104 / 247
第一部
幸福と信頼の石【6】
しおりを挟む
「姉上によると、二、三日もすれば、加工が完了するそうです。
完了したら、姉上が魔法石を預けた職人がいる工房まで取りに行くそうなので、そうしたら姉上の元に取りに行きます」
「ありがとうございます。マキウス様。何から何まで、お世話になってしまって」
モニカが礼を述べると、マキウスは首を振ったのだった。
「これくらい、大したことではありません。
貴女は私の妻。貴女の為なら、何も惜しくありません」
すると、マキウスは不意に肩を落とすと、顔を顰めた。
「それよりも、私は貴女に謝らなければなりません」
「何ですか? マキウス様が謝ることなんて、何も……」
モニカが不安に思っていると、マキウスは頭を浅く下げたのだった。
「私が魔法石を渡したことで、貴女を苦しませることになってしまいました。
それも、気がつくのが遅くなってしまい。……申し訳ありません」
モニカは項垂れたマキウスの肩を掴んだ。
すると、マキウスは驚いた様に少しだけ頭を上げたのだった。
「顔を上げて下さい! マキウス様は何も悪くありません。心配をかけさせたくなくて、私も相談しなかったですし。
それに寝室も別々なので、気づかなかったのも当然で……」
マキウスが夢の中に入ってきたあの日以降、御國だった頃の夢を見ることはなくなった。
魔法石の指輪がないからというのもあるが、守護の力を持つというペリドットのネックレスが守ってくれているのかもしれない。
モニカ自身もこれは自分の問題だと考えて、マキウスに何も相談しなかった。
けれども、結局、自力では解決出来ず、マキウスの力を借りて解決することになった。
こんなことになるなら、最初から相談をするべきだった。
これではアマンテを始めとする使用人とマキウスに、心配をーー迷惑をかけただけだった。
「モニカ、そのことですが……貴女にお願いしたいことがあります」
「な、なんでしょうか? 私に出来ることですか?」
「ええ。出来ます。これは、貴女にしか出来ないことです」
「私にしか出来ないことですか……?」
一体、マキウスに何を言われるのだろうか。
モニカは口の中が急速に乾いていくのを感じたのだった。
マキウスの言葉を待っていると、静かなテノールボイスがバルコニーに響き渡ったのだった。
「今夜から、私と同じ部屋で寝ていただけませんか?」
完了したら、姉上が魔法石を預けた職人がいる工房まで取りに行くそうなので、そうしたら姉上の元に取りに行きます」
「ありがとうございます。マキウス様。何から何まで、お世話になってしまって」
モニカが礼を述べると、マキウスは首を振ったのだった。
「これくらい、大したことではありません。
貴女は私の妻。貴女の為なら、何も惜しくありません」
すると、マキウスは不意に肩を落とすと、顔を顰めた。
「それよりも、私は貴女に謝らなければなりません」
「何ですか? マキウス様が謝ることなんて、何も……」
モニカが不安に思っていると、マキウスは頭を浅く下げたのだった。
「私が魔法石を渡したことで、貴女を苦しませることになってしまいました。
それも、気がつくのが遅くなってしまい。……申し訳ありません」
モニカは項垂れたマキウスの肩を掴んだ。
すると、マキウスは驚いた様に少しだけ頭を上げたのだった。
「顔を上げて下さい! マキウス様は何も悪くありません。心配をかけさせたくなくて、私も相談しなかったですし。
それに寝室も別々なので、気づかなかったのも当然で……」
マキウスが夢の中に入ってきたあの日以降、御國だった頃の夢を見ることはなくなった。
魔法石の指輪がないからというのもあるが、守護の力を持つというペリドットのネックレスが守ってくれているのかもしれない。
モニカ自身もこれは自分の問題だと考えて、マキウスに何も相談しなかった。
けれども、結局、自力では解決出来ず、マキウスの力を借りて解決することになった。
こんなことになるなら、最初から相談をするべきだった。
これではアマンテを始めとする使用人とマキウスに、心配をーー迷惑をかけただけだった。
「モニカ、そのことですが……貴女にお願いしたいことがあります」
「な、なんでしょうか? 私に出来ることですか?」
「ええ。出来ます。これは、貴女にしか出来ないことです」
「私にしか出来ないことですか……?」
一体、マキウスに何を言われるのだろうか。
モニカは口の中が急速に乾いていくのを感じたのだった。
マキウスの言葉を待っていると、静かなテノールボイスがバルコニーに響き渡ったのだった。
「今夜から、私と同じ部屋で寝ていただけませんか?」
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる