250 / 357
報告・5
しおりを挟む
一方、セシリアと共にオルキデアたちを見送ったアリーシャも、意外そうな顔でセシリアを見つめていた。
「どうしましたか?」
そんなアリーシャの様子に気づいたセシリアが、不思議そうに首を傾げる。
「セシリアさんも、ああいうことをやるのが意外で……」
「ああいう……? ああ、今のお見送りですね」
アリーシャが頷くと、「結婚の際に二人で交わした約束なんです」とセシリアは遠くを見つめる。
「どちらかを見送る際は、頬に口づけを交わし合う。という、約束なんです。
他にも色んな約束をしました。
どちらかが疲れている時や、落ち込んでいる時は、美味しい食事と温かいお風呂を用意する。寂しい時や悲しい時は側に居る、などです」
「そんなにたくさん……」
「でも、一番はお互い健康でいること。これに勝るものはありません」
セシリアに促されて、一緒に室内に戻りながら、気になったことを尋ねる。
「でも大変じゃないですか。そんなに約束事を交わしていたら」
「そうですね。時には上手くいかなくて、喧嘩することもあります。でも、最後に仲直りが出来ればいいんです。どちらかが……いえ、お互いに謝って、許して、元通りになれば……」
紅茶の用意をするという、セシリアを手伝って、アリーシャもキッチンに向かう。
キッチンに入り、セシリアが薬缶で湯を沸かしている間、アリーシャはセシリアが用意してくれた陶器のティーセットを軽く洗い、ティーカップとティーポットに別に沸かしたぬるま湯を注いで温めていた。
「ところで、アリーシャさんはオーキッド様と何か約束事を交わしていますか? 私とクシャ様の様に」
「そうですね……。遠慮や我慢をしないというところでしょうか。
出会ったばかりの頃は、遠慮して我慢をしていましたが、オルキデア様が何度も『遠慮も我慢もしなくていい』と気遣ってくださって」
「オーキッド様らしいです」
クスクスと、セシリアが笑う。
「オーキッド様は他人に興味がないように見えますが、昔からよく周囲を見ているんです。
結婚に迷っていた私を後押ししてくれたのもオーキッド様なんです。
誰にも話していないのに、私がクシャ様との結婚を迷っていることに気付いて、クシャ様について話してくださったからなんです」
「そうだったんですね」
「きっと、アリーシャさんのこともよく見ていたんだと思います。それで声を掛けたのかと」
アリーシャは自分のつま先に視線を落とす。
セシリアが用意してくれた茶葉を注いだところで、丁度、薬缶の湯が沸いた。
セシリアがティーポットに湯を注ぎ、そっと蓋をしたところで、アリーシャは口を開く。
「……そうだと嬉しいです。こうやって誰かに気遣われるのは久しぶりで、なんだか嬉しいような、恥ずかしいような、こそばゆい気持ちになるんです」
「そうですよね。照れてしまいますよね」
アリーシャは温めていたティーカップの湯を捨てると、蒸らしたばかりのティーポットの紅茶を注ぐ。
琥珀色の液体と共に柑橘系の香りがキッチンに漂う。柑橘系の香り付き茶葉なのだろう。
アリーシャが紅茶を用意している間、セシリアはアップルパイをオーブンで温めていた。
セシリアによると、ここのアップルパイはオーブンで温めると、焼き立ての様にパイ生地のサクサク感が増すらしい。
先程、オーブンの用意が出来たので、今はアップルパイが温まるのを待っていたのだった。
アップルパイは、一人用の小さいサイズを四個持って来ていた。
元々は六個購入して、アリーシャたちの分として、その内の二個を取り出すと屋敷の冷蔵庫に置いてきていた。
残りのアップルパイは買った時の箱に入れたまま、全てセシリアに渡したのだった。
「どうしましたか?」
そんなアリーシャの様子に気づいたセシリアが、不思議そうに首を傾げる。
「セシリアさんも、ああいうことをやるのが意外で……」
「ああいう……? ああ、今のお見送りですね」
アリーシャが頷くと、「結婚の際に二人で交わした約束なんです」とセシリアは遠くを見つめる。
「どちらかを見送る際は、頬に口づけを交わし合う。という、約束なんです。
他にも色んな約束をしました。
どちらかが疲れている時や、落ち込んでいる時は、美味しい食事と温かいお風呂を用意する。寂しい時や悲しい時は側に居る、などです」
「そんなにたくさん……」
「でも、一番はお互い健康でいること。これに勝るものはありません」
セシリアに促されて、一緒に室内に戻りながら、気になったことを尋ねる。
「でも大変じゃないですか。そんなに約束事を交わしていたら」
「そうですね。時には上手くいかなくて、喧嘩することもあります。でも、最後に仲直りが出来ればいいんです。どちらかが……いえ、お互いに謝って、許して、元通りになれば……」
紅茶の用意をするという、セシリアを手伝って、アリーシャもキッチンに向かう。
キッチンに入り、セシリアが薬缶で湯を沸かしている間、アリーシャはセシリアが用意してくれた陶器のティーセットを軽く洗い、ティーカップとティーポットに別に沸かしたぬるま湯を注いで温めていた。
「ところで、アリーシャさんはオーキッド様と何か約束事を交わしていますか? 私とクシャ様の様に」
「そうですね……。遠慮や我慢をしないというところでしょうか。
出会ったばかりの頃は、遠慮して我慢をしていましたが、オルキデア様が何度も『遠慮も我慢もしなくていい』と気遣ってくださって」
「オーキッド様らしいです」
クスクスと、セシリアが笑う。
「オーキッド様は他人に興味がないように見えますが、昔からよく周囲を見ているんです。
結婚に迷っていた私を後押ししてくれたのもオーキッド様なんです。
誰にも話していないのに、私がクシャ様との結婚を迷っていることに気付いて、クシャ様について話してくださったからなんです」
「そうだったんですね」
「きっと、アリーシャさんのこともよく見ていたんだと思います。それで声を掛けたのかと」
アリーシャは自分のつま先に視線を落とす。
セシリアが用意してくれた茶葉を注いだところで、丁度、薬缶の湯が沸いた。
セシリアがティーポットに湯を注ぎ、そっと蓋をしたところで、アリーシャは口を開く。
「……そうだと嬉しいです。こうやって誰かに気遣われるのは久しぶりで、なんだか嬉しいような、恥ずかしいような、こそばゆい気持ちになるんです」
「そうですよね。照れてしまいますよね」
アリーシャは温めていたティーカップの湯を捨てると、蒸らしたばかりのティーポットの紅茶を注ぐ。
琥珀色の液体と共に柑橘系の香りがキッチンに漂う。柑橘系の香り付き茶葉なのだろう。
アリーシャが紅茶を用意している間、セシリアはアップルパイをオーブンで温めていた。
セシリアによると、ここのアップルパイはオーブンで温めると、焼き立ての様にパイ生地のサクサク感が増すらしい。
先程、オーブンの用意が出来たので、今はアップルパイが温まるのを待っていたのだった。
アップルパイは、一人用の小さいサイズを四個持って来ていた。
元々は六個購入して、アリーシャたちの分として、その内の二個を取り出すと屋敷の冷蔵庫に置いてきていた。
残りのアップルパイは買った時の箱に入れたまま、全てセシリアに渡したのだった。
1
あなたにおすすめの小説
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる