開かない箱

segakiyui

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 僕はケータイを切った。
 そして、人が開けてしまったとんでもない箱と、それもろとも山ほどの死体を封じ込めた、もう一つの大きな箱のことを思った。
 現代科学の粋を集めて、封印は施されたことだろう。
 けれども、それが絶対開かないと、誰が保証できるのか。
 現に、ボックスは、遠い昔に、おそらくは細心の注意を払って封印されていた小箱を、何の考えもなく開けてしまったのだ。
 ただ、中身を見たいがために。
 いつか、誰かが、真実を知っている僕達が考えもつかないような気安さで、死ばかりが詰まっている箱を、何の覚悟もなしに開けてしまうに違いない。そして、僕達は理由を考える暇もなく、ばたばたと死んでいくのだろう、あの大きな箱に詰められた人々のように、この地球という閉ざされた巨大な箱の中で。
 なぜか少しずつ、不思議に落ち着いた気持ちになっていくのに気がついた。
 僕は秘密を知っている
 それを知っているがために、この先見えない敵に狙われ殺されていくのかもしれない。
 けれど、それはみんな同じじゃないか、と。

 あの箱は、明日にも誰かに開けられてしまうかもしれない。そして、人類は一カ月もたたずに滅んでしまうのかもしれない。
 だがそれは、もともと、みんなが持っていたものなのだ。
 本当は、みんな死という箱を抱えて歩いていて、それはある日突然、偶然のように開けられてしまうのだ。
 きっとそれは、あるかないかわからない、どうしようもない失敗や悲惨な人生とかいうよりも、よっぽど確かなものに違いない。
 もう、何にも怯えることはないのだ。

 僕は立ち上がり、バイトにでかけた。
 店を持ってみるのもいいかもしれない、と思いながら。
 もう二度と、このラインを使うことはないだろう。

                         おわり
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