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もう我慢しなくていい・3
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落雷が起こる少し前。
オルキデアが厨房を去って行くと、アリーシャははみかむように微笑んだ。
(全て、私自身が切り開いたか……)
オルキデアと出会えたのも、アリーシャという名前を貰えたのも、契約結婚をしてこの屋敷に住むようになったのも、全て自分自身で切り開いた運命の先にあった結果だというのなら嬉しかった。
(本当にそうだといいな……)
ずっと母が亡くなってから、これから待ち受けるのは悲しいだけの人生だと思っていた。
自分の選択の先には幸せも何もなくて、ただ死ぬまで誰からも愛されない人生だと諦めていたから。
「何なら喜んでくれるかな」
結局、最後まで彼の優しさに甘えてしまった。
せめて、何かしらお礼をしたい。
お金を持ってないから、自分に出来るのはちょっとした料理だけ。
彼は喜んでくれるだろうか、さっき来た時は「気を遣わなくていい」と言っていた。
それでも、やっぱり感謝の気持ちを伝えたかった。
自分が今こうしていられるのは、オルキデアのおかげだと。
(甘いものは苦手って言っていたから、甘くないものの方がいいよね)
食料庫で食料を探していたら、近くで轟音が響いた。
(えっ……?)
次いで地面が揺れて、室内の電気が消えた。
ーー蘇ってくるのは、あの軍事医療施設での襲撃の夜。
真っ暗なリネン室で泣いていたアリーシャの上に落ちてくる大量のシーツと幾つもの棚。
階下から微かに聞こえてくる大勢の悲鳴。
その時の光景を思い出して、頭を殴られたように痛みが走った。嫌な汗が背中を流れる。
動悸が激しくなって、手が小刻みに震えた。
(どうして……だって、もう怪我も治って、時間も経っているのに……)
震える手で近くの戸棚を掴むと手が滑った。
その腕が近くに重ねていた段ボールに当たった。
バランスを崩した段ボールと、その中に入っていた銀器が音を立てて床に散らばった。
「あ、あ、あ……」
散らばった食料庫を見て、困り顔をするオルキデアたちの姿が脳裏をよぎった。
ーーこんなつもりじゃなかった。こんなに散らかすつもりも、困らせるつもりもなかった。
目から涙が落ちてきた。ポロポロと勝手に落ちてくる。
アリーシャは悲鳴を上げたのだった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
膝を抱えて、その場で声を上げて泣いていると、「アリーシャ!?」と呼ばれて明かりに照らされる。
「お、るきであ、さま……」
「ここに居たのか」
床に散らばる銀器を踏みながら、やって来たオルキデアはアリーシャの前に膝をつく。
「ごめん、なさい……。こんなに、散らかして……」
「そんなことはどうでもいい。何もなくて良かった。近くで落雷があったようなんだ」
懐中電灯を床に置いて、肩に触れてくる。
「怪我はしていないな?」
「う、うん。だ、大丈夫、です……」
鼻をすすると、何度も頷く。
オルキデアは安心したように微笑を浮かべると、頷き返す。
「悲鳴が聞こえたから、怪我をしたのかと思った。食器が落ちただけだったんだな」
「ご、ごめんなさい。こんなに迷惑を、かけるつもり、なかったんです。泣くつもりも、なくて……」
すると、腕が伸びてきて、オルキデアに抱きしめられた。
大きく息を吐きながら「良かった……」と、頭上で安心したように言われて、また涙が溢れてきた。
アリーシャは縋り付くと、また泣き出したのだった。
オルキデアが厨房を去って行くと、アリーシャははみかむように微笑んだ。
(全て、私自身が切り開いたか……)
オルキデアと出会えたのも、アリーシャという名前を貰えたのも、契約結婚をしてこの屋敷に住むようになったのも、全て自分自身で切り開いた運命の先にあった結果だというのなら嬉しかった。
(本当にそうだといいな……)
ずっと母が亡くなってから、これから待ち受けるのは悲しいだけの人生だと思っていた。
自分の選択の先には幸せも何もなくて、ただ死ぬまで誰からも愛されない人生だと諦めていたから。
「何なら喜んでくれるかな」
結局、最後まで彼の優しさに甘えてしまった。
せめて、何かしらお礼をしたい。
お金を持ってないから、自分に出来るのはちょっとした料理だけ。
彼は喜んでくれるだろうか、さっき来た時は「気を遣わなくていい」と言っていた。
それでも、やっぱり感謝の気持ちを伝えたかった。
自分が今こうしていられるのは、オルキデアのおかげだと。
(甘いものは苦手って言っていたから、甘くないものの方がいいよね)
食料庫で食料を探していたら、近くで轟音が響いた。
(えっ……?)
次いで地面が揺れて、室内の電気が消えた。
ーー蘇ってくるのは、あの軍事医療施設での襲撃の夜。
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その時の光景を思い出して、頭を殴られたように痛みが走った。嫌な汗が背中を流れる。
動悸が激しくなって、手が小刻みに震えた。
(どうして……だって、もう怪我も治って、時間も経っているのに……)
震える手で近くの戸棚を掴むと手が滑った。
その腕が近くに重ねていた段ボールに当たった。
バランスを崩した段ボールと、その中に入っていた銀器が音を立てて床に散らばった。
「あ、あ、あ……」
散らばった食料庫を見て、困り顔をするオルキデアたちの姿が脳裏をよぎった。
ーーこんなつもりじゃなかった。こんなに散らかすつもりも、困らせるつもりもなかった。
目から涙が落ちてきた。ポロポロと勝手に落ちてくる。
アリーシャは悲鳴を上げたのだった。
「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」
膝を抱えて、その場で声を上げて泣いていると、「アリーシャ!?」と呼ばれて明かりに照らされる。
「お、るきであ、さま……」
「ここに居たのか」
床に散らばる銀器を踏みながら、やって来たオルキデアはアリーシャの前に膝をつく。
「ごめん、なさい……。こんなに、散らかして……」
「そんなことはどうでもいい。何もなくて良かった。近くで落雷があったようなんだ」
懐中電灯を床に置いて、肩に触れてくる。
「怪我はしていないな?」
「う、うん。だ、大丈夫、です……」
鼻をすすると、何度も頷く。
オルキデアは安心したように微笑を浮かべると、頷き返す。
「悲鳴が聞こえたから、怪我をしたのかと思った。食器が落ちただけだったんだな」
「ご、ごめんなさい。こんなに迷惑を、かけるつもり、なかったんです。泣くつもりも、なくて……」
すると、腕が伸びてきて、オルキデアに抱きしめられた。
大きく息を吐きながら「良かった……」と、頭上で安心したように言われて、また涙が溢れてきた。
アリーシャは縋り付くと、また泣き出したのだった。
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