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今世、思い出した時は既婚者だった
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「そうだ。グラナック卿!」
来世――つまり今世では、グラナック卿と結ばれる様に願った。
その願いが届いて前世の記憶を取り戻したのなら、これはグラナック卿と結ばれるチャンスかもしれない。
今世こそグラナック卿と幸せになりなさいと、前世をやり直す機会を神様が与えてくださったに違いない。
「でもどうやって探そう。しかももう結婚しちゃったし……」
私は寝返りを打ちながら考える。そもそもグラナック卿が同じ時代に転生して、更に私と同じ様に前世の記憶を取り戻しているとは限らない。
何も手掛かりが無い状態だった。
そして当の私も昨日結婚式を挙げており、シュトローマ公爵でもあり、クィルズ帝国を守護するクィルズ帝国騎士団の一員でもあるヘニング様と婚姻を結んでしまっている。
今更グラナック卿と再会したところで、結婚することは難しい。
私は寝返りを打つと枕を抱きしめた。
「せめてあと一日、結婚式の前に思い出していればなぁ……」
枕に縋り付きながら自分を責めているだけでは意味がない。
どうにかしてヘニング様と離縁出来ないだろうかと考えて、一つの可能性を思い出す。
それは「白い結婚」をした夫婦のみが許さる離縁制度だった。
「私を妻として受け入れられないと、ヘニング様に婚姻を白紙に戻してもらう。肉体関係を持つ前なら帝国法で出来るはず」
私はうんうんと頷く。クィルズ帝国で定められた帝国法では、「白い結婚」――肉体関係を持たない、花嫁が清らかなままの結婚であり、夫婦双方の同意があった場合に限って、離婚が許されていた。
一度でも肉体関係を持ってしまうと離縁は許されない。もし肉体関係を持ったにも関わらず、離縁を望んだ場合、帝国法に則って身分に応じた処罰を受ける事になる。
私達の様な貴族の場合だと、まず爵位を剥奪され、次いで領地などの財産を没収される。ヘニング様の場合は騎士としての階級も失うだろう。
今の帝国法では、どちらかが死別しない限り、再婚さえ許されなかった。
「問題はヘニング様が離縁に同意してくれるかだけども……」
私は王家から公爵でもあるヘニング様に降嫁されたが、そもそもどうしてヘニング様に降嫁されたのか事情を知らない。降嫁される事について、父である皇帝はただ端的に「シュトローマ公爵がお前を欲しがっている」としか教えてくれなかった。
ヘニング様の事は以前から知っており、言葉を交わした事もあるが、それはあくまで姫と騎士、または姫と公爵としてであった。
形式上な挨拶や会話しかした事がなく、取り立てて興味を持たれる様な話をした覚えもない。
それなのに、どうしてヘニング様は私を求めたのだろうか。
「王家の末娘を気の毒に思ったから? ヘニング様も遠縁とはいえ、王家の血を引いているから? でも噂によると、ヘニング様には心に決めた方がいるのよね……。それで今まで縁談を断ってきたって聞いていたけど……」
降嫁される前、まだクィルズ帝国の末姫だった頃に聞いた事があった。
ヘニング様は幼い頃より心に決めた方がおり、これまで何人から縁談を勧められても断ってきたと。
ある時、縁談を断られたとある令嬢が、心に決めているという人物について、ヘニング様に尋ねたらしいが、ヘニング様は曖昧に答えて相手を教えてくれなかったらしい。
そこから令嬢達を中心に、ヘニング様が心に決めた方というのは、「身分や家柄の都合で難しい相手」ではないかと社交界の噂になったのだった。
そんな中、ヘニング様は帝国の末姫である私と結婚した。
令嬢達の間では、噂は本当だったと納得する者と、王族の遠縁である公爵と王族の姫ならはぐらかす必要は無いので、ヘニング様が心に決めた方というのは別の人であり、私とは仕方なく結婚しただけだと懐疑的になる者と、半々に分かれた。
私自身もヘニング様が心に決めた方は別におり、私とは何か事情があって結婚してくれただけだと思っている。
もし噂の通り、末姫の私を同情心から貰い受けてくれただけだったのなら、ますますヘニング様と離縁しなければならない。これではあまりにもヘニング様が可哀想だから。
