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48.『門番』(2)
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それから結構な時間が立っているが、さすがにその趣味はないというだけあって、怒張はするし、かなりの快感を得ているようなのに、エバンスは制御を失っていない。もう少し、のところまで来ては、巧みに息を吐いて緊張を緩められてしまう。
逆にどっちかというと、ライヤーの方が少し疲れてきたかもしれない。なにせ、『塔京』に入ってから、ひたすらカーク率いる中央宮へ突き進んできている。疲労もそれとなく溜まってはきている。
仕方ないな、とライヤーは目を細めた。
エバンスと言えば、かつてのオウライカの部下でもあるし、今ではカークを支える四天王の一角とも言える相手、そうそう派手な手段には出たくなかったのだが、このままではここで潰されてしまう可能性もある。
舌を絡めて刺激を繰り返しながら、意識を絞り込んでゆっくりエバンスの中に入り込む。呼吸音を合わせ、身体が脈打つペースを掴み、それに自分を寸秒違いなく重ねていくと、次第に境界が緩くなってきた。
ファローズやネフェルのように快感で揺さぶってその隙に入り込むのは比較的簡単だ。防御も緩くなっているし反撃も受けにくい。しかし、そうでないやり方は抵抗も強いし、逆に相手にコントロールされる可能性もある。よほどのことがないと試したくないところだ。
考えつつも、じんわりとエバンスの深みに意識を沈めていく。
やがて暗い大きな空間のイメージが現れてきて、ライヤーは眉を潜めた。今まであまり見たことがない紋章、強いていえば、そうだ、と気付いたのはオウライカの『蝶』が舞い飛ぶ空間で。
オウライカさん?
オウライカさんの紋章のニュアンスがなぜこんなところに?
ライヤーの胸の問いを聞いたように、ふいにその空間の彼方にぽつんと浮かび上がったものがある。
真夏の強い日射しに照らされ灼かれているような黄色がかった石造りの門だ。風雨に晒されてあちこち崩れかけてはいるが、柱の中に揺らがぬ意志を保っている、その気配がオウライカにひどく似ている。
門はその中に透明な扉を備えていた。
見かけは開放されていて誰でも入り込める、向こうには何も隠されていないように見える。
だが、押し入ろうとしたら簡単に跳ね返された。そればかりか、門そのものがより強固にライヤーの侵入を拒否し、誇りを示すかのように身震いして驚いた。
これは。
この強烈な怒りは。
「え…っ」
感じ取った意識に、思わずライヤーは口を放して顔を上げた。
「エバンスくん……君、オウライカさんのためにここを守ってるの?」
「……あんただけがあの人の補佐だと思うなよ」
さすがに今のは際どかったらしく、呼吸を乱しながらエバンスが汗に濡れた髪の下からライヤーを睨み付けてきた。揺れる瞳の中に激しい炎、それは外の階段で馬鹿にするな、と見下ろした色そのものだ。荒い息を逃がし、瞬きしてライヤーに問い正す。
「あの人は、まだ無事なのか」
「……うん」
「方法は、見つかったのか」
「……まだ」
「……くそ…っ」
苦しそうにエバンスが眉を寄せて目を閉じる。
門はきしみながら揺れている。ライヤーの指に包まれたそれも、今にも弾け飛びそうだ。
「君……ゲートキーパー……だったのか」
「…『塔京』だって……あの人が要るんだ……っ」
喘ぐようにエバンスが唸った。
「あの人の帰還を、あの人の復帰を……どれだけみんな待っているか」
オウライカが『斎京』に放逐されて、トラスフィがそれを追っていって、残ったエバンスを周囲はそれとなく嘲笑した。主を売っても自分の地位が大事なのか、と。主人を追放した相手に尻尾を振る犬が居る、と。
「それでも……それでも、『塔京』こそ、あの人を必要としてるんだ…っ」
切ない声が月光踊る部屋に零れる。
「……だから、まだここで守ってたのか」
ふぅ、とライヤーは溜め息をついた。指の中で震えて揺れているものに、ゆっくり刺激を加え始める。
「……僕に任せてよ、エバンスくん」
「……っ、く」
エバンスが動きそうになった腰を堪える。
「僕が……引き受けるから」
「っぁ、あっ」
ずっぽりと口の中におさめると、エバンスが大きく震えて悲鳴を漏らした。
紋章の門は今にも崩れそうに揺らぎ、見えない扉が空間をたわめて揺れているのがわかる。
過敏なところをライヤーの舌先がくすぐるたびに、エバンスは呻きながらひじ掛けを握った。それでも何度も襲ってくる波に腰を浮かせながらも耐えて、激しい息で吐き捨てる。
「僕……僕……だって……できる…っ」
「ううん」
「っっ」
ぎゅ、と根元を押さえてライヤーは口を放した。達しかけたのを遮られて、エバンスが熱に揺らぐ視線で見返してくる。
「君には、無理だよ」
「っ……う、……う、ぁっ」
そのまま意識の触手に力を込めて、容赦なく、まっすぐ透明な扉を突き破る。
「ひ…い……っ」
意識だけで弾け飛んで仰け反ったエバンスが、見開いた瞳から悔しそうに涙を零す。頬にゆっくり伝わっていくそれを、ライヤーは伸び上がって丁寧に舐め取った。
「だって、僕ほど飢えてない」
耳元で囁いてやると、エバンスが目を閉じたまま深くから震えた。
「…は……ぅ…」
「けれど……ありがとう、長い間」
ライヤーは敬意を込めて低く呟いた。
「後は僕が交代するよ」
逆にどっちかというと、ライヤーの方が少し疲れてきたかもしれない。なにせ、『塔京』に入ってから、ひたすらカーク率いる中央宮へ突き進んできている。疲労もそれとなく溜まってはきている。
仕方ないな、とライヤーは目を細めた。
エバンスと言えば、かつてのオウライカの部下でもあるし、今ではカークを支える四天王の一角とも言える相手、そうそう派手な手段には出たくなかったのだが、このままではここで潰されてしまう可能性もある。
舌を絡めて刺激を繰り返しながら、意識を絞り込んでゆっくりエバンスの中に入り込む。呼吸音を合わせ、身体が脈打つペースを掴み、それに自分を寸秒違いなく重ねていくと、次第に境界が緩くなってきた。
ファローズやネフェルのように快感で揺さぶってその隙に入り込むのは比較的簡単だ。防御も緩くなっているし反撃も受けにくい。しかし、そうでないやり方は抵抗も強いし、逆に相手にコントロールされる可能性もある。よほどのことがないと試したくないところだ。
考えつつも、じんわりとエバンスの深みに意識を沈めていく。
やがて暗い大きな空間のイメージが現れてきて、ライヤーは眉を潜めた。今まであまり見たことがない紋章、強いていえば、そうだ、と気付いたのはオウライカの『蝶』が舞い飛ぶ空間で。
オウライカさん?
