時計職人

顎(あご)

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四章

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 眠れない体で寝返りを打つと、ちょうどカーテンの隙間から月が視えた
 淡くぼやけた月光とは対照的に、私の目はすっかり冴えてしまっていた。
 『眠れないのかい?』アルファが言った。
 既に私の肉体は、アルファのコントロールから離れ、再び私の元に制御権が返って来ていた。
 「うん……」
 私は観念したかのように体を起こし、ベッドの上に胡座をかく。家に帰ってから今まで、ずっと一つの事柄が頭の中を占領していた。
 『間明のことを考えているんだね』
 図星だった。正確に言えば、間明が備品室で話した内容が、頭の中にこびり着いているのだった。 
 「間明さんは、何であんな話を私にしたんだろう」
 『真矢が自分に似ていると、間明は言っていた。真矢と自分自身の間に共通項を見出したのだろう』
 「私と間明さんに共通点なんかあるかな、真逆の性格だと思うんだけど」
 『人間関係で苦しんでいる点においては共通している。最も、間明の方は過去形のようだったけど』
 「自分は孤独を受け入れた、と言ってた。でも、そんなに簡単に割り切れる物なの? 私には無理だわ」
 『簡単だったかどうかは分からないが、間明は別に君に孤独を受容しろと言いたかった訳ではないと思うよ』
 「じゃあ、何のためのカミングアウトだったのよ」
 『……』
 珍しく、アルファが沈黙した。私が辛抱強く待っていると、アルファはこう言った。
 『ただ伝えたかったんじゃないかな』
 「どうして? 何の意味があるの」
 『分からない。意味なんかなくても、人の心はそれに反応する。そうすればそれが意味になる。最近はそう考えるようになったんだ』
 部屋の中が闇に包まれた。見ると月がカーテンの裏に隠れていた。
 「アルファ、あなた何だか変わった?」
 『そうかな? 自覚は無いけど、真矢がそう言うならそうかもね』
 私は手を伸ばしてカーテンを捲った。再び月光が室内に差した。
 「私も変われるかな……」
 『それなら、もう一度間明に会いに行きなよ』
 「えっ、なんで⁈」私は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
 「嫌よ、あんな姿見られた上にどの面下げて会うのよ」
 『だからこそじゃないか。ある意味、真矢は彼に自分の内にある何割かの部分を曝け出しているんだ。それでも彼は真矢を拒絶したりしなかった』
 「そんな事アルファに分かるの?」
 『断定は出来ないけど、僕にはそんな風に思えるんだ』
 唐突なアルファの提案に、私は頭を捻った。悪態とも取れるような態度をとっておいて、今更会っても嫌われるだけじゃないだろうか。
 「そもそも会って何するのよ」
 『簡単だ、君がこれまで一人で抱えていた物を、彼の目の前に広げて見せればいいんだよ』
 「ダメダメ。何トチ狂ったこと言ってるの、そんなの引かれるか重い女だと思われて距離を取られるかのどちらかだわ」
 『そうかなぁ』
 「それに、間明さんだって嫌でしょ、そんな話されるの」
 『そうやって本当は自分が傷つくのが恐ろしいんじゃないのかい』
 相変わらず心を抉るような事を言うな。
