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6.失われた記憶(3)
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「星の剣士(ニスフェル)!」
腕の中で、戸惑いを越え、ついにこちらへ落ちてくれそうだった体が、ふいに別の重さで沈んだのにぎょっとして、アシャは慌てて相手を支え直した。
「ユーノ?」
覗き込んだが、微かに呼吸はしているものの、完全に気を失ってしまっている。
「ちっ」
気づけば、ユーノの右肩あたりに薄赤い染みが滲み出していた。
「俺か?」
もう少しで記憶を取り戻す、そう焦って力を込め過ぎたのかと確かめると、どうも今すぐの出血ではなさそうだ。この斥候に出たあたりからもう出血し始めていたのを、意識して話さなかったのか、無意識に気がつかなかったのか。
(どうしていつもいつも、こいつは)
歯ぎしりするような想いに苛立つ。苦しいなら苦しいと早く言ってくれればいいのに、こうして気を失ってしまうまでアシャの腕に戻ってこない。
(どうせ、ここ二三日、碌に休んでないんだろう)
野戦部隊(シーガリオン)の野営場所までそれほど距離は離れていないが、もう日も暮れ切る。モスがうろついているのなら、夜襲をかけられては応戦できない。傷の具合も確認したいし、手当もしたい。
(来る途中に洞穴があったな)
『風の乙女(ベルセド)の住みか』のような深い裂け目ではなく、すぐ先に奥の壁が見えている程度のものだったが、一夜の宿ぐらいにはなるだろう。
「…よし」
取り急ぎ右肩を強めに圧迫して抱え直し、アシャは平原竜(タロ)の向きを変えた。
哀しい……。
(何が?)
自分が……。
それともこれも自己憐憫とやらの一種なんだろうか。
右肩が痛い……ズキズキと絶え間なく神経に牙をたててくる。ユカルが怒っている。動き回るからだぞ、と。
「ごめ……ユカル……」
小さくユーノは呟いた。
どうしたんだろう。呼吸が苦しい………息がうまい具合にできない。陸(おか)に上がった魚みたい。陸(おか)に上がった魚………彼らは歩いていったのだよ、と心の中の何かが呟いた。進むべき道へ。より、陸(おか)で生きていくのに適した体を得、心を得、魂を得た。あるものは空へ、あるものは地へ、あるものは再び水の中へ。ああ、しかし、それは何と長い旅であったことだろう。歩き続けたのだ……ゆっくりと……一歩ずつ。そして、彼らが陸(おか)をのし歩くのに、そう時間はかからなかった。彼らはいつの日か、こう思い始めたのだ。自らの意志で、この道を歩いて来たのだ、と。自らの意志で、よりよい、より高度な生を手に入れたのだと。
それは、彼らが覚えた最初の驕りであった。
(どうして、こんなことを考えているんだろう?)
詰まる胸を喘がせ、忙しく息を継ぎながら、ユーノは考えた。
(ボクは一体……誰なんだ?)
「う……」
顔を背けると、冷たい岩肌が頬にあたった。
(気持ちいい……)
苦しい呼吸、岩肌にもたれて辛さをしのぐ。
そっくりなことがあった気がする。いつだっただろう。同じように、右肩の傷を庇いながら岩にもたれていた。
そう言えば、この右肩は何で負傷したんだっけ……変だぞ、覚えがない。
(では、これは名誉ある野戦部隊(シーガリオン)として戦った傷ではないのか?)
疑いがよく肥えた土壌にまかれた麦のように素早く芽を出す。
(麦……麦……何かひっかかるもの………麦の祭り…)
祭り? ああ、そうだ。ボクはいろんな祭りを経験してきている。麦の祭り、結婚式、花の祭り……花の……舞台………逃げ出して……。
ズサアッ!!
(っ!)
記憶の隙間から突き出された剣が、いきなり背中を切り裂いた。
(っあ…っ)
声も上げられぬ苦痛
(あ…っああああ)
身悶えして絞り出す絶叫。
「う…あああああっ……」
「星の剣士(ニスフェル)!」
「あ……ああ……あ……っ!」
「星の剣士(ニスフェル)!!」
ぱん、と強く頬を叩かれて、ユーノは目を覚ました。
視界がもやもやと霞んでいる。もう一度目を閉じると、頬を焦がすほど熱いものが目尻から流れ落ちていく。
(ボクは……泣いてたのか…?)
「大丈夫か?」
呼びかけられて再び目を見開くと、薄明かりの中で、アシャの顔が心配そうにユーノを覗き込んでいた。ああ、と答えようとして声にならず、息を呑んで思わず、ひっく、としゃくりあげる。
叩いた頬を労るように手が当てられ、アシャの指がそっと涙を拭っていった。
「うなされていた」
柔らかな声が囁く。
「うん……」
弱く頷き、ユーノは目を閉じて、当てられた手の温かさを味わった。ふいに肩越しに風が流れ込んで来たのがひどく生々しく感じられ、びくりと体を竦めて目を開く。
「……っ」
風から庇うように左手で体を探り、自分が半裸に近い状態なのを知った。だが、それより何より、ユーノの心を衝撃で震わせたのは、明らかに男とは違う自分の胸の微かな膨らみだった。
(ボクは……やっぱり女……だったのか?……)
おそるおそるアシャに目をやると、隣に寝ていたらしく、上半身を起こした姿勢でユーノの上に屈み込んでいた。体を竦めているユーノにそっと毛布をかけて肩まで包んでくれながら、この上なく優しい目で見つめ返してくる。
「大丈夫か?」
「うん…」
まるで雛を守る親鳥のようだ、そう思いながら頷く。
「傷の手当が不十分だったんだな。槍傷で治りにくいところへ無理をしたからな」
「槍…傷…」
(槍で、傷ついた……?)
「何か思い出せるか?」
「……そんな気もするんだけど……」
なぜそんなことを知っているのだろう、そう思う反面、槍で傷つく、それではまるで仲間に裏切られたようなものだと思った気持ちをユーノはとっさに隠した。
(仲間と信じた相手に…裏切られる…)
息を吐いて目を閉じる。体の芯がぼうっと熱くなっている。
(それは…辛いな…)
ずきずき痛むのは、傷の部分ではなく、心のもっと奥底だ。視界の裏にくるくる翻る花びらの舞、なぜそんなものが浮かぶのかわからないまま瞬きしたのを、アシャは別の意味にとったようだ。
「疲れているようだな。もう少し寝るか?」
「うん……平原竜(タロ)は……?」
「穴の入り口で丸くなっている。風よけと侵入者よけになる」
「穴……」
言われて自分達が休んでいるのが小さな洞穴だと気づいた。ぼんやりと明るいのは光石(ひかりいし)があるせいらしい。
(光石(ひかりいし)…)
ぶるっとユーノは体を震わせた。
嫌な思い出がある。光石……何か、禍々しい影の記憶。
「寒いのか?」
「うう…ん……?」
アシャの問いに応じながら、眉をひそめる。
(前にも同じ問いかけがあった……あの時、ボクは何と答えた……?)
「……うん……ちょっと……」
「そうか」
アシャは毛布をより引っ張り上げ、しっかりユーノの体を包んでくれた。羽織っていたマントも着せかけてくれる。それを見ながら、膨れ上がってくる違和感に捉えられる。
(違う……もっと……違うこと……)
「アシャ…」
「うん?」
ユーノは呼びかけて左手を抜き出し、アシャに差し伸べた。不審気な表情になる相手におかまいなしに、近づいたアシャの体に巻き付け、引き寄せる。
「え…あ…」
拒みはしなかったが、アシャは複雑な表情でユーノを覗き込んできた。
「星の剣士(ニスフェル)?」
「違うんだ……あの時は……違ったんだ」
「あの時……? …っ」
繰り返してアシャははっとしたようだった。ユーノを見つめ、しばらく動かずに居たが、何かを決めたように素早く上半身の着衣を脱いだ。ためらう間も拒む間も与えずに、するりとユーノを覆った毛布の中へ滑り込み、傷に障らないようにユーノを抱き寄せてくれる。
「ん…」
(そうだ……これだ…)
安心して、その腕に包まれて、なのに同時に、居たたまれないような切なさに胸が詰まって、ユーノは身を竦めた。これで正しいはずなのに、なぜこんなに不安になるのか確かめようとして目を開けると、まるでそれを待っていたようにアシャが囁いてくる。
「まだ……寒いか?」
「ううん…」
(そうだ……確か……こう答えたんだ)
アシャの手が優しくユーノの頭を抱き寄せる。吐息が髪にかかって、体が思わず震える。甘い……甘い波……切なさに心が砕けそうだ。
「アシャ…」
「ん?」
(どうして、ボクは)
こんなにここに居ることに安心するのに、ここに居てはいけないんだと、これほど強く思うんだろう?
