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アリサ・リリーベル・シュタルクヘルト・1
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アリサ・リリーベル・シュタルクヘルトーー当時はただのアリサだった。が物心ついた時には、シュタルクヘルトの首都の裏側にあるうらぶれた娼婦街こそが世界の全てだと思っていた。
汚れて古い建物が乱立し、道端のあちこちにはゴミや腐った食べ物が落ち、常に腐敗臭が漂い、羽虫やネズミなどが当たり前の様にいる街。
娼婦街を流れる腐臭を放つドブ川には、生活に困った者や、親を亡くした子供たちが残飯を漁って生活をしていた。
薄暗い細路では犯罪が横行し、夜間は子供が出歩くことは決して許されない危険な場所。
娼婦街の外にはもっと綺麗で、素敵な場所が沢山あると母に教えられるまでは、アリサは自分が住んでいる娼婦街と同じ様な街が、世界中どこまでも広がっていると信じていたものだった。
そんなアリサを産み育て、娼婦街の外について教えてくれたのは、アリサと同じ藤色の髪を持つ実母ーーアールマティ・マリアベル・ウォーダヌムであった。
母は娼館で働く娼婦であり、夜は幼いアリサを家に置いて娼館で客を取り、明け方近くに帰って来ては、昼まで眠る生活を繰り返していた。
それでも時間がある時は、アリサの相手をして、アリサの好きな物を沢山与えてくれた。
将来きっと必要になるからと、シュタルクヘルト語の読み書きや簡単な計算だけではなく、ペルフェクト語の読み書きや簡単な料理の作り方を始めとする家事全般も教えてもらった。
母の言う通り、ペルフェクト語も、家事全般も、母の死後、必要になったので、決して無駄ではなかった。
母は娼婦でありながら、シュタルクヘルト語だけではなく、ペルフェクト語の読み書きも堪能であった。
その訳を母本人から直接聞いたことはないが、母と親しかった娼婦に何気なく聞いたところ、母はペルフェクトから亡命してきた元貴族の娘であり、両親と喧嘩をして勘当されたのを機に家出して、娼婦街に来たらしいと教えられた。
シュタルクヘルトの下町で割りのいい仕事を探している時に、ペルフェクト語が出来ることを見込まれて、娼館に連れて来られたとのことだった。
当時も、今も、ペルフェクト語がわかる娼婦は、ペルフェクトからの亡命者や関係者に指名されやすく、そんな娼婦がいる娼館は客の入りが良いらしい。
そんな母が働いていた娼館は、ペルフェクト語を話せる母が居たこともあり、娼館の中では客の入りが良い方だったらしい。
母は娼館の看板娼婦とまではいかなかったが、娼館は稼ぎ頭の一人だった母を必要としており、母も自分の居場所を娼館と娼婦街に見つけていた。
母にとって娼婦という仕事と娼婦街は、まさに母が自分らしく生きられる場所だったのだろうと、アリサは大人になってから何度も思ったものだった。
そんな娼婦という夜の仕事をする母とすれ違う様な生活を送っていても、アリサが寂しいと思ったことはほとんどなかった。
恐らく、アリサの周りにも、似たような環境で育つ、娼婦の子供が多数いたというのもあっただろう。
娼婦街にはアリサたちの様に、娼婦の母親と子供だけで暮らしている親子が多数いた。
それ以外でも、娼婦街に住む者の大半が貧しい生活を送っていた。
そんな貧しい者たちが集まった娼婦街では、自然と周囲と助け合う関係が生まれていた。
アリサも母が忙しい時は、母の娼婦仲間や娼婦街の子供たちに助けて貰い、逆に他の娼婦仲間や娼婦街の子供たちが困っている時は母と共に助けに行っていた。
周囲と助け合うことが当たり前だと思っていたアリサにとって、娼婦街の外ではこれが通じなかったことに、アリサはしばらくの間、ショックを受けたものだった。
娼館の稼ぎ頭の一人と言われた母を持っていても、他の娼婦の母親と子供だけで暮らしている親子と同様に、アリサたちの生活は決して裕福ではなかった。
衣食住にはあまり困らなかったが、いつも贅沢の出来ない日々を過ごしていた。
だだ、お金がない分、母は数えきれない愛情を注いでくれた。
アリサ自身も、母からの愛情を感じていたので、満足の行く暮らしが出来なくても特に問題は無かった。
もしかしたら、これもお金や地位が全てではないと、母はアリサに教えてくれていたのだろう。
いつだって、贅沢な暮らしが出来ないことが気にならないように、母は沢山趣向を凝らしてアリサに与えてくれた。
