アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトは死んだ

夜霞

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王都・セイフォート・2

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王都・セイフォート。
身分社会であるこの国を象徴するような都市。
富める者から貧しい者まで、貧富の差の激しい者たちが一緒くたに住んでいる。
王都の中心部には王族の住む王宮と財政や政治を司る文官たちの議場が建ち、そこから少し離れたところには都市の防衛や軍事を司る軍部、さらには王都の警備や治安を担当する警察もあった。

戦争の長期化により、軍資金の確保を目的とした市民に対する税金が高くなっており、一部地域では人手不足を補うべく、平民階級への兵役を強いるような動きも出てきた。
その結果、シュタルクヘルトや両国の中立を謳うハルモニア国を始めとする周辺諸国への亡命が後を経たず、それを取り締まる軍部の負担は増えるばかりであった。
そうなると当然軍部だけでは王都の警備や治安まで手が足りなくなり、戦争が始まってからは下火となっていた警察の協力が必要不可欠となった。

そんな警察の本拠地を含めた国の主たる機関がこの王都に揃っていることから、まさにここが国の中枢と言えるだろう。

途中、何度か休憩を挟みつつ、オルキデアたちは夜近くに王都の軍部に着いたのだった。

「失礼します。オルキデア・アシャ・ラナンキュラス少将であります。只今、王都に帰還しました」

部下たちに片付け、アルフェラッツにアリーシャを頼むと、その足でオルキデアは上官の執務室に向かう。

「ああ。よく戻った。ラナンキュラス少将」

オルキデアとは違い、綺麗に整頓された風通しのいい執務室の机に着いていたのは、四十代近くになる男だった。

「何ごとも無く安心した。今日はゆっくり休んでくれ」

上官であるプロキオン中将は、平民出身の軍人であった。
身一つで戦場で挙げてきた功績は、オルキデアの比ではない。
その功績を称え、数年前に国王より子爵位を賜わっていた。
平民出身だけあり、気取ったところもなく、部下からの信頼も厚い上官であった。

「ありがとうございます。諸々の報告は先にデータでお送りしております。詳細な説明はまた明日以降に」
「ああ。そうしてくれ。ところでお前が不在にしている間に、二人の客人が来ていたぞ」
「客人ですか?」
「ああ。まずは、オウェングス少将だ」
「オウェングス……クシャースラですか。確か、クシャースラは、北部基地に遠征していたかと思いますが」
「ああ。王族の慰問の護衛でな。帰還したとかで、お前に会いに来ていたぞ」

クシャースラ・オウェングスは、士官学校時代の同期であり、オルキデアの親友であった。
クシャースラは平民出身ではあるが、オルキデアが「自称・平民代表」の同期に、一方的に売られた喧嘩を買ったのをきっかけに、友人となった。

「自称・平民代表」の同期は、貴族出身の同期を目の敵にして、同じように平民出身者と徒党を組んで、貴族出身者に喧嘩を売っていた。
オルキデアもその被害に遭った一人であり、難癖をつけて喧嘩を売られ、殴り合いになった際、駆けつけてくれたのがクシャースラであった。

それまで、オルキデアとクシャースラは、同期であるということを除いて、全く接点はなかった。
誰とも関わらず、常に冷めた顔で一人でいるオルキデアに対して、真面目で周囲から人望もあるクシャースラは、正反対の人間であった。

しかし、この喧嘩の後、不思議と馬が合った二人は急速に距離を縮め、やがて互いに「親友」と呼び合うまでになった。
士官学校を卒業して、軍に配属されてからも、 クシャースラとの付き合いは続いた。
二人揃っていくつもの功績を重ねて、今では二十代という若さで少将にまで昇級したのだった。

その間に、クシャースラはオルキデアを通じて知り合った女性と結婚していた。
名ばかりではあるが貴族出身の女性であり、オルキデアにとっては子供の頃から付き合いのある、大切な妹的存在でもあった。
そんな二人が結婚すると聞いた時、オルキデアは心から祝福したものだった。
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