しい勢いで閉まった扉に重い体を引き起こす。まだ微かに勃っているのは薬が残っているせいだ。
満足などしていない。カークの飢え切り乾き切った心はあんなものでは慰められない、けれど。
「……オウライカさん」
放置された花束から薔薇を抜き取り、カークはその処理されていなかった棘を胸の蝶に突き立てた。
「く…っ」
ぎりぎりと引き降ろしていく痛みに、さすがに滲んだ涙が頬を伝う。裂かれた傷から滴った血が精液で汚れた身体に流れ落ちていく。
「………方法が、見つかった」
小さくそっと呟いた。
「あなたと一緒にいく、方法が」
だから、もうこの蝶は要りません。
カークは微かに唇を綻ばせた。
声を上げたのはレグルの方だった。びくびく震えた相手が唇を震わせてカークを睨みつける。
「だめ……まだですよ」
カークはとっさに入り込んだそれの根元を握り締めた。唸ったレグルがますます白い顔になり、すがりつくように伸ばしてきた右手を手で払いのけ、より深くまで銜え込む。
「ひい…っ」
がくがくっと激しい震えに身体を揺らせたレグルが目を剥きながらベッドを掴む。暴れるように跳ねた足がカークを上下させて、入ったものがようよう快感の場所を抉っていく。
「は…ぁっ」
仰け反りながら食い締める、がまだまだ足りない、うんと足りない。
カークは、のたうちながら声を上げて今にも萎えそうなレグルを貪る。どんどん力をなくしていくそれに、自分のものを扱き上げ、胸を摘んで快感を得て必死に追い掛け引き止めようとするが、ようやく効き出した薬の眩むような感覚よりもうんと薄くて、頼りなさに身悶えした。
「いや……いや……っ……もっと………も……っと…っ」
無意識に零れた哀願、けれど身体はどんどん温度を下げ、汗は流れる間もなく乾いていき、カークは飢え切ったままに置き去られていく。
「ぐ、ぐぁっ」
レグルがふいに激しく痙攣し、カークを強く突き上げた。
「あ、ぁっっ」
震えながら悦びの声を上げて、けれどすぐにがくりと沈み込む相手に苛立たしく見下ろして、カークは気付く、虚ろに光を失ったレグルの目と、開いた口元から零れる泡まじりの唾液、それに鼻からゆっくり伝い落ちていく生々しい紅に。
「レグルさん?」
自分のものを握ったまま、カークはぼんやりと声をかけた。頭の中心が失ってしまった快感をまだ追い掛けていて戻ってこれない。
ただ、自分の内側に銜え込んでいたものがぐうっと一瞬強く怒脹した後、空気が抜けるように萎んでいって抜け出しながら、どろどろとした液体に滑っていくのを妙にはっきり感じ取った。
「………終わりだ、カーク」
「…………」
背後から呼び掛けられて振り返る。
霞んだ視界に、闇の中から姿を表したマジェスが薄笑いを浮かべているのが見えた。
「救急車が必要なようだ。それとも葬儀屋の方がいいか」
言われて跨がった体に手を当てる。
いつの間にかひんやりとした固さが肉の底に溜まってきているそれをしばらく見下ろしていたが、やがてカークはのろのろとベッドから降りた。
「彼としては本望だろうな、男の本懐というやつかもしれない」
ポケットに手を突っ込んで笑う相手の前へゆらゆら近付き跪いた。笑みを消した相手に懇願するように手を差し出して、スラックスのチャックに手をかける。
拒まれないのを是と取って、引き下げて開き、わずかに膨らんだそれを取り出し、口に含む。その温かさにほっとした。
「………何が…望みだ、カーク」
「んっ……ん…」
口の中で見る見る固く容量を増してくるものに安堵し、なおも舌を絡めてむしゃぶりつく。半勃ちになっていた自分のものをマジェスが靴の先で押し上げてくれて、夢中になって感覚を追った。
「カーク……もう男なしではいられないか」
嘲笑う声を聞き流して駆け上がっていく。
「……っ、もう……っ」
「む…っ」
口を開いてマジェスのものを解放すると、跳ねたそれが顔に飛沫を叩きつける。一歩相手が離れたのを確認してから自分もマジェスの前で吹き上げて、崩れるように腰を落とした。
「ふ……ぅ…」
濡れた自分のものはマジェスに晒したまま、顔に散ったものを掌で拭って口におさめる。それをじっと見ている相手に、ゆっくり目を細めて笑ってみせた。
「あなたは私など要らないんでしょう?」
「………誘惑するな」
マジェスは苦笑しながら衣服を整えた。手を拭ったハンカチを床に落として踏みつける。
「では、代わりに私に『塔京』を下さい」
カークは汚れたハンカチから目を上げた。
「…………父は生きているんでしょう……?」
一か八かの賭けは当たった。マジェスが苦い顔でそっぽを向く。
「……いいじゃありませんか。私が『塔京』を引き受けます。そうすれば、ハイトさんは父も『塔京』も手に入れられる」
「………お前に何が手に入る」
カークは目を伏せた。汚れた指先で胸の蝶をそっと撫でる。
「どうぞ、御心配なく……ハイトさんに反旗は翻しませんよ。あなたの読み通りにレグルもシュガットも堕ちたでしょう?」
暗に二人を競わせ煽ってカークを追い詰めたことを示唆すると、マジェスは凍った顔で睨みつけ、そのままくるりと背中を向けて部屋を出て行った。
ばたん、と激しい勢いで閉まった扉に重い体を引き起こす。まだ微かに勃っているのは薬が残っているせいだ。
満足などしていない。カークの飢え切り乾き切った心はあんなものでは慰められない、けれど。
「……オウライカさん」
放置された花束から薔薇を抜き取り、カークはその処理されていなかった棘を胸の蝶に突き立てた。
「く…っ」
ぎりぎりと引き降ろしていく痛みに、さすがに滲んだ涙が頬を伝う。裂かれた傷から滴った血が精液で汚れた身体に流れ落ちていく。
「………方法が、見つかった」
小さくそっと呟いた。
「あなたと一緒にいく、方法が」
だから、もうこの蝶は要りません。
カークは微かに唇を綻ばせた。
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