「アシャ……」
「どうした?」
(もう少しなのに)
確信したい、この腕の中に居ることが正しいのだと。なのに、思った瞬間に、氷の底に閉じ込められるようなこの寒さは、胸を断ち割られるような痛みは、どこからやってくるのだろう。
「ごめん……」
「……」
涙がにじむ。ここから踏み込めないもどかしさだけではなくて、何か取り返しのつかない出来事を味わっているような気がして。
「ここまでしか……思い出せない」
嘘をついた。
「……」
ふっとアシャの体が緊張したが、すぐに緩んだ。静かに手を離してくれる。
「無理しなくていい。今は休んでいろ」
「うん…」
頷き、ほっとする。アシャの胸に頭を寄せて、腕の中に潜り込む。
(あったかいね……アシャ)
今はもうそれだけでいい。
それだけで、全ては報われ、何もかもうまくいくような気がして、今度は夢も見ずにユーノは眠り込んだ。
(切ないよな)
すうすうと寝息をたてるユーノに、アシャは小さく溜め息をついた。
(せっかくこいつが側にいる、というのに)
アシャはそろそろと両腕を頭の後ろに敷き込んで指を組み、岩天井を見上げる。今夜はまんじりともできないだろうとは覚悟の上だが、ユーノにこれ以上手を出さないためにはかなりの克己心がいりそうだ。
毛布の下、まるで胎児のように丸くなって眠っている相手を覗き込む。荒れた頬にまだ微かに涙の跡が残っている。
(笑顔を見てない)
アシャは眉を寄せた。
そうだ、ずいぶん長い間、ユーノの笑顔を見ていない。特に、ガズラの『忘却の湖』での闘い以来、ユーノには寛いでいる暇がほとんどなかった。戦っているか、緊張しているか、疲れ切って眠っているか、だ。
(記憶喪失、か)
或いはそれは、運命の神とやらの配慮なのかも知れない。十七歳の少女の身には、あまりにも辛すぎる運命を、一時なりと忘れさせようと言う。
(いや…そうじゃない)
もし、運命の神がそれほど慈悲深いのなら、そもそもユーノにこんな運命を負わせたりはしなかっただろう。ユーノは、世の幸せを一生約束された『銀の王族』だ。もし、そう望むのなら、人生は明るく楽しいものとなっていたはずだし、
セレド皇族の第二皇女として、何不自由ない日々を送ることができただろう。家族を守りたがたいために一人戦って傷つくこともなく、あの温暖なセレドの地でのびのびと生きていけたに違いない。ドレスを身に付け、髪に花を飾り、愛しい人の名を呼びながら微笑する……。
『アシャ!』
「!」
ぼんやり夢想していたアシャは、空想の中のユーノが自分の名を呼んだのにぎくりとして我に返り、苦笑した。
(俺も結構しつこいな)
再び視線をユーノに落とす。
男の子のように短い髪は疲れた表情を浮かべる頬に乱れている。細い首筋は痛々しく包帯を巻き付けた肩へと続き、華奢な体には白くくっきりとした傷痕が走っている。
(ドレスの代わりに包帯、花を飾るのではなく剣を髪に当てる少女…)
「『銀の王族』か…」
眉を険しく寄せた。
ラズーンで『銀の王族』を待っているのは、決して楽しいものではない。『氷の双宮』に迎えられた彼らを待ち受けるのは、情け容赦ないラズーンの洗礼であり、時には洗礼を受けたことでこの世に戻ってこれない者もある、心への審問だ。
「ん…ユカル…」
ユーノが小さく呟き、思わず顔がひきつるのを感じた。
ユーノがユカルを呼んだのはこれで二度目だ。
唇が少し開いている。微かに寄せた眉が不安そうで、アシャはそっと指先を頬に触れさせた。と、その指を追うようにユーノの顔が動き、ふわりと柔らかい唇がアシャの指に触れた。
(おい、そいつは…っ)
ぎょっとして目を見開き強張ったアシャは、やがて顔を歪めた。
