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弁当・5
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夕方、なんとか仕事を終えて帰ってきたオルキデアは、出迎えてくれた新妻の物言いたげな目に気づいてしまう。
「お帰りなさいませ」
「……ただいま」
表情は笑顔。それはいつも通り。
けれども、何か言いたげな目をしてる。
それどころか、下手に聞いたら今にも頬を膨らませていじけてしまいそうな雰囲気さえあり、どうすればいいか分からなくなってしまう。
「……何もなかったか?」
「はい」
「今日は何をしていた?」
「屋敷を掃除して、セシリアさんにお借りした裁縫の本を読みました」
「そうか」
「それから、セシリアさんから教わったレシピを元に、夕食も作ってみました」
「それは楽しみだな」
当たり障りのない会話をしつつ、コートをハンガーに掛けると、さっと部屋に戻る。
(何かしただろうか……。アリーシャの気に触るようなこと)
軍服を脱ぎながら考えるが、これといって心当たりがない。
今朝、屋敷の前で見送られた時は、いつも通りだった。
オルキデアが帰ってくるまでの間に、何かあったとしか思えない。
しかし、一体何がーー?
着替えて食堂に向かう間、屋敷内を確認したが特に異変はなかった。
家に押し入られて、それを家主であるオルキデアに話さないように強要されている訳でもなさそうだ。
となると、やはり原因は自分しかないのだがーー。
考えながら食堂に入ると、美味しそうな湯気を立てた夕食が二人分並んでいた。
アリーシャに夕食を食べたのか聞いたところ、これから食べるところだったという。
(まさか、腹が減って、機嫌が悪いのか……?)
こっそりアリーシャの様子を伺うが、先程出迎えてくれた時と構わらず、物言いだけな目は変わらなかった。
下手に聞く訳にもいかず、オルキデアは明日はもっと早く仕事を切り上げて、屋敷に帰ってこようと心に決めたのだった。
いつもより口数少なく会話を済ませると、皿洗いをアリーシャに任せて、オルキデアは先に部屋に戻った。
久々の仕事で疲れた身体を風呂でゆっくり休ませながら、今朝の言動についておかしなところはなかった考えるが、やはり何も思い当たらなかった。
仕事では作戦が失敗した際の原因の究明やら作戦自体の欠点やら、人員配置のミスやら、物資の不足やら、すぐに思いつく。
それなのに、人に関してはーーアリーシャに関しては、分からないことだらけであった。
頭を拭きながら部屋に戻ると、部屋の電話機が点灯していた。
何気なく見やると、屋敷内な他の電話機が外線と通話中になっていたのだった。
「アリーシャが電話しているのか……?」
この屋敷で、オルキデア以外の住民といえば一人しかいない。
電話を設置しているのは、オルキデアの部屋以外では玄関、書斎、食堂、と場所が限られている。
しばらく電話機の点滅を見ていたが、なかなか消える気配がなく、だんだん不安になってくる。
(面倒な電話で、切るに切れないのか……?)
押し売りや怪しい投資話、詐欺など、この屋敷にもそういった迷惑電話の類はたまにかかってくる。
オルキデアは部屋を出ると、アリーシャを探しに行ったのだった。
遠くから聞こえてくる話し声を辿ると、その背中は食堂で見つかった。
出入り口に背を向けて、話しながらメモを取るその背に近づくと、藤色の頭ごとハッと振り返ったのだった。
「変わるか?」
小声で声を掛けると、すぐに首を振られる。
何かを書いてペンで示してきたアリーシャの手元を見ると、そこに「セシリア」と見慣れた文字が書かれていた。
「セシリアなのか?」
うんと頷いたアリーシャは、すぐにメモを再開する。
チラッと手元を見ると、何かのレシピを書いているようだった。
相手がセシリアなら問題ないと判断すると、これ以上、愛妻の邪魔をしないようにそっと食堂を出たのだった。
「お帰りなさいませ」
「……ただいま」
表情は笑顔。それはいつも通り。
けれども、何か言いたげな目をしてる。
それどころか、下手に聞いたら今にも頬を膨らませていじけてしまいそうな雰囲気さえあり、どうすればいいか分からなくなってしまう。
「……何もなかったか?」
「はい」
「今日は何をしていた?」
「屋敷を掃除して、セシリアさんにお借りした裁縫の本を読みました」
「そうか」
「それから、セシリアさんから教わったレシピを元に、夕食も作ってみました」
「それは楽しみだな」
当たり障りのない会話をしつつ、コートをハンガーに掛けると、さっと部屋に戻る。
(何かしただろうか……。アリーシャの気に触るようなこと)
軍服を脱ぎながら考えるが、これといって心当たりがない。
今朝、屋敷の前で見送られた時は、いつも通りだった。
オルキデアが帰ってくるまでの間に、何かあったとしか思えない。
しかし、一体何がーー?
着替えて食堂に向かう間、屋敷内を確認したが特に異変はなかった。
家に押し入られて、それを家主であるオルキデアに話さないように強要されている訳でもなさそうだ。
となると、やはり原因は自分しかないのだがーー。
考えながら食堂に入ると、美味しそうな湯気を立てた夕食が二人分並んでいた。
アリーシャに夕食を食べたのか聞いたところ、これから食べるところだったという。
(まさか、腹が減って、機嫌が悪いのか……?)
こっそりアリーシャの様子を伺うが、先程出迎えてくれた時と構わらず、物言いだけな目は変わらなかった。
下手に聞く訳にもいかず、オルキデアは明日はもっと早く仕事を切り上げて、屋敷に帰ってこようと心に決めたのだった。
いつもより口数少なく会話を済ませると、皿洗いをアリーシャに任せて、オルキデアは先に部屋に戻った。
久々の仕事で疲れた身体を風呂でゆっくり休ませながら、今朝の言動についておかしなところはなかった考えるが、やはり何も思い当たらなかった。
仕事では作戦が失敗した際の原因の究明やら作戦自体の欠点やら、人員配置のミスやら、物資の不足やら、すぐに思いつく。
それなのに、人に関してはーーアリーシャに関しては、分からないことだらけであった。
頭を拭きながら部屋に戻ると、部屋の電話機が点灯していた。
何気なく見やると、屋敷内な他の電話機が外線と通話中になっていたのだった。
「アリーシャが電話しているのか……?」
この屋敷で、オルキデア以外の住民といえば一人しかいない。
電話を設置しているのは、オルキデアの部屋以外では玄関、書斎、食堂、と場所が限られている。
しばらく電話機の点滅を見ていたが、なかなか消える気配がなく、だんだん不安になってくる。
(面倒な電話で、切るに切れないのか……?)
押し売りや怪しい投資話、詐欺など、この屋敷にもそういった迷惑電話の類はたまにかかってくる。
オルキデアは部屋を出ると、アリーシャを探しに行ったのだった。
遠くから聞こえてくる話し声を辿ると、その背中は食堂で見つかった。
出入り口に背を向けて、話しながらメモを取るその背に近づくと、藤色の頭ごとハッと振り返ったのだった。
「変わるか?」
小声で声を掛けると、すぐに首を振られる。
何かを書いてペンで示してきたアリーシャの手元を見ると、そこに「セシリア」と見慣れた文字が書かれていた。
「セシリアなのか?」
うんと頷いたアリーシャは、すぐにメモを再開する。
チラッと手元を見ると、何かのレシピを書いているようだった。
相手がセシリアなら問題ないと判断すると、これ以上、愛妻の邪魔をしないようにそっと食堂を出たのだった。
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