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葛藤・3
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この日、セシリアは花屋での仕事を終えて、帰路を急いでいた。
来週に迫っている王族の生誕を祝う祭りの準備を手伝っていたら、帰りが遅くなってしまったからだった。
生誕の祭りでは、王族によるパレードが行われる。
貴族街を中心に百貨店前を抜けて、王都を一周するのだ。
その際には、幾つもの花で道を飾り、王族の誕生を祝福するのが通例だった。
下町では花屋が総出で、花の用意をすることになっていた。
貴族とは違い、下町に住む平民は、お抱えの領地から花を調達することが出来ないからだ。
その調達と用意の手伝いで、セシリアも大分帰りが遅くなってしまった。
いつもなら昼前には帰れるが、今日は夢中になっていたからか、気づけば十五時近くになっていた。
早く帰らなければ、クシャースラが帰って来てしまう。
仕事で疲れて帰って来る夫を、温かい料理で出迎えなければならない。
(買い物に行く時間が無いので、今日は自宅にある有り合わせの材料で作りましょうか……)
そう考えながら自宅に着いた時だった。
玄関前の階段に膝を抱えて俯いて座る藤色の頭をした女性の姿があったのだった。
「アリーシャさん……?」
恐る恐る声を掛けると、相手はやはり藤色の髪の友人で間違いないようだった。
ゆっくりと顔を上げると、頬と鼻を赤くして、「セシリアさん」と立ち上がったのだった。
「すみません。急に来てしまって」
「いいえ。いつから、ここで待っていたんですか?」
「えっ……と。時計を持っていないので分かりませんが、少し前から?」
アリーシャの腕に触れたら、そこそこ身体が冷えていた。
少しどころか、ずっと前から待っていたに違いない。
セシリアは肩に掛けていたショールを脱いでアリーシャに掛けると、自宅の鍵を取り出す。
「待ってて下さいね。すぐに温かいものを用意します」
「すみません」と小さく謝るアリーシャの為に、セシリアは玄関を開けると、中に案内したのだった。
シンプルな家具で統一された自宅にアリーシャを通すと、すぐに暖房をつける。
まだ秋になったばかりとはいえ、今日は朝から一段と寒かった。
「アリーシャさん。お昼は何か召し上がりましたか?」
アリーシャが首を振ると、セシリアは朝食の残りのスープを火にかける。
同じく朝食の残りのパンも用意すると、二人掛けのテーブルに運んだのだった。
「私もまだなんです。仕事が長引いてしまって……。よければ、一緒に食べませんか?」
何か残っていないかと冷蔵庫を開けると、昨日おやつに作って、ほとんど手付かずのパンプキンのシフォンケーキが出てきた。
クシャースラはセシリアの料理を何でも美味しいと言って食べてくれるが、昨晩は帰りが遅く、軽い物しか食べなかったのだ。
その代わりに、今朝は二人で夕食の残りをほぼ全て食べたのだった。
「いいんですか?」
「勿論です。ただ、すぐに用意出来るものは、スープとパンと、昨日のおやつに作ったパンプキンのシフォンケーキしかありませんが……。よければ、何か作りますか?」
「いいえ。大丈夫です」
シフォンケーキを温め直している間、スープがほどよく温まると、二人掛けテーブルに案内したアリーシャの元に先に出してしまう。
すぐにシフォンケーキが温まると、自分の分のスープを持って、アリーシャが待つテーブルに向かったのだった。
「いただきます」
先に食べていいと言ったが、律儀にセシリアを待っていたアリーシャは、セシリアが席に着いて食べ始めたのを見ると、同じように食べ始める。
「シフォンケーキ、切り分けますか?」
アリーシャが頷くと、セシリアはシフォンケーキを切り分けて、そっと差し出す。
農業を営む夫の実家から、定期的に送られてくる野菜や果物は、どれも絶品だった。
シフォンケーキに使ったパンプキンも、お菓子の様に甘く、シフォンケーキによく合っていた。
「ありがとうございます。スープとパン、とても美味しいです」