指先にじん、と甘い痺れが走る。そのまま相手の唇に、自分の指を含ませてしまいたくなる、凶暴な欲望とともに。
「……」
静かにユーノの唇から指を離す。その手をユーノの横に突き、じっと相手を覗き込んだ。
ユーノは目覚めそうにない。指が離れたからといって、追ってくる様子もない。これほど無防備な状態で、アシャの側に居るのは、もう最初で最後かもしれない。
目を伏せ、顔を近づける。ためらいがちに唇を重ねようとして、寸前はっと身を起こした。
何かの気配……大勢の人間が移動していく気配だ。
「……」
目を細め、アシャは静かに外を伺った。
(ほう)
洞穴の外を軍勢が密やかに移動していく。時折閃く黄色いマントでモス兵とわかる。かなりの数、野戦部隊(シーガリオン)といい勝負だ。概要を見て取ったアシャは、軍の半ばほどにひったてられていく人影を認めた。近くの村の住人だろうか。それにしては服装が妙だ。人影は二つ、大柄なのと、まるで子どものように小柄なのと。
(まさか)
緊張を高めて人影を目で追う。小柄な方が躓いたらしく、前にのめる。背後にいたモス兵士がぐい、と剣で突くのに、小柄な人影は抗議の声を上げた。
「痛いよ!」
(レス!)
「子ども相手に何をするんだ!」
「うるさい、さっさと歩け!」
低く凄みのきいた声が命じた。同時に何かの示威行動があったらしい。大柄な男も黙り込む。
(イルファの奴もいるのか)
舌打ちし、アシャはすぐに自らの気配を殺した。傍らのユーノを見下ろす。せっかく安らいで気持ち良さそうに眠っているのを起こしたくはなかったが、この場合はそうするしかなかった。
「星の剣士(ニスフェル)…」
モスの軍勢が遠ざかり、気配が感じられなくなると、アシャは低い声でユーノに呼びかけた。ん、と身動きしてユーノが目を開ける。寝覚めの良さは天性のもの、すぐにはっきりした意志を満たしてアシャの目をとらえる。
「何?」
「野戦部隊(シーガリオン)に戻るんだ。来た時と違う道を辿れ。平原竜(タロ)は左手でも操れるか?」
「うん、何とか」
頷いてユーノは、物問いたげにアシャを見つめ返した。
「モスの遠征隊が野戦部隊(シーガリオン)の方へ向かっている。一足先にシートスに知らせてくれ」
「わかった。アシャは?」
「俺はちょっと用がある」
答えて、なおも続きを待つ相手の顔に苦笑する。
「仲間がモスに捕まったようだ。先に動いて何とかする。人質がいては、シートスも動きにくいからな」
「あなた一人で!」
まさか、と言いたげにユーノは体を起こした。痛そうに顔をしかめたが、心配そうな色を隠さないまま、
「無理だよ! その短剣一振りだろ」
「そう思うなら、早めにシートスに伝えてくれ」
にやりと笑ってアシャは体を起こした。よほどふてぶてしく見えたのだろう、ユーノは呆気にとられた顔でこちらを見ている。この人は馬鹿なのか、それとも本当に凄いのか、と瞳が迷っている。
くすりとアシャは笑った。ささやかな悪戯を思いつく。
「じゃあ」
ごく自然な動きで、自分を見返すユーノの頬に唇を触れた。呆然としたまま抵抗もしないユーノが、唇が離れたとたんに我に返る。何か言いたげに口を開いたが、薄赤くなりながら何とか平常心を保とうとするように頷いた。
「…気をつけて」
「そちらもな」
頷いて洞穴を出る。闇の中を遠征隊に向かって走りながら、アシャは甘ったるく緩みかける唇を何度か引き締めた。
(ユーノは拒まなかった)
全く望みがないわけでもないらしい。
正直なもので心身が生き返ったような気になってきた。
腕の中で、戸惑いを越え、ついにこちらへ落ちてくれそうだった体が、ふいに別の重さで沈んだのにぎょっとして、アシャは慌てて相手を支え直した。
「ユーノ?」
