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記憶がない・1
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女性が目を覚ましたのは、テントに運んだ次の日の夕方であった。
その報告を受けた時、オルキデアは撤収作業の指揮を執っていた。
予定より早くシュタルクヘルト軍に、この野営場所を発見されたとの報告があった。
軍事施設と軍事医療施設跡地の捜索も完了したので、ここを撤収し、明朝にペルフェクトに向けて出発することにしたのだった。
結局、生存者は女性以外、発見出来なかった。
夜半の急な襲撃だったので、治療中の者も、関係者も、その時に居た場所が悪かったのだろう。
そうなると、この女性が軽症だけで済んだのが、不思議なくらいであった。
オルキデアは部下に撤収作業を任せると、女性が寝かされているテントに向かったのだった。
テントに常駐している医療スタッフと入れ違いに、オルキデアがテントに入ると女性はすぐに見つかった。
頭に包帯を巻いて、左頬にガーゼを貼った女性は半身を起こして、ぼうっと宙を見つめていた。
「ようやく、目を覚ましたか」
声を掛けると、始めてオルキデアの存在に気づいたというように、視線を向けてくる。
女性の瞳は、綺麗な菫色であった。
オルキデアも紫色の瞳だが、それよりも鮮やかな、曇りのない色合いをしていた。
「気分はどうだ? どこか痛むところは?」
女性は瞬きを繰り返すが、何も話さなかった。
何も答えない女性にオルキデアは悩んだが、すぐに思い至って口を開く。
「ああ。すまない。ペルフェクト語で話していたな。どうだ? これなら話しはわかるか?」
女性がシュタルクヘルト人だったのを思い出して、シュタルクヘルト語で同じ言葉を繰り返すが、やはり女性は何も答えなかった。
「ん……? シュタルクヘルト語も駄目か? それなら、ハルモニア語か?」
ペルフェクトとシュタルクヘルトはそれぞれ言語が異なるが、両者が会話をする際に利用するのはハルモニア語であった。
元々、ペルフェクト、シュタルクヘルト、ハルモニアの三国は一つの国であった。
そこから、ハルモニアが独立し、次いでペルフェクト、シュタルクヘルトの順に独立した。
その際に、その国独自の言語が生まれたが、ペルフェクト語も、シュタルクヘルト語も、元になったのはハルモニア語であった。
それもあって、三国間ではハルモニアが共通言語となり、軍部だけではなく、政治や経済など幅広く使われていた。
オルキデアは士官学校に入学した際に、ハルモニア語とシュタルクヘルト語について、徹底的に勉強させられた。
これらが話せないと、少将以上への昇進は困難と言われているからであった。
オルキデアがハルモニア語で繰り返そうとした時、「あの……」と、女性はか細い声で、シュタルクヘルト語を話し出したのだった。
「ここは、どこですか? 私は一体……」
「ここはペルフェクト軍の医療テントの中だ。
俺はペルフェクト軍の少将、オルキデア・アシャ・ラナンキュラス。君を保護した」
「保護した……? 一体、どういう事ですか?」
「君は、シュタルクヘルト軍の軍事医療施設に居たところを我が軍の襲撃に遭遇した。
建物は倒壊し、軍事医療施設だけでなく、軍事施設も崩壊。
その跡地を俺の部下たちが捜索していたところ、君を見つけて保護したってわけさ」
その報告を受けた時、オルキデアは撤収作業の指揮を執っていた。
予定より早くシュタルクヘルト軍に、この野営場所を発見されたとの報告があった。
軍事施設と軍事医療施設跡地の捜索も完了したので、ここを撤収し、明朝にペルフェクトに向けて出発することにしたのだった。
結局、生存者は女性以外、発見出来なかった。
夜半の急な襲撃だったので、治療中の者も、関係者も、その時に居た場所が悪かったのだろう。
そうなると、この女性が軽症だけで済んだのが、不思議なくらいであった。
オルキデアは部下に撤収作業を任せると、女性が寝かされているテントに向かったのだった。
テントに常駐している医療スタッフと入れ違いに、オルキデアがテントに入ると女性はすぐに見つかった。
頭に包帯を巻いて、左頬にガーゼを貼った女性は半身を起こして、ぼうっと宙を見つめていた。
「ようやく、目を覚ましたか」
声を掛けると、始めてオルキデアの存在に気づいたというように、視線を向けてくる。
女性の瞳は、綺麗な菫色であった。
オルキデアも紫色の瞳だが、それよりも鮮やかな、曇りのない色合いをしていた。
「気分はどうだ? どこか痛むところは?」
女性は瞬きを繰り返すが、何も話さなかった。
何も答えない女性にオルキデアは悩んだが、すぐに思い至って口を開く。
「ああ。すまない。ペルフェクト語で話していたな。どうだ? これなら話しはわかるか?」
女性がシュタルクヘルト人だったのを思い出して、シュタルクヘルト語で同じ言葉を繰り返すが、やはり女性は何も答えなかった。
「ん……? シュタルクヘルト語も駄目か? それなら、ハルモニア語か?」
ペルフェクトとシュタルクヘルトはそれぞれ言語が異なるが、両者が会話をする際に利用するのはハルモニア語であった。
元々、ペルフェクト、シュタルクヘルト、ハルモニアの三国は一つの国であった。
そこから、ハルモニアが独立し、次いでペルフェクト、シュタルクヘルトの順に独立した。
その際に、その国独自の言語が生まれたが、ペルフェクト語も、シュタルクヘルト語も、元になったのはハルモニア語であった。
それもあって、三国間ではハルモニアが共通言語となり、軍部だけではなく、政治や経済など幅広く使われていた。
オルキデアは士官学校に入学した際に、ハルモニア語とシュタルクヘルト語について、徹底的に勉強させられた。
これらが話せないと、少将以上への昇進は困難と言われているからであった。
オルキデアがハルモニア語で繰り返そうとした時、「あの……」と、女性はか細い声で、シュタルクヘルト語を話し出したのだった。
「ここは、どこですか? 私は一体……」
「ここはペルフェクト軍の医療テントの中だ。
俺はペルフェクト軍の少将、オルキデア・アシャ・ラナンキュラス。君を保護した」
「保護した……? 一体、どういう事ですか?」
「君は、シュタルクヘルト軍の軍事医療施設に居たところを我が軍の襲撃に遭遇した。
建物は倒壊し、軍事医療施設だけでなく、軍事施設も崩壊。
その跡地を俺の部下たちが捜索していたところ、君を見つけて保護したってわけさ」
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