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記憶がない・3
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オルキデアは女性を落ち着かせると、医師にその場を任せて、撤収作業の指揮に戻った。
アルフェラッツと共に、テント式執務室の後片付けをしていると、女性を任せた医師がやって来た。
医師の見立てでは、女性は怪我と襲撃時のショックが原因で、一時的に記憶喪失になっている可能性があるとのことだった。
時間と共に記憶は戻ってくるらしいが、それがいつ戻るのか、どれくらい時間がかかるのかは、わからないとも。
「記憶が無いなら、尋問をする訳にもいかんな」
「どうしますか? さすがに、そろそろ医療班も撤収作業を始めないと、明朝出発には間に合いません」
傍らに控えていたアルフェラッツに言われて、テントの隙間から外を見る。
既に日は暮れており、辺りには薄闇が広がっている。
「さすがに、この地に一人で置いていく訳にもいかないだろう。……連れて行こう」
昔から、戦場となった跡地には、戦死者の遺品を狙った物盗りがやってくると言われている。
時には、跡地近くに住む女性を辱める者も。
敵軍の関係者とはいえ、その様な不埒な輩の被害に遭わせるのは心苦しい。
幾ら、部下から「冷酷」、「情が無い」と噂されているオルキデアでも、それくらいは思う。
「承知しました。では、搬送の用意をします」
「ところで、彼女の様子はどうだ? 落ち着いたか?」
「記憶を失っている以外は、落ち着いています。それで、少将に一つお願いがあるのですか……」
言いづらそうな様子の医師を、オルキデアは訝しむ。
「なんだ? 話しづらいことなのか?」
「いいえ! その……あの女性は自分の名前さえ、わからぬようなのです。
ですので、記憶を取り出すまでの仮の名前が必要なのです」
「なんだ。名前か。それは、そちらで好きにつけてもらって構わない」
「で、ですが! 名前がきっかけとなって、早く記憶が戻る可能性もあります。適当な名前をつける訳にも……!」
医師は慌てているが、オルキデアにとってはどうでもいい話しであった。
「それなら、彼女と相談しながら決めるといい。話している内に、記憶を取り出すかもしれないしな」
「よろしいのですか……?」
「ああ。どうやら、シュタルクヘルト語なら通じるようだ。必要なら、シュタルクヘルト語を話せる者をそっちに送るが」
「いいえ。シュタルクヘルト語なら、医療班にもわかる者がおります」
話が終わると、医師は撤収作業の為に、医療用のテントに戻って行った。
医師が出て行くと、オルキデアは溜め息を吐いたのだった。
「何もなければいいが」
男所帯の軍に、ただ一人の女性。
記憶が無いのをいいことに、危害が加えられなければいいが。
念の為、医療スタッフには女性が記憶喪失なのを他の兵士には言わないように、箝口令を敷いた方がいいかもしれない。
後でアルフェラッツを医療スタッフの元に遣わせようと、オルキデアは思ったのだった。
嫌なことに、オルキデアのこの予想は、すぐに当たることとなったのだった。
アルフェラッツと共に、テント式執務室の後片付けをしていると、女性を任せた医師がやって来た。
医師の見立てでは、女性は怪我と襲撃時のショックが原因で、一時的に記憶喪失になっている可能性があるとのことだった。
時間と共に記憶は戻ってくるらしいが、それがいつ戻るのか、どれくらい時間がかかるのかは、わからないとも。
「記憶が無いなら、尋問をする訳にもいかんな」
「どうしますか? さすがに、そろそろ医療班も撤収作業を始めないと、明朝出発には間に合いません」
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時には、跡地近くに住む女性を辱める者も。
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「なんだ? 話しづらいことなのか?」
「いいえ! その……あの女性は自分の名前さえ、わからぬようなのです。
ですので、記憶を取り出すまでの仮の名前が必要なのです」
「なんだ。名前か。それは、そちらで好きにつけてもらって構わない」
「で、ですが! 名前がきっかけとなって、早く記憶が戻る可能性もあります。適当な名前をつける訳にも……!」
医師は慌てているが、オルキデアにとってはどうでもいい話しであった。
「それなら、彼女と相談しながら決めるといい。話している内に、記憶を取り出すかもしれないしな」
「よろしいのですか……?」
「ああ。どうやら、シュタルクヘルト語なら通じるようだ。必要なら、シュタルクヘルト語を話せる者をそっちに送るが」
「いいえ。シュタルクヘルト語なら、医療班にもわかる者がおります」
話が終わると、医師は撤収作業の為に、医療用のテントに戻って行った。
医師が出て行くと、オルキデアは溜め息を吐いたのだった。
「何もなければいいが」
男所帯の軍に、ただ一人の女性。
記憶が無いのをいいことに、危害が加えられなければいいが。
念の為、医療スタッフには女性が記憶喪失なのを他の兵士には言わないように、箝口令を敷いた方がいいかもしれない。
後でアルフェラッツを医療スタッフの元に遣わせようと、オルキデアは思ったのだった。
嫌なことに、オルキデアのこの予想は、すぐに当たることとなったのだった。
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