244 / 357
お祭りのあとに・1
しおりを挟む
お祭りの日の夜。
いつも通り、オルキデアの部屋のベッドで、愛する人と共に眠っていたアリーシャは、ふと目を覚ます。
昼間の興奮がまだ残っているのだろう。
普通の女の子の様にはしゃいで、普通の恋人同士の様に歩いてーー。
夢にまで見ていた「普通の」女の子になれたようで、とても満ち足りた一日だった。
ベッドの上で身を起こすと、一糸纏わぬアリーシャの白い肩を、月明かりが優しく照らした。
窓に目を向けると、沈みかけの月影がカーテンに写っていたのだった。
日が昇るまで、まだまだ時間があるだろう。
それなのに、すっかり目が冴えてしまった。
一日歩いて、身体も疲れているはずなのに……。
まだ胸が高鳴っていて、目を閉じるとお祭りの光景を思い描けた。
人々の歓声が耳の中でこだまして、食べ物と花が混ざった匂いまで漂ってくるような気さえした。
ーーまるで、夢の様に楽しくて。
「夢」という単語に、不安が襲ってくる。
今まで見ていたのは全て夢で、本当の自分は襲撃の際に死んでしまったのではないか。
それとも、未だペルフェクト軍の元で昏睡状態になっているのではないかと。
ーーそんなことない。そんなことない! 身体中が夢じゃないって、訴えている。
傍らに視線を移すと、愛しい夫が眠っていた。
夫の長めのダークブラウンの髪を撫でると、アリーシャはそっと自らの身体を見下ろす。
毎晩、共に寝るようになって、最初の夜に比べれば、痛みを感じなくなっていた。
日に日に彼を受け入れているようで、痛みは快楽へと変わり、交わる度に身体の内外からは激しい熱を発していた。
もっと彼を受け入れたいと、身も心も欲していたのだった。
オルキデアもそれをわかっているようで、日を追うごとに激しさを増していったーーもう、最初の夜の様に、手加減はしてくれなかった。
気がつくといつも気を失っていて、今夜の様に夜中に目を覚ますことは滅多になかった。
ーーこれが夢だとしたら、この身体の疼きと痛みは、違うものだというの……?
この身体中の疼き、身を焦がしそうになる熱。
オルキデアでなければ、一体、何だというのだろう。
昏睡状態のアリーシャが受けている、別の刺激だというのだろうか……。
自分で自分の身体を抱きしめて、アリーシャは何度も首を振る。
ーー違う。違う。これは夢じゃない! 夢なんかじゃ……。
「アリーシャ?」
そこまで考えたところで、傍らから自分の名前を呼ぶ掠れ声が聞こえてきて振り返る。
宵闇の中でも輝くような濃い紫色の目と、アリーシャの菫色の目が合ったのだった。
「眠れないのか?」
「オルキデア様……」
「それとも、怖い夢でも見たのか?」
眠そうなオルキデアの顔を見ていると、力が抜けて、目尻に涙が溜まる。
ポロポロと涙が溢れてくると、「なんでもないです……!」と掌で擦りながら返す。
「今日が……いえ、毎日が夢の様に楽しくて、なんだか不安になってしまっただけで……」
オルキデアと出会ってから、シュタルクヘルトでの日々が嘘だったように、毎日が楽しくて、驚きと発見の刺激的な日々を過ごしていた。
こんなことなら、もっと早く国を出ていれば良かった。
あの国で、あの家で、我慢していた日々が、今では滑稽に思えてくる。
「なんだ。そんなことか。お前は本当に心配性だな」
掌で擦っていると、オルキデアも半身を起こす。
月明かりに照らされた逞しい腕の中に抱かれて、アリーシャの涙はピタリと止まる。
「これでも、まだ夢だと思うのか?」
無駄な肉のない、よく鍛えられた硬い胸。
幅の広い肩、筋肉のついた逞しい腕。
何も着ていない素肌を晒した状態だと、それがより一層目立っていた。
正式に結婚してからは、アリーシャを喜ばせる甘い言葉を囁いてばかりの優しい彼も、一人の軍人であるのだと意識させられる。