 『もう少し、間明の事を信用してもいいんじゃないか?』
 「信じれば裏切られるわ、それで傷つくのはもう御免よ」
日野さんのことが脳裏を掠めた。私は頭を振って何とか忌まわしい感情を振り払った。
 『それは信じ方によるだろう』
 「信じ方?」
 『信頼しているからと言って、その誰かに自信の理想や劣等感を投影してはいけない。人間は皆な不揃ふぞろいで、そして不完全だ。それを理解しないままに自身の理想像を投影すると、実物と虚像の間で摩擦が起きるものだ』
 「ずいぶん物知り顔ね。私の体で生活してみて、何か分かったの?」
 『うん、一つ分かったことがあるんだ』
 「何? 言ってみてよ」
 『この世には分かろうとしても分からない事もあると言う事だ。そしてその一つが、人の心なのだと思う』
 「何よ、諦めちゃったの?」私はアルファに尋ねた。
 『まさか、分からないからこそ考え続けるのさ』
 「それって意味あるの?」
 『分からない物を分からない物としてわきまえつつ、分かろうと思考する。それが肝要なのではないかな。それが正解かどうかは、実はそんなに重要な事じゃないのかも知れない』
 「そういうものかしら」
 私が腑に落ちずにいると、アルファが言った。
 『人間は考える葦なのだろう? なら考えることを放棄してはいけないよ』
 私はその言葉を反芻する。夜は静かに更けていった。
 
 ルーティーン通りに行動する彼を見つけるのはとても簡単なことだった。講義が終わった後、真っ直ぐテラスの方に向かって歩く間明を遠くに捉えながら、私は二の足を踏んでいた。
 『早く話しかけに行きなよ、見失ってしまうよ?』
 「タイミングを伺ってるのよ……」
 私はアルファに小声で反論した。
 『タイミングというなら今がその時じゃないか』
 「心の準備がいるのよ、あんたには分からないでしょうけど」
 『そうやって何かを準備しようとするから機を逃すんだよ』
 持っていたスマホが突然どこかに電話をかけ始めた。
 「ちょっ、あんた勝手に」
 「もしもし」間明の声が聴こえた。
 「うわっ……。あの」
 「どちら様ですか?」遠くで間明が電話に出ていた。
 「八角ですけど……」
 「何で俺の番号知ってるんだ? 教えたっけ?」
 「ちょっと人に聞いて」
 苦し紛れの言い訳に、間明はふーんと気の抜けた返事をした。
 「もし良かったら、この後お時間をいただけませんか?」
 私は押し切るように早口で言った。
 「今からは無理だ、用事がある」
 間明は即答で答えた。一瞬、頭が真っ白になる。間明に拒絶されたような気がしたからだ。
 「あの、すみませんでした」
 「それは何に対する謝罪だ? まぁいい、そうだな……こっちの用事が済んだ後なら時間がある。二十分後はどうだ?」
 「はい、それで全然大丈夫です」
 「分かった」
 淡々と答えて間明は電話を切ってしまった。あまりに目まぐるしく会話が進んだので、私はよく考えもせず返事をしてしまっていた。場所とか、何を話すかとか、何も言わずのまま約束しちゃったけど、これでいいんだろうか。
 『いいんじゃない? 間明は気にしてないようだったし』
 アルファは軽い調子で言った。
 「でも、会う場所くらい決めれば良かった」
 『あのテラスに行けば居るんじゃない?』
 確かにそれくらいしか思いつかない。それにしても、間明もアルファも何と呑気なのだろう。それとも、私が緊張し過ぎているだけなのだろうか? 
 そう自分を客観視してみると、ひどく羞恥心が湧いてきた。
 「アルファ、私が上手く喋れるように援護してよね」
 『思った事を、ありのまま話す事にしたじゃないか』
 アルファはキッパリと言った。
 「すごく勇気がいるのよ、自分の気持ちを曝け出すのって」
 『分かった、いざとなったら僕が手助けしよう』
 「ありがとうアルファ」
 
 二十分という時間は短いようで長いものだった。余裕を持って早めにテラスに行くと、まだ予定の時間より八分も早かった。やはりまだ間明の姿は無い。
 その場で突っ立っているわけにもいかず、席を確保するのも兼ねて、私はいつも彼が座っているテーブルに向かった。テラスの最奥にあるテーブルの、向かって右側の椅子、そこが間明の指定席だった。私はその向かいの椅子に腰掛け、彼を待った。
 しかし本当にここで待っていれば間明が来るのだろうか? もう一度電話を掛けて確認してみようか……。
 私がスマホを取り出そうとした時、アルファが言った。
 『間明ならあそこにいるよ』
 「え? どこどこ」私はテラスの中を見回した。
 『あっちだよ真矢』
 私の注意が、ひとりでにテラスの外に移される。テラスから数メートル離れた地点に花壇がある。その前にしゃがみ込んで作業している間明の姿が目に入った。このテーブルからは花壇全体が見下ろせるようになっているのだが、私が座っていた席だけは、テラスを囲んでいる欄干に遮られて花壇が見えなくなっているようだった。
 「ホントだ、全然気付かなかった」
 『用事ってあれの事だったんだね』アルファが言った。
 「あの花壇って、間明さんが手入れしてたんだ……」
 間明が花壇の前で立ち上がった。その拍子にテラスの方に視線が向き、ちょうど私と目が合った。どうしていいか分からず、軽く会釈すると、間明も小さく手を上げて返した。しゃがみっぱなしだったのか、間明は腰をいたわるような仕草をしながら、テラスの方に歩いてくる。その様子を見ていると、一人で浮き足立っていた自分が滑稽に思えてならなかった。
 「場所を伝えてなかったのに、よくここが分かったな」
 間明はズボンで手を拭いながら言った。ズボンに土塊つちくれが付いたが、彼は気にも留めないようだった。
 「間明さんが居るところってここくらいかなって」
 「そんなことない、たまたまだ」
 見透かされたのが癪に障ったのか、間明は口を尖らせた。
 間明が自分の席に着くと、途端に沈黙の時間が流れた。
 「どうしていつもこの席に座ってるんですか?」
 耐えかねた私は間明に話題を振った。いきなり本題に入る覚悟は私には無かったが、何とか会話の流れを生み出そうと考えての質問だった。
 「なんでそんな事が知りたいんだ?」間明は冷たく言い放った。
 「いえ、その……」
 私は言葉を詰まらせてしまった。
 『真矢、正直なところを伝えるべきだ。あれこれ小細工をしてもコミニュケーションが混雑するだけだよ』
 アルファにしては最もな意見かもしれない。私は深呼吸してから、重い口をやっとのことで開くことができた。
 「知りたい理由は特に無いんです、ただ会話の取っ掛かりが欲しかったから……」
 私は間明の顔をちらりと見た。
 「なんだ、そういう事か。てっきりその質問のために呼び出されたのかと思ったよ」
 そんな訳ないだろと脳内でツッコむ私をよそに、間明はおもむろに立ち上がった。そのまま私の傍に立つと、さっきまで自分が座っていた席を掌で指した。私は訳も分からず、彼に促されるままに席を移った。
 彼が座っていた席に私が座り、今度は間明が私のいた席に着く。彼と私の位置関係は入れ替わったわけだが、その他は特に変わったところは無さそうだった。
 「これと言って特別なところは無さそうですけど」
 そう言う私に、間明は黙ったまま外を指差した。私はその先をを目で追う。 私にはやっと、彼の言わんとしていることが理解できた。
 今私が座った席、つまり元々間明が座っていた席からは、彼が手入れしていた花壇が一望出来たのだ。そうか、テラスにある複数のテーブルの中で、花壇のある外側に面しているのはこのテーブルだけだ。そしてその内の一席は欄干らんかんのせいで外の景色が隠れている。だが反対側のこの位置からなら外の花壇を眺めることが出来るというわけだ。
 「間明さんがこの席にいつも居るのは、この景色を独り占めしたかったからなんですね」私は可憐な花達を見渡しなが言った。
 「そうだ、俺の楽しみの一つでね」間明が答えた。
 「人と違って花は俺を裏切らない、愛情を持ってきちんと育てていれば、向こうもちゃんと花を咲かせてくれる。機械も同じだ、正しく部品が組まれていれば正しく動作する。そこには何の予測不能性も無い、それが俺にとっては安心するんだ」
 「それは、何となく私も分かる気がします」
 「それで、君の用件は何なんだ?」
 間明は腕組みをして私を見た。その様子に私は少し萎縮してしまう。
 「備品室で一緒にシューズを探してくれましたよね、それなのに何も言わずに出て行っちゃって……」
 私は深々と頭を下げた。
 「すいませんでした」
 間明が腕組みを解くのが気配で分かった。
 「別に謝る必要はないよ、俺が勝手にやった事だし」
 私は顔を上げた。
 「それと、ありがとうございます。あの時一緒にシューズを探してくれて」
 間明は照れくさそうに頬を掻いた。
 「実を言うと、俺も君に言いたいことがあるんだ」
 「えっ?」予想外の返答に、私は思わず声を出した。
 「八角に会ってから、君のことがどうも気になっていた。何故かとずっと考えていたんだ。そして気が付いた」
 間明は一呼吸置いた。
 「俺は君を救うことで、自分自身を救いたかったんだな、きっと」
 間明は真っ直ぐ私の目を見て言った。その言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているようでもあった。
 「でも、それは僕の奢りだった。君を救おうだなんて俺なんかに出来る筈がない、今思えば、空回りしていたように思うよ」
 「私を? どうして?」
 「言っただろ? 君を見ていると昔の自分を思い出すと。俺は君を通して自分自身を見ていた。君を救うことで自分を救った気になれると思っていたんだ。でもそんなことは不可能だ、本当に救われたければ自分自身が変わるしか無いんだから」
 「八角真矢、君はそれを俺に気付かせてくれた」
 「……羨ましいです」
 「私は間明さんのように自分の事を冷静に見れない。だから、そういう風に自分を振り返ることが出来る間明さんが羨ましいです……」
 いつの間にか目頭が熱くなっているのを感じた。人前で涙を流すなど、これまでの自分からしたら考えられないことだった。それでも、既に両の瞳から流れる無数の雫を止めることが出来ないのだった。
 「私、今やっと自分のことが分かりました……。私は泣きたかったんです、どうしようもなく今が辛いから、その悲しみに任せて泣きたかったんです」
 涙は堰を切ったように溢れてくる。胸が焼けつくように熱くなり、溢れ出る感情のに飲まれそうになる。それでもこうして言葉を紡ぎ続けられるのは、きっとアルファのお陰なのだろう。
 「私には、誰かに愛されたという経験が無かった。父は私が小さい頃に家から出て行きました。そして母はそれを苦に自ら命を絶ったんです。二人とも、私のことなんかより自分が楽をする道を選んだんです。それが私には許せない……、でも同時に本当はもっと私の事を想って欲しかったとも考えている自分がいる」私は涙を拭った。
 「父も母も結局私を捨てたんです。でも私は、両親に対して怒る事も、死を悲しむ事も出来なかった……」
 そう、私の魂は未だあの日の少女のままなのだ。
 間明は私の話を黙って聞いていた。困惑するでも、萎縮するでもなく、ただ私の言葉を注意深く咀嚼しているようだった。
 「間明さんは言っていましたよね、自分は人付き合いが苦手だと。私も同じです、誰かと親密になっても最後には私を裏切って何処かに消えてしまうんじゃ無いかと疑心暗鬼になってしまう、でもだからと言って間明さんのように人との繋がりを諦めることが出来ません」
 全て言い終わる頃には、少し気持ちが落ち着いていた。冷静になってみると、一人で長々と喋っていた自分が恥ずかしくなった。私は恥じらいの念を何とか抑えながら、間明の顔を覗いた。
 「まず……」間明が口を開いた。
 「君の両親とのエピソードを聞けば、君がその考えに至るのは至極当然だと思う。君が他人との関係で思い悩むのも、悩んでいながらそこから距離をとることが出来ないのも理解できることだ」
 「君も大変だったんだな……」
 最後のその一言で、私の強張っていた体が急に弛緩したような気がした。魂の中で、母の死体を前に硬直していた少女がやっとその戒めから解かれ、悲哀と絶望で泣き出すのを感じた。
 私はまさに今この時、母の死を受け入れられたのだと、理解した。
 「すみません……こんなこと、困りますよね」
 困りますよね、なんて聞くのは邪道だ。自分でも思うけど、確認せずにはいられないのだ。
 「言っとくが、俺に君の問題を解決する力も義理もない」
 間明は整然と言った。そして一呼吸おいてから続けた。
 「でも労うことはできる。というか、それしか出来ないのだけど」
 『それで十分じゃないか』
 アルファの声が聴こえた。それは私に言っているのか、それとも間明に向けた言葉なのか、あるいはその両方なのかは分からなかった。でも、そお通りだ。それで私には十分だ。そこから先は私自身の問題なのだから、私自身が私自身の力で解決していくしかない。
 あれ、私、いつの間にこんな前向きな事を考えるようになったんだろう。
 『真矢、それはずっと前から真矢が自分で気づいていたことだ。気付いていながら動けなかった真矢の心が今やっと身震いと共に動き始めたのさ』
 そうなのかな、アルファの言うことが本当なら、私も変わることが出来るかもしれない。
 「間明さん、ありがとうございました」
 「話を聞いただけだ」
 「はい、それが凄く嬉しかったんです。こんな話を誰かにするの、初めてだったので」
 「大袈裟だな、でもまぁ……」
 「誰かに感謝されるのもいいもんだな」
 間明は歯を見せて笑った。私も釣られて笑顔になる。そんな様子がどこか滑稽で、間明もそう感じたのだろう少しの間二人でクスクスと笑い合うのだった。
 
 家に帰る途中、落ちかけた太陽を背に歩道を歩いていた。帰宅ラッシュで車通りは少しずつ増えていく。そんな喧騒の中を、私はいつもより軽い足取りで進んでいた。
 なぜか気分は爽快としていた。まるで心の荷が軽くなったようだ。とは言えこれで私の抱える問題が全て消えたわけではない。むしろ状況は変わっていないのだけれど、漠然と根拠のない安心感が、私の中に確かにあるのだった。それはきっと、間明さんに自分のことを打ち明けて、それを受け止めてもらえたことが大きいのだろう。そしてそれを導いてくれたのは紛れもなくアルファなのだ。
 「私、あなたに会えて良かったわ」
 私は素直に言った。
 『僕も同じだよ。真矢を見付けられたことは結果として多くのものを僕にもたらしてくれた』アルファは答えた。
 「そういやアルファの目的は人間観察だったわね」
 いつの間にか居るのが当たり前になっていて忘れてたわ。
 「役に立ったならよかったわ」
 『あぁ。この結果を母星に持ち帰れば、一族に大きく貢献することが出来るだろう』
 「けど、いつまで地球に居るつもりなの?」
 私はふと気になって聞いてみた。
 『真矢の寿命が尽きるまでかな』
 「それはまた、長い付き合いになるわね」
 『でもね、他の人間に調査対象を移す事も考えている』
 「人類への干渉は最小限じゃないといけないんじゃなかったの?」
 『調査の結果、人間は高度な社会性を持っていながらも、個体としては個々に独立性を保っている。さらに、分布している地域によって文化や思想も大きく異なるせいで、真矢一人を人類の標準的な模範とすることは出来ない。それを報告すれば特別に調査対象の拡大を許してくれるかも知れない。既に情報はプロテクトを施した電磁波パターンにして仲間に向けて送っている』
 「アルファの故郷は三光年先でしょ? それじゃあメッセージが届くのは三年後ね」
 『後続の仲間がそろそろ近くに来ている頃だろうから、そこまでの時間はかからないさ』
 「もう次の目星は着いてるの?」
 『いいや全く。急ぐ理由も無いし、のんびりやらせてもらうさ』
 「そう……」
 私の心はいつもより少しだけ穏やかで、少しだけ心地のいいものになっていた。私の過去や、今まで起きてきた不幸が無かった事になった訳ではない。それでも、この世界や、自分自身がまだ捨てたものではないと感じる。
 私は此処に至るために、アルファに出会ったのかも知れない。アルファが居なければ、ここでこうしている自分も存在しなかっただろう。私には、この数週間に起こった出来事が、運命のような気がしてならなかった。
 
 
 
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