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85.『沈降』(3)
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ライヤーは何度目かの精を放った後じっとしている。カークももう揺さぶられず崩れたままで目を閉じている。けれど、その繋がっている部分から、何かが絶えずずっと力強く流れ出し注ぎ込まれてカークの体を温めていく。それはカークの体の中を緩やかに巡り、唇を通り抜けざまにふわりと薫り、伸ばした指からも溢れ出て見えない力を周囲に流し満たしていく。
「……」
どれほど時がたったのか。
ゆっくりと目を開けた。
視界がきらきら光るもので覆われている。
静かに四つん這いになって体を前へ傾けると、抜け落ちた感触の後,背中にどさりと重みがかかって思わず潰れた。
「ライヤー…」
「…」
密やかな吐息が背中に当たる。唇の感触がくすぐったい。
「…重い」
文句をつけながらも、自分にのしかかったまま意識を失っている相手に僅かに微笑む。と、そろそろと、崩れた拍子に体の脇に添わせた自分の手をまさぐるもう一つの手があった。
見下ろすと、真っ白な自分の細い指先を、似たような白さだが、遥かに大きくがっしりとした手が摘み引き寄せ、握り込む。
竜の手ではなかった。
「起きろ、ライヤー」
「…」
命じると背中でもぞもぞと動く気配があって、そのままずり上がってくる感覚に眉を寄せた。
「…重いぞ」
すり寄せられてくる一物は濡れている。まだ温かく、そのまま引きずられて背中にまで当たる。うつ伏せに倒れているカークを、動物が赤ん坊を腹の下に庇うように包み込んだ気配が覗き込んでくる。
「…」
一瞬、真っ黒な尖った顔に見えた。牙を剥き出し、そのまま喰われてもいいような、巨大なあぎとが目の前で開く。
「カークさん」
ライヤーの声がして瞬くと、すぐにどこか情けない表情の男に戻った。
「戻って…下さい」
相手の瞳から溢れ落ちた涙をじっと見上げた。
「何だ、それは」
「え…」
「みっともなくぐしょぐしょの顔だ」
「無理を言わないで下さい」
ライヤーは泣き続けている。
その涙にもまた、渇きを癒されて思わず吐息を漏らした。目を閉じ、寝そべる。
ひどく眠い。
「……行って来い」
「カークさん…」
「あれをもう、自由にしてやってくれ」
「…」
応えのない相手に薄目を開ける。泣き顔は消えていた。底冷えのするような鋭い瞳に満足する。何て顔をする、まるで研ぎすまされた数千の刃のような殺気で、もう一度犯されそうだ。
「私はまだ動けない」
白竜もまだ、黒竜に満たされたばかりで、体の構築に至らない。
「いやです」
「…行け」
「離れたくない」
「何のために…ここまで来たんだ」
「っ」
一旦閉じた目を再び開けてライヤーを見やる。
「私はもう……大丈夫だ」
ゆっくり体を起こす。動きに従って、同じように体を起こしたライヤーが、ごくりと唾を呑み込むのに薄笑いした。
「果実の…ようだろ」
「っ」
脚を開いてみせる。薄赤く顔をほてらせるライヤーに、
「…お前のものだ」
「カーク…」
「お前が満たして……お前が…開いた」
ライヤーが驚きに目を見開く。『紋章』が見えたのだろう。
「私は……お前のために……実った…」
さすがに顔が熱くなった。
自分の『紋章』がどんな形をしているのかはわからないが、感じることはできる。どれほど自分がライヤーを待ち望んでいるのかも。
「……戻ったら…」
掠れる声を励ました。
「…次は二度と…離れるな」
それでも思わず顔を背けたカークのこめかみに、ライヤーがふいに唇で触れた。
「僕も永遠に…あなたのものです」
「…」
カークの頬が零れ落ちた涙で濡れた。
「……」
どれほど時がたったのか。
ゆっくりと目を開けた。
視界がきらきら光るもので覆われている。
静かに四つん這いになって体を前へ傾けると、抜け落ちた感触の後,背中にどさりと重みがかかって思わず潰れた。
「ライヤー…」
「…」
密やかな吐息が背中に当たる。唇の感触がくすぐったい。
「…重い」
文句をつけながらも、自分にのしかかったまま意識を失っている相手に僅かに微笑む。と、そろそろと、崩れた拍子に体の脇に添わせた自分の手をまさぐるもう一つの手があった。
見下ろすと、真っ白な自分の細い指先を、似たような白さだが、遥かに大きくがっしりとした手が摘み引き寄せ、握り込む。
竜の手ではなかった。
「起きろ、ライヤー」
「…」
命じると背中でもぞもぞと動く気配があって、そのままずり上がってくる感覚に眉を寄せた。
「…重いぞ」
すり寄せられてくる一物は濡れている。まだ温かく、そのまま引きずられて背中にまで当たる。うつ伏せに倒れているカークを、動物が赤ん坊を腹の下に庇うように包み込んだ気配が覗き込んでくる。
「…」
一瞬、真っ黒な尖った顔に見えた。牙を剥き出し、そのまま喰われてもいいような、巨大なあぎとが目の前で開く。
「カークさん」
ライヤーの声がして瞬くと、すぐにどこか情けない表情の男に戻った。
「戻って…下さい」
相手の瞳から溢れ落ちた涙をじっと見上げた。
「何だ、それは」
「え…」
「みっともなくぐしょぐしょの顔だ」
「無理を言わないで下さい」
ライヤーは泣き続けている。
その涙にもまた、渇きを癒されて思わず吐息を漏らした。目を閉じ、寝そべる。
ひどく眠い。
「……行って来い」
「カークさん…」
「あれをもう、自由にしてやってくれ」
「…」
応えのない相手に薄目を開ける。泣き顔は消えていた。底冷えのするような鋭い瞳に満足する。何て顔をする、まるで研ぎすまされた数千の刃のような殺気で、もう一度犯されそうだ。
「私はまだ動けない」
白竜もまだ、黒竜に満たされたばかりで、体の構築に至らない。
「いやです」
「…行け」
「離れたくない」
「何のために…ここまで来たんだ」
「っ」
一旦閉じた目を再び開けてライヤーを見やる。
「私はもう……大丈夫だ」
ゆっくり体を起こす。動きに従って、同じように体を起こしたライヤーが、ごくりと唾を呑み込むのに薄笑いした。
「果実の…ようだろ」
「っ」
脚を開いてみせる。薄赤く顔をほてらせるライヤーに、
「…お前のものだ」
「カーク…」
「お前が満たして……お前が…開いた」
ライヤーが驚きに目を見開く。『紋章』が見えたのだろう。
「私は……お前のために……実った…」
さすがに顔が熱くなった。
自分の『紋章』がどんな形をしているのかはわからないが、感じることはできる。どれほど自分がライヤーを待ち望んでいるのかも。
「……戻ったら…」
掠れる声を励ました。
「…次は二度と…離れるな」
それでも思わず顔を背けたカークのこめかみに、ライヤーがふいに唇で触れた。
「僕も永遠に…あなたのものです」
「…」
カークの頬が零れ落ちた涙で濡れた。
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