覗き込んだが、微かに呼吸はしているものの、完全に気を失ってしまっている。
「ちっ」
気づけば、ユーノの右肩あたりに薄赤い染みが滲み出していた。
「俺か?」
もう少しで記憶を取り戻す、そう焦って力を込め過ぎたのかと確かめると、どうも今すぐの出血ではなさそうだ。この斥候に出たあたりからもう出血し始めていたのを、意識して話さなかったのか、無意識に気がつかなかったのか。
(どうしていつもいつも、こいつは)
歯ぎしりするような想いに苛立つ。苦しいなら苦しいと早く言ってくれればいいのに、こうして気を失ってしまうまでアシャの腕に戻ってこない。
(どうせ、ここ二三日、碌に休んでないんだろう)
野戦部隊(シーガリオン)の野営場所までそれほど距離は離れていないが、もう日も暮れ切る。モスがうろついているのなら、夜襲をかけられては応戦できない。傷の具合も確認したいし、手当もしたい。
(来る途中に洞穴があったな)
『風の乙女(ベルセド)の住みか』のような深い裂け目ではなく、すぐ先に奥の壁が見えている程度のものだったが、一夜の宿ぐらいにはなるだろう。
「…よし」
取り急ぎ右肩を強めに圧迫して抱え直し、アシャは平原竜(タロ)の向きを変えた。
哀しい……。
(何が?)
自分が……。
それともこれも自己憐憫とやらの一種なんだろうか。
右肩が痛い……ズキズキと絶え間なく神経に牙をたててくる。ユカルが怒っている。動き回るからだぞ、と。
「ごめ……ユカル……」
小さくユーノは呟いた。
どうしたんだろう。呼吸が苦しい………息がうまい具合にできない。陸(おか)に上がった魚みたい。陸(おか)に上がった魚………彼らは歩いていったのだよ、と心の中の何かが呟いた。進むべき道へ。より、陸(おか)で生きていくのに適した体を得、心を得、魂を得た。あるものは空へ、あるものは地へ、あるものは再び水の中へ。ああ、しかし、それは何と長い旅であったことだろう。歩き続けたのだ……ゆっくりと……一歩ずつ。そして、彼らが陸(おか)をのし歩くのに、そう時間はかからなかった。彼らはいつの日か、こう思い始めたのだ。自らの意志で、この道を歩いて来たのだ、と。自らの意志で、よりよい、より高度な生を手に入れたのだと。
それは、彼らが覚えた最初の驕りであった。
(どうして、こんなことを考えているんだろう?)
詰まる胸を喘がせ、忙しく息を継ぎながら、ユーノは考えた。
(ボクは一体……誰なんだ?)
「う……」
顔を背けると、冷たい岩肌が頬にあたった。
(気持ちいい……)
苦しい呼吸、岩肌にもたれて辛さをしのぐ。
そっくりなことがあった気がする。いつだっただろう。同じように、右肩の傷を庇いながら岩にもたれていた。
そう言えば、この右肩は何で負傷したんだっけ……変だぞ、覚えがない。
(では、これは名誉ある野戦部隊(シーガリオン)として戦った傷ではないのか?)
疑いがよく肥えた土壌にまかれた麦のように素早く芽を出す。
(麦……麦……何かひっかかるもの………麦の祭り…)
祭り? ああ、そうだ。ボクはいろんな祭りを経験してきている。麦の祭り、結婚式、花の祭り……花の……舞台………逃げ出して……。
ズサアッ!!
(っ!)
記憶の隙間から突き出された剣が、いきなり背中を切り裂いた。
(っあ…っ)
声も上げられぬ苦痛
(あ…っああああ)
身悶えして絞り出す絶叫。
「う…あああああっ……」
「星の剣士(ニスフェル)!」
「あ……ああ……あ……っ!」
「星の剣士(ニスフェル)!!」
ぱん、と強く頬を叩かれて、ユーノは目を覚ました。
視界がもやもやと霞んでいる。もう一度目を閉じると、頬を焦がすほど熱いものが目尻から流れ落ちていく。
(ボクは……泣いてたのか…?)