「まずはヘニング様に離縁を申し出ないと始まらないよね」
そうしてヘニング様に離縁を申し出るべく、私はベッドから起き上がったのであった。
来世――つまり今世では、グラナック卿と結ばれる様に願った。
その願いが届いて前世の記憶を取り戻したのなら、これはグラナック卿と結ばれるチャンスかもしれない。
今世こそグラナック卿と幸せになりなさいと、前世をやり直す機会を神様が与えてくださったに違いない。
「でもどうやって探そう。しかももう結婚しちゃったし……」
私は寝返りを打ちながら考える。そもそもグラナック卿が同じ時代に転生して、更に私と同じ様に前世の記憶を取り戻しているとは限らない。
何も手掛かりが無い状態だった。
そして当の私も昨日結婚式を挙げており、シュトローマ公爵でもあり、クィルズ帝国を守護するクィルズ帝国騎士団の一員でもあるヘニング様と婚姻を結んでしまっている。
今更グラナック卿と再会したところで、結婚することは難しい。
私は寝返りを打つと枕を抱きしめた。
「せめてあと一日、結婚式の前に思い出していればなぁ……」
枕に縋り付きながら自分を責めているだけでは意味がない。
どうにかしてヘニング様と離縁出来ないだろうかと考えて、一つの可能性を思い出す。
それは「白い結婚」をした夫婦のみが許さる離縁制度だった。
「私を妻として受け入れられないと、ヘニング様に婚姻を白紙に戻してもらう。肉体関係を持つ前なら帝国法で出来るはず」
私はうんうんと頷く。クィルズ帝国で定められた帝国法では、「白い結婚」――肉体関係を持たない、花嫁が清らかなままの結婚であり、夫婦双方の同意があった場合に限って、離婚が許されていた。
一度でも肉体関係を持ってしまうと離縁は許されない。もし肉体関係を持ったにも関わらず、離縁を望んだ場合、帝国法に則って身分に応じた処罰を受ける事になる。
私達の様な貴族の場合だと、まず爵位を剥奪され、次いで領地などの財産を没収される。ヘニング様の場合は騎士としての階級も失うだろう。
今の帝国法では、どちらかが死別しない限り、再婚さえ許されなかった。
「問題はヘニング様が離縁に同意してくれるかだけども……」
私は王家から公爵でもあるヘニング様に降嫁されたが、そもそもどうしてヘニング様に降嫁されたのか事情を知らない。降嫁される事について、父である皇帝はただ端的に「シュトローマ公爵がお前を欲しがっている」としか教えてくれなかった。
ヘニング様の事は以前から知っており、言葉を交わした事もあるが、それはあくまで姫と騎士、または姫と公爵としてであった。
形式上な挨拶や会話しかした事がなく、取り立てて興味を持たれる様な話をした覚えもない。
それなのに、どうしてヘニング様は私を求めたのだろうか。
「王家の末娘を気の毒に思ったから? ヘニング様も遠縁とはいえ、王家の血を引いているから? でも噂によると、ヘニング様には心に決めた方がいるのよね……。それで今まで縁談を断ってきたって聞いていたけど……」
降嫁される前、まだクィルズ帝国の末姫だった頃に聞いた事があった。
ヘニング様は幼い頃より心に決めた方がおり、これまで何人から縁談を勧められても断ってきたと。
ある時、縁談を断られたとある令嬢が、心に決めているという人物について、ヘニング様に尋ねたらしいが、ヘニング様は曖昧に答えて相手を教えてくれなかったらしい。
そこから令嬢達を中心に、ヘニング様が心に決めた方というのは、「身分や家柄の都合で難しい相手」ではないかと社交界の噂になったのだった。
そんな中、ヘニング様は帝国の末姫である私と結婚した。
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私自身もヘニング様が心に決めた方は別におり、私とは何か事情があって結婚してくれただけだと思っている。
もし噂の通り、末姫の私を同情心から貰い受けてくれただけだったのなら、ますますヘニング様と離縁しなければならない。これではあまりにもヘニング様が可哀想だから。
「まずはヘニング様に離縁を申し出ないと始まらないよね」
そうしてヘニング様に離縁を申し出るべく、私はベッドから起き上がったのであった。
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