オウライカさんの紋章のニュアンスがなぜこんなところに?
ライヤーの胸の問いを聞いたように、ふいにその空間の彼方にぽつんと浮かび上がったものがある。
真夏の強い日射しに照らされ灼かれているような黄色がかった石造りの門だ。風雨に晒されてあちこち崩れかけてはいるが、柱の中に揺らがぬ意志を保っている、その気配がオウライカにひどく似ている。
門はその中に透明な扉を備えていた。
見かけは開放されていて誰でも入り込める、向こうには何も隠されていないように見える。
だが、押し入ろうとしたら簡単に跳ね返された。そればかりか、門そのものがより強固にライヤーの侵入を拒否し、誇りを示すかのように身震いして驚いた。
これは。
この強烈な怒りは。
「え…っ」
感じ取った意識に、思わずライヤーは口を放して顔を上げた。
「エバンスくん……君、オウライカさんのためにここを守ってるの?」
「……あんただけがあの人の補佐だと思うなよ」
さすがに今のは際どかったらしく、呼吸を乱しながらエバンスが汗に濡れた髪の下からライヤーを睨み付けてきた。揺れる瞳の中に激しい炎、それは外の階段で馬鹿にするな、と見下ろした色そのものだ。荒い息を逃がし、瞬きしてライヤーに問い正す。
「あの人は、まだ無事なのか」
「……うん」
「方法は、見つかったのか」
「……まだ」
「……くそ…っ」
苦しそうにエバンスが眉を寄せて目を閉じる。
門はきしみながら揺れている。ライヤーの指に包まれたそれも、今にも弾け飛びそうだ。
「君……ゲートキーパー……だったのか」
「…『塔京』だって……あの人が要るんだ……っ」
喘ぐようにエバンスが唸った。
「あの人の帰還を、あの人の復帰を……どれだけみんな待っているか」
オウライカが『斎京』に放逐されて、トラスフィがそれを追っていって、残ったエバンスを周囲はそれとなく嘲笑した。主を売っても自分の地位が大事なのか、と。主人を追放した相手に尻尾を振る犬が居る、と。
「それでも……それでも、『塔京』こそ、あの人を必要としてるんだ…っ」
切ない声が月光踊る部屋に零れる。
「……だから、まだここで守ってたのか」
ふぅ、とライヤーは溜め息をついた。指の中で震えて揺れているものに、ゆっくり刺激を加え始める。
「……僕に任せてよ、エバンスくん」
「……っ、く」
エバンスが動きそうになった腰を堪える。
「僕が……引き受けるから」
「っぁ、あっ」
ずっぽりと口の中におさめると、エバンスが大きく震えて悲鳴を漏らした。
紋章の門は今にも崩れそうに揺らぎ、見えない扉が空間をたわめて揺れているのがわかる。
過敏なところをライヤーの舌先がくすぐるたびに、エバンスは呻きながらひじ掛けを握った。それでも何度も襲ってくる波に腰を浮かせながらも耐えて、激しい息で吐き捨てる。
「僕……僕……だって……できる…っ」
「ううん」
「っっ」
ぎゅ、と根元を押さえてライヤーは口を放した。達しかけたのを遮られて、エバンスが熱に揺らぐ視線で見返してくる。
「君には、無理だよ」
「っ……う、……う、ぁっ」
そのまま意識の触手に力を込めて、容赦なく、まっすぐ透明な扉を突き破る。
「ひ…い……っ」
意識だけで弾け飛んで仰け反ったエバンスが、見開いた瞳から悔しそうに涙を零す。頬にゆっくり伝わっていくそれを、ライヤーは伸び上がって丁寧に舐め取った。
「だって、僕ほど飢えてない」
耳元で囁いてやると、エバンスが目を閉じたまま深くから震えた。
「…は……ぅ…」
「けれど……ありがとう、長い間」
ライヤーは敬意を込めて低く呟いた。
「後は僕が交代するよ」
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