はにかむように笑うアリーシャに笑みを返すと、気になっていたことを尋ねたのだった。
来週に迫っている王族の生誕を祝う祭りの準備を手伝っていたら、帰りが遅くなってしまったからだった。
生誕の祭りでは、王族によるパレードが行われる。
貴族街を中心に百貨店前を抜けて、王都を一周するのだ。
その際には、幾つもの花で道を飾り、王族の誕生を祝福するのが通例だった。
下町では花屋が総出で、花の用意をすることになっていた。
貴族とは違い、下町に住む平民は、お抱えの領地から花を調達することが出来ないからだ。
その調達と用意の手伝いで、セシリアも大分帰りが遅くなってしまった。
いつもなら昼前には帰れるが、今日は夢中になっていたからか、気づけば十五時近くになっていた。
早く帰らなければ、クシャースラが帰って来てしまう。
仕事で疲れて帰って来る夫を、温かい料理で出迎えなければならない。
(買い物に行く時間が無いので、今日は自宅にある有り合わせの材料で作りましょうか……)
そう考えながら自宅に着いた時だった。
玄関前の階段に膝を抱えて俯いて座る藤色の頭をした女性の姿があったのだった。
「アリーシャさん……?」
恐る恐る声を掛けると、相手はやはり藤色の髪の友人で間違いないようだった。
ゆっくりと顔を上げると、頬と鼻を赤くして、「セシリアさん」と立ち上がったのだった。
「すみません。急に来てしまって」
「いいえ。いつから、ここで待っていたんですか?」
「えっ……と。時計を持っていないので分かりませんが、少し前から?」
アリーシャの腕に触れたら、そこそこ身体が冷えていた。
少しどころか、ずっと前から待っていたに違いない。
セシリアは肩に掛けていたショールを脱いでアリーシャに掛けると、自宅の鍵を取り出す。
「待ってて下さいね。すぐに温かいものを用意します」
「すみません」と小さく謝るアリーシャの為に、セシリアは玄関を開けると、中に案内したのだった。
シンプルな家具で統一された自宅にアリーシャを通すと、すぐに暖房をつける。
まだ秋になったばかりとはいえ、今日は朝から一段と寒かった。
「アリーシャさん。お昼は何か召し上がりましたか?」
アリーシャが首を振ると、セシリアは朝食の残りのスープを火にかける。
同じく朝食の残りのパンも用意すると、二人掛けのテーブルに運んだのだった。
「私もまだなんです。仕事が長引いてしまって……。よければ、一緒に食べませんか?」
何か残っていないかと冷蔵庫を開けると、昨日おやつに作って、ほとんど手付かずのパンプキンのシフォンケーキが出てきた。
クシャースラはセシリアの料理を何でも美味しいと言って食べてくれるが、昨晩は帰りが遅く、軽い物しか食べなかったのだ。
その代わりに、今朝は二人で夕食の残りをほぼ全て食べたのだった。
「いいんですか?」
「勿論です。ただ、すぐに用意出来るものは、スープとパンと、昨日のおやつに作ったパンプキンのシフォンケーキしかありませんが……。よければ、何か作りますか?」
「いいえ。大丈夫です」
シフォンケーキを温め直している間、スープがほどよく温まると、二人掛けテーブルに案内したアリーシャの元に先に出してしまう。
すぐにシフォンケーキが温まると、自分の分のスープを持って、アリーシャが待つテーブルに向かったのだった。
「いただきます」
先に食べていいと言ったが、律儀にセシリアを待っていたアリーシャは、セシリアが席に着いて食べ始めたのを見ると、同じように食べ始める。
「シフォンケーキ、切り分けますか?」
アリーシャが頷くと、セシリアはシフォンケーキを切り分けて、そっと差し出す。
農業を営む夫の実家から、定期的に送られてくる野菜や果物は、どれも絶品だった。
シフォンケーキに使ったパンプキンも、お菓子の様に甘く、シフォンケーキによく合っていた。
「ありがとうございます。スープとパン、とても美味しいです」
はにかむように笑うアリーシャに笑みを返すと、気になっていたことを尋ねたのだった。
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