『失せ物捜し』

segakiyui

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「おばちゃん、姿子おばちゃん!」
「まあ、またえらい勢いやねえ、友美ちゃん」
 ドアを開けてくれる間も惜しくて、玄関で靴を脱ぎ散らかし、私は姿子さんの側を擦り抜けて部屋に駆け込んだ。
「悟が来たよ、学校に!」
「おや、まあ、ひさしぶりやな、一週間ほど来たはらへんかったのと違う?」
「うん!」
 姿子さんはまたうっすらと微笑の形に目を細めた。
「ほな、またデートの約束してきたん?」
「ううん」
 私は首を振った。
「あの家も処分して、別のところへ引っ越すんだって。おかあさんとおばあさんと一緒に暮らすんだって。もう会えないかもしれないからって」
 私は一瞬こみあげたものを無理やり飲み込んだ。
「最後に会いに来てくれた」
「大木悟はええ男、その通りやったねえ」
 姿子さんは柔らかく笑った。
「友美ちゃんはそれを言いに来てくれはったん?」
「あ、違う、違う!」
 私は急いで手を振った。
「今度クラスに越してきた子がね…人を捜してるんだって!」
「友美ちゃん」
 姿子さんはふらふらとめまいがしたというふうに額に手を当てた。
「あのなあ、悟くんのことで懲りたと思てたんやけど」
「でも…、でもさ、おばちゃん」
 私は日高友秋を思い出した。
 ライオンみたいなぴんぴんした髪で、細身でケンカっぱやいけど、捨ててあった子犬に優しかったところを見てしまった。
「日高ってのは、ほんと…」
「ええ男はん」「いい男なのよ!」
 姿子さんの声と私の声が重なった。
「その惚れっぽいの、どうにかしよし」
 はあ、と姿子さんは吐息をついて、それでもコーヒーを用意し始めた。話を聞いてもいいよということに違いない。
「ええやん、おばちゃん、かわいい姪やろ、面倒みたって」
 姿子さんの背中からしなだれかかるようにして揺さぶってみる。使い慣れない京都弁、それでも姿子さんにはきっと通る。
「あれ、まあ」
 姿子さんは吹き出した。
 私も思いっきり笑いだし、にじんだ涙と初めての恋を吹き飛ばした。

                           おわり
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