いつも通り、オルキデアの部屋のベッドで、愛する人と共に眠っていたアリーシャは、ふと目を覚ます。
昼間の興奮がまだ残っているのだろう。
普通の女の子の様にはしゃいで、普通の恋人同士の様に歩いてーー。
夢にまで見ていた「普通の」女の子になれたようで、とても満ち足りた一日だった。
ベッドの上で身を起こすと、一糸纏わぬアリーシャの白い肩を、月明かりが優しく照らした。
窓に目を向けると、沈みかけの月影がカーテンに写っていたのだった。
日が昇るまで、まだまだ時間があるだろう。
それなのに、すっかり目が冴えてしまった。
一日歩いて、身体も疲れているはずなのに……。
まだ胸が高鳴っていて、目を閉じるとお祭りの光景を思い描けた。
人々の歓声が耳の中でこだまして、食べ物と花が混ざった匂いまで漂ってくるような気さえした。
ーーまるで、夢の様に楽しくて。
「夢」という単語に、不安が襲ってくる。
今まで見ていたのは全て夢で、本当の自分は襲撃の際に死んでしまったのではないか。
それとも、未だペルフェクト軍の元で昏睡状態になっているのではないかと。
ーーそんなことない。そんなことない! 身体中が夢じゃないって、訴えている。
傍らに視線を移すと、愛しい夫が眠っていた。
夫の長めのダークブラウンの髪を撫でると、アリーシャはそっと自らの身体を見下ろす。
毎晩、共に寝るようになって、最初の夜に比べれば、痛みを感じなくなっていた。
日に日に彼を受け入れているようで、痛みは快楽へと変わり、交わる度に身体の内外からは激しい熱を発していた。
もっと彼を受け入れたいと、身も心も欲していたのだった。
オルキデアもそれをわかっているようで、日を追うごとに激しさを増していったーーもう、最初の夜の様に、手加減はしてくれなかった。
気がつくといつも気を失っていて、今夜の様に夜中に目を覚ますことは滅多になかった。
ーーこれが夢だとしたら、この身体の疼きと痛みは、違うものだというの……?
この身体中の疼き、身を焦がしそうになる熱。
オルキデアでなければ、一体、何だというのだろう。
昏睡状態のアリーシャが受けている、別の刺激だというのだろうか……。
自分で自分の身体を抱きしめて、アリーシャは何度も首を振る。
ーー違う。違う。これは夢じゃない! 夢なんかじゃ……。
「アリーシャ?」
そこまで考えたところで、傍らから自分の名前を呼ぶ掠れ声が聞こえてきて振り返る。
宵闇の中でも輝くような濃い紫色の目と、アリーシャの菫色の目が合ったのだった。
「眠れないのか?」
「オルキデア様……」
「それとも、怖い夢でも見たのか?」
眠そうなオルキデアの顔を見ていると、力が抜けて、目尻に涙が溜まる。
ポロポロと涙が溢れてくると、「なんでもないです……!」と掌で擦りながら返す。
「今日が……いえ、毎日が夢の様に楽しくて、なんだか不安になってしまっただけで……」
オルキデアと出会ってから、シュタルクヘルトでの日々が嘘だったように、毎日が楽しくて、驚きと発見の刺激的な日々を過ごしていた。
こんなことなら、もっと早く国を出ていれば良かった。
あの国で、あの家で、我慢していた日々が、今では滑稽に思えてくる。
「なんだ。そんなことか。お前は本当に心配性だな」
掌で擦っていると、オルキデアも半身を起こす。
月明かりに照らされた逞しい腕の中に抱かれて、アリーシャの涙はピタリと止まる。
「これでも、まだ夢だと思うのか?」
無駄な肉のない、よく鍛えられた硬い胸。
幅の広い肩、筋肉のついた逞しい腕。
何も着ていない素肌を晒した状態だと、それがより一層目立っていた。
正式に結婚してからは、アリーシャを喜ばせる甘い言葉を囁いてばかりの優しい彼も、一人の軍人であるのだと意識させられる。
1
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる