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48.『門番』(1)
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「んん……っは、ぁん」
濡れた声で呻いて啼いた。気持ち良さそうに快楽を貪る喘ぎ、それを途切れ途切れに漏らしながら、ライヤーは椅子に座ったエバンスの前をくつろげ、差し出されたものを含んでいる。
「ん…ふ」
エバンスがさっきから眉をしかめて見下ろしているのは知っている。窓から入る月光が、暗い室内で自分の素肌を照らし出している。何がどれほど蠱惑的に見えるのかも計算済みだ。
「ねえ」
「…は、い」
呼び掛けられて唇をすぼめて吸い上げながら顔を上げた。く、と一瞬苦しそうな顔になったエバンスを微笑みながら見上げる。
「そんなことして…気持ちいいの」
「見れば、わかるでしょ?」
「っ…」
薄笑いして示した股間に、エバンスが顔を引きつらせた。
直接光に照らされていないけれど、ライヤーのその部分が勃ち上がって濡れているのは微かな反射でわかるはずだ。
「僕は気持ちいいんですよ。エバンスくんは?」
「……」
エバンスは不愉快そうに眼鏡を押し上げて視線を窓の外へ逸らせた。さっきまで白く強ばっていたその頬が、今はわずかに紅潮している。もちろん、ライヤーの指に支えられて、さっきまでライヤーの口を満たしていたものも十分な熱さに張り詰めている。
「……続けても?」
「……ああ」
「んむ」
「っ」
舌を絡ませながら銜え込むと、ちらっと視界の端でそれを見遣ってきたエバンスが堪えかねたように顎を上げた。眉を潜めて目を閉じる、その顔に笑みを深めながら、ライヤーはなおも深く銜え込む。
『抱かれてみます? それとも……僕を抱いてみます、エバンスくん?』
そう尋ねて返ってきた応えはそっけなかった。
『無理だろう』
『無理?』
エバンスくんは僕相手じゃ勃ちそうにないってことですか。
淡々と確認するライヤーに舌打ちして、エバンスは吐き捨てた。
『僕には抱くどころか、抱かれる趣味もないよ』
『ええ、ですから』
抱いてみますか、って聞きましたけど?
そう繰り返すライヤーをじろりと睨み返して、
『カークはあんたを抱くんじゃない』
『………ああ、そういうこと』
『僕がどう感じようとカークの感覚には関係がない』
『なるほど』
このあたりがエバンスのエバンスたる所以だよね、とライヤーは思う。
レンが基本的に、自分の基準に合えば物事は展開していくと考えているのに比べて、エバンスはあらゆる事態、あらゆる可能性を検討し、その最大確率の方向を選ぶことに固執する。
今回のカークに差し出す『人間』の難しさを、レンよりは十分深く、いや深すぎるほどに考えているのだ。
『じゃあ、こうしては?』
『え?』
『口は男でも女でも変わらない』
開いてみせた口から舌を出して、ぺろりと唇を舐めてみせる。
『こちらだけでも確認しては?』
『……やってみろよ』
ただし、僕にはそういう趣味は一切ないからな。
挑戦するように言い放って、エバンスは椅子に座ってライヤーを見上げた。
『……では、お言葉に甘えて』
微笑んでライヤーは部屋の灯を消し、ドアに鍵をかけた。ネクタイを緩めながらデスクを回り、半開きになっていたブラインドを全開にする。
薄赤く染まっていた空の色が見る見る消えていく中で、上着を落とし、ベルトを外した。シャツのボタンを丁寧に外しながら、じっとエバンスを見下ろす。冷たい光を跳ね返す眼鏡に映る自分を見ながら、ボタンを全部外してからスラックスのチャックを降ろした。
そのまま下着の上からまだ穏やかにおさまっている自分のものをゆっくり撫で摩る。
エバンスの視線が一瞬うろたえたように泳ぐのに、くすりと笑うと、相手はむっとしたように睨みつけてきた。その視線に晒されたまま、下着の中に手を滑り込ませて引き上げる。
指の冷たさに思わず震えて、それが胸の先を尖らせたのがわかった。確認するように指先を胸に這わせる。エバンスが目を見開いたまま、ライヤーの指を追い掛ける。
『…ん…』
ぎゅ、と強く摘んでライヤーは眉を潜めて一瞬目を閉じた。
再び目を開けると、エバンスは食い入るようにライヤーの股間で動く指を見つめている。ライヤーはそれを意識したまま、シャツを脱いだ。
アンダーシャツを着ていなかった肌が外気に触れて波をたてるように震える。無造作に床に落としてから、スラックスもずり落とすと、もう下着を押し上げて緊張を高めているものが剥かれて揺れた。
だが、それに視線を集める前に膝をつき、エバンスのスラックスの前を開く。
『……下さいね?』