「大丈夫か?」
呼びかけられて再び目を見開くと、薄明かりの中で、アシャの顔が心配そうにユーノを覗き込んでいた。ああ、と答えようとして声にならず、息を呑んで思わず、ひっく、としゃくりあげる。
叩いた頬を労るように手が当てられ、アシャの指がそっと涙を拭っていった。
「うなされていた」
柔らかな声が囁く。
「うん……」
弱く頷き、ユーノは目を閉じて、当てられた手の温かさを味わった。ふいに肩越しに風が流れ込んで来たのがひどく生々しく感じられ、びくりと体を竦めて目を開く。
「……っ」
風から庇うように左手で体を探り、自分が半裸に近い状態なのを知った。だが、それより何より、ユーノの心を衝撃で震わせたのは、明らかに男とは違う自分の胸の微かな膨らみだった。
(ボクは……やっぱり女……だったのか?……)
おそるおそるアシャに目をやると、隣に寝ていたらしく、上半身を起こした姿勢でユーノの上に屈み込んでいた。体を竦めているユーノにそっと毛布をかけて肩まで包んでくれながら、この上なく優しい目で見つめ返してくる。
「大丈夫か?」
「うん…」
まるで雛を守る親鳥のようだ、そう思いながら頷く。
「傷の手当が不十分だったんだな。槍傷で治りにくいところへ無理をしたからな」
「槍…傷…」
(槍で、傷ついた……?)
「何か思い出せるか?」
「……そんな気もするんだけど……」
なぜそんなことを知っているのだろう、そう思う反面、槍で傷つく、それではまるで仲間に裏切られたようなものだと思った気持ちをユーノはとっさに隠した。
(仲間と信じた相手に…裏切られる…)
息を吐いて目を閉じる。体の芯がぼうっと熱くなっている。
(それは…辛いな…)
ずきずき痛むのは、傷の部分ではなく、心のもっと奥底だ。視界の裏にくるくる翻る花びらの舞、なぜそんなものが浮かぶのかわからないまま瞬きしたのを、アシャは別の意味にとったようだ。
「疲れているようだな。もう少し寝るか?」
「うん……平原竜(タロ)は……?」
「穴の入り口で丸くなっている。風よけと侵入者よけになる」
「穴……」
言われて自分達が休んでいるのが小さな洞穴だと気づいた。ぼんやりと明るいのは光石(ひかりいし)があるせいらしい。
(光石(ひかりいし)…)
ぶるっとユーノは体を震わせた。
嫌な思い出がある。光石……何か、禍々しい影の記憶。
「寒いのか?」
「うう…ん……?」
アシャの問いに応じながら、眉をひそめる。
(前にも同じ問いかけがあった……あの時、ボクは何と答えた……?)
「……うん……ちょっと……」
「そうか」
アシャは毛布をより引っ張り上げ、しっかりユーノの体を包んでくれた。羽織っていたマントも着せかけてくれる。それを見ながら、膨れ上がってくる違和感に捉えられる。
(違う……もっと……違うこと……)
「アシャ…」
「うん?」
ユーノは呼びかけて左手を抜き出し、アシャに差し伸べた。不審気な表情になる相手におかまいなしに、近づいたアシャの体に巻き付け、引き寄せる。
「え…あ…」
拒みはしなかったが、アシャは複雑な表情でユーノを覗き込んできた。
「星の剣士(ニスフェル)?」
「違うんだ……あの時は……違ったんだ」
「あの時……? …っ」
繰り返してアシャははっとしたようだった。ユーノを見つめ、しばらく動かずに居たが、何かを決めたように素早く上半身の着衣を脱いだ。ためらう間も拒む間も与えずに、するりとユーノを覆った毛布の中へ滑り込み、傷に障らないようにユーノを抱き寄せてくれる。
「ん…」
(そうだ……これだ…)
安心して、その腕に包まれて、なのに同時に、居たたまれないような切なさに胸が詰まって、ユーノは身を竦めた。これで正しいはずなのに、なぜこんなに不安になるのか確かめようとして目を開けると、まるでそれを待っていたようにアシャが囁いてくる。
「まだ……寒いか?」
「ううん…」
(そうだ……確か……こう答えたんだ)
アシャの手が優しくユーノの頭を抱き寄せる。吐息が髪にかかって、体が思わず震える。甘い……甘い波……切なさに心が砕けそうだ。
「アシャ…」
「ん?」
(どうして、ボクは)
こんなにここに居ることに安心するのに、ここに居てはいけないんだと、これほど強く思うんだろう?