母と住んでいる間は、親子の笑いが絶えない日々が続いていたのだった。
そんな母をずっと見て育ったからか、アリサ自身も大人になったら母と同じく娼婦となり、自分を買ってくれる客の誰かとの間に子供を作るのだろうと思っていた。ーー母が亡くなるまでは。
汚れて古い建物が乱立し、道端のあちこちにはゴミや腐った食べ物が落ち、常に腐敗臭が漂い、羽虫やネズミなどが当たり前の様にいる街。
娼婦街を流れる腐臭を放つドブ川には、生活に困った者や、親を亡くした子供たちが残飯を漁って生活をしていた。
薄暗い細路では犯罪が横行し、夜間は子供が出歩くことは決して許されない危険な場所。
娼婦街の外にはもっと綺麗で、素敵な場所が沢山あると母に教えられるまでは、アリサは自分が住んでいる娼婦街と同じ様な街が、世界中どこまでも広がっていると信じていたものだった。
そんなアリサを産み育て、娼婦街の外について教えてくれたのは、アリサと同じ藤色の髪を持つ実母ーーアールマティ・マリアベル・ウォーダヌムであった。
母は娼館で働く娼婦であり、夜は幼いアリサを家に置いて娼館で客を取り、明け方近くに帰って来ては、昼まで眠る生活を繰り返していた。
それでも時間がある時は、アリサの相手をして、アリサの好きな物を沢山与えてくれた。
将来きっと必要になるからと、シュタルクヘルト語の読み書きや簡単な計算だけではなく、ペルフェクト語の読み書きや簡単な料理の作り方を始めとする家事全般も教えてもらった。
母の言う通り、ペルフェクト語も、家事全般も、母の死後、必要になったので、決して無駄ではなかった。
母は娼婦でありながら、シュタルクヘルト語だけではなく、ペルフェクト語の読み書きも堪能であった。
その訳を母本人から直接聞いたことはないが、母と親しかった娼婦に何気なく聞いたところ、母はペルフェクトから亡命してきた元貴族の娘であり、両親と喧嘩をして勘当されたのを機に家出して、娼婦街に来たらしいと教えられた。
シュタルクヘルトの下町で割りのいい仕事を探している時に、ペルフェクト語が出来ることを見込まれて、娼館に連れて来られたとのことだった。
当時も、今も、ペルフェクト語がわかる娼婦は、ペルフェクトからの亡命者や関係者に指名されやすく、そんな娼婦がいる娼館は客の入りが良いらしい。
そんな母が働いていた娼館は、ペルフェクト語を話せる母が居たこともあり、娼館の中では客の入りが良い方だったらしい。
母は娼館の看板娼婦とまではいかなかったが、娼館は稼ぎ頭の一人だった母を必要としており、母も自分の居場所を娼館と娼婦街に見つけていた。
母にとって娼婦という仕事と娼婦街は、まさに母が自分らしく生きられる場所だったのだろうと、アリサは大人になってから何度も思ったものだった。
そんな娼婦という夜の仕事をする母とすれ違う様な生活を送っていても、アリサが寂しいと思ったことはほとんどなかった。
恐らく、アリサの周りにも、似たような環境で育つ、娼婦の子供が多数いたというのもあっただろう。
娼婦街にはアリサたちの様に、娼婦の母親と子供だけで暮らしている親子が多数いた。
それ以外でも、娼婦街に住む者の大半が貧しい生活を送っていた。
そんな貧しい者たちが集まった娼婦街では、自然と周囲と助け合う関係が生まれていた。
アリサも母が忙しい時は、母の娼婦仲間や娼婦街の子供たちに助けて貰い、逆に他の娼婦仲間や娼婦街の子供たちが困っている時は母と共に助けに行っていた。
周囲と助け合うことが当たり前だと思っていたアリサにとって、娼婦街の外ではこれが通じなかったことに、アリサはしばらくの間、ショックを受けたものだった。
娼館の稼ぎ頭の一人と言われた母を持っていても、他の娼婦の母親と子供だけで暮らしている親子と同様に、アリサたちの生活は決して裕福ではなかった。
衣食住にはあまり困らなかったが、いつも贅沢の出来ない日々を過ごしていた。
だだ、お金がない分、母は数えきれない愛情を注いでくれた。
アリサ自身も、母からの愛情を感じていたので、満足の行く暮らしが出来なくても特に問題は無かった。
もしかしたら、これもお金や地位が全てではないと、母はアリサに教えてくれていたのだろう。
いつだって、贅沢な暮らしが出来ないことが気にならないように、母は沢山趣向を凝らしてアリサに与えてくれた。
母と住んでいる間は、親子の笑いが絶えない日々が続いていたのだった。
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