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弁当・11
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「あの、今日のお弁当なんですが……。どうでしたか?」
「美味かった。軍部の食堂よりずっとな。量も丁度良かった。あっという間に弁当箱が空になった」
「……ありがとうございます。気を遣っていただいて」
肩を落とすアリーシャに気づくと、その顔を覗き込む。
「何か気に障ったか?」
「いいえ。オルキデア様が優しいので、自分の不甲斐なさが悔しくて……」
「不甲斐ない? 一体何が……?」
「卵焼き、塩入れすぎていましたよね。分量間違えて」
卵焼きと言われて、昼間に食べた時、塩辛かったのを思い出す。コーヒーを飲みながら食したのも。
「今日の昼食に、余ったお弁当のおかずとサンドイッチを食べて気づいたんです。
食べない様に連絡しようかと思いましたが、気づいたのが昼過ぎだったので、もう食べてしまったのではないかと……」
「そこまで気にしなくていい。食べられない程ではなかった。それにしても、どうして卵焼きだけ塩の分量を間違えたんだ?」
「セシリアさんに教えてもらったレシピでは、塩ではなく砂糖を入れることになっていたんです。
でも、オルキデア様は甘い物が得意ではないので、分量をそのままに砂糖を塩に置き換えたら入れ過ぎたみたいです」
「ああ」と納得する。
言われてみれば、クシャースラが「卵焼きが甘い」とぼやいていたことから、セシリアはーーというよりは、セシリアに料理を教えたマルテがだろうが。甘い卵焼きが好きなのだろう。
そのレシピを元に真似して作ろうとしたが、甘い物が苦手なオルキデアのためにアレンジした。
しかし、砂糖の分量のまま、塩に置き換えてしまったので、塩辛い卵焼きになったということらしい。
「せめてお弁当ぐらいは、オルキデア様が満足できるものを作りたかったです……」
「別に食べられなくなかった。そもそも弁当を作ってくれただけで満足だ」
「それは……! 結婚されている軍人はお弁当を持参するものだって聞いたので……」
「結婚しているからといって全員が全員、弁当なわけじゃない。
学校だってそうだっただろう。昼食は弁当を持参する奴と、食堂を利用する奴で分かれて……」
「私、学校行ってない……」
「……そうだったな。すまない」
愛妻が心に抱える傷に触れてしまい、気まずい雰囲気になる。
アリーシャは顔を上げると、「それに」と口を開く。
「オルキデア様はお弁当の存在を教えてくれませんでした……大切な人に恥をかかせてしまうところでした」
「弁当の存在を完全に忘れていたのと、これ以上、お前だけに負担をかけさせたくなかった」
「負担なんて、そんなことは……」
「毎朝早くから、洗濯をして、朝食作りをして、屋敷を掃除して、買い物に行って、帰ってきて夕食の準備をする。お前にばかり負担をかけている。そこに加えて、弁当作りまで頼むのは悪い気がしたんだ」
「そんなことはありません。私は自分がやりたくてやっているんです! 早くオルキデア様に相応しい人になりたくて、一人前の妻になりたくて……」
「アリーシャ……」
「ここに来て、一人で家事をするようになってたくさん気づいたんです。
シュタルクヘルト家で家事をやっていたけど、それは私付きのメイドや使用人に手伝ってもらっていたから出来ていただけで、一人じゃ何も出来ないんだって。
買い物もセシリアさんやマルテさんに教えてもらわなければ、値段の見方も物価もわからなくて……。何もわからないまま買い物していたって」
菫色の瞳には、じんわりと悔し涙が浮かんでいた。
どうすればいいか分からず、その華奢な肩をそっと抱きしめる。
「美味かった。軍部の食堂よりずっとな。量も丁度良かった。あっという間に弁当箱が空になった」
「……ありがとうございます。気を遣っていただいて」
肩を落とすアリーシャに気づくと、その顔を覗き込む。
「何か気に障ったか?」
「いいえ。オルキデア様が優しいので、自分の不甲斐なさが悔しくて……」
「不甲斐ない? 一体何が……?」
「卵焼き、塩入れすぎていましたよね。分量間違えて」
卵焼きと言われて、昼間に食べた時、塩辛かったのを思い出す。コーヒーを飲みながら食したのも。
「今日の昼食に、余ったお弁当のおかずとサンドイッチを食べて気づいたんです。
食べない様に連絡しようかと思いましたが、気づいたのが昼過ぎだったので、もう食べてしまったのではないかと……」
「そこまで気にしなくていい。食べられない程ではなかった。それにしても、どうして卵焼きだけ塩の分量を間違えたんだ?」
「セシリアさんに教えてもらったレシピでは、塩ではなく砂糖を入れることになっていたんです。
でも、オルキデア様は甘い物が得意ではないので、分量をそのままに砂糖を塩に置き換えたら入れ過ぎたみたいです」
「ああ」と納得する。
言われてみれば、クシャースラが「卵焼きが甘い」とぼやいていたことから、セシリアはーーというよりは、セシリアに料理を教えたマルテがだろうが。甘い卵焼きが好きなのだろう。
そのレシピを元に真似して作ろうとしたが、甘い物が苦手なオルキデアのためにアレンジした。
しかし、砂糖の分量のまま、塩に置き換えてしまったので、塩辛い卵焼きになったということらしい。
「せめてお弁当ぐらいは、オルキデア様が満足できるものを作りたかったです……」
「別に食べられなくなかった。そもそも弁当を作ってくれただけで満足だ」
「それは……! 結婚されている軍人はお弁当を持参するものだって聞いたので……」
「結婚しているからといって全員が全員、弁当なわけじゃない。
学校だってそうだっただろう。昼食は弁当を持参する奴と、食堂を利用する奴で分かれて……」
「私、学校行ってない……」
「……そうだったな。すまない」
愛妻が心に抱える傷に触れてしまい、気まずい雰囲気になる。
アリーシャは顔を上げると、「それに」と口を開く。
「オルキデア様はお弁当の存在を教えてくれませんでした……大切な人に恥をかかせてしまうところでした」
「弁当の存在を完全に忘れていたのと、これ以上、お前だけに負担をかけさせたくなかった」
「負担なんて、そんなことは……」
「毎朝早くから、洗濯をして、朝食作りをして、屋敷を掃除して、買い物に行って、帰ってきて夕食の準備をする。お前にばかり負担をかけている。そこに加えて、弁当作りまで頼むのは悪い気がしたんだ」
「そんなことはありません。私は自分がやりたくてやっているんです! 早くオルキデア様に相応しい人になりたくて、一人前の妻になりたくて……」
「アリーシャ……」
「ここに来て、一人で家事をするようになってたくさん気づいたんです。
シュタルクヘルト家で家事をやっていたけど、それは私付きのメイドや使用人に手伝ってもらっていたから出来ていただけで、一人じゃ何も出来ないんだって。
買い物もセシリアさんやマルテさんに教えてもらわなければ、値段の見方も物価もわからなくて……。何もわからないまま買い物していたって」
菫色の瞳には、じんわりと悔し涙が浮かんでいた。
どうすればいいか分からず、その華奢な肩をそっと抱きしめる。
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