「アシャ……」
「どうした?」
(もう少しなのに)
確信したい、この腕の中に居ることが正しいのだと。なのに、思った瞬間に、氷の底に閉じ込められるようなこの寒さは、胸を断ち割られるような痛みは、どこからやってくるのだろう。
「ごめん……」
「……」
涙がにじむ。ここから踏み込めないもどかしさだけではなくて、何か取り返しのつかない出来事を味わっているような気がして。
「ここまでしか……思い出せない」
嘘をついた。
「……」
ふっとアシャの体が緊張したが、すぐに緩んだ。静かに手を離してくれる。
「無理しなくていい。今は休んでいろ」
「うん…」
頷き、ほっとする。アシャの胸に頭を寄せて、腕の中に潜り込む。
(あったかいね……アシャ)
今はもうそれだけでいい。
それだけで、全ては報われ、何もかもうまくいくような気がして、今度は夢も見ずにユーノは眠り込んだ。
(切ないよな)
すうすうと寝息をたてるユーノに、アシャは小さく溜め息をついた。
(せっかくこいつが側にいる、というのに)
アシャはそろそろと両腕を頭の後ろに敷き込んで指を組み、岩天井を見上げる。今夜はまんじりともできないだろうとは覚悟の上だが、ユーノにこれ以上手を出さないためにはかなりの克己心がいりそうだ。
毛布の下、まるで胎児のように丸くなって眠っている相手を覗き込む。荒れた頬にまだ微かに涙の跡が残っている。
(笑顔を見てない)
アシャは眉を寄せた。
そうだ、ずいぶん長い間、ユーノの笑顔を見ていない。特に、ガズラの『忘却の湖』での闘い以来、ユーノには寛いでいる暇がほとんどなかった。戦っているか、緊張しているか、疲れ切って眠っているか、だ。
(記憶喪失、か)
或いはそれは、運命の神とやらの配慮なのかも知れない。十七歳の少女の身には、あまりにも辛すぎる運命を、一時なりと忘れさせようと言う。
(いや…そうじゃない)
もし、運命の神がそれほど慈悲深いのなら、そもそもユーノにこんな運命を負わせたりはしなかっただろう。ユーノは、世の幸せを一生約束された『銀の王族』だ。もし、そう望むのなら、人生は明るく楽しいものとなっていたはずだし、
セレド皇族の第二皇女として、何不自由ない日々を送ることができただろう。家族を守りたがたいために一人戦って傷つくこともなく、あの温暖なセレドの地でのびのびと生きていけたに違いない。ドレスを身に付け、髪に花を飾り、愛しい人の名を呼びながら微笑する……。
『アシャ!』
「!」
ぼんやり夢想していたアシャは、空想の中のユーノが自分の名を呼んだのにぎくりとして我に返り、苦笑した。
(俺も結構しつこいな)
再び視線をユーノに落とす。
男の子のように短い髪は疲れた表情を浮かべる頬に乱れている。細い首筋は痛々しく包帯を巻き付けた肩へと続き、華奢な体には白くくっきりとした傷痕が走っている。
(ドレスの代わりに包帯、花を飾るのではなく剣を髪に当てる少女…)
「『銀の王族』か…」
眉を険しく寄せた。
ラズーンで『銀の王族』を待っているのは、決して楽しいものではない。『氷の双宮』に迎えられた彼らを待ち受けるのは、情け容赦ないラズーンの洗礼であり、時には洗礼を受けたことでこの世に戻ってこれない者もある、心への審問だ。
「ん…ユカル…」
ユーノが小さく呟き、思わず顔がひきつるのを感じた。
ユーノがユカルを呼んだのはこれで二度目だ。
唇が少し開いている。微かに寄せた眉が不安そうで、アシャはそっと指先を頬に触れさせた。と、その指を追うようにユーノの顔が動き、ふわりと柔らかい唇がアシャの指に触れた。
(おい、そいつは…っ)
ぎょっとして目を見開き強張ったアシャは、やがて顔を歪めた。
指先にじん、と甘い痺れが走る。そのまま相手の唇に、自分の指を含ませてしまいたくなる、凶暴な欲望とともに。
「……」
静かにユーノの唇から指を離す。その手をユーノの横に突き、じっと相手を覗き込んだ。
ユーノは目覚めそうにない。指が離れたからといって、追ってくる様子もない。これほど無防備な状態で、アシャの側に居るのは、もう最初で最後かもしれない。
目を伏せ、顔を近づける。ためらいがちに唇を重ねようとして、寸前はっと身を起こした。
何かの気配……大勢の人間が移動していく気配だ。
「……」
目を細め、アシャは静かに外を伺った。
(ほう)
洞穴の外を軍勢が密やかに移動していく。時折閃く黄色いマントでモス兵とわかる。かなりの数、野戦部隊(シーガリオン)といい勝負だ。概要を見て取ったアシャは、軍の半ばほどにひったてられていく人影を認めた。近くの村の住人だろうか。それにしては服装が妙だ。人影は二つ、大柄なのと、まるで子どものように小柄なのと。
(まさか)
緊張を高めて人影を目で追う。小柄な方が躓いたらしく、前にのめる。背後にいたモス兵士がぐい、と剣で突くのに、小柄な人影は抗議の声を上げた。
「痛いよ!」
(レス!)
「子ども相手に何をするんだ!」
「うるさい、さっさと歩け!」
低く凄みのきいた声が命じた。同時に何かの示威行動があったらしい。大柄な男も黙り込む。
(イルファの奴もいるのか)
舌打ちし、アシャはすぐに自らの気配を殺した。傍らのユーノを見下ろす。せっかく安らいで気持ち良さそうに眠っているのを起こしたくはなかったが、この場合はそうするしかなかった。
「星の剣士(ニスフェル)…」
モスの軍勢が遠ざかり、気配が感じられなくなると、アシャは低い声でユーノに呼びかけた。ん、と身動きしてユーノが目を開ける。寝覚めの良さは天性のもの、すぐにはっきりした意志を満たしてアシャの目をとらえる。
「何?」
「野戦部隊(シーガリオン)に戻るんだ。来た時と違う道を辿れ。平原竜(タロ)は左手でも操れるか?」
「うん、何とか」
頷いてユーノは、物問いたげにアシャを見つめ返した。
「モスの遠征隊が野戦部隊(シーガリオン)の方へ向かっている。一足先にシートスに知らせてくれ」
「わかった。アシャは?」
「俺はちょっと用がある」
答えて、なおも続きを待つ相手の顔に苦笑する。
「仲間がモスに捕まったようだ。先に動いて何とかする。人質がいては、シートスも動きにくいからな」
「あなた一人で!」
まさか、と言いたげにユーノは体を起こした。痛そうに顔をしかめたが、心配そうな色を隠さないまま、
「無理だよ! その短剣一振りだろ」
「そう思うなら、早めにシートスに伝えてくれ」
にやりと笑ってアシャは体を起こした。よほどふてぶてしく見えたのだろう、ユーノは呆気にとられた顔でこちらを見ている。この人は馬鹿なのか、それとも本当に凄いのか、と瞳が迷っている。
くすりとアシャは笑った。ささやかな悪戯を思いつく。
「じゃあ」
ごく自然な動きで、自分を見返すユーノの頬に唇を触れた。呆然としたまま抵抗もしないユーノが、唇が離れたとたんに我に返る。何か言いたげに口を開いたが、薄赤くなりながら何とか平常心を保とうとするように頷いた。
「…気をつけて」
「そちらもな」
頷いて洞穴を出る。闇の中を遠征隊に向かって走りながら、アシャは甘ったるく緩みかける唇を何度か引き締めた。
(ユーノは拒まなかった)
全く望みがないわけでもないらしい。
正直なもので心身が生き返ったような気になってきた。
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