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第3章
4.マック(9)
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それが何をもたらすのか、十分理解しながら美並は静かに指を止めた。戸惑うように真崎が瞬きをして腰を揺らすが応じない。
「何を…って…」
「マフラーを捨てたのは、そのせい?」
「っ」
苦しそうに真崎は唇を噛んで顔を背けた。染まった耳たぶが花の蕾のように見える。唇で触れてみたい、舌で探って柔らかさを感じたい、そんな気持ちに襲われて、美並は少しだけ指を動かす。
すぐに真崎が動きに合わせて腰を揺らせ、熱をたたえた声でねだってきた。
「みなみ……もっと…」
「いいですよ、けど、話してくれたらね?」
自分が自分ではないような気がした。
快楽を引き換えに真崎の扉を開けさせる、きっとどんな正当化も許されないだろうに、踏み込むことにためらわない自分が居るのを、美並は感じる。
「そ…んな………やだ……」
甘い声が響いたとたん、声に含まれた僅かな余裕に逃げ込まれる予感を感じた。不安を快感に摺り替えて、きっと今まで目を背けてきたはずだ、大輔のひどい行為からも。
「応えて、京介?」
「あっ」
握りしめたのは意図があってというよりは、気持ちよさそうに膨れ上がる、その快楽の根元を封じたいと思ったから。そのまま再びもう片方の指先で撫で始めた美並に、真崎は掠れた悲鳴を上げて身悶えし、喘ぎながら半泣きで訴える。
「や……イけな…っ……うっ」
そうなのか。ここをこうすると、駆け上がれなくなってしまうのか。
納得しながら気がついた。
扉がさっきより強く激しくきしみだしている。揺れてたわんで、今にも弾けそうになっている。
ひょっとしたら、真崎は快感に溺れて初めて抑制を解くことができるのかもしれない。刷り込まれた仮面を剥がれてようやく傷みを差し出せるのかもしれない。
ならば。
「話して?」
なおも煽りながら強く握る。
「く……う…っ」
堪えようと歯を食いしばる真崎の目から涙が零れる。
「もっと?」
「は…ぅ」
伝い落ちる涙が無性に大切なものに思えて、美並は唇を寄せた。そのままさっきから気になっていた耳たぶへ、舌先で探って舐めてみる。
「ひ…っ…ぁ、あ、あっ」
真崎は声を上げて身体を震わせた。もう指先が触れるだけで、呻いて何度も腰を揺らせ、それでも堪え切れないのか、必死に見上げてきて懇願する。
「イか…せ……て…っ」
その目の奥に、限界まで撓んで弾け飛びそうな扉が見えた。
「交換条件ですよ?」
大きく頷く真崎の目は既に蕩けて視野がないようだ。素通しになった暗闇の世界で、扉の向こうにさっき見えたばかりの艶やかな姿の気配が舞う。
そうか、大輔も、これを見たんだ。
ふいに気付いた事実に美並は愕然とする。
「は、あっ」
掠れた声と同時に、ばしっ、と扉の一ケ所が弾け飛んだ。蟻の穴から巨大な堤が決壊するように次々と吹き飛ぶ扉を感じるのか、真崎がうろたえたように自分でも握り締める。
それでも止められずに、やがて扉の最後の一片が、真崎の指先からすり抜けて、美並の掌に零れ落ちる。
「あ……あ、ああっ」
砕けた扉の向こうで、真崎は大きく身体を震わせながら、晴れやかな歓喜の声を放った。
「何を…って…」
「マフラーを捨てたのは、そのせい?」
「っ」
苦しそうに真崎は唇を噛んで顔を背けた。染まった耳たぶが花の蕾のように見える。唇で触れてみたい、舌で探って柔らかさを感じたい、そんな気持ちに襲われて、美並は少しだけ指を動かす。
すぐに真崎が動きに合わせて腰を揺らせ、熱をたたえた声でねだってきた。
「みなみ……もっと…」
「いいですよ、けど、話してくれたらね?」
自分が自分ではないような気がした。
快楽を引き換えに真崎の扉を開けさせる、きっとどんな正当化も許されないだろうに、踏み込むことにためらわない自分が居るのを、美並は感じる。
「そ…んな………やだ……」
甘い声が響いたとたん、声に含まれた僅かな余裕に逃げ込まれる予感を感じた。不安を快感に摺り替えて、きっと今まで目を背けてきたはずだ、大輔のひどい行為からも。
「応えて、京介?」
「あっ」
握りしめたのは意図があってというよりは、気持ちよさそうに膨れ上がる、その快楽の根元を封じたいと思ったから。そのまま再びもう片方の指先で撫で始めた美並に、真崎は掠れた悲鳴を上げて身悶えし、喘ぎながら半泣きで訴える。
「や……イけな…っ……うっ」
そうなのか。ここをこうすると、駆け上がれなくなってしまうのか。
納得しながら気がついた。
扉がさっきより強く激しくきしみだしている。揺れてたわんで、今にも弾けそうになっている。
ひょっとしたら、真崎は快感に溺れて初めて抑制を解くことができるのかもしれない。刷り込まれた仮面を剥がれてようやく傷みを差し出せるのかもしれない。
ならば。
「話して?」
なおも煽りながら強く握る。
「く……う…っ」
堪えようと歯を食いしばる真崎の目から涙が零れる。
「もっと?」
「は…ぅ」
伝い落ちる涙が無性に大切なものに思えて、美並は唇を寄せた。そのままさっきから気になっていた耳たぶへ、舌先で探って舐めてみる。
「ひ…っ…ぁ、あ、あっ」
真崎は声を上げて身体を震わせた。もう指先が触れるだけで、呻いて何度も腰を揺らせ、それでも堪え切れないのか、必死に見上げてきて懇願する。
「イか…せ……て…っ」
その目の奥に、限界まで撓んで弾け飛びそうな扉が見えた。
「交換条件ですよ?」
大きく頷く真崎の目は既に蕩けて視野がないようだ。素通しになった暗闇の世界で、扉の向こうにさっき見えたばかりの艶やかな姿の気配が舞う。
そうか、大輔も、これを見たんだ。
ふいに気付いた事実に美並は愕然とする。
「は、あっ」
掠れた声と同時に、ばしっ、と扉の一ケ所が弾け飛んだ。蟻の穴から巨大な堤が決壊するように次々と吹き飛ぶ扉を感じるのか、真崎がうろたえたように自分でも握り締める。
それでも止められずに、やがて扉の最後の一片が、真崎の指先からすり抜けて、美並の掌に零れ落ちる。
「あ……あ、ああっ」
砕けた扉の向こうで、真崎は大きく身体を震わせながら、晴れやかな歓喜の声を放った。
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