『……く…』
ライヤーの口が含んだ瞬間、エバンスはきつくひじ掛けを握り締めた。
濡れた声で呻いて啼いた。気持ち良さそうに快楽を貪る喘ぎ、それを途切れ途切れに漏らしながら、ライヤーは椅子に座ったエバンスの前をくつろげ、差し出されたものを含んでいる。
「ん…ふ」
エバンスがさっきから眉をしかめて見下ろしているのは知っている。窓から入る月光が、暗い室内で自分の素肌を照らし出している。何がどれほど蠱惑的に見えるのかも計算済みだ。
「ねえ」
「…は、い」
呼び掛けられて唇をすぼめて吸い上げながら顔を上げた。く、と一瞬苦しそうな顔になったエバンスを微笑みながら見上げる。
「そんなことして…気持ちいいの」
「見れば、わかるでしょ?」
「っ…」
薄笑いして示した股間に、エバンスが顔を引きつらせた。
直接光に照らされていないけれど、ライヤーのその部分が勃ち上がって濡れているのは微かな反射でわかるはずだ。
「僕は気持ちいいんですよ。エバンスくんは?」
「……」
エバンスは不愉快そうに眼鏡を押し上げて視線を窓の外へ逸らせた。さっきまで白く強ばっていたその頬が、今はわずかに紅潮している。もちろん、ライヤーの指に支えられて、さっきまでライヤーの口を満たしていたものも十分な熱さに張り詰めている。
「……続けても?」
「……ああ」
「んむ」
「っ」
舌を絡ませながら銜え込むと、ちらっと視界の端でそれを見遣ってきたエバンスが堪えかねたように顎を上げた。眉を潜めて目を閉じる、その顔に笑みを深めながら、ライヤーはなおも深く銜え込む。
『抱かれてみます? それとも……僕を抱いてみます、エバンスくん?』
そう尋ねて返ってきた応えはそっけなかった。
『無理だろう』
『無理?』
エバンスくんは僕相手じゃ勃ちそうにないってことですか。
淡々と確認するライヤーに舌打ちして、エバンスは吐き捨てた。
『僕には抱くどころか、抱かれる趣味もないよ』
『ええ、ですから』
抱いてみますか、って聞きましたけど?
そう繰り返すライヤーをじろりと睨み返して、
『カークはあんたを抱くんじゃない』
『………ああ、そういうこと』
『僕がどう感じようとカークの感覚には関係がない』
『なるほど』
このあたりがエバンスのエバンスたる所以だよね、とライヤーは思う。
レンが基本的に、自分の基準に合えば物事は展開していくと考えているのに比べて、エバンスはあらゆる事態、あらゆる可能性を検討し、その最大確率の方向を選ぶことに固執する。
今回のカークに差し出す『人間』の難しさを、レンよりは十分深く、いや深すぎるほどに考えているのだ。
『じゃあ、こうしては?』
『え?』
『口は男でも女でも変わらない』
開いてみせた口から舌を出して、ぺろりと唇を舐めてみせる。
『こちらだけでも確認しては?』
『……やってみろよ』
ただし、僕にはそういう趣味は一切ないからな。
挑戦するように言い放って、エバンスは椅子に座ってライヤーを見上げた。
『……では、お言葉に甘えて』
微笑んでライヤーは部屋の灯を消し、ドアに鍵をかけた。ネクタイを緩めながらデスクを回り、半開きになっていたブラインドを全開にする。
薄赤く染まっていた空の色が見る見る消えていく中で、上着を落とし、ベルトを外した。シャツのボタンを丁寧に外しながら、じっとエバンスを見下ろす。冷たい光を跳ね返す眼鏡に映る自分を見ながら、ボタンを全部外してからスラックスのチャックを降ろした。
そのまま下着の上からまだ穏やかにおさまっている自分のものをゆっくり撫で摩る。
エバンスの視線が一瞬うろたえたように泳ぐのに、くすりと笑うと、相手はむっとしたように睨みつけてきた。その視線に晒されたまま、下着の中に手を滑り込ませて引き上げる。
指の冷たさに思わず震えて、それが胸の先を尖らせたのがわかった。確認するように指先を胸に這わせる。エバンスが目を見開いたまま、ライヤーの指を追い掛ける。
『…ん…』
ぎゅ、と強く摘んでライヤーは眉を潜めて一瞬目を閉じた。
再び目を開けると、エバンスは食い入るようにライヤーの股間で動く指を見つめている。ライヤーはそれを意識したまま、シャツを脱いだ。
アンダーシャツを着ていなかった肌が外気に触れて波をたてるように震える。無造作に床に落としてから、スラックスもずり落とすと、もう下着を押し上げて緊張を高めているものが剥かれて揺れた。
だが、それに視線を集める前に膝をつき、エバンスのスラックスの前を開く。
『……下さいね?』
『……く…』
ライヤーの口が含んだ瞬間、エバンスはきつくひじ掛けを握